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[額を押さえる様子に、僅かに眉を顰め。
右手を下ろし、左腕、紅の滲む辺りを緩く押さえつつ]
俺は……ハーヴェイ、と。
そう、呼ばれていた。
気がついたら花の中に居て、人がいるかとここまで来た。
……こっちの旦那も、御同輩らしい。
[緋色が造り出す道。それは真っ直ぐ森の外へと繋がっていた。徐々に緋色が疎らになり、頭上を覆っていた深い緑も途切れて行く]
[開けたその先に見えて来たのは森では見かけることの無かった黒。遠目から古びた黒き門を紅紫の瞳で捉え、しばらくその場に立ち尽くしていたが、その前に人が居るのに気付き、身を強張らせる。見知らぬ地で人を見つけたなら安堵しそうなものであるが、警戒の色を見せたのはそれらが全て異性であると見て取れたことにあろう]
[咄嗟に傍の樹の影へと隠れ、門前に居る人物達の様子を探る]
[端的に、自身の事を告げた後。
何気なく、視線を周囲の緋へとめぐらせる。
濃き色に過ぎる思いは、どこか、冥く。
それが何故か……と、思い巡らす内]
……ん。
[遠くない樹の陰。感じるのは、人の気配]
誰か、いるのかよ?
[─誰か、いるのかよ?─]
[再びビクリと身を強張らせた。隠れていると言う負い目がその反応を引き起こす]
………。
[姿を現すかどうか逡巡。その後に樹の影からゆっくり、顔だけを覗かせた]
……女?
[木陰から覗いた顔に、小さく呟く]
その様子だと……どうやら、御同輩の一人……って所かね。
[続いた言葉は、顔を出した少女に向けて、というよりは独り言のよう]
[人影に声をかけるのを、クインジーはただ聞いた]
[藍の男の問いには答えず、次いで視線は樹へと向かう]
[顔を覗かせた女を見た後、扉へと目を戻す]
先に行くぞ
[炎の揺らめきは窓から僅かに零れていた]
[入り口へと近付くと、揺らめく炎の灯りが強くなる]
――邪魔するぜ
[重い戸を引くと、燭台を持つ男の顔が*闇に浮かんでいた*]
……三人居る……。
本当に、何なのよ、ここは。
[茶の男の言葉は聞こえていない。ぽつりと呟いたこちらの言葉も、果たして向こうに聞こえたかどうか]
[こちらのことが知られても、直ぐに彼らの傍へと向かう気は起きず。警戒の色は消えない]
ん……ああ。
[先に行く、という声に返すのは、気のない声。
黒の門を潜る黒を見送り、蒼氷は再び、樹の陰へと向いた]
[少女の呟きは風に散らされたか、少なくともこちらには届かず。
向けられる警戒の色に、軽く肩を竦める]
やれ、やれ。
ここで突っ立ってても埒は開かんかねぇ。
この中に事情通がいる事を期待して行った方が、時間は無駄にならんか。
あ。
[黒の門の奥、扉が開くのが見え思わず声が漏れた。その奥に揺らめく小さな焔。それを持つ者の顔までは見えなかったが、焔の位置的に誰か居るのは見て取れた]
他にも、居るってこと?
あの人達皆、ここの人達なのかしら。
……ここが何なのか、分かるかしら。
[自分が何故この地に居るのか。誰かが連れて来たのだとしたら、何故城があるのに森に置き去りにされていたのか。もしここに連れて来た張本人が居るのだとしたら、問い詰めることが出来るかも知れない]
…よしっ。
[意を決すると、樹の蔭から出て人が居る方へと駆け出した]
ああ。
ここで、突っ立ってるよりはマシだろうよ。
[尋ねる男に頷き、門の内へと踏み込む]
[先に進めば、焔揺れる入り口。
そこに立つのは、先に行った赤髪の男と、燭台を手にした男]
[先に行った赤髪と、燭台の男は何か言葉を交わしていたか。
そちらには特別の興味はなかった。
恐らく、彼が問いを投げていたとしてもそれは自分の問いたい事と、さして変わらぬだろうと思っていたから]
……あんたが、ここの主……か?
[問いに返るのは、自分は『番人』である、との答え]
『番人』……?
ここは、一体何処……いや、なんなんだ?
[微か、苛立ちを交えた問い。
それへの答えはなく、ただ、休息が必要ならば部屋が使える、との説明がなされたのみ]
[二人の背中ごし、揺れる蝋燭の炎に照らし出された男性の顔がぼんやりと、薄闇のなか浮かび上がっているのが見えた。
既に若くもなく、まだ年老いてもいないその顔に、彼は確かに見覚えがあった。]
わ、ちょっと、待って。
[門をくぐって行く者達を追うようにして自分も門の内側へと入る。赤と、青と、茶の髪をした青年達。その先の扉の内側に居るのは燭台を持つ壮年の男性。駆けたことで少し息を上げながら、先に居た青年達の後に並ぶようにし、交わされる言葉を聞く]
[幾つかの問いと答えの応酬。
しかし、得られたのはこの城の設備を使いたければ使えばいい、という事実のみ]
……やれ、やれ。
肝心の事にはだんまり、か……。
[吐き捨てるよな呟き。
苛立ちを帯びた蒼氷が、いつの間にか後ろに続いていた者たちに向けられる]
どうやら、衣食住の心配はないようだぜ。
……それ以外は、話す気がないのか、本当に知らんのか、見当もつかんがね。
[なされる会話は自分が訊ねたかったことと同義で。それはつまり彼らが自分と同じ境遇であることを意味する]
[自らを『番人』と名乗る男性に視線を向ける。聞きたかった問いの答えは貰えないらしく、眉根に皺が寄った]
…何よそれ。
だったら、誰がここに連れて来たって言うのよ。
[茶の青年が言葉を紡ぐ。番人より聞いた、この城の部屋を使っても良いと言う話。それ以外に関してはほぼ分からないと言うこと]
………そのうち分かるって、ことかしら。
[漏れた言葉はまるで独り言のよう]
[何故か今はもう一つの問いは口に出さない方が良いように感じた。
――あなたは私をご存知ですか。私はここに来たことがあるのですか。]
さて、それこそ俺が聞きたい所だ。
[眉根に皺寄せる少女の言葉に肩を竦め、おどけたような口調で言う]
……ならない、というより、他にどうしようもないんじゃないか?
俺としては、あまり、嬉しくはないんだが。
[男の発した問いには、嘆息を交えてこんな呟きを漏らす]
……ここは。
ここに満ちる、あの花は。
どこか、疎ましい……。
離れられるなら、離れたい……。
[心の奥底、零れ落ちるのは、今は叶わぬであろう、願い]
……そうですか。
[「嬉しくはない」という青年の言葉を少し考えるように頭を傾けた。]
では、しばらくはここで共に過ごすことになりそうですね。
[茶の青年の様子に出るのは溜息]
…皆が疑問に思うことは答えてくれない、と。
ここに居れば教えてもらえる時が来るのかしら。
森で野宿とかじゃないだけ、マシかも知れないけど。
この状況で嬉しいと思う人が居たら、頭のネジがどっか飛んでるわ。
[言い放ってから、青の青年の言葉を聞く]
……そう言うことになるわね。
名前くらいは知ってた方が良いかしら。
私はシャーロットよ、長ければ好きに呼べば良いわ。
[自ら名乗ってから、促すように周囲の青年達を見る]
[男の声はもの柔らかく、淡々としていた。
微かに声音に惑いが含まれていたにせよ、それはこの場では当たり前のことであっただろう。]
そういうことであれば、私も名乗っておきます。
私の名は、ナサニエル。
[――そう、今は。]
ま、そうなるんだろうな。
[共に過ごす、という言葉。
嘆息と共にそれへの肯定の言葉を零し]
ああ……俺は、ハーヴェイ。
[確かな、と。
その言葉は果たして名を問うた少女に届いたか]
……とりあえず、休めるんなら、俺はそうさせてもらう。
妙な疲れが、身体に残ってるんで、ね……。
[左腕を右手で緩く押さえつつ、言って。
燭台を持つ男に寝室の場所を問い、そちらへと*足を向けた*]
ナサニエルと、ハーヴェイね。
[告げられた各人の名を確認するように反芻して。残る赤の青年の名が紡がれるのを待つ]
部屋は後で空いてる場所を借りることにするわ。
[部屋へと向かう茶の青年──ハーヴェイを見やり、意思表示するかの如く言葉を紡ぐ。押さえる左腕に首を傾げたが、呟かれた言葉までは耳に*届かなかった*]
教師 イザベラ が参加しました。
教師 イザベラは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
ん、客人ですか?
[奥の方から『番人』に声だけをかける。
彼の肯定の返事を聞くも、皆が集う場所に向かおうともせず。]
そうですか。一体、幾人がここに集うのでしょうね。
いや、これは問いではないですよ。
答えがもらえないのは、承知しておりますから。
[ギギと床板を踏みならしつつ、城のあちらこちらに
目をやっては手帳に何やら記す。さらに、見ては記す。
ルーティンが如く、その女性は動いている。]
私だって、自分のことすらよくわからないのですから。
貴方……えーと…。
[手帳をぱらぱらとめくり、ああ、と一声あげる。]
『番人』のアーヴァインさんでしたね。
仮に、貴方が最も知っている方だとしても、
そのような貴方ですら、それがすべてなのかれもしれません。
[再び手帳を、先ほど記していた頁まで戻し、
見ては記し、見ては記しの作業に戻る。]
だったら、ここを見て回る方が今は建設的でしょう。
何故だか関心をひかれるのです。この建築物は。
[そう言って、別の場所へ*行ってしまう*。]
クインジーだ
[三者の名乗りに続け、男も口を開いた]
[番人――アーヴァインを見る目は闇]
[離れる者へと投げたのは、眉を顰めた言葉]
怪我の治療くらいしろ
[それ以上は重ねず、男は場を離れる]
[緋が炎に照らされ、燃えるように灯を吸った]
[古い廊下は軋みながらも、男の移動を妨げはしない]
[やがて、かつては立派であっただろうことが見て取れる広間にたどりつく]
[緋の髪をそこに認め、男は僅かな時間、その場に*立ち尽くした*]
私は……
[と一瞬逡巡した後、]
少し、この城の中を見て回ろうと思います。
後ほどまたお会いしましょう。
[丁寧に礼をし、残る者に背を向けた。
表情こそ心許無さを漂わせていたが、エントランスから奥へと進む足取りには迷いはなかった。*]
[白い紙は次第に黒に彩られていく。
広がる空も錆びた門も這う蔦も
透明な泉も深き森も咲き乱れる花も、
全てはモノクロームの世界に埋没していた。]
[手を止め、目と目の間を押さえる。
親指の付け根付近には黒鉛の粉末がこびりついていた。
背を反らせ、頭を背凭れの上部に乗せた。
開いた眼に映る世界は逆さまに変わる。]
あ。
[室内に一つ増えた影に瞬き、
爪先に力を込めて頭を後ろへと乗り出した。
加わった重みに椅子が不安定に揺れて悲鳴をあげる]
今、来た人?
よ、と。
[裾の余るズボンは素足を半ば覆い隠していた。
立て直した椅子の上に画材を置くと、
長髪の男に向き直り、視線を下から上へと動かす]
オレ、はラッセル。
よろしくね?
[傷痕に覆われた左の眼と、闇を宿した右の眼。
両方を見詰め、緊張感の抜けた*挨拶を投げた*]
クインジー、ね。
[赤の青年──クインジーの名を聞き、先と同じように反芻する。紅紫の瞳はつい、目立つ大きな傷へと注がれてしまっていた。その様子に相手がどう思ったかは知らないが、共にこの城に入った者達はそれぞれ思い思いの行動を取り始める。自然、その場には自分だけが取り残された]
……まぁ、しばらく過ごすことになるんだから、見て回るのは当たり前よね。
[けれど彼らの後を追う気は無くて。ほいほいついて行くものでも無いために。けれどその場に立ち尽くしているわけにも行かず。周囲を見回しながら城の中を彷徨うことになる]
随分と古いのね。
いきなり崩れたりとかしないと良いのだけど。
[あちこち歩き回り辿り着いたのはキッチンらしき場所。今は誰も居ないようで、そこはがらんとした雰囲気を漂わせていた]
……食べるものは自分で、ってこと?
小さいとは言え城なのにシェフの一人も居ないのかしら。
材料は…あるわね。
[保存庫を覗き込んでしばし思案。よし、と声を漏らすと、小麦粉やバターを引っ張り出して来て何やら作り始めた。材料を混ぜ、オーブンで焼き始めると、漂い始めるのはクッキーの*良い匂い*]
[シャーロットの目が向く左の傷痕の事を、男は理解していた]
[それは現在、ラッセルの視線にも晒される]
[部屋に入った時、男が何を思ったのか、態度に出る事はなかった]
[大人のものではない声によって、動きを取り戻す]
[椅子が軋み、揺れ、止めようと足を踏み出した時にラッセルは立ち上がる]
危ないぞ
[一歩進んだその位置で、男は止まった]
[椅子は止まり、画材が小さな音を立てて置かれる]
己はクインジーだ
……ああ
[よろしくという挨拶に、男はただ*頷くだけだった*]
何か、かいていたのか?
クインジー、
クーだね。
[薄くなった絨毯を踏んで歩み寄り、
一歩の距離を置いて止まった。
年頃の少女とそう変わらない身長。
問いに肯定の頷きを返し、
上半身を捻り背後の窓を指し示す]
うん、そこからの景色。
クー達が来るのも見えた。
少し目が疲れたから、今は休憩中。
……あ、そうだ。
他の人達は、どうしたの?
たくさんいたようだけれど。
[忙しなく、男を仰ぎ見る。
視線は左右共に等しく*注がれていた*]
[かわいらしい愛称に、男はまじまじとラッセルを見た]
……女か?
[疑問が零れたが、口を挟ます前に、答えを与える]
沢山ではない
己の他に、三人だ
一人は休みに行った
二人もこの中にはいるだろう
お前はここに住んでいるのか?
あの番人と名乗った男と共に
[左だけでない視線の向き方は、男にとって慣れるものではない]
[右の黒紅が、窓へと*逃げた*]
料理できるのですか?
[すっとキッチンに入ってきて、きょろきょろしては、
メモを取り、を繰り返している。
そこらにある調理設備をいじり、その機能を見ては
驚嘆したように、さらさらとメモをする。]
私、どうやら食べれたもの作れないようだから、
ずっとどうしようと思っていたのよ。
いいわね、そういうの。
[青髪の女性が、クッキーを作る様子をただ見ている。
特に何かちょっかいを出すわけでもなく、
女性の様子を見ては、何やらメモを*書く*。]
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