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……あー。
[納得した様子で、手を、ぽん。]
[それから近付いてきたミリィを見て、少し首を捻った。]
んんん?
うん、頼まれごとだね。
[名前を思い出せずに、なかったことにした。]
はしごとか、いらないよ。
籠はきっと、エーリ君が持ってる。
ちゃんと、高い場所だね。わかった。
[猫と鳥との攻防に、青い目が向く。]
[きょとんとした。]
……なかよし?
じゃないみたいだね。
ええと、診療所の人だ。
前に、会っていたっけ? さすがに前すぎるかな。
あ、でもとりあえず早くしないと、ずっと待っててくれないかもだから、いってくるよ。
ちゃんと林檎とってくるから安心してね。
おや、娘ッ子と宿…アーベルはまだ知り合いじゃなかったっけねェ。坊がてっきり紹介してると思ったんだが。
[首を捻る様子に助け舟を出すが、名前を言ってないので意味は無い。薬草の売買的な意味での言葉がどう受け止められるかは知らないが、とりあえず自己紹介すればと目で促す]
そうかい、そりゃ身軽でいいねェ。
じゃが天辺は鳥達の分だから残してやるんだよ。
お目当てのペンの値段がどれ程かは知らないが文句言われないだけの量を期待しとくさね。
お買い物と……頼み事、ですかぁ。
[きょと、と紅の瞳が瞬く。
視線は自然、老婆と語らう青の髪の青年へ]
はい、診療所の人ですよ?
前に……ですかぁ?
[問われた言葉に、きょとり、と瞬く。
さすがにというか、とっさには思い出せないらしい]
[薄茶色の動きに、白の動きがぴたり、と止まった。
ぴぃぃぃぃ、という甲高い声と共に、白の翼が羽ばたき]
……ひゃうっ!?
[舞い上がる白、跳んで来る薄茶色。
その入れ代わりに、思わず裏返った声を上げて座り込んだ]
エーリ君はそんなに、ええと、生真面目じゃないよ。
[ちょっと違った気がしたが、良いことにした。]
わかった。
鳥が食べるためだね。
[それからミリィににこりと笑って]
気のせいかもしれないし、ちゃんと覚えてるわけじゃないから。
それじゃあ、いってきます。
ひゅんじー、ほーは、いはいです。
[その頃、話題の当人は頬を引っ張られていた。
ようやっと解放されて赤くなった頬を押さえる]
そういうのは、女の子がやると可愛いと思うんだ……
拳骨よりマシだけど。ギュンター爺の鉄拳痛すぎる。
え? いや、ないない。
じっちゃいなくなったからって女の子連れ込む程がっついてない、ない。
あの、青いの? あれは連れ込んだわけじゃなくて宿貸しただけ。
……なんの心配してるんだ。
[恐らくは後継者の心配ではあるのだろうけど、思わず半眼になる]
仲良しになりたきゃ、それ相応の――…ツィムト!
[微妙な誤解は青い目の向いた方を追って理解に達した。
飼い主の叱咤に空中で明らかに『チッ』みたいな目をして猫が身を翻す。
だが、それより早く飛び立った鳥と座り込んだ娘に、後足の爪がお下げを掠めた]
…ありゃまぁ。猫も坊も仕様が無いねェ。
それじゃァよろしく頼んだよ。
[森へ向かうアーベルに手を振り、やれやれと肩を竦めて嘆息]
そりゃ、じっちゃには及ばないけどさ。
育てられた恩くらいは、きちんと返すよ。
[押しつけられたリュックを受け取り、跡取りの未熟さを心配する老爺に応じる。青年の物言いにまだ言い足りないことはあったようだが、仕事に戻ると去っていく後姿を見送った]
[来たときと同じよう、そこらの人に挨拶しながら]
―森近辺―
[近付いてきた森に、目を細めた。]
[おじいさんがどこかへ行く。頭を下げた。]
[まさか噂されていたなんて気付くわけもなく、その先に金の頭を見つける。]
あ、エーリ君、丁度良いところにいたね。
籠貸して?
林檎とってくる。
[森へ向かう青年に返事をする余裕は、当然の如くなく]
……はぅぅ……猫さん、痛いですってばぁ。
[じたばたする薄茶色への不平申し立ての方が重要事項らしい。
白の鳥はちょっと高い所を落ち着きなく旋回しつつ、ぴぃぴぃ、と鳴いている]
丁度良いところにいたのか、俺は。
[先の話題に出たばかりの青い髪を見下ろす。体重の割には背丈のある青年は、ひょろりとした印象を他者に与える]
林檎? ……なんで、また。
籠は小屋にあるけど。
[少し身体を傾けるのは、右腕を隠すため]
うん、丁度良い。探さなくて良かったし。
林檎は、エーリ君がヨハナおばあちゃんに頼んだんだろう?
材料は取ってくることになったんだ。
その代わり、エーリ君は、ペン買って頂戴。
[右腕をあえて隠すような動きに、首を傾げた。]
エーリ君、何かあったの?
こら、そんなに暴れるんじゃないよ。
ツィムト(シナモン)たっぷりのシュトゥルーデルにされたいかい?
[ぴたりと動きの止まった猫を片手でむんずと掴み、反対の手で絡んだ爪を解く]
すまなかったねェ、ちゃんと餌はやってるんじゃが。
お前さんにもお裾分けするから勘弁しとくれ。
そりゃ、頼みはしたけど。
ペンくらい、家にあるのに。
[なんでもない、と左手を振ろうにも、袋とリュックを手にしていては出来ず、右手は動かせない]
……説教しなかったら素直に言う。
[大分、懲り懲りらしい]
[爪が解かれると、ほっと一息。
白の鳥も、猫が離れたのを見計らって、ふわりと定位置に戻ってきた]
はあ……びっくりしたのです。
猫さんは、大丈夫ですかぁ?
[擦り寄る鳥を撫でてやりつつ、問いかけて。
お裾分け、という言葉に、目がきらきらしたのは、傍目にもわかる。きっとはっきりわかる]
ほんとですかぁっ!?
[声のトーンもきっちり弾んでいた。
自分でも料理や菓子作りはするけれど、やはり、年季の違いは大きいというのはある訳で]
ダメ、あれがいい。
綺麗なね、石がついてるんだ。
……説教されるようなことをしたエーリ君が悪いと思うよ。
されたくないなら、しないから、何やったの? 手、出して?
なんだ、その拘り。
うちは貧乏なんだから余分なお金はありません。
それなら自分で採る。
[あまり現金の遣り取りはしないため、それは事実ではあるのだが、駄々っ子に言い聞かせる親のような態があった]
……研究のためには仕方ないのに。
ちょっと怪我しただけだ、手当ては済ませたから平気。
なァに、どっこもぶつけてやしないんだ。大丈夫さね。
[鳥を撫でる仕草を見て、皺の寄った手も猫を撫でる。頭を包むようにグリグリやるのは、お仕置きだから仕方ない]
嘘なんざ言いやしないよ。
さすがに今日作れってのは無理だがねェ。
それじゃァ、あたしゃ買い物の続きに戻るさね。
先生が居ないんだから戸締りにゃァ気をつけるんだよ。
[どうも頼りなく見える若い娘へ一応の忠告をして、猫を片手に歩き出した*]
そんなに高くないよ、エーリ君。
ダメ、だめだめ。
取るように頼まれたの、おれだから。
おれがもらえなくなっちゃうし。
[小屋へ向かう後をついてゆく。]
仕方ないからって、怪我したらダメだよ。
みんな心配するよ。
……本当に手当てしたの? したならなんで隠してるの?
[猫は大丈夫、との言葉にほっとしたよに息を吐き]
あ、はい、わかってます、ちゃんと待つのですっ!
[にこにこしながらこくこくこく、と頷いた。
それから、はた、と周囲の視線に気付いて立ち上がり]
……戸締り。
御師匠様がいなくても、大丈夫だと思うのですけど……。
[最後に向けられた言葉に、小さく呟く。
その根拠は箒のブルーメなのだが、それ以前に色々と自覚が欠けているのかも知れない]
さぁて、と。
ボクたちも行きましょうか、リーリエ?
[ともあれ、ぱたぱたと土埃を払い落とした後、*のんびりと歩き出し*]
[気付くのは、遅れた。
触れた瞬間に動きは止まり、赤い染みの残る袖と、破れた隙間から覗く包帯は容易に見て取れる]
あー、ったく、したって。本当に。
[元々は隠そうとしたのが悪い、と理解はしているが。嘆息]
……いたそう。
[じーっと、その包帯を眺めて、ぽつり。]
ちゃんと、全部治してもらったんじゃないの?
そんなに血がいっぱいで。
じゃあ、エーリ君。
治してあげるから、あのペン買って。
そう簡単には治らないものだから、仕方ない。
[呟くさまに言いやって、再び歩み出す。
申し出には、一度、緑の瞳を瞬かせてアーベルを見たものの]
……お断り。
[きっぱり言い切った。
滴を零す草を踏みしめて歩み小屋まで辿り着くと、右手を些か乱雑に動かして扉を開き、中へと入る]
なおるのに。
なおせるのに。
[中に入るので追いかけて]
エーリ君の意地悪。
でも怪我は治す。それは絶対。
あ、診療所の人には内緒だよ。面倒だから。
それで、もしお礼がしたくなったら、買って?
お前が林檎採りに行くのは別に構わないし、ペン買うのも考えないことはないけど、それはお断り。
[互いの主張はちっとも噛み合わない]
籠はあっちの棚。
俺は寝なおします。
ということで、お疲れ様。
[一方的に会話を打ち切って、奥へと引っ込んだ。
荷物を片した後は着替えもせずに寝台に潜り込み、何を言っても*狸寝入り*]
何でいやな――
ああ、もう。エーリ君の馬鹿。
[籠のありかをちゃんと見てから、メモ帳を取り出して、ペンを取る。]
[くるり、一つ円]
[それから少しの間ペンを動かして、狸寝入り中のエーリッヒのそばへ。]
痛いのが好きとか、マゾなんじゃないの?
[反応しても、止めてやらない、なんて。]
おれが痛そうだからいやなの。
そういうわけで。
[メモ帳を千切って、握りつぶす。]
[呟く言葉は、聞きなれない言語。]
[妖精の勉強をしている彼なら、それが妖精へと語りかける言葉だと理解したかもしれないけれど。]
―― 。
[ふわりと温かい光が、紙を握った手から、エーリッヒの手の怪我へと移り、癒してゆく。]
ばーか。
林檎取ってくるけど、ヨハナおばあちゃんには、エーリ君の要らないって言っておくね。
あと村の人が食材持ってくるから、おいといてね。シチュー作るから。
で、これもあげる。
[くっちゃになったメモ帳の中に、文字がなんにもないなんて、言わずに放ってさっさと籠を持って小屋を出た。]
[エーリッヒが何か言ってたとしても、そんなのは知ったことじゃない**]
バターはそんなもんだねェ。あといつものミルクもなァ。
それじゃァ、後で届けに来とくれ。
なァに留守でもいつもの窓なら開いてるさね。
[バターとミルクの宅配を頼み、クリームのお零れに与った御満悦の猫を一瞥。妖精の為に夜、皿に一杯のミルクを置く窓辺は常に鍵が開けっ放しなのは知る人は知っている]
…くく、あたしゃ妖精でも猫でもいいんだよゥ。文句あるならとっくにツィムトの髭はちょん切られてるだろうしねェ。
子供の頃からの習慣なんだ。こんな村だし死ぬまで続けるさね。
[どこぞで妖精の魔法が使われたなんて知らないが、皿のミルクの行方話に笑って猫を伴い店を出る。ぴんと立った猫の尻尾が店の主人に振られ、扉の間をするりと抜けた*]
[皺の寄った紙が枕元に落ちる。
気配が遠ざかってから、薄らと目を開いた。身を起こして腕の包帯を解くと、皮を割く痛みが僅かに走る]
……力の使い方くらいきちんと学べと。
[妖精は気まぐれだ。
先に受けたまじないと、結果として重ねられた魔法は、若干ながら反発を起こす。
説明を怠った自分の所為でもあったし、厭ったのはそれだけの理由でもないが。無理に止めなかったのは、相手も自分も子供っぽかったからだ]
まあ……、仕方ないか。
寝よ。
[癒しのために活性化させられた身体が熱を持つのが分かる。置き去りの紙は卓上に乗せて、一応包帯を巻き直し、今度は着替えをしてから布団に潜る。
人が来れば起きはするつもりだが、今は一時、*微睡みに浸ることにした*]
―森・林檎の木―
エーリ君の馬ー鹿。
嫌ならいやで怪我しないようにすればいいのに、出来ないんだから悪いんだ。
しかたないない。
[林檎の木を見上げ、んんっと唸った。]
何個取っていこう。
多めに取ってけばいいかな。たくさん食べたいし。
……ごめんね。
[樹に触れて、またメモ帳を取り出す。]
[やがて一枚、メモの切れ端と引き換えに、籠の中は林檎がたくさん。]
[他に違うのは、髪に隠れた耳にあったはずの、二つのピアスがなくなっていること**]
6人目、職人見習い ユリアン がやってきました。
職人見習い ユリアンは、霊能者 を希望しました(他の人には見えません)。
―通り―
[祭りは終わり、人もまばらとなった村の一角。
綺羅綺羅と澄んだ音を立てる硝子の飾り。
売れ残りのその音を聞きながら、店の前、目を閉じて佇む。
その口から微かに零れる旋律は、他の耳に届くか否か。
尤も彼自身、他人に聴かせる気はなかったが]
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