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[交わされる会話に、自衛団長の近親者を――
強いては、恐らくはカヤを、疑っていることを悟る。
口を挟む隙を失って黙っていたが、レナーテの否定に息を吐く]
そう…… よね。
[その中には先程の口が軽い自衛団員も含まれていたかもしれないが、彼の知るところではない。
ともあれ、それが此方へ近づいてくる様子を見つめていると、自衛団の1人が香水売りの少女の腕を乱暴に掴む]
え、ちょっと。
何ですか、急に…
[慌てたように静止の声を上げるが、続いた言葉に動きが止まる]
連行?誘拐事件の被疑者…
彼女が、ですか?
─広場・噴水傍─
ん……そう、だよ、な。
[レナーテの豪快な否定に小さく呟く。
一番近いから、そう思えない。
否、思いたくない、と言うべきかも知れないが。
軽く伏した蒼の奥、その思考は隠れたまま]
ええ。一緒のはずよ。
食事を取っていたから。
[端的にハンスに事実を伝える]
……ああ。
貴方は貴方で、あの子が心配よね。
ごめんなさい、私がきちんと責任持って見ているべきなのに。
[貴方は見ていてくれたのにね、というのは、
アーベルの行動と、彼が逃げたことを知らないから、な訳だが。]
─広場・噴水傍─
[女剣士のからりとした物言いに普段は滅多にやらぬ笑い]
[声を上げた笑いが漏れ出る]
[それでも額に右手を当て、押し殺すような笑いになるのだが]
…く、くはははは。
自分をそこまで下げる奴は初めて見たな。
面白ぇ奴。
[こちらへとやってきた自衛団に冷たい視線を送っていたが、さらにそこから告げられる言葉、そして、行動に]
何……言ってんの、貴方たち
[声は氷点下の冷たさを帯びていた]
―広場・噴水付近―
確かにカヤ君が一番身近か。
[近親者でも疑うべきだ][頭ではそう思っているから]
[楽師の姉弟とは逆に可能性を頭に置いておく]
[ただベッティの親しい相手][そうでなければいいとは思いつつ]
そうか、ならばいいんだ。
いや、心配ではあるがしっかりもしている子だから。
ずっと離れずにとまでは頼めないしね。
[最後は若干目を逸らして]
[一度見失っているだけに内心冷や汗をかいていた]
─広場・噴水傍─
[周囲で自衛団長の養子が犯人では無いことを願うような雰囲気を余所に]
[男の思考は勿論調べるか否かを考えて居て]
(…確かにあの様子では疑いにくいだろうな、他は)
(だが裏通りにも精通したガキ……あの界隈ではハッタリも武器)
(俺の中では萎らしい姿がイコール犯人では無い、にはならんな)
[直ぐに調べるかしばらく泳がせるか]
[額に当てて居た右手を口元へと移動させ]
[しばしの間考え込む]
[アーベルとエルザの様子の変化もよく分からず、レナーテが言葉を続けた]
ま。はえーとこ犯人見つけて、カヤの依頼を果たしてやんねえとな。
そのための優秀なブレーンにはことかかなそうだし。
荒事ならなんとかなるだろうしな。魔法使う奴とも何度かやりあったことあるから勝手は分かるよ。うん。
[そして、ヴィリーが笑うのを見れば、やはり笑みを浮かべて]
下げてねえよ。自分をよく分かってるって言ってくれ。
ま。アンタもそんぐれえ笑っていたほうが感じ良いよ。
さっきまで、俺にかまうなオーラをぷんぷんに匂わせていたからな。ははっ。
[歯に衣着せずに、褒めるのも失礼なことも一緒くたに出る。
どんな人間とでもすぐに打ち解けられるのは、彼女の人徳だろうか]
あまり過保護過ぎても仕方ないしね――
なんて、貴方とこんな話をすることになるなんて、思わなかったけど。
[歳かしら。などと笑ってから、事件の話に意識を移す。
彼らにとっては幸運なことに、内心には気づかなかったようだ]
─広場・噴水傍─
感じなぞ悪くて構わん。
俺に関わらん方がそいつの身のためだってのは俺自身よく理解してるんでね。
お前と一緒さ。
[笑いは直ぐに普通のものへと戻る]
[くつりと口端を持ち上げながら]
[隻眸は行商人を一瞥するか]
[散々関わる羽目になった彼なら理解していることだろう]
[自衛団曰く、団員からこちらの動きを探っていたのが怪しいだとか、作っている香水に催眠効果が含まれている疑いがあるだとか。
件の団員の口の軽さはすっかり棚に上げられていた]
そんな、まさか…
[香水売りを見るけれど、何分ついさっき初めて話した相手。
庇う言葉は見つからず、彼は口を噤む。
団員はと言えば、冷たい目の人形師に苛立ったようで『お前も仲間なのか』と突っかかる者がいる。
比較的まともなほうの団員がそれを制しもしているようだが]
……近親者、か。
なんで、自衛団長さんだったのか、を考える必要がありそうよね。
今までの……被害者も、そうだけど。
[被害者、と口にした時。
眼差しは、アーベルに移ろった]
ああ、もしかして、もう話されていたかしら。
[ぱっと話題を変えるように言い、先程までの話し合いの結果を得ようとする]
―広場・噴水傍―
本当に面白い人だ。
[ヴィリーが笑うのを珍しそうに見て]
[続いたレナーテの返しに小さく笑った]
[ただし警戒を解くわけでもない]
[そのカヤが犯人の側なら?][疑えばキリはないのだ]
[彼女の冷たい視線を無視して自衛団の連中はよく分からない理屈をこねて、ローザを連れて行こうとする]
…………何をしてる、て言ってるでしょ?
早くその手をどけなさい……どけないなら
[そう呟くと、外套の下からぼとぼとと何体もの人形が落ちてくる
人形たちは地に落ちると同時に、むくりと立ち上がると、自衛団に向けてにじり寄る]
─広場・噴水傍─
[ふる、と首を振って、伏していた蒼を上げる。
迷いは持たない、可能性は考える。
それは、今度こそ、と思った時に決めた事、と心の奥底で呟いて]
…………。
[とはいえ、姉の口にした被害者、という言葉と移ろった視線に、また少し翳りは戻る。
無意識か、ハーモニカを取り出して。
奏でるでなく、ただ、弄ぶ]
へっ。
近づいてきたら傷つけるってか?
まるでハリネズミだね。
[おどけたように動物に例えるが、すぐに無造作にヴィリーに近づき]
それならそれで居心地のいい距離を見つかればいいだけの話じゃねえか。
ハリネズミ同士でも、あっためあうことは出来るんだぜ。
……こんな風にな。
[ヴィリーが避けなかったのならば、まるで友人にやるかのように、レナーテが彼の肩に腕を回しながら笑った]
……練習、今日は出なくて良いって。
今の状況じゃ、落ち着いて練習できる人も少ないだろうから。
[アーベルの仕草を見つめながら、囁くように言う]
もっとも、あんたはいっつも落ち着いてないけどね。
[後に、軽く冗談めかした台詞を付け加えて]
[エルザの言葉にそちらに顔を向け]
ん。
自警団長の場合は、犯人像に迫ったから、口封じのために事件に巻き込まれたって感じだと思ったけど。
あれ。
それとも、他に理由あるとか?
そうでなくてもあの年頃の女の子だ。
秘密の一つや二つはあるもの、なんだろう?
……ああ、本当にね。
[どこかで言われた言葉を思い出してエルザに軽く返す]
[こんな話というのには苦笑が浮かんだ]
[年かしらという部分は笑って誤魔化した][色々と]
まあヴィリーの熱意は半端無い。
関わらずに済むなら、と思うことは多いけどね。
[ヴィリーから向けられた視線に肩を竦める]
[幾つかの楽しくない記憶が浮かぶ]
[唇の端が歪んだ]
[にじり寄る人形に自衛団員も少なからず慄いた様子。
慌てて香水売りを連れ去ろうとする者、更に険を増した眼差しで睨みつける者]
…ゲルダ。
[人形師の名前を呼ぶ。
行動を制するように手を伸ばし、首を左右に振った]
─広場・噴水傍─
裏通りの連中はその通りになったが?
[喩えにそんな言葉を返しつつ]
[手巻きタバコを作ろうと胸ポケットに右手を伸ばす]
[けれどそれは次の女剣士の行動に遮られ、目的までには至らず]
[また避け無かったのではなく、現状では避けられなかったが正しいか]
[術の疲労により軽いだるさは残っている]
……居心地の良い距離ね。
それならそっちよりはこっちの方がありがたいが。
[そう言って右手が女剣士の頤を捉えようと動く]
[抵抗がなければそのまま至近距離まで顔を相手の顔に近付けることだろう]
[にじり寄る人形たちに自衛団の面々は恐怖を感じる
だが、その中にも気だけが強い連中もいるのか、手を出すようなら貴様も仲間とみなして連れていくと虚勢を張りながらも告げる
さらに、名を呼ばれ伸ばされる手と横に振られる首
ぐっと唇を噛み、彼らを睨みつけていたが]
…………戻りなさい
[そう呟くと、人形たちは彼女の元に戻り、スカートをよじ登って外套の中へ]
―時は過ぎて―
[夕闇の中、屋根の上。
少女は、高い煙突の影で身を顰める。
じっと様子を伺い、何かあったら姿を隠す。
彼女は、伝言通り来てくれただろうか?
どちらにせよ、彼女の事を待ち伏せたのは家でなく近くの路地。]
ベッティ!
[共に育った友に対し、彼女は不穏を感じたり、又は抵抗しただろうか?
どちらにしても少女は彼女の近くへと寄り。
ぷつりと、手首に小さな針を突き刺してその意識を奪ったのだった。]
[ベッティが煙突掃除人と自警団長の家へと走る姿を目撃した人は、居るだろう。
再び、噂が広がるのは、夜が明けてからなのかもしれない*]
……なるほど。
[レナーテの指摘と疑問に、頬に手を添える。
彼女とヴィリーの様子に、あら、と小さく声をあげもしたが]
あるか、と訊かれて答えられはしませんけど。
それこそ、巻き込んだ当人でもない限り。
私怨の可能性もあり、繋げて考える必要性もあるかと思ったんです。
でも、そう考えるほうが自然かしら……。
それにしたって、どうやって、かしら。
[魔法の可能性は聞いていない。
声を落とした]
[待ち伏せた後、自分の家の近く細い路地へと彼女を運ぶ。
その動作は丁寧で、出来るううだけきずつけないようにしているのは明白。]
…あと、頼んだよ。
[細い入り組んだ路地、木箱に隠して彼女の体を横たえる。
それを見下ろす少女の貌は、帽子の下の濃い影の中**]
……ん、わかった。
[姉からかけられた言葉に、小さく呟く。
一年前の出来事。
詳細は、姉にも話してはいない。
ただ、このハーモニカをくれた、一番親しかった仲間が行方不明になった、としか]
……はいはい、どうせ、俺は落ち着いてませんよ。
[付け加えられた言葉に返すのは、拗ねたような一言。
それでも、それで大分、気は紛れて]
他に理由……か。
爺様の場合は、動き回ってたから、っていうのがあるんだろうけど。
……今の自衛団の状況を作り出そうとした……なんてのは、深読みだよなぁ、いくらなんでも。
[レナーテが姉に向けた疑問。
口にしたのは、思いつき]
そりゃ、傷つけようと最初から考えてれば、傷つけるしかないだろ。
お互いな。
お互いがそう思わなかったのなら、結果はまた違ってくると思うぜ。
[そう言って笑うが、ヴィリーが顔を近づけてくるとあせった様子で離れて]
お、お、お!?
な、何すんだ、てめー!?
[どうも男女の機微には少し疎い様子]
―広場・噴水傍―
今までの……?
[問いかけようとしてエルザの態度に気づく]
[視線の先のアーベルはハーモニカを吹かずに手で遊んでいる]
[重ねての問いかけはしにくかった]
[もう一組の一連の行動は見ているような見ていないような]
[少しばかり面白がっている表情がどちらであるかは示している]
[自分で言っといて、さすがにこれは深読みかぁ、なんてぼんやり考えていたためか。
姉の挙動には、まるで気づけず]
て、ちょ、な、なに、なにっ!?
[いきなり首の向きを変えられて、わたわた]
― 夕闇の中 ―
[噂が広まると、夜の帳と共に外を歩く人の数は激しく減っている。少し足早にカヤの家へと向かう途中]
……っ、誰っ?!
[不意に呼ばれた自分の名前に、微かに身を強張らせた。懐に潜ませた短剣をぎゅっと握り締め、声のした方を向く]
何だ、カヤかー。もお、驚かせないで。
これからちょうどカヤん家に行く所だったのよ。どうしたの、こんな場所で?
[短剣から手を放し、力を抜いて笑顔を作る]
[制止の声を上げたのは、香水売り自身もまた同じだったかも知れない。
人形たちが戻って行くのを見て、彼は息を吐いて手を下ろした。
未だ罵声を浴びせてくる者も中にはいたようだが、ともあれ自衛団は去って行く。
何とも言えない目で、彼はそれを見ていた。
周囲には一部始終を見ていた者も大勢いて、噂はすぐに広まるだろうことは想像に難くない]
─広場・噴水傍─
[頤は捉えるも近付ける段階で逃げられ]
[元より本気では無かったために手も直ぐに離れる]
くくく、”そっち”方面は全くらしいな。
らしいと言えばらしいが。
[浮かぶのはからかいの笑み]
[青年の姉の行動も笑みの対象に含まれていたことだろう]
俺は情報が仕入れられるならそれで済ますつもりだった。
手を出してきたのは連中の方さ。
仕方なく防衛行動を行ったまでだ。
[詭弁にも似た言を女剣士へと返し]
[肩に回されていた腕を外すとやおら立ち上がる]
深読みかどうかは微妙な線だろう。
もしそうならそれこそ……団長さんと自衛団のことを良く知る人間が、少なくとも関わってはいるんだろうな。
[アーベルの思いつきにそう口を挟む]
[姉弟のドタバタには軽く肩を竦めるだけでどちらも助けない]
[そうして連行されるローザをなんとも言えない視線で見ていた
だが、もしローザがこちらを見たとしたら居た堪れなく目線を外すだろう
そうして、自衛団とローザの姿が見えなくなると]
…………ライくん。ごめん、一人にさせてもらっていいかな
[それだけ言うと、返事を聞くことなくその場を*あとにした*]
……あ、あら。ごめんなさい?
[弟相手に、何故だか敬語。
ぐきっ、とか言わなかったのは、幸いだろう。
アーベルから手を離し、
先程までの話題がすっとんでしまったので、深呼吸。]
……カヤ、どうしたの?
[こちらへと近づいてくるカヤの様子は、どこか平常とは異なって見える。だがそれは恐らく、養父の姿が見えなくなったためだろうと推測し]
はぅ?
[手首に刺さった針が、急速に意識を奪っていく。
……シャラン
地面に倒れる音に混じって微かに鳴った鈴の音は、夕闇の中へと*霧散していった*]
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