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[恨みがましい声に、再び重ねられそうになる、小言。
これ以上ここにいると、楽団の稽古場に強引に連れ戻される、というのは、本能が察知させた]
あ、と、俺、これの落とし主探さないとなんないからっ。
んじゃ、そーゆー事でっ!
[先ほど掴んだ帽子をひらり、と見せ、何か言われるより先に走り出す。
屋根の端に止まっていた隼も翼を広げてついてきた。
背後に小言の続きを聞きつつ、人ごみに紛れるようにとかけた先は、大通り方面]
─ →大通り─
― 広場・露店 ―
みんな、お財布の紐が固いよ。
お祭りなんだよ。パーっと使っちゃえばいいのに。
[朝に店を広げた時とほとんど変わらぬ商品の山の中心、両腕を伸ばして大きく息を吸いこむと、嗅ぎ慣れた花の香り。気持ち良さそうに笑みを零した後、心機一転、目を凝らしてターゲットを探しはじめる]
─大通り─
現在地は、っと…。
[案内板の目の前]
[観光客も多いその中で異色の雰囲気を放ちながら案内板を隻眸で見やる]
[振り撒く手巻きタバコの薫りに眉を顰める観光客も多かったろうか]
……詰所は反対側らしいな。
まぁ良い、場所さえ分かればいつでも行ける。
[街の地図を頭に叩き込み、隻眸を案内板に向けたまま踵を返そうとする]
[人混みを駆けて来る誰かに気付くのは数瞬の後]
[相手が気付かなければぶつかりかける位置に居るか]
―広場:露店近く―
[真っ黒に汚れた姿のまま、広場の露店を見て回る。
と、そこに見たことのある姿を見つけて。
小さく声を上げた。]
あっ!
ベッティ?!
[行儀悪く、指を指す。]
─大通り─
どーにか、まけた、かな?
[背後の威圧感がなくなった所で小さく呟き、ちら、と後ろを振り返る。
意識が後ろにそれていれば、当然の如く前は疎かになるもので]
……っと、わっ!?
[前に向き直ったなら、わりと至近距離に人の姿。
慌てて足を止めるも、急制動にバランスが崩れかけ──]
[お客になりそうな人を探していると、名前を呼ぶ声に振り返った。目に飛び込んできたのは真っ黒に煤けた姿]
うひゃあ!
……だっ、誰よ誰よ?
[店に座ったまま、胡散臭そうに声の主の顔を覗くように見やる]
― 広場・露店 ―
わー! 久しぶりっ!
オレオレ、カヤだよ! 忘れるとか酷ぇ!
[真っ黒な姿のまま店に両手を着いて、乗り出す。
べたり、手形スタンプ。]
さて。
そろそろ宿舎に……?
[噴水から視線を外し立ち上がり、ふと瞬く]
何だろう、あれは。
…人?
[遠目に映したのは、真黒にも程がある、広場には異様な色彩。
その姿が露店の一つで立ち止まるのを見て、どうやら興味を引かれたらしい彼はそちらへと足を進めた]
─大通り─
[右側は死角、そちらからの視覚情報は全く無い]
[はずなのだが]
………!
[僅かな風の動き、そして上げられた声に右手がポケットから滑り出た]
[滑り出た右手が伸ばされたのは──]
[わしゃり]
[ぶつかりそうになった人物の頭]
[広げた右手が相手の頭を鷲掴む形に]
カヤ……?カヤ……
[手を顎に当てて、悩める顔]
なんだ、カヤかー。伝説の黒い人かと思ったよ。
……きゃー、手っ、手っ!そこで止まってー動かないでー!
[黒い紅葉模様が目に入ると、思わず悲鳴をあげて立ち上がった]
……あっぶね……。
[どうにか転ぶのも、再度帽子を飛ばすのも免れて、ほっと一息。
なんて、悠長に構えている場合ではなかった。
らしい]
……はい?
[不意に頭上にさす陰り。一体なんだ、と思うのと、頭が掴まれるのとは、ほぼ、同時]
って、ちょっ!?
何すんだよ、いきなりっ!
[状況が全くわからない事もあり、上げた声は、僅か、上ずっていた]
[右半身の状態から顔だけを右へと向ける]
……何だ、ライヒと話してたガキか。
[見覚えだけある姿に紫煙交じりにそんなことをぽつり]
何かがぶつかりそうになったんでな。
つい手が出た。
[悪びれも無くそんなことを言う]
― 広場・露店 ―
あ、あーー。
うんちょっと今日仕事とヘマとしちゃってさァ、
ごめんごめーん!
[ケラケラと笑いながら、黒い手で頬を掻けば
更に黒は伸びる。
立ち上がる相手にもにこにこの笑顔を向けてから
ふと横を向き、向こうに見える影に、固まった。]
…ぅぇ…
つい手が、ってそういう問題かよっ!
[悪びれた様子もない言葉に、大声を上げつつじたばたする。
やや勢いが弱いのは先ほどの自衛団長との遭遇のせいか、それとも漂う紫煙のせいか]
仕事帰りなんだ。
もう……顔くらい洗ってから来なよ。
[伸びた黒に溜息をついて、商品を拭くための布を桶の水に浸してから絞り、カヤに向かって放り投げ]
カヤ、どしたの?
[視線は、カヤの視線の先へ]
そう言う問題だ。
俺の右は死角なんでな。
[ばたつく相手にようやく掴んだ右手を離す]
[右手はそのままポケットへと捻じ込まれ、半身から相手へと正対した]
弱点突かれてぽっくり逝くわけにはいかねぇ。
防御行動だ、気にするな。
[どこまでも態度は尊大]
[右が死角、という言葉。
手が離され、ようやくその意を認識する。
先の広場では、ロクに顔も見ないで脱兎したから、気づいてはいなくて]
防御行動とか、弱点とか……なんか、物騒なおっさんだなぁ……。
[改めて見た風貌と言葉に、思わずこんな事を呟いた]
[黒い人が振り向く頃、距離は大分近くなっていた。
だがすぐにそれと分かる状態ではなかったらしい。
首を傾げて、数刻]
…ああ。
誰かと思えば、きみか。
随分と奇抜な格好だね。
[手を打つ。
固まっているのには気付いたのかどうか、全く悪びれもせず笑みを向けた]
それと。
そちらのきみも、お久し振りかな。
[次いで視線は露店の主へ]
― 広場・露店 ―
帰るよりそのまま見てった方が効率いいだろ?
[濡れた布を、小さく礼を言いながら受取り
顔を拭きながらライヒアルトの方へ、半眼を向けた。]
奇抜で悪かったな。
こんなトコでまで説教すんなよ?
[腰を落として力いっぱい警戒体制。]
さっきまで裏路地に居たんでな。
[さらりと問題発言]
[呟かれる言葉にはくつりと口端を持ち上げた]
この風貌で難癖付けられることも多い。
身に染み付いた行動なんだよ。
んで、人混みん中駆けて何してんだサボり魔。
鬼ごっこか?
[手巻きタバコの煙のこともあってか、良い玩具と認識した模様]
[ニヤニヤと笑みを浮かべながら訊ねかける]
効率の問題じゃないわよ。景観の問題。
[カヤに言いながら、視線の先の人物が近づいてくるのをじっと見つめていた。かけられた声には]
ええ、お久しぶりです。
……何か買っていきませんか?今ならこちらの壷なんてオススメですよ。
三千五百年前に作られた、とおっても貴重な代物なんですよ。
[極上の笑顔(商売用)を作ってお迎え]
裏路地、って……。
[『そこ』がどんな場所なのか、一応、知らぬわけではなく。
それだけに、目の前の男への危険人物認定度は上がった]
ま、なんも言わなくてもケンカ売ってるっぽくみえるもんな。
[また、ぼそ、と呟いて]
……っつか、サボり魔じゃない。
アーベル、って名前が、ちゃんとある。
[サボり常習犯の自覚はあれど、そう名指しされるのはやっぱり癪で。
むっとしたように、名を告げた]
酷い言い種だね。
[警戒の視線も素知らぬ顔で受け止める。
わざとなのか天然なのか]
別に何も言いやしないさ。ぼくはね。
尤も、神父様に見られた場合は保障しないけど。
…はは。
随分と仕事が板について来たようだね。
[少女のほうはと言えば、挨拶もそこそこに向けられた商業スマイルにやや苦笑い。
しかし勧められた壺を目にすれば、途端眼差しは真剣そのものに変わる]
興味深いね。
それ程の代物、どうやって手に入ったんだい。
― 広場・露店 ―
うるさいうるさーい!
それも遠まわしな説教じゃねぇか。
[ぷいっと、頬を膨らませて少女は横を向く。
ひらりひらりと、花弁が舞い黒が更に目立つ姿。
チラ、と横目でライヒアルトを盗み見るようにしてから
イーッと歯を向いた。]
ああ、俺は話を聞きに行っただけだぜ?
売られたケンカは丁重に返品してる。
[とは言え手荒であることは間違いは無い]
[呼び名を指摘されると]
名前までは聞かなかったんでな。
一応俺も名乗っておくか。
ヴィリー、ジャーナリストだ。
[名乗る前に右手で咥えていた手巻きタバコを摘み]
[ピンっと上へと弾き上げる]
[弾かれた手巻きタバコが顔の横辺りまで上がると、煙も出さずに燃え尽きてしまった]
[巻き添えで宙を舞う花弁が数枚共に燃え尽きる]
で、そのアーベルは何をしてたんだ?
……カヤ、また何か悪さしたの?
[カヤの耳に顔を近づけて、小声で囁いた後]
ええ、おかげさまで。
え?あ、あははー。入手ルートは本来は企業秘密なんですけれど。その……とある人から譲り受けたんです。
で、でもっ。物の良さは保証しますよ。もちろん修道士さんほどの方でしたら、この壷の価値がわかりますよね。ね?
[表情を崩した後、極上のスマイル]
じゃーなりすと。
[思いっきり、棒読みになった。
心情はその口調が全て物語っている。
かも知れない。
無空で燃え尽きた煙草と花弁には、蒼の瞳を不思議そうに瞬かせ]
何って……。
[自衛団長から逃亡中、とは、さすがに言えず。
それからふと、手に持ったままの帽子に視線を落とす]
落とし物……っていうか、拾い物の、持ち主探し?
まったく、変わらないねきみは。
[呆れたような微笑ましいような、といった笑みを口許に作り、騒ぐ声を横目で見やる。
その後すぐに壺に眼を戻した為、その後の行為には気付かなかったのか、或いはそういう振りをしたのか]
― 広場・露店 ―
してねぇ!してねぇよ?
いっつもこいつとかいちゃもんつけんだよ!
[一番最近怒られたのはスリを見つかった時。
逆恨みを続けて、ベッティに同情を求めた。]
そうか、残念だ。
[秘密と言われ、言葉の通りに息を吐いた。
どうやら本気に受け取っているらしい]
ぼくはそれ程目利きではないけど…そうだね、いい色だ。
三千五百年前の物にしちゃ、形もしっかりしてる。
[そこで真偽を疑うという思考は、残念ながら彼には無かった]
[信じられないような口調にやはり楽しげに笑いが漏れる]
[相手の反応を面白がっているの分かることだろう]
[言ってることは事実だが、これにより嘘をつかれていると思う者も少なくない]
へぇ、彼女へのプレゼントを抱えて渡しに行く最中なのかと思ったが、検討違いか。
持ち主探しとは優しいこって。
[ちなみに口にした検討はてきとーこいている]
[そんな話をしながら胸ポケットから新たに手巻きタバコを作るべく道具を取り出し]
[手慣れた様子で補助器具に設置、手巻きタバコをくるりと作り上げる]
で、持ち主の検討ついてんのか?
[出来あがった手巻きタバコを口に咥え、パチンと指を鳴らす]
[音と共に手巻きタバコの先に火が灯った]
[それはいつもやっている何気ない所作]
そう。なら、アタシはカヤを信じるよ。
[じっとカヤの瞳を見つめて、笑顔]
[カヤが歯を剥く仕草に、微かに口元を上げる]
……本当、変わらないな。
[空を見上げ、無意識に口から零れた言葉は風に乗って街中へと溶け行く]
[楽しげに笑う様子に、俺、からかわれてる? と思いつつ。
彼女へのプレゼント、という物言いに、はあ? と露骨に呆れたような声を上げた]
何だよ、それ。
……だいったい、女とか、うるさいばっかだし。
[興味なし、と言わんばかりに肩を竦める。
当人の気づかぬ所で想われている可能性は無きにしも非ずだが、今は、色恋には興味はないようで]
いんや、全然。
そも、風で飛ばされてたの、拾っただけ……て。
[作り出された煙草の先に火が灯る様子に、一歩、引いた。
花弁を舞わせる風がふわり、周囲を取り巻く]
[壷に興味を抱いている修道士に、両手を組み瞳を輝かせて]
でしょでしょ!
これは本当に掘り出し物だと思うのよ……思うんです。まさに神の下さった、運命の出会い!これを逃したら二度とめぐり合えませんよ。
今なら、そうですね……。
[頭の中で高速計算中]
本当は銀貨300……と言いたい所ですけど、特別に知り合い価格で銀貨200枚でお譲りします。いかがでしょう?
…そんなにぼくが嫌なら、今後一切のことは全て神父様にお伝えするようにしましょうか。
叱られたくないだろうと思って、結構黙っていたんですけどね。
[何故か丁寧口調で咄々と語る。
視線は壺に向いているが、隣に向けて語っているのは明らかだった]
/*
つうか。
なんか。
異様に。
ねむい。
……コーヒー飲んで眠くなるって、なんぞ……(汗。
ま、まさかブラック以外は効かなくなってる???
いやぁ、女物の帽子に見えたもんでな。
その様子じゃ全く関係無かったようだ。
中には静かな良い女も居ると思うがねぇ。
[全く興味の無さそうな相手に大袈裟に肩を竦めた]
はン、当ては無しか。
どうやって探すつもりなんだか。
ま、精々頑張りな。
[火が点いたことに一歩引き、周囲の風が動く様子にくつりと笑う]
[そんなことはお構いなしに、軽く声をかけて相手の横を通り過ぎようとした]
300を200…
[視線を彷徨わせ、暫し黙考する素振り。
少し眉を顰め、眼を戻した]
少し高いな。
150枚じゃ駄目かい。
[人差し指を立て、店主たる少女に交渉を試みる]
女物に見えたからって、なんでそうなんだよ……。
[大袈裟に肩を竦める様子に、わっかんねぇなぁ、とかぶつぶつと言いつつ]
アテないけど、拾っちまったんだもん、探さないわけにはいかねーじゃん。
持ち主が街にいるなら、けっこ、何とかなるし、さ。
[軽い言葉に返す声。それがやや引きつっているのは煙のせいか。風は、それを阻むように流れているけれど。
通り過ぎようとするのを引き止める謂れはなく、もう一歩、後ろに引いて]
言われなくたって、頑張るってーの。
[漂う微妙に険悪な雰囲気に、内心はらはらしながら二人の顔を交互に窺う。金額を提示されると]
ひゃ……
[思わず出かけた声と笑みを慌てて手で押さえた。頑張って渋い顔を作り、唸り声を上げ]
うーん。これでも随分お安くしてるんですよ。そうですね。180……いえ、思い切って170枚でしたら。どうでしょう?
[修道士の目を見つめ、笑顔を作って首を傾ける]
[相手の返答に、後ろ手ながらひらりと右手を振ってその場を立ち去った]
……あの呆けた顔。
アホ面。
[紫煙を纏わせながらくつくつと笑い、呟く]
[しばらくは玩具認識が続きそうだ]
[そのまま人の合間を縫うように移動し、広場へと足を向ける]
─大通り→広場─
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