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そーなんだ。
ウチの兄貴とか、行方不明になってもいつもの事で流されるからなぁ……。
[それは気質を承知されているからです]
……るっせぇなあ……しっかたねぇだろ、そーゆーモンなんだからっ!
[揶揄の口調にはむくれて返し。
続いた言葉に、きょとん]
……ナニソレ?
んじゃ、どやって生きてんの?
[呟きはなく、そのまま台所に戻り、それを下げる。
俯いた口唇が幾つか音を作り出したけれど、それは洗う音に掻き消えた。]
ふうん。
[おそらくは、知らなかった事を一つ知ってしまった為か。
言葉にはそれだけ返す。
感情はそこにはない。
いや、あるが、隠した。
それ以上は、今は語らず。
探った内容、その結果も。今は、黙す。]
[それは軽い呪文。
呪文というよりも、感情をひたかくしにするために、ずっと親に囁かれていたこと。]
[嘘をつくのは、慣れているのだ。ずっと、ずっと]
[螢火の丘のようと言うエレオノーレの言葉には頷いたけれど、続いた言葉に青年の眼差しにどこか哀しそうな色が過ぎった。謝意に力なく首を振り、小さく溜息を零す]
いえ、お気になさらずに。
けれど私は…貴女が自由であればよいのにと、そう思います。
[哀れみではなく、ただ哀しそうな色で変わらぬ笑みを見る。
そうして眼差しを伏せた会釈を向け、踵を返した]
[それから台所で湯を沸かし、紅茶を作る。
温かいようにしておいて。]
―東殿:台所→廊下―
さっき音を聞いたのはこのへんでしたっけ。
[水温が聞こえるかと、耳を澄ませた。]
[一等大きな弾く音。仔はようやく気付いたか驚愕にか小さく眼を瞬いた。
きょろりと音の出所を探るように周囲を見渡して、内に一点へと視点が定まる。
嗚呼、この時漸くにして氷竜殿の存在に気付いたようであった。
さて氷竜殿はといえば、仔へと笑み掛ける様子を見るに
此方に気付いたのは一目瞭然であった。やはり作業の妨害をしたに違いなかろう――申し訳ない事をした。後に確りと言い含めておかねばならぬ。]
…。
[一度、慣れぬ者への躊躇いにか左へと首を傾いだが、
昨夜影と話す姿を思い出してか無言のままはたと駆け寄った。
点々と仔竜の踏みしめた跡には、芝が一寸に伸び枯れる。]
…? いたそう?
だいじょうぶ?
[赤い掌へと眼を留めたか、短な問い。]
むしろお前んとこの兄さん王がずっと城にいたら大問題な気もするんだが。
[さくっと言いつつ、むくれるティルにはおおいに笑う。]
うははは。むなやけすんなよ。
さてどうやってだろうな?
『気がついたら生きている』…終始そんな感じだわ。
[己の意図とは関係なしに癒える体。
死ぬことのない体は、飢えすら勝手に満たしてゆく。
ともすれば不死に近いこの体を、クレメンスは少し持て余していたのだが。
そんな思いはおくびにも出さずに、片目をつぶって、軽く返すのだが。]
―― 竜皇殿・西殿近く ――
[ちょっと煤けた顔のまま、とっとこと、と駆けてくる]
うーわー、強化されちゃってるよ。
[それが内側から、あれやこれやの事情で為された事とはまだ知らず、あんぐりと口を開けて眺める]
ありがとうございます、……アーベル殿。
[ 黒の瞳は感情の色を映して、応じるように笑みも少しばかり形を変えたようだ。口真似の、此度は感謝を告げ、座った侭なれど会釈を返してその後ろ姿を見送る。
彼が去って間もなく、複数の力ある気配が竜皇殿の敷地内に至るのを感じ取り、漸く腰を上げた。]
…ダーヴィット、お前食い物に釣られて揺らされるなよ…?
[哀れんだ目に、逆に遠い目を返してやった。
一 番 物 欲 見えてるのはお前だ!
とは目が語っていた。]
―西殿・結界前―
[幼き翠樹の仔も、ブリジットに気付いたようで。
はたはたと駆け寄る姿を見て、自然と柔和な笑みとなる]
こんにちは、翠樹のお姫様。
[屈んで、にこりと微笑んだ。
先に彼女の口から出たのは、己の手を心配する声で]
あらあら。見つかっちゃったわね。
大丈夫よ、これくらい。へいきへいき。ありがとうね?
[心配してくれている幼き樹竜へと、穏やかに答えた]
―――ああ。そうですわぁ。
「揺らすもの」
確か、そのような存在の干渉とか、誰か言ってましたわねぃ。
[ざぱりと、あぐらをかく格好で、座りなおした]
干渉され、何かを為そうとするならば、ここにある何かが目的。ということですわねぃ。
ここにあるもの。
それが何か分かるのなら、我らも何をすべきか、ということが分かるかしらぁ。
…驚きました。
最初から気だけで身体を維持できる方がいらっしゃるとは。
[古代種とはいえ、そうも違うものなのか。
今でも彼女は取り入れに間に合わぬ分を食事の形で摂っている]
…ダーヴィッド様などには、絶望的な世界となりましょうね。
[軽口というよりは、思わずというようにそう呟いてた]
――そういえば、ギュンターさんの姿はありませんね。
どこに行ったのでしょう。
[少し困ったように、そう告げた。
そのこえは、今までとは違い、軽い調子。]
…いやまぁ、それとこれとはまた別腹?
[食べかけだった林檎を齧りながら命竜の視線に肩を竦める。
…まぁ、欲求にはとてもとても素直ではあるのは否定できない。]
干渉された者に、か?
もしそうなのであれば、誰であるか特定出来そうなものだが…。
[ティルの言葉に、ふむ、と声を漏らし、顎鬚を右手で撫でる。
ティル達三者の間でなされる食の話には、耳を傾けるだけで、元気じゃのぅ、とのほほん気味]
ま、そーとも言うけど。
[留まらず、駆け巡る事で循環を生み出す疾風。
それが一箇所に留まる事が好影響を与える事はなく。
……故に、現状は心配極まりないのだが]
『気がついたら生きてる』、かあ。
なんかよくわかんねぇけど、たいへんそー。
[軽い言葉の真意など、気づく由もなく。
返す言葉は、どこか人事めいたもの]
―東殿:浴室前廊下―
失礼します。
何かお食べになるようでしたら、お頼みしておきますけれど。
どうなさいますか?
[誰かはわからず、ただ言葉を投げる。]
……あらぁ?
[考え事に終始していて、何者かが浴室の外にいる気配にやっと気づいた]
誰かそこにいるのかしらぁ?
[ちゃぷんと、上半身を浴槽から乗り出して、外へと問いかけの言葉を発した]
[ザムエルの言葉に、むう、と小さく唸り]
んー、オレ、元々そういうのに向いてないし。
今は、なんか色々と『拾えてる』けど。
相手が隠してるなら……って、まあ、ふつーに考えても隠してんだろうけど、それだとちょっとわっかんねぇかなあ。
[というか、もし特定できたらとっくにしばきにいってます]
[ 入り口の方まで寄った所で、見た目も属性も多様な集団の姿が見えた。火炎、天聖、精神、相反する大地と疾風までもが共に在る。竜王達よりも余程纏まって見えるというのは、如何なものであろうか。
まだ幾分遠き者達の進路の先に佇み、宮殿の召使にも似た態で、迎えるように影は頭を垂れた。]
御師様でも、ですか?
[きょとり、となった。表で衝撃を受けているからか、仔竜の頃のように感情が素直に浮かんでは消える]
ええ、クレメンス様は何と申しましょうか…掴み所が無い?
終始そんな印象をお受けします。
警戒は忘れないよう心掛けます。
目に付きにくい形ですね。
本来の姿形とは異なっているとはいえ、剣の形では万一目についた時にも予想されやすいでしょうか。
[とはいえ、今ここで形を変えて欲しいと頼むわけにも行かない。手を触れはせずに、暫し考える]
?
よく聞こえないわぁ?
[ざぱりと浴槽からあがり、何も身につけない全裸の姿のまま、廊下へ通じる扉をがらり]
あらぁ。
オトフリートじゃなぁい。
それで、何の御用でしたの?
[上の立派なふくらみと、下の立派なものをさらしたまま、羞恥心などどこに捨ててきたのやらという感じで、普通にたずねた]
―西殿・結界横―
[遠目に氷破竜の姿を見つけたものの声はかけず、翠樹の仔竜が駆け寄る姿に口元に笑みを浮かべながら離れた位置で結界に近づいた。
青年はまだ結界に触れては居なかった為、少し試してみるつもりで広口の袖から覗く指先を伸ばす]
………。
[『混沌』を司る青年は溜息を一つ零して手を下ろした。もし気付いたものが居るなら、首を振る仕草が見えただろう]
『拾えてる』か。
受動的なものと言うことかのぅ。
ダーヴィッドのように能動的に探すことは出来そうにも無いと言う事かの。
[分かっていたら、この子のことだし直ぐに捕まえて行っているか、と思い当たったのは少し後のこと]
こん、にちは。
[眼の高さが、彼の竜と等しくなる。
幼竜は真直ぐに相手の眼を捕らえながら挨拶を返した。
――父に促されなければ言すら発さなかった事を考えれば進歩か。
…王は、成長を喜ぶか、それとも子煩悩に他の者に懐く事を嘆くか判らぬが。
後者で無きことを願いたい限りだ。]
「氷竜殿、探査の邪魔を――申し訳有りません。」
[四方や妨害した可能性など仔竜には思い当たる筈も無く、
代わりにと言うには失礼だが、陳謝の言葉を述べる。
この事態を考えるなれば、そのような陳腐な言葉で済む事ではなかろうが]
へいき?
でも、いたかったらいわなきゃダメなんだよ?
ととさまが、いってた。
[唐突に扉が開いて出てきた姿は――]
え。
[見る心算なんて もちろんなかった。
けれど、さすがにこの唐突さには、目を閉じるだけの隙もなかった。]
[つまりばっちりみてしまったわけで。
その瞬間、かぁっと血が上った。]
せめて隠してください…!!
[慌てて、後ろを向いた。問いに答えてなどいない。]
―― 竜皇殿・結界傍 ――
[ぽてぽてと、結界の回りを一巡りするように歩いていると、行く手に氷破竜と小さな翠樹の仔の姿を見つけた]
あれえ、ブリジットさん、まだここを調べていたんですか?
おや、ノーラ殿。
[先に見えるは此度の随行者の一人。頭を垂れる様子はまるで出迎えに来たようにも見えたが]
わざわざ出迎えに来た、と言うわけでも無かろうかの。
どこかにお出でかな?
[歩む先近付いてから挨拶と共に声をかけた]
あ、エレノオーレさんだっけ?
[宮殿の入り口まで近づいたところで見かけた姿に、
どうも、とぺこりと会釈して。]
そっちは…何か変わったこととかはありました?
あらぁ。
いいじゃない。
生まれてきたものは、最初は全て裸だったのよ?
それに隠すってどちらを?
女性としてのほう?男性としてのほう?
[こういうとき、両性であるということはややこしい]
[用事を片付けていない――といっても尋ねるだけだったのだが――ので、なんとか逃げずに留まったのは、己の忍耐力を褒めればいいのか、それとも嘆けばいいのか。
そんなこと、今は考えていないが。]
ああ、連絡に関しては。
…多分何とかなるだろ。
[早く戻ってくれば問題ないかとか思ってはきっと、ないはず。
エルザにそう言いながら、ようやく竜皇殿にはたどり着いた。]
そうだなぁ、俺もびっくりだ。
[エルザにもティルにも、へらりと笑って返す。
実の所、自分の産まれ、もとい『始まり』は、所特殊なものがあったのだが。
それを知るのはおそらく命竜王のみ。]
んー、火炎の兄さんのとは違うっぽい。
自分でもよくわかんないし、後で、ねーさんにも聞いてみるよ。
こういうの、母さんが得意だったっぽいしね。
[ザムエルに返して。
影竜の姿が見えたなら、やー、と言いつつ手を振った]
ふふ、良いお返事です。
[返された挨拶に微笑んだ所で、彼女とはまた別の声が聞こえてくる。
黄蛇の姿を確認すれば、あらあらと]
ご挨拶が遅れてしまいました。
氷破が一人、ブリジットと申します。
全然邪魔になんて、なっていませんよ。
[声の主へと、ゆるりと首を振るった。
その後のベアトリーチェの言葉には、また笑みを浮かべて]
大丈夫ですよ。痛かったら、命の竜さんに診てもらいますから。
[そういって優しく髪を撫でると、微かに新緑の心地よいにおいが薫った気がした]
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