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『そういえば、腹が減ってたんだ』
『思い出したら、手の中のものが瑞々しい果実みたいに思えて』
『試しに一口、齧ってみた』
『…』
え? なにこれ
[青年の左肩には生まれつき薄い痣がある。
普段は気をつけて見なければ気付かないその痣が、明らかに濃くなっていて
触れればやはり僅かに熱を持っていることがわかった。]
気付かないうちにぶつけたのかなぁ……
まあいいか、大して痛いわけじゃないし。
[そう言ってシャツを着なおし前を閉じる。
感じた違和感は、今はすぐに忘れてしまうだろう。*]
/*
ところでね、襲撃描写が素晴らし過ぎて無言でGJものなんですけどね。
何がいいってさ、傷の付き方とかその辺りがすげーリアリティあるのがよい。
─ 翌日 ─
[雪の勢いはとどまる所を知らぬようで、夜半には吹雪と言える様相を呈していた]
……対策しといてよかったわー……。
[翌朝、風が収まったのを確認して外へと出て。
最初に口を突いたのがこんな一言だった。
取りあえず、気になっている所──家畜小屋の様子を見て、それから、足を向けたのは橋の方]
…………また雪掻きしろってか…………。
[昨日の努力をあざ笑うかの如く、真っ白な道なき道を愚痴りながら進んで。
ふと、違和感を感じて足を止めた]
……あれ?
[見覚えのある木立の切れ目。
そこまで来て、あるはずのものが見えない事に気がついた]
……いや、えと。
…………落ちてる?
[落ちるかも、とは思っていた。
けれど、実際に姿が見えないとなると……ちょっと、これは、言葉が無くなる]
あー、もう!
なんでこんな面倒が重なるかなあ!
[取りあえず、管理人や皆に相談すべきか、と。
そう思って踵を返す。
こちら側からできる事は限られているが、何もしないわけにはいかないだろう、と。
そう、思いながら、施設へと戻って]
おっちゃん、おはよー。
起きてるー?
[施設に戻り、隣り合う管理人の私室のドアを叩く。
いつもなら起きている時間のはずだが、何故か返事はなく。
何故か、人の気配もないような気がして]
おっちゃーん?
[首を傾いで、ものは例と扉を開けてみたら、あっさりとそれは開いて]
あれ、いない。
[見やった室内には人の姿はなく。
起き出して何かやってるのか、と思いあちこち一巡りしたものの、姿は見えなくて]
下、かな。
[何か備蓄か道具を取りにいったのかも、と灯り片手に向かったのは地下へ降りる階段。
その扉を開けて、何気なく踏み出した足が、何かを弾いた]
……へ?
[下を見る。
何か溜まっている。
あかいような、くろいような、みずのような、それにしては固いような、ナニか]
…………血?
いや、ちょっと、待て? なんで?
[反射的に足を引いたものの、靴の裏にはしっかり跡がついている。
手にした灯りで照らしてみれば、あかの跡は点々と階段に残っていて]
………………。
[立ち込めるにおいに顔を顰めつつ、そ、と階段を降りて行く。
進んだ先には、毛布の掛けられたナニカが見えた。
端から突き出した足には、見覚えがあり、す、と蒼が細められた]
……なんか、ものすごーく、やな予感しか、しないんだけどー……。
[掠れた声で呟いて、毛布を捲る。
その下にあったのは──倒れた管理人の姿で]
……おっちゃん……。
[ぐ、と。何かがこみ上げてくるのは気合で抑え込んだ。
頭がやたらとくらくらするのは、さて、一体何故なのか──なんて、考える余裕は。
管理人の身に刻まれた跡と、欠落しているものの存在の前に綺麗に消し飛んだ]
……ぁー…………もう、なんだって、コレ。
[気がついた。
思い出した。
『識って』いる。
これが何によってなされたものなのか]
……サイアクでしょ、コレ……なんで、こんなタイミングで揃うワケ?
……ないわー……。
てか、永遠に忘れてた方が絶対平和だったんですけど、俺……。
[一通り、愚痴を連ねた後、一つ深呼吸をする]
ま、『始まっちまう』んなら、腹くくるっきゃないかなぁ。
イタイの、嫌いなんですけどー。
[ぼやくような言葉を連ねた後、管理人の亡骸に毛布を掛け直して、ひとつ、息を吐き]
……せーの、で。
[くるり、踵を返して、走り出す。
階段上の血だまりでちょっと転びかけたが、何とか踏みとどまって]
だんちょーさんっ!
団長さん、起きてるー!
てか、寝てても起きろ!!!
[先ほどまでとは一転、取り乱した様子で団長のいる部屋へと駆けて行く。
大声と、遠慮なく扉を叩く音は施設中に異変を伝えられるだけのもの。*]
[>>32橋を気にするシスターの言葉には少し顔を強張らせる。
古くからある橋だ。
大雪になれば、どうなるかも分からない。]
此処にいれば、安全でしょ?
[仮に、橋が壊れてしまったとしても建物の中にいれば安全だろうと。
備蓄を確認しに行った青年の様子からして、食物が全くないようであるし。
長期間、閉ざされる事になった場合の恐れは抱いていなかった。
幸い、此処には手先の器用な幼馴染もいる。
皆が泊まる部屋を確認しに行く。
女は眠る事が出来れば何処だって良かった。
夫がいないなら、何処だって一緒だ。]
ちょっと、本を借りに行ってくるわ。
[女はそぞろな気を逸らす為の本を求めに図書室へと向かった。*]
/*
ユリアンさん聖痕ですか…!!
PC視点でも一番近しい人だったから疑う必要なくてよかった。
しかしこれはどうなっていくのか…。
……あれ、思ってたより、落ち着いてる。
って、事は…………知ってる?
[もう少し取り乱すか、と思ったのだが、反応はやや薄い]
まさか、意図的に『作った』ワケでもないでしょーに……。
―― 客室 ――
[左肩の違和感も治まり、どうしたものかと考え始めた頃
食事の用意が出来たとアーベルが言いに来たので部屋から顔を出す。]
アーベルさんが作ったの?
相変わらずマメだなー。
ん、冷めないうちに食べるようにする、ありがとう。
[礼を言って一度引っ込みランプの火を消してから、食堂も兼ねる広間へと向かう]
―― 宿泊施設・広間 ――
[そこにはもう先客はいただろうか。
とりあえず空いている席について食事を始める。
テーブルに並ぶ料理は急ごしらえとは思えないほどちゃんとしていて>>35]
あ、おいし。
[などと思わす声に出してしまった。
青年には好き嫌いはない。
過去にはあったが、師匠と婆ちゃんにしっかり矯正させられた。
怒られたわけではない、「嫌い」などといえば婆ちゃんがそれはそれは寂しそうな顔をしたからだ。
あの顔に抗える人がいるなら見てみたい、と思う。
尤も、半分以上は、そうすれば言う事を聞くとわかっての物だったのだけど。]
―― 客室 ――
[食事を終えて、部屋に戻って窓の外を見る]
わっちゃー
これ、本格的に吹雪いてるなぁ……
となると、明日は家の修繕依頼が増えそうな感じか。
[あまり多いと師匠一人では捌ききれない。
昔は自分以外にも弟子はいたけれど、独立して他の村に行ってしまったから。]
なるべく早く帰りたいんだけどなぁ
[数日、といわれたのを思い出して溜め息をつく。
行き先は言ってあるし、この天気なら今日は戻らないとわかるだろうけど]
でも、ま、俺のせいじゃないし
文句はギュンじーさんに言ってもらおう。
[そう決めて、やることもないしと早めにベッドに入る。
枕が替わって眠れなくなるようなガラではなく、あっさりと深い眠りに落ちていった。]
―― 翌朝・客室 ――
[眠りは、誰かの声と足音、そして扉を叩く音で破られた。>>47]
ん……あれ、アーベルさんの声?
なんだろ、随分……っ!?
[慌ててる様子に気付いて起き上がろうとして、左肩に痛みを感じて顔を顰めた。]
なんなんだよー、もー
……わ
[ちらりと服の隙間から覗いた肩の痣は昨日よりも色濃く……まるで]
……母さんのと同じ、花みたいな痣……
[そう意識した途端、つきりとまた痛みが起こった。
「もし母さんが戻らなくてもいい子でいるのよ。
母さんは、いつでもお前の事を愛しているわ」
不意に思い出す、ずっと忘れていた居なくなる前の母親の言葉。]
何で、今思い出したんだろ……変なの。
それより、何があったんだろ?
[ベッドから降りて、髪も撫で付けずに廊下に顔を出す]
アーベルさん、何が……
[聞き終わる前に聞こえてきた言葉>>53
おっちゃん、というのは確か管理人の事のはずで……]
殺されて、た?
なにそれ
[急なことで考えが追いつかない。
ふと見ると別の部屋から顔を見せたゲルダも黙って彼らを見ていた。>>54
ギュンターとアーベルの会話を聞き、立ち去る団長の背を見遣って>>55]
最悪、って?
[などと訊いてみる。橋が落ちた事を、青年はまだ知らない。*]
/*
アーベルの、わかってて知らない振りする変わり身っぷりは
どこぞの村の役者さんを思い出しますね……(うっ、頭が
―図書室―
[女が手にしたのは、古びた絵本だ。
村の中に娯楽は少ない。
文字が読めるようになれば、幼馴染で肩を寄せ合って読んだのを思い出す。
この本の最後のシーン、大団円の中の挿絵には王女様の友人だった動物が欠けていた。
王子様と結ばれる事が話のメインという事もあったのだろうが、いないのは哀しくて。
こうすればもっと素敵になる、と少女だった女は動物達を書き足したのだ。
勿論、親にはこっぴどく叱られて、教会に謝りに行く事になったが。]
…懐かしいなぁ。
[女はそっと絵本を抱き締める。]
…どうして無茶をしたの。
貴方が生きていてくれないと、意味がないのに。
[雪降る夜に無理をしたのが原因だという事だったが、急いで帰る必要はなかった。
一人にさせまいとしてくれたのだろうが、帰らぬ人になってしまった方がずっと辛い。
夫の両親は息子を失った悲しみに耐えかねて彼の姉の元に身を寄せてしまったが、女の両親はこの村の中にいる。
最初は嘆く女を心配し、寄り添ってくれていたが、
つい最近、新しい人を見つけなさい、と言われ、息が止まるかと思った。
『こんなに愛している人を忘れろっていうの。
母さん達には私の気持ちなんて分からないんだ。
出て行って!』
そう追い出して以来、両親とは顔すら合わせないでいる。]
[貸し出しを許可されていたなら、適当な本を見繕い、絵本と一緒に携えて図書室を後にする。
渡り廊下を渡って宿泊施設の方へ戻れば、夕食の時間になったか。
女は話に耳を傾けながら、食事を進める。
昔の女を知っていれば、その姿はとても静かだ。
誰かとの食事は久しぶりだ。
こんな吹雪の夜だからこそ、その事実に安堵していた。
宛がわれた部屋に戻った後には毛布を被って眠ってしまう。]*
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