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[牧師が教会の棺へ収まり、見よう見まねで皆が祈ります。
木こりは祈る役ではないから、代わりに鐘を鳴らしました。]
牧師さんが人狼なら、ドロテアさんが無事なわけねえ。
だったらまだ人狼はいる。
オイラはそれを探して、斧で……。
[去った後の教会で何が起こるかなんて知りません。
老女のくれた知識を元に木こりは夜の村を睨むのです。**]
[ドミニクの姿に、旅人は何を思ったでしょう。]
やれ、やれ。
[ただ何度も土をかけられるからだを見て、小さく肩をすくめるだけです。]
[旅人は右手をくるりと回します。
そこにさっきよりも一回りくらいちっちゃな小鳥が生まれました。
旅人が手をはなしますと、小鳥はぱたぱたと飛んでいきます。
子どもと蛍がいるほうへ、小鳥は*飛んでいきました。*]
……?
[駆けていた子どもが、足を止めました。
追いついた螢火がくるりと回ります。]
だあれ?
[首を傾げて尋ねます。
おおきな瞳が見つめているのは、どこからか飛んできたちっちゃな小鳥。**]
[小鳥はちぃちぃ、ぴぃぴぃと鳴いて、子どもの周りをくるりと一回り。
そうして背中を向けて、またぱたぱたと飛んでいきます。]
[きょとり、とおおきな瞳が瞬きました。
子どもは螢火を見て、それから、小鳥の飛んで行った方を見ます。]
……あっち?
[ちいさな呟き。
そして、子どもはぱたぱたと、小鳥の後を追いかけます。]
[時々くるりと振り返り、追いつかれたらまた進み。
それを何度か繰り返すうちに、小鳥はあの小川のそばまで来ていました。
ちぃ、と一声鳴いて、小鳥はそばの木の上まで飛んでいきます。
そこにはさっきまでとおなじように、旅人が座っていました。]
[ぱたぱたぱたぱた。
足音は、本当はしていないのですけれど。
そんな感じで、子どもは駆けて行きました。]
……?
[たどり着いたのは、小川。
小鳥が飛んでいった先には、座る旅人。]
……だあれ?
[さっきと同じ言葉を、子どもは投げかけます。
側の螢火は、何か言いたそうにきらきら、ふわふわしていました。]
――翌朝・自宅――
[朝になると、狼の耳としっぽは引っ込んで、牙も元通りの歯になりました。
くんくん、おじいさんはごちそうの匂いが残っていないか、丁寧に確かめます。
狼の鼻ではかすかにわかるけれど、人間にはきっとわからないでしょう]
[小鳥を手に止まらせて、旅人は子どもをじっと見ています。]
ルイだ。
[名前をたずねられて、旅人は答えます。
それから、そのそばにふわふわと浮かぶ光を見て、ひとつまばたきをしました。]
さて、今日の獲物はどうしようかのう。
力の強いドミニクか。
ランタンを持った嬢ちゃんか。
頭の回るばあさんか。
[おじいさんのふりをした狼は、散歩の支度を始めました。
今晩の獲物を見定めるように。
そして、誰かが教会から知らせを持ってくるのを、のんびりと待ち続けるのでした]
[じっと見つめてくる旅人の様子に、子どもはこてん、と首を傾げました。
螢火はくるくるくるくる、落ち着きなく子どもの周りを飛んでいます。]
るい。
[教えてもらった名前をちいさく繰り返します。
なんだか知っているような気がして、子どもはきゅ、と眉を寄せました。]
[旅人は木の上からすとんと飛び降りました。
もちろん音はしませんし、足の裏が痛くなったりもしません。
小鳥がとんがりぼうしの上で、ぴぃと鳴きました。]
光。
[旅人は子どもに近付いて、飛び回る蛍を見ました。]
あの花の中にいたものか。
[蛍と子ども、どっちになのかははっきりしませんが、とにかく旅人はたずねました。]
[近づいてくる旅人を、子どもはじいっと見つめます。
知っているような、知らないような。
けれど、哀しかったこととそれに繋がることを自分から切り離している子どもには、はっきりとした事はわかりません。]
お花?
ほたるは、ほたるぶくろにいるんだよ。
[尋ねられた事の意味はわかりませんけれど、子どもは自分の知っていることを答えます。
螢火はきらきらふわふわ。
早くまたたくことで、頷いているみたいです。]
[満腹オオカミ、月夜の下を、尻尾ふりふり歩いていきます。
村を見下ろす丘の上で、木こりはじっと見てました。
岩のように動かずに、尻尾の影を見てました。
大男ののろまな足では、追いかけっこしても敵いません。
どこへ行くのか帰るのか、黙ってじっと見てました。]
[旅人は子どもの答えを聞きました。
うなずくようにまたたく蛍の光を見ました。]
そうか。
[それから、ぼうしを引き下げます。
ぼうしが急に動いたので、小鳥がころりと転げました。]
ならば。
やはり、ドロテア殿か。
[どうして子どもの姿をしているのか、旅人には分かりませんけれど、なんだかため息をつくみたいに、旅人は言いました。]
[夜が明けても尻尾の主は、御隠居の家から出てきません。
朝日に目を細めつつ、木こりはのそりと動きます。
固まった体が、ごきりぼきりと鳴りました。]
……爺さんか。
やっぱ、他所者はいらねえ。
[不寝番した木こりは言って、森外れの小屋に帰ります。
老婆が言うには日中は、狼は人に化けてるのです。
太陽の出てる内に寝て、それから動くつもりでした。]
あ。
[ころりと転げた小鳥に、子どもはびっくりしたような声を上げました。]
……どうして、知ってるの?
[それから、名前を呼ばれてきょとん、とします。
螢火はまた、頷くみたいにきらきらきら。]
[小鳥は地面で羽づくろいをした後、今度は旅人の肩に止まりました。]
覚えていないのか。
[旅人は屈み込んで、子どもとおなじ目線になります。]
生きてる時に、教えてもらったんだ。
木こり ドミニクは、隠居 ベリエス を心の中で指差しました。
[小鳥が旅人の肩に止まる様子に、子どもはほっとしました。
けれど、忘れた事、それそのものを忘れている子どもは、旅人の言葉に不思議そうに瞬きます。]
いきてる時?
いまは、いきていないの?
おばあさまとおんなじなの?
隠居 ベリエスは、木こり ドミニク を力(襲う)の対象に決めました。
そう。
おんなじだ。
[旅人はひとつうなずきます。
黒い目で、子どもの顔を見つめています。]
多分、ドロテア殿も。
[それから続いたのは、さっきよりもいくらか小さい声でした。]
隠居 ベリエスは、おまかせ を力(襲う)の対象に決めました。
おんなじ。
じゃあ、どうして……。
[どうして、お話しできるの、と。
問いかけようとした言葉は、途切れました。]
……わたし、も?
[ちいさな声で言われた言葉。
おおきな瞳がきょとり、と瞬きます。
ふるふる。
それから、子どもは首を左右に振りました。
痛いことなんてないはずなのに、頭が痛くなったみたいでした。
螢火はふわふわ、ふわふわ。
心配そうに飛び回ります。]
/*
と、ところで、
他のお2人引っ込ませてたり、しません か…!
隠れてるなら遠慮なく出てくるといいんだよ![ここで言ってもしかたない]
[ふんわりふわふわ、羊雲。羊飼いは空の上。いろんなことをふわふわと漂いながら見ていました]
ああ、たいへんだ。ベリエスさんも人狼だ!
[ごっくんとドロテアが飲み込まれた時には、それも思い出したのですが、やはり誰にも聞こえぬ声は、なんだかうつろに響きました]
/*
昨日は22時以降に66発言。
それ以前よりも多いから、大丈夫だろうとは思いますが。
……うーん、何かあったんでなければいいけど。
そうだ。
アルベリヒ殿も。
[旅人はひとつうなずいて、羊雲のような羊飼いが浮かぶのを見上げました。]
それからきっと、牧師殿もな。
[今は辺りを見回しても、メルセデスの姿は見つけられませんでしたけれど。]
[旅人につられるように、子どもは上を見ます。]
あるべりひ。
[ふわふわ浮かぶ羊飼い。その名前はよく知っている気がしました。]
……ぼくし……さま?
[ちいさく呟いたら、急にどこかがずきり、としました。
きゅ、ときつく眉が寄ります。]
[村の様子は、ほんの4日前とはまったく違うものでした。
誰も彼もが、相手を人狼ではないかと疑っているのです。
その中でただ一匹本物の狼は、満足そうに頷きます]
そうじゃ、そうじゃ。誰も信用してはならぬのじゃ。
人を喰うやつ、人を裁くやつ。
果たしてどちらの罪が重い?
[狼を退治したら、物語はめでたしめでたしなのでしょうか?
そうでない事を、おじいさんのふりをした狼は知っています]
狼は本当にいなくなったのか?
狼はもう二度と来ないのか?
[ひひひ、ひひひ。狼はひっそりと笑います。それはそれは楽しそうに]
/*
延長、ないんだよねぇ。
意図的襲撃ミスすれば決着を後回しにする事は出来るけど、誰かは処刑されてしまう訳だし。
……いや、実はとっくにわしに票入ってたり。
ベリエス殿が、人狼だって。
[見上げた時にアルベリヒの声が聞こえて、旅人は小さくつぶやきました。
首を振って、もう一度子どもを見ます。]
そうだ。
アナ殿が、牧師殿を。
[子どもが表情を変えるのをじっと見つめながら、旅人は途中でことばを止めます。]
[途中で止まった言葉は、どれだけ聞こえていたのでしょうか。
なんだか物凄くいたくて、子どもはふるふる、ふるふると首を振ります。
螢火は心配そうに周りをくるくる、くるくる。]
……くろいの、きらい。
だから、からす、きらい。
[やがて、こぼれたのはちいさな声。]
黒いお花は……かなしいから。
だから、きらい……なの、に。
なのに、さかせた、の。
みたく、なかったのに。
−−宿−−
[弔いを済ませたゼルマはベリエスがまだ居るのではないかと用心深く裏口からそっと宿屋に入ります。
宿にベリエスが居ないことを確かめると窓を閉め、扉に閂をおろします。]
昨夜はあの人と一緒だったのに、よく食われなかったものだわ。
[くるくる回る蛍とおなじように、小鳥もぱたぱた、子どもの肩に止まって、心配そうにちぃと鳴くのでした。]
かなしい。
どうして、かなしいんだ。
[子どものことばを繰り返して、旅人はたずねます。
真っ黒になった花のことは、小鳥だった時に見ています。]
隠居 ベリエスは、木こり ドミニク を力(襲う)の対象に決めました。
――宿の外――
[おじいさんは、おばあさんの顔を見にいく事に決めました。
扉に閂が掛かっているのに気付くと、どんどんと扉を叩きます]
おうい、ゼルマや。開けておくれ。
またお前さんの飯を食べに来たんじゃあ。
[ご飯なんて、本当はいらないのですけれど]
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