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……
生きて幸せになってくれると良いのだけれどね。
[それからふっと、身体の力を抜く]
ん……
どうしてかしら、生きてたときより――
[わたしは自分がどうなったのかわからない。だけれど。
*ゆるやかに闇に落ちて*]
いえいえ。私は職務を果たしただけです。
それよりも。
[にこりと笑って。]
あんな男の為に、手を汚す事などなかったのに。
[くす。黒い微笑み。]
[ただ、呆然と。
目の前の光景を見つめるしかできない。
何か違って。
何か間違って。
そんな思いはあれど、でも。
押し止める言葉には、ならずに]
―広間―
[「俺がローズを死なせた」その言葉には返す言葉も無くて。
トビーが殴るのをただ受け続けて
だけど
ぷつり
何かの糸が切れて
少年を振り払う、強く、倒れる少年
ごつり
何か鈍い音がしたのに気付かずに]
お前に何が解る!!
俺がどれだけ悔しいか…お前に解るのか!!
…美味でしたよ、彼は。
[殺せば自分のものになる、そんな先ほどの言葉がふと思い浮かぶ。]
仇もあるが、彼を喰えばどんなに美味か…そんなことも考えていました。
悲しみ、怒り、恐怖…そんなものが積み重なった魂は最上のスパイスとなる。
…あなたも、きっと良い味がしそうだ。
……それにしても。
生者の世界に干渉出来ぬこの身がもどかしいものですねえ。
[大袈裟にため息。]
ウェンディが泣いている時に慰められませんし、
苺もお酒も楽しめませんから。
…………ああ。
まだ、花籠に果物がっ!
[今更思い出したらしい。]
果物か。
[彼の様子をちらりと見て。]
お前は、苺を摘むときに、苺が可哀想だと思うか?
苺を潰してジャムにする時、苺が可哀想だと思うか?
……ふふ。それではきっとご期待には応えられそうにありません。
人狼に対して感じるものなど、ありはしません。
ただ、職務の為に狩りを遂行していただけですから。
[にっこり。]
俺がローズを守れなくて悔しくないと思っているのか?
俺が…
……トビー?
[倒れた少年が動かない事に気づいて声を
少年は動かない]
おい…トビー、冗談は……
[抱き起こそうとして、気付く、出血
少しずつ、床を染めて]
お、おい!トビー、しっかりしろ!おいってば!!
[動かしてはいけない、解っていたけれど
それでも
呼び掛ける、その体を揺さぶって
返事は無かった]
ト、ビー……?
[”あんたが死なせたんだ”悲鳴のような叫びは、いつかの夜、目が合った時に笑った彼の印象とは掛け離れた声。
そしてくぐもった殴打の音。
なにかが倒れる音と、神父を呼ぶ少女の声。
いくつもの音が交差し、よく聞き取れない。
急に薄くなったように思える空気を、ヘンリエッタは吸い込んで、騒ぎの中心へと歩を進めた。]
全く、人狼というものはこれだから。
[大仰に肩を竦め。]
流石に苺と人間を同格にしたくありませんよ。
苺に失礼でしょう。
[そっちか。]
ぁあ、……ぅあ。
[ゼヒ、ゼヒ、ゼィ、]
[呼吸音][喉が鳴り]
[声を出すのも儘ならぬ][そんな様に眼を泳がせ]
[手を喉元に]
[苦痛に喘ぐ][涙で歪んだ視界]
[青年の怒声と][弾き飛ばされた少年が目に映る]
……!!
[ぐったりと倒れた少年]
[蹌踉めきつつも][必死に其処へと近付こうとするが]
まあ。何にせよ。
ナサニエルさんとウェンディに託しておいたメッセージが役に立つ事を祈りましょうか。
[手を組んで祈り、十字を切る。]
誰か…
[医者を…言いかけて思い出す
医者は、来ない]
『……ぅ…』
[トビーが微かに呻いて、その顔を覗き込む]
しっかりしろ、な?大丈夫だ、これくらい……
[嘘。
このままじゃ助からない]
『……何で…ろ…さん……まも……』
もう良い!何も言うな…もう……
[少年の言葉が、少しずつ弱くなる]
……あ。
[トビーがナサニエルに殴りかかって。
ナサニエルがトビーを殴り飛ばして。
その瞬間]
……やめて。
[異能の視界は、ふわりと飛び立つ少年の影を、捉えて]
いやだよ……?
[呟くけれど。
『声』が。
聴こえて]
われらにとっては、人間など搾取するべき資源に過ぎないのだ。
[すっと人の形を取り、彼を覗き込むようにその顎をとる。]
あなたは、苺のほうが人間より可哀想だと、いうのだな。
…そして、職務のためならためらわず誰でも殺せると。
[其れは為らず][もどかしい程の緩慢さで]
[恐慌][不安]
[青い髪の青年が、動かぬ少年を抱き上げようとし]
[少年の頭と][床が][血に染んで]
…こんな話を知っているか?
人狼の牙に襲われて、それでも死ななかった人間は…
その毒に侵され、いずれ獣になると。
われらのような生まれながらのモノとはちがうが、な。
…彼は、殺したな。
大切なものを壊された腹いせに。
[くつり…動かなくなった少年と、うろたえる男をみて哂う。]
まあ、順番に答えましょうか。
[顎を取られても、一切動じず。]
苺云々は言葉の綾ですって。大袈裟ですねえ。
[しばし沈黙。]
……今回の事件が起きるまでは、そうでした。
死んだ今だからこそ明かしますが、ウェンディを実の娘のように思っている事に気付いたのです。
故に、彼女がもし人狼だったのなら殺せたかどうかわかりませんね。あはは。
[自嘲的に笑う。]
/中/
修羅場の途中ですが。
銃型自動結界張り機(だからネーミングセンスが(略))の紋を赤い猫→赤い狗に変えて良いですかorzファビオラさんなので(謎
ちなみにこの紋は施設のマーク也。
…そう、お互い殺し合うのは人間だけ。
神から爪も牙も与えられなかったが故に、
自ら作った禁断の爪と牙で、お互い殺し合う。
[感じた思念に、そうつぶやいて哂う。
既に己の声は其方には届かぬが。]
[抱き起こす、その腕の中で
少年は力を失くして
ぱたり
腕が床に落ちる]
…トビー?
……俺が、殺した……?
[呆然と、目の前の事実を確かめるように呟く]
俺が……
[半ば放心したように、座り込んで]
……毒に侵され、獣に。
へえ。その話は初耳ですね。
生きていれば、手記でも出して書いて差し上げようと思ったのに。
[くつくつ哂う。]
…義兄は姉を殺したのに、お前はあの子を殺せぬのか?
お前の方がよほど、誰でも殺しそうに思うのだが。
[よくわからぬと、困惑の顔。]
[広間の前迄来た時、不意に一瞬だけ、怒声が途絶えた。
ふわりとどこからかスープの匂い。
食欲をそそるはずの南瓜の甘い香りが、何故か場に不似合いに感じた。
そして、少年の名を呼ぶ声。
それに答える声は、聞こえない。]
[閃き][断片]
[血に染んだ骸。]
[……否、其れは肉塊ですらなく。残骸。]
[……嗚呼。]
[斯うして俺は、罪を背負い、]
[自らも罰せられ]
ナサニエルさんがトビー君を殺したのは、単なる弾みですよ。
『殺した』のではなく、『事故』です。
言葉は慎みなさい。
[静かな声色で、感情の色はなく。]
─父さん…母さん…ねぇさ…………………おにいさん…─
[それは、聞きなれた少年の声で。
今朝、自分を必死に呼んでくれた声で。
それが意味する事なんて、理解したくないのに。
巫女の力は。
それを。
現実を突きつけてきて]
……ねえ……どうして?
[掠れた問いは、誰に対して投げられたのか]
あはははは。
人を大量殺人鬼みたいに言わないで下さいよ。
まあ、傍から見れば一緒ですかね。
人の姿をした人狼と人、区別付きませんから。
[くすくす。]
[それはあまりにも突然の出来事。
赤い黒い染み。
緑の髪を、絨毯を染めて。
理解は追いつかずに]
……トビー…様?
[掠れた声だけが洩れた]
[ 激しい怒声よりも耳を突いたのは硬い物がぶつかる鈍い音。少年の新緑を思わせる髪の合間から零れるのは鮮やかな緋色。黒の瞳は益々大きく見開かれ合わせる様に口を開くも其処から音が洩れ出る事は無く躰は其の場に縫い止められる。
然れど少年の批難の声は止まず青髪の男を尚も苛み続けるか。然し軈て其の声すらも途切れ広間に訪れるのは呼吸の音すら聞えそうな程に不自然な静寂。
俺が、殺した。
呆然とした呟きが少年を抱えた男の口唇から零れる。腕の中の幼い子供はもう動かない、笑う事も泣く事も怒る事もない。其れは恐らくは少年の慕った女性と同様に。暖炉の薪がパチパチと爆ぜる音は遠く、今は目前で命の灯火を消した少年へと視線が注がれる。]
そういえば、結局宿題出した時の約束が守れなかったのでアレですが。
『欲しいもの』、何かありましたかね?
[はて、と首を傾げ。]
俺どころか、人間の手からすらも護れなかったか。
[ 其の聲は果たして男に聴こえていたか否か、何方であれども彼には関心の無い事か淡々とした口調で呟かれる。]
人の命とは脆いものだな。
…だが、殺した。
はずみであれど、われらは仲間に手を上げることなどしない。
祖母がよく、昔話を聞かせてくれた。
人間は、自ら作った鉄の牙と鉄の爪で滅ぶ…。
[緩慢な動きで座り込む。動かない少年の傍らに]
…………。
[しばしの沈黙。
それから、薄紫の瞳が、座り込む蒼髪の青年へ向けられて]
……「悲しまないで」って。
[ぽつり、と。呟くのは、今朝聴いた『声』]
「苦しまないで……ごめんなさい」って。
多分、あなたへの言葉。
あのひとから。
[静かな言葉。そこに、感情はなくて]
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