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[微かに届いていた音色が途切れたのに気付き、軽く首を傾げた。落ちかかってきた髪を左手で梳き上げる]
ティル様、お疲れ様です。
[やがて通りの向こうから見えてきた姿に、スッと一礼する。
彼が風を宥めてくれていたのだと気が付いたようだ]
儂も読んできたところじゃよ。
秩序の王・混沌の王に関してはほぼ記述なし。
機密事項と言われるくらいじゃからな、これは書かれているとしたら竜皇殿の書庫か、『心の間』と呼ばれる場所くらいじゃろう。
個々人でも、古く長く生きる者は知っておるようじゃが。
[古く長く、のところで向かう意識はクレメンスへと]
剣に関しては存在については知られておるようじゃ。
その力の詳細は書かれておらんがな。
そうそう、そうなんだよなー。言われなきゃうっかり忘れるのが。
うはは、お子様は飴好きだからなぁ。
[けらりと笑いながら、楽しそうに言うザムエルには似たような笑みを返す。それは己も古き竜の一人故か。]
ああ、俺は図っ書館。
…エーリッヒが言った通りに、揺れるものが干渉してきてんなら、目的ってなんなのかねと思ってな。
その前に対応策がありゃ万々歳なんだけどな。
ん、エルザもか。
目的は…似たようなもんか?
[どうじにエルザにも話ながら。]
知識の足りぬ所を埋めるにはそれが一番であろうかと。
御師様もいらっしゃっていたのですか。
[小さく頷いて]
養父はそうしたものを好みませんでしたし。
心待ちにしていたものの一つでした。
[唇が僅かに弧を描く]
[長く大図書館へと籠っていたために流れていたメロディは耳に入っておらず。しかし何かが途切れたことだけは今気付き。ややあって現したティルの姿を見て、途切れた何かを理解する]
ティルか、儂は買い物じゃが、他は違うようじゃよ。
[近付いてきたティルの頭を、労うかのように優しく撫でた]
[お疲れ様、というエルザの言葉に軽く瞬き。
それから、『風鎮め』の事を言われたのだと気づいて、あー、と短く声をあげる]
ま、一時凌ぎだけどね。
あ、ていうかさ。
その、『様』つけんのって、なんとかなんない?
慣れてねぇから、こそばゆくてさー。
[風竜の一族では最年少、更に人間界では流浪の何でも屋。
そんな暮らしをしてきたためか、どうにも慣れないらしい]
そういうことになりますね。
調べたいものについての記述がどこまであるかは、不明なのですが。
[師を見ながら、クレメンスにも肯定を]
ということです。
ティル様は何かお買い物をされてゆかれますか?
お休みになるのでしたら、東殿の部屋が使えるようにもなっておりますので。
[疾風の竜に向き直るとそう続けた]
こそばゆい、ですか?
[様付けをしていたのは、自分より年上の相手にはそうすべきと教えられてきたからだが。当の本人に言われると、軽く口元に手を当てて]
…了解致しました。
それならば、ティル殿と。
[敬称を付け直し、良いでしょうかと小首を傾げた]
[撫でられる感触に、目が細まる。
仔竜の頃に母竜を亡くし、父竜も亡くして久しい身、孫のように可愛がってくれる大地竜の存在は、義兄や姉とはまた違った意味での拠り所であり。
本来、反する形の対である事に、抵抗などはないらしい]
買い物って、お土産かなんか?
あー、オレもなんか探しとかねぇと……。
[姉と、遠くなく増える眷族のための贈り物。
ゆっくり探すのは、先になりそうなのだが]
[全くじゃな、とクレメンスの言葉に同意しながら頷き]
何じゃ、お主も図書館か。
皆考えることは一緒かのぅ。
「揺らすもの」が干渉せしはその役目のため。
此度はそのために我らが竜王様達が捕らえられた。
これだけでも各竜郷への影響は少なからず出るが…果たしてそれだけに留まるか。
これは推測じゃが……竜王様達を捕らえることの他にも、確実に世界を揺らす事が出来る「何か」を狙ってくるとは考えられぬじゃろうかの。
[それはクレメンスだけでなく、この場に居る全ての者に向けた問い掛け]
うはは、オティーリエに殺されるのは悪くないんだけどなぁ?
ま、いっぺんくらいは死んでみたいもんだぜ。
[そのいっぺんは最後なのだが、軽く言い切った。
生命の竜でありながら、自分の命には無頓着もいい所の発言ではある。]
あら違う?
罪滅ぼしかどっちかと迷ったんだけどな。
[希薄な笑みは浮かべたまま。
だが内心予想は遠くなく、と受け取ってはいたが。]
[反する対にも関わらず、目の前の風竜の子に対しては肉親にも似た感情を有していて。相手も懐いてきてくれるために普段は対であることも忘れそうになる。会う度に撫でるのも、その意識がやや薄れつつあるためであろうか]
正しくは竜皇殿に戻るための土産、かの。
飴玉を調達しようと思うてな。
[ティルの問いには何を買いに来たかも口にする]
そちらに関してはやはりそうなりますか。
本殿は今、立ち入ることが出来ませんので、そちらから調べるのは諦めることと致します。
[クレメンスに向いた意識に、納得を示して]
はい、昨日の様子ではご存知の方々もいらっしゃいました。
それにエーリッヒ殿もご存知のようでしたし、私もその記憶を持ってはおりましたので、古代種であれば同じく。
剣の存在は知られている。
…図書館まで足を伸ばす理由が無くなったかも知れません。
[苦笑のような波動が広がった]
お、よおティル。ああ、さっきから聞こえてた音はお前だったのか。
あー、いいな。ここからでも風なら何とか抑えはきくのか。
こっちは何にするにも、一旦戻らねぇと拙いのがなぁ。
[もっとも自分は王とはちがう。戻って何をするにも、どこまで知から及ぶかは分からないが。
元々少ない生命竜、手が足りないよりはましだとは思った。
尤も今は、まだ帰れないが。]
ん、ま、買い物は後から、かな。
東殿で休めるんだ、あんがとね。
[別に野宿でも気にしないけど、とは一応言わず]
んー……別に、敬称なくてもいいんだけど。
ま、様よりはそっちのがいっかな。
[正直、エーリッヒに『さん』づけされるだけでも大概こそばゆかったりする]
ふむ、そちらは封鎖されたか…。
竜王様達があのような状態では、厳戒態勢になるの無理はあるまい。
存外知る者が多くて驚いたわい。
干渉されし故に知り得たのか、元より知り得る事なのかまでは判別がつかぬがの。
剣の所在がどこまで周知かは分からぬが、干渉されし者は「揺らすもの」から智を得ている可能性も否めまい。
果てさて、向こうはどう動いてくるやら。
[伝わる相手の苦笑にはこちらも苦笑が漏れるか]
飴玉かあ。
爺ちゃんの定番だもんな、それ。
今は、ちっちゃいのも多いし、あるといいかも。
[問いの答えに納得しつつ。
ザムエルが場に向けて投げた問いには、やや、思案の素振り。
肩のピアも一緒に腕組みポーズ]
ん、いちお、『風鎮め』をねー。
抑え、っつっても、こっからじゃ一時的。
本気でやるなら、蒼天の座までいかねーと。
[クレメンスには、ちらりと空を見やりつつ、こう返す]
いっぺんだって殺したくはありません。
あなたのせいで自分の手を汚すなど。
[いつもどおりの装いは、まだ被ったまま。
それでもどこか、いつもよりも少し深い場所から、感情があふれ。]
……わかっていても、割り切れないだけですよ。
本物が二人でなければ、意味はなかったのに。
[最後の言葉は、闇の中に消えるように、ほんのかすかに零れた。]
「何か」ね…。そんな大事なモンってあったっけ?
少なくとも俺は聞いた事無いんだが。
[知識はそれなりに持ち合わせてはいるはずだが。
知らないと、肩を竦めるさまは本当に知らぬよう。]
爺さん心当たりねぇのか?
[んーと、先ほどまで図書館にいたと言うザムエルに、成果を尋ねる。]
まぁ年の功の言う事はたまには素直に聞くといいんだぜ。
[感じる不満の色にもへらり、軽く告げ。]
まぁ今現在大嘘ついて竜都騒がしてる張本人だからなぁ。
騒ぎの方は…まぁ結果次第だ。
適当に気をつけれ。
あなたのいう事を素直に聞いては、自分がだめになる気がします。
[軽く言い切った。
それから少しの間をおいて、すこしわらう。]
嘘はつきなれていますから。
――はい。気をつけます。
そうした呼び方には慣れておりませんもので。
よろしければこれでご容赦下さい。
[僅かな困惑の色を瞳に浮かべながら、ティルに謝った]
[三人三様の反応を見てから、言葉を発すために小さく息を吸う。エルザの返答には一つ頷き]
……竜王様達が所持せし「力ある物」。
数ある中でも強大すぎるが故に分かたれた二つの剣。
「力ある剣」の存在を、聞いたことは無いかの?
[再びの問い掛け。目の前に居る三人を順繰りに見る]
あら愛されてるわ俺。
[真逆の意味をさらに回転させて良い向きにして受け止める。
オティーリエから溢れかける感情には気づいたか。
気づいたところで、態度は薄ら笑みのそれを崩さないが。]
そんな二人に拘るものかね。
片割れと一つである事はそんなに不服か?
『本物』が、何を指すかは知らんけど。
俺は――――
[と、口にしかけた言葉に、笑みとは違うものがまざりかけて。]
…っと。何でもない。
[再び、へらと笑いの感情をのせて、言いかけた言葉を閉じた。
混ざった感情は、波のように今は引いた。]
― 竜皇殿・中庭 ―
……また。
[ 投げられるそれぞれの科白に、ノーラは首を縦に振るか横に振るかで応じて、一人、また一人と離れ行くを、再会を願う別れの言葉を短く告げ、見送った。
誰の――対の一たる闇竜オトフリートの感謝に対しても、それは同じだった。
異なる様子を見せたのは、心竜アーベルのレンズ越しの紺碧へと向けた、物問いたげな眼差しくらいなものだったが、問いが明確に発される事はなく、合わぬ視線故に、彼が察したかも分からぬ。
話し相手が去ろうと、影は其処から動く様子もなく、樹の傍らに、再び*腰を下ろすのだった*]
や、謝らなくてもいいんだけどー。
[エルザに向け、困ったように言って。
ザムエルの言葉に、軽く、首を傾げる]
力ある……剣?
人間界の伝説で、たまーに聞いたりする、あれの事かな。
……あれって、竜王管理だったんだぁ。
[場違いなくらいしみじみと言ってみたり]
……そうですか。
[もうそれ以上言葉を重ねたくないというように。
その話題は切って。]
一人は、半分でしかありませんよ。
[彼の事情など知らない。ただ、身のうちを見るように、下を見て。
ふと、続く言葉が途切れ、考えずに言葉はついて出た。]
――あなたは?
[何でもないと言われ、問いを重ねることもないけれど。]
本殿には、それこそ禁書に類するものもありますし。
竜都の礎となる場でもありますから。
[息を整え、再び意識を戻す]
ええ、ですがブリジット様などは確証はないというお口ぶりでした。なので話としては知っているが、ということではないかと。
干渉の有無は分かりませぬが。
剣?
…………あー!あるある。聞いたことくらいは。
興味ないからド忘れてた。
[元々、長き時により蓄えた知識は膨大。故に多い引き出しから該当するものを選びだす事は容易ではなく。
また傷をつけるものにはあまり興味をしめさなかったからか、奥底にしまわれた知識はすっかり忘れられていた。
ぽんと手を叩いて。]
…で。
それを揺れるものが狙ってるってことでいいのかね?
/*
今みたら精霊3の一日目の赤ログより30も多いことを知りました。
ログ、大変なことになってるんじゃないかな。
ご、ごめんなさい><
はい、私は我君より聞いたことが。
その力は半端な者では支えることもできないと。
[ティルやクレメンスの反応を見ながら*そう答えた*]
[再び三人の反応を確認してから]
「揺らすもの」が狙っているかの確証は無いが、影響を与えるに十分な代物ではないかと思うて居る。
分かたれた二つの剣の片方だけでも大きな力を有する。
そして「分かたれた」と言うことは、元は一つであったと言う事。
仮にそれが一つとなり揮われたとしたら……。
[一度言葉を切るが、直ぐに調子を戻し]
と、そこまで行くのは考えすぎやも知れぬが。
しかして強大な力を有する物が奪われるは事実大事。
狙うに値するものなのではないかとは思うのぅ。
んでも便利っちゃ便利だよな。
こっちは向こうの、生命の海の詳しい様子も不明瞭だし。
1日2日で腐るようなもんでもないが。
ちと他の奴等にも状況話してやらんと、姐さん信者が悲鳴あげてるだろうし。
[信者=側近だが。
ティルが見た空を、こちらもちらりと見上げる。
今は疾風竜が吹いた笛の音の為か、見える範囲で変容は見当たらない。]
長く生けし者はその分智を蓄えて居るもの。
しかして古代種でもなければ話としてしか聞いたことはあるまい。
機密事項であるなら詳細を知らぬは尚更。
儂とて長く生きては居るが、はきとした智は持ち得ておらんかったのぅ。
[伝う言葉に頷く気配を見せる]
[基本的に剣は使わないせいか、やっぱり興味は薄かった。
更に、伝説の類にもさほど興味があるわけではないため、必死で記憶を辿りつつ]
んー……。
人間界で聞いた伝説じゃ、最終兵器扱いだったしなぁ。
っつか、そーゆーのが飛び込むとか、それだけで人間界とか大揺れだし。
世界揺らすのが目的なら、それ狙いってコト、なのかなぁ。
[薄い笑みは続いていたが。オティーリエの問いに、それはゆっくりと消えていった。
代わりにゆらりと、首をもたげるのはほの暗い。乾き。]
それでも始めから一つなら。失ってから苦しむ事はない。
[それから再び、笑みが浮かぶ。
だがいつもの軽薄で軽いそれとは違い、暗く深い、どろりとしたもの。
仮面の下の、その一部。]
…俺も、双子に近い『片割れ』が居たって事だ。
[告げた言葉はそれだけだった。
告げ終えれば、暗いものは引いていき、沈黙の後、再び常の彼にもどった。
正確には双子、ではない。
自分と片割れの関係を、この世界の言葉にするのは少し難しかった。
半身であり、妻であり、子であり、そして己でもある。
今は裏切りにより失われた、己が真の対。]
影輝ほどじゃねーけど、どこにでもあるのが疾風の特徴だしな。
つか、やっぱどこも騒ぎになるよなぁ……。
あー、事情説明とか、頭いてぇ……。
[クレメンスに返して、ため息一つ。
そも、風竜の一族は竜郷各所に散らばっているわけで。
それぞれが風聞を拾い集めたら、どれだけ尾ひれがつくのかとか、考えると、ちょっと頭が痛い]
[大通りでは。剣を探す為の布石は打っておいた。
以後、それについて語り易くはなったろうか。
見えぬ粒子がさざめく。ゆっくりと、探るように竜らをまとわる。]
―中庭―
[流水の竜が現れた時も一歩引き、青年は口元に穏やかな笑みを浮かべ話に耳を傾けていた。唇を舐める妖艶な誘いは短くも丁重にお断りしたが。
その間にやって来た生命竜の二度目見かける暴挙を止める事は出来ず、しかし見事に凹まされた顔面からすれば手出し無用であったかもしれない。
やがて去っていく者達を見送り、影輝竜の物問いたげな眼差しに無言のまま樹の傍らに腰を下ろす姿を見下ろした。目を合わせる事はなく彼女の髪に隠れた右に焦点を合わせながら]
……何か?
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