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笑ってるのね。よかった。
よかった、のかな。
[涙がこぼれる。又いなくなってしまったと、思い]
ノーラさん、もう少しで、きっと治るから。
エーリッヒさんも、笑ってるかな。
私も…あんな風に 笑えるかしら。
[かしら?
自問自答。
違う。
そう、前を向いて歩いて
風を感じて走って]
…違うわ。
笑うの。
笑いたいから、…笑うの。
[身体が浮いた感覚があった。
ぼんやりと、眼を開く。呼びかける声があった。]
……―― 、 ―ッ…、…
[頷き返そうとして咳き込み押さえる手のひらに
花びらと棘が落ちた。それがおさまれば、
手を握り締め小さく頷いて]
…… ――大事 ないの よ
[はたり、と 落ちる。
落ちる、落ちる 落ちる涙。
深く俯けば亜麻色の髪に隠れて見えないだろう。
眼を閉じて、流れるに任せる。
声を殺して、
しずかに。
静かに。]
[カインと名乗ったアーベルだったものが、風に運ばれ消えていく。
その顔に浮かぶは笑み。]
…………それが君の選択か。
[『死は解放』……そうカインは確かに言った。
死は安寧……それはきっと彼にとって真実なのだろう。
だがしかし、それを見ていた彼女の表情は晴れない。]
……本当にそれが正解なのかな?
…えぇ。
[ベアトリーチェの零れ落ちる涙を
そっと掌で拭ってあげようと手を伸ばす。]
きっと、良かったのよ。
[静かに諭すような声色で]
エーリッヒは…
[遅い足取りが、ライヒアルト達の居る場所に辿り着く間に、ゼルギウスの声が小さくなり、各フロアの様子や、ノイズだけが走っていたモニタ画面(あの古城にカメラがあったのだろうか?)が暗闇にかえる。
点滅していた僅かな機械類のランプもオフになり、瞬く星座のような幻想生物達も、姿を消す。]
[間に合わなかった命を思う。
ノーラの方を視た。糸の先、揺らめく、色]
ノー、ラさ……。
[症状が進んで見せたもの。
喉の炎症は進んで、目に。
その過程で見る、初めての、]
ノーラさんは、やっぱり、綺麗な人なの。
[一瞬の奇蹟。色は又、元に戻り、少女の視界を闇に返した]
終わった、ね。
[ライヒアルトの手に左手を重ねて微笑む。
どの顔も疲労の色が見て取れた。
眩暈がして顔を伏せる。]
少しだけ、……休ませて、ね。
うん。エーリッヒさんも、先生も、イレーネさんやダーヴィッドさんや、みんな。――ツヴァイさんも。
笑ってると、いいな。
[支える重さを感じながら、ゆっくりと、笑みを作る。目には、涙]
[え、と声にならない声が出る。
盲目の少女に訪れた一瞬の奇蹟。]
……ベアトリーチェ。
[ふ、と笑う笑顔は――もう見えないのだけれど
優しく彼女を見つめながら]
今度、星座を教えてあげるわ。
…暗闇ほど輝く綺麗な光の話を―――。**
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