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[確かめる為の尋ねに
女はライヒアルトへと視線戻し頷く]
秘密にしていて、ごめんなさい。
こわくて、言い出せなかったの。
[何がこわいかまでは口にせず
言うべきか否か、少し考えるような間があいて]
ロミ、ベアトリーチェ、ノーラ……
彼女たちは、人狼じゃない。
[生き延びるために。選ばれ紡がれた言葉は疑えない。
微かな不安が兆しても、止めることは出来なかった]
…生きるのよ。
[危うい橋を渡ることは認めても、叶う限りの助けにはなりたい。
そう思いながら小さく小さく囁いた]
……ええ。
こんな生業だし、事故に遭ったり、悪党に襲われたりで
ベッドの上で安らかに死ねない可能性もあるって、理解していた心算なんですけどね。
[どうしてこんなことに。
呟くノーラに弱気な笑みを向ける。
生きて此処を出られても、これまでと同じように
他人に信を置くことはきっと出来ないだろう]
せめて、私たちくらい
お互いを疑わないで済むよう祈りたいです。
……ま、普通に考えれば。
表立つのを躊躇うは、道理、だが。
[見るべきが増えた、と。
そう、思いながら思案を巡らせる。
上げられた中のロミの名に、以前言っていたのはここに関わることか、と。
そんな事を考えるが、針はすぐにどちらかに傾くことはなく。
ゲルダとカルメン、二人の間を視線が行き来した]
[巡る視線は、ふと、赤い髪の友の方へ。
大丈夫>>25、と短く告げた彼女は、『信じたい』と称したものの一人。
媒介の事もあるが、守りの力を向けたのは、信があればこそ]
(……牙からの護りは巡らせられても、人からの護りは……)
[どこまでできるかわからない。
けれど。
少なくとも、自身がそこに刃を向ける事は、考えからは外していた。**]
――…人狼は銀に弱いのよね。
[御伽噺が本当か如何かは知らぬまま
確かめるように言葉を紡いで見遣るはゲルダその人。
けれどブリジットが其処に居る間は動こうとはしない。
子供には、これから自分が為す事を見せたくないと思う]
それもあるけど……
奇異な目でみられるのが、こわかった。
言ってはダメだと、親にも言われてたから。
[ライヒアルトの視線が行き来するのを認めれば
女は少しだけ困ったような表情を浮かべ]
ラーイ。
もう、覚悟、決めたから……
これはやっぱりあなたが持っていて。
[右手に嵌る玉を指から抜き取り彼へと差し出す]
……まあ、それも。
わからなくは、ない。
[奇異な目で、というのは自身にも思い当たる節があるから、滲むのは苦笑。
親に言われた、というのも共通点であり、その点での共感は強い]
……って、覚悟?
[言葉とともに、差し出された玉。
告げられた言葉への戸惑いが先に立った事もあり。
渡されるのを拒否する事は、できなかった。**]
[わからなくはない、との言葉に頷く仕草。
如何してライヒアルトが共感するのか疑問に思わなくもないが
きいてはいけないと何処かで思い尋ねるをしない]
覚悟。
それに、汚したくはないから。
[玉が血に染まる事を懸念していたから
ライヒアルトが其れを受け取ると安堵したよう]
私も、旅暮らしが楽でないことは知っているつもりでしたけれど。
あの人が常には連れ歩こうとしなかった理由を今、痛感させられておりますわ。
[エミリーの弱気な笑みを見て、睫を伏せ哀しげに微笑んだ。
亡夫とは共にある時でなはなくて良かったとも思ってしまいながら]
そうですわね……。
[信じあえたらどんなに良いだろう。
そのためにこの村へ来たはずだったのだ。
祈れば叶うのなら祈りたかった。
祈り方なんて一つも知らなかったけれど**]
未亡人 ノーラが「時間を進める」を選択しました。
[感情的なことは別にして、女がゲルダに信を寄せる理由は一点。
彼女が女を人間だと明言したことだ。
仮に、ゲルダが人狼に内通していたとして
女を陥れるどころか、擁護までする理由はあるだろうか。
ブリジットから内通者――狂人の存在を示唆されたこともあり
考えを廻らせてみたが、納得のいく理由が思い浮かばない]
[ゲルダの無事をノーラのように疑えないのは
そのような前提があるからだが]
……ロミ嬢のことで、絆されたのかもね。
[あのときのゲルダの魂を切るような悲痛な咆哮と
振り絞るように紡がれた後悔の言葉を忘れられぬまま、一人語ちる。
けれど、あれが演技ならば、誰にも人狼を見極めることなど出来はすまい**]
[和らいだ気配は心地良かったが、その言葉は覚悟が突き抜けてしまっているようで不安だった。
けれどもここでカルメンを動揺させたら元も子ももなくなってしまう。漣立つ感情を抑え、じっと動かずにいた*]
― 夜 ―
[鍵を壊している人の姿の金色狼の横で、黒い獣が伏せていた。
通れるだけの隙間が開くのと同時、中へと滑り込んで一直線に目標へと迫る。
口を開くより早く頭全体を前脚で押え込み、その喉に食らいついた]
ウェン
[手招くように尻尾を揺らし、来て、と囁く。
口に広がる甘味に抗いきれず、気道を圧迫するだけでは済まずに肉の味も確かめてしまった]
アァ
[その柔らかさにうっとりとなりながら、刃が振るわれる間、痙攣する子供の頭部をがっちりと押さえ込んでいた**]
[ブリジットが部屋に戻るのを確かめてから
一度部屋に戻り銀製のナイフを部屋から持ち出した。
ゲルダを探し食堂に戻ろうとすると
部屋に戻ろうとしたかゲルダを食堂前の廊下で見つけた]
ゲルダ
[正面から声を掛ける女の手には抜き身の刃が煌く。
それにゲルダが気付かぬはずもなく
警戒されるのも当然のこと。
彼女が声をあげ人を呼んだとしても決意は変わらない]
死んでちょうだい。
あなたはきっと私の大事な人たちを殺してしまう。
だから、私は、あなたを、殺すの。
殺さなきゃ、いけないの。
[思い詰めたような声で語り掛けながら
じわりじわりと距離を詰めてゆく]
[殺さなきゃいけない。
殺したくなんてない。
相反する思いに、躊躇いが生じ刃もつ手が一瞬止まる。
その隙に抵抗する彼女の爪が頬を掠めて
女の頬に薄っすらと赤い線が描かれた]
――…っ、
[頬に生じる熱に微か歪む表情。
女は左の手でゲルダの腕を掴み壁際へと押さえつける]
逃がさない。
抵抗しないで――…
手許がくるえば、痛みが長引くだけ。
[感情の薄い声がゲルダにそう囁く]
人狼は殺さなきゃいけないのでしょう?
[微か首を傾げ深い蒼がゲルダの双眸を見詰める。
彼女の腕を掴んだ手に力が籠もった。
女の力では心臓は狙えない。
だから、命を奪う為に刃を向けるのはその細い首筋]
ごめんね、ゲルダ
[柳眉を寄せて彼女の名を呼んだ。
彼女を殺せばきっと悔い続ける。
それが知れても、彼女を見逃す事は出来ない]
――……!
[再び覚悟を決めて今度は躊躇いなく首筋に宛がわれる銀の刃。
それは宛がうと同時に手前へと引きおろされて
柔らかな彼女の肌を肉を脈を絶つ生々しい感触が利き手に伝う]
[噴き出す血が廊下を赤く赤く染めてゆく。
壁に押さえつけていたゲルダの身体がずる、と床に落ちて
壁に凭れ座るようなかたちのまま、動かなくなる]
……、ぅ。
[赤く染まる銀のナイフと女の利き手。
事切れたゲルダを見詰める蒼が、怯えたように揺れる]
あ、……ぁあ。
[手に残るのは生々しい肉を絶つその感触。
噎せるような血のにおいに込み上げるは吐き気。
カラン、とナイフは血の海が広がる床へと落ちて音が響く]
[ぺたんとその場で座り込み、左の手の甲を口許に宛がう。
ぐ、と呻くような音が咽喉から漏れた。
浅い呼吸を繰り返し、一度目を瞑る。
早鐘を打つ鼓動。
其れは暫くおさまりそうにはなかった]
………。
[動けぬまま、目を開ければゲルダの顔が正面にある。
謝ってもきっと赦されなどしない。
負うた罪の重さに、深い吐息が零れた]
きっと、すぐに私も其方に行くだろうから……
恨み言も、そのときに、聞くわ。
[憔悴した身にゲルダを害した負荷が重く圧し掛かる。
薄れ掛ける意識の中、女は彼女の亡骸に小さく語り掛けた**]
[狼の耳は、カルメンの言葉を聞いていた。
シンが彼女を心配する声も。
彼は、狼は、何も言わない。
彼女へ寄せる信は確かにあったから。
ただ、危なくなったらと。
そう言う彼女へと、静かな琥珀を向けた。
言いたい事はあった。
けれどそれは、心に沈めた]
危なくなるようにするんじゃねぇぞ。
お前なら大丈夫だろうけどな。
神学生 ウェンデルは、交易商 ミリィ を能力(襲う)の対象に選びました。
― 夜 ―
[ぱきりと音を立て、狼の手の下で鍵は壊れた。
入って行く黒い狼。
喉へと噛みつくを眺めながら、
名を呼ぶ声に距離を詰めた。
後ろ手にドアを閉める]
悪いな、ブリジット。
[彼女は己を見ていただろうか。
しかし変化した狼の姿では、誰だかなんて分かるまい。
距離を詰め、前足の爪を振るう。
深く、骨を避け、心臓を取り出す。
痙攣する少女の身体は、やがて動かなくなる。
喉を通る、呼吸も]
俺らが生きる為の、
糧になってくれ
[聞ける筈も無い言葉が囁く。
取り出した心臓は先にシンへと差し出した。
舌で傷口を舐めとり、赤い肉へと牙を立てる。
皮を割き、柔らかな肉を食む。
内臓を引きずり出し、シンと一緒に喰らった後、
ブリジットの頭を見て、狼は顔を寄せた。
ざらりとした舌が彼女の瞼を撫で、
見開かれた目を閉じさせた]
[固い頭部にも牙を立てた。
中身を喰う事は余り無い。
ただ、親しくしていた年下の少女だから、
それを喰らう事にした。
ほんの少し、かじるだけ。
全てが終わると、鼻先で彼女の姿を整える。
シンへと視線を向けた]
行こうか。
[足を舐め、ある程度身を綺麗にしてから、
狼は人の姿に戻った。
部屋を出る時、男はもう振り返らなかった**]
[人狼か人間かが判る。
カルメンの言葉>>20を聞いて、隻暗緑を瞠り、はたりと瞬いた。
問いかけはライヒアルト>>21がしていたから、その返答を待って。
方法と、人狼と口にする相手に対して緩く、隻暗緑を向けた]
……きっと、ってことは、まだ、彼女のことは視てないのね。
[ぽつ、と零す言葉は確認するもので。
それはライヒアルト>>24に返した言葉>>27が答えになった]
[これまでゲルダしか探せる者が居なかったから、彼女がそうなのだと思っていたけれど。
カルメンまでもがそう言い出すのであれば、今まで出された身の潔白は白から灰へと舞い戻る。
そして、ゲルダがあれだけ公言していたにも関わらず、人狼に襲われなかった理由も色濃くなって行った]
ロミは、襲われて。
ベアトリーチェさんは、自衛団に殺されて。
ノーラさんは人狼じゃ、ない。
[挙げられたのはエーリッヒが手にかけようとしていた相手だった。
ゲルダを信じるのであれば、髪の提出を断ったノーラは怪しいと言えるのだ。
髪が無ければゲルダは相手を調べられない。
だから、手にかけることで確かめようと、そう考えていた]
[話が終わればエーリッヒはブリジットの傍へと戻る。
ロミを喪って寂しいと言っていた少女の虚空を少しでも埋めることが出来たなら。
そう考えてのこと。
リスはいつの間にかブリジットの近くに居て、以前貰ったお菓子を強請っているようだった。
それには「止めなさい」とリスに言って、机の上から浚ってポケットへと収めてしまう]
ジティ、そろそろ部屋に戻って休んだ方が良いわ。
眠るまで傍にいてあげるから。
[だいぶ時が経った頃、ブリジットの頭を撫でながら休むように促した。
自分が彼女に出来ることと言ったら限られているから、そう言葉も付け足して。
少女を連れ立って部屋に戻り、しばらくはブリジットの部屋で過ごすこととなる]
[その直ぐ後だった。
事態が動いたのは]
[廊下での声と物音は部屋からは遠い。
余程大きなものでなければ気付くのは難しかったことだろう。
ブリジットと話をしながらその頭を撫でて居た時。
リスが、ポケットの中で大きく威嚇音を奏でた]
パラッシ……?
…ジティ、ちょっと待ってて頂戴。
部屋から出ちゃダメよ。
[リスの異様さはブリジットにも感じられたことだろう。
彼女には部屋を出ないように言い、部屋を出て廊下を食堂の方へと向かう。
その後にブリジットが続いてきたとしても、確かめようとする気持ちが強くて直ぐには気づくことが出来なかった]
[ポケットのリスが「ギー!ギー!」と煩い。
揺れる隻暗緑で事切れたゲルダを見詰めていたが、それは直ぐに床に座り込むカルメンへと向いた]
カル。カル。
大丈夫? 怪我、は。
[その時まだ意識はあっただろうか。
返る声があろうが無かろうが、その肩を支えて。
意識が無い場合は抱えてカルメンの部屋へと運ぶことになる]
[カルメンがゲルダに手を下したことに対して、彼女に疑問は投げかけない。
呼ばれたその時に仄めかすような言葉は聞いていたから。
ゲルダが死んで、この先どうなるのか、なんてことも考えない。
どうにかするしかないのだから]
[死の事実、喪失の事実だけを受け止めて、それを踏まえて先へ進む。
他者の死に対しては騒ぎ立てない。
誰かが死ぬ覚悟はしていたのだから。
だからゲルダの死も、死んでしまったという事実だけを受け止めて冷静に居られたのだけれど]
[翌朝目の当たりにした光景は、それを容易く破るのに十分足るもの*だった*]
[アーベルが何か疑問を覚えたとして、今の男は答える心算が無い様だった。
はぐらかすような言葉を選ぶ。
夜、部屋に戻るのは早かった。
ちゃんと寝てない分疲れた、と。
そう言って、先に戻り。
持ち込んだ本を開いた。
明かりは漏れていただろうけれど、気にしない。
誰か来るなら来るで別に問題もなかった。
手書きの文字が続く。
誰かの日記のようなもの。
一番近い日付、後ろのページには、男自身の手で文字が付け加えられている。
一年と少し前。
『アイツが死んだ』]
[学校で出会った狼だった。
寮は違う部屋で、声だけのやり取りだった。
シンのようではなく、己のようなものだった。
即ち、死を前に覚醒した狼。
ウェンデルは人を喰らう事を、すぐに受け入れた。
喰ってしまった後、他の人狼と出会ったのも大きかっただろう。
気が狂う前に喰らう事、
人に気付かれぬ様にする事。
すべて、実践した。
人を殺める事を、諦念でもって受け入れた]
[彼は違った。
人を喰らう事を受け入れられず、飢餓に苦しんでいた。
人間を喰いたく無いと
彼は声を伝えた。
ウェンデルはそれを止めた。
けれど彼は、人を喰らわず、だんだんと狂気に落ちていった]
[泣き笑いのような声が届いたのは、その日の夜の事だった。
自分の周りから人を遠ざけていると言っていた彼が、
その頃、漸く気心を許せる友人を見つけ、喜んでいた。
彼は、その友人に、己の種族を伝えたと言う。
人を食いたくないのだと。
友人はそれを受け入れた。
二人で、人間に戻る方法を探している様だった]
[ウェンデルには答えられなかった。
其処に人を喰わなくても生きられるかもと、希望を抱き始めていた。
それが潰えたのを知った。
顔が見えないのを良い事に、声を伝える]
――生きろよ、お前。
[彼は笑った。
笑って伝えた]
『なぁ、お前には言ってなかったけどさ。
本当は、人狼が、人間に戻る方法なんて、無いんだ。
俺もお前も、狂って死ぬのが定めだった。
こんな呪いなんだよ。
お前みたいに、生きたかった』
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