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…―――、…うた?
[薄く開いた口唇から、小さく息が零れる。
微かに、聞えた気がしたけれど―――気のせいだろうか。
ゆっくりとズレた掌の向こうに現れた瞳は、何処か視点が彷徨って。
ふるり、と何かを吹き飛ばすかの様にゆっくり頭を振る。
二、三度緩く瞬きを繰り返せば、背凭れから身を起こして]
−客室/午後−
[女がベットを離れたのは、昼を少し過ぎた頃。
常と変わらぬ様子でベルを鳴らし、召使いに軽食を運ばせる。
慌しいのだろう、運ぶだけで直に去ろうとする背に声を投げた]
…ネェン、貴女…馬車の手配をお願いできますゥ?
そろそろォ…お暇しようと思ってますのォ。
[召使いは困ったような顔で、今日は事情があって出来ないといった言葉を口にして、逃げるように去っていく]
……ゥフフ、まァいいわァ…。
もう少し音色を楽しんでからでもォ、遅くないしネェ。
[カップを手にくすくすと零す笑い声は、召使いには届かない]
……俺、寝てた?
[いつの間に、と。僅か首を傾げる。
掌を押し当てて―――それからの意識が、無い。
それこそ、唄に引き戻された様な。 感覚]
[部屋の中央には黒塗りの鍵盤楽器、
開かれた窓の傍には気高き真白の花。
合間に佇む執事は黒と白とを纏いて、
靡く髪を纏める輪の金ばかりが映える。
軽く握っていた拳を開けば、そこには白薔薇の一片。
見つめる孔雀石は普段とは異なる輝きを持ち、
薄い口唇が音の無い言葉を、或いは旋律を紡ぐ]
――……………
[風に揺られてか、掌から飛び立つ白の欠片。
けれど外へと出る事はなく、花弁は室内を、螺旋を描くように巡りゆく。
暫しの時を経て、満足したように舞い降りたそれを、白の手が再び掴み取った]
[室内の残滓を得た花弁は奏でられし音色を伝えたか、
執事は双瞳を緩やかに細め口許にもう片手を添える]
今の力ではこの程度、か。
[その下の唇が、何を象っているかは読み取れない。
ただ、紅い舌が僅かに覗くのだけが見えた]
[黒の長いスカートと白のブラウス。
長いスカートは裾が薄く。
その白い足には靴。]
そうね。
ギュンターさんが病気なら、なにか作ろうかしら?
それとも…
何か花をあげるといいかしら?
[彼女は困った顔で呟いて、扉を開けようと…して。]
あ。あけっぱなしだったのね。
…この散らかりっぷり、どうしよう。
…ま、いっか。
―→2F:廊下―
[別に誰かに落ち度があるわけでもないが、ぶすっ。とした表情で行き来する。使用人達をみながら、手の中で意味もなく知恵の輪を転がす。
誰か降りてこないものか。
邸の主の部屋に行こうか。
書庫にでも向かおうか。
食べ物でも食べあさろうか。
いっそ勝手に帰ってしまおうか。
つれづれとそんなことを考えている。
誰も来なかったらどこにいこうかと……]
[手にした花弁の色は、真白ではなく漆黒。
それは魔の存在に共鳴した事を意味する]
……紛れ込んでいるとは思ったが。
[こう容易に残滓を拾えるとは、意外だった。
滲むような甘美な味に、口唇を舌でなぞる。
とは言えど関与しているとは限らぬのだから、早合点は禁物だろう。
暫しの間は様子を見るべきかと、考えを巡らせる]
[食事を終えた女は、大きく開いた窓の傍で煙管をくゆらせて、騒ぎの様子に目を細める。
――それから、形だけ…トランクに荷物を詰めた振りをした]
マァン…どうせ調べに来たって無駄ですけどォ…。
[可笑しくって堪らないとでも言うように笑みを零す。
やがて、笑みを収め。
ディナーには少し軽めの薄紅色のワンピースを纏い、騒ぎを愉しむ為にホールへと足を向けた]
中/
ァラァ……………どうしましょゥ。[冷や汗]
とりあえずゥ、結果は未だ誤魔化してくれてるよだしィ…様子見かしらァ?
─中庭─
[相変わらず、慌しげな使用人たちの邪魔にならぬように気遣いつつ、緑の空間へと抜けて。
包み込む夜気はひやりと冷たいものの、その感触は頭を冷やすような心地がして]
……いい風だな。
[小さな呟きに同意するように、カーバンクルがみゅう、と声を上げた]
/中/
恐らく、村側引くつもりで当てちゃったんでしょーな(苦笑)
1日目夜に絡んだのは不味かったか…あははは!
多分、オト中予想的に…様子見て判定は伏せてはくれると思う。
表で全然絡み出してないから、まぁ…
あとは、村側にどれだけ悟られちゃったか?(笑)
−→ホール−
[落ち着かぬ様子で廊下を行き来する使用人たちの間を、ゆらゆらと泳ぐように通り過ぎる。
荷物を手にしていない女を誰も止めないし、女も声を掛ける事をしない。
やがてホールへと辿り着けば、不機嫌な表情で何かを転がす少年の姿が目に入り、艶やかに微笑んだ]
ハァィ、ご機嫌よゥ。
…ァラァ、ご機嫌斜めでしたかしらァ?
―階段―
[病人には何を渡すと良いものだろうか。
考えながら、歩いていたからか。
それともふと視界によみがえった、あの、オルゴォルのせいか。]
っきゃあ…!
[絨毯の上、階段の端。
踵はうまく乗らずに、ずるっと落ち――
かけて、その手を手すりへと伸ばそうか。]
―――…、…?
[微かな鳴き声に、ふと、僅か伏せていた視線を其方へと向けて。
中庭に佇む影に気付けば、数度瞬きを繰り返す。]
チビ、と。にーさん?
[確認する様に目を細めつつ、小さく声を投げて]
/中/
とりあえず
NTTのバカー!
すっきり。
今のところ
エーリッヒ…妖魔
ヘルガ…狼(魔)
役付きっぽいのが、イレーネ・ナターリエ・オトフリート
オトさん守護っぽい。
[投げられた声に、そちらを見やり]
……ん、と……ああ。
アーベルだったのか。
[誰がいるのかと思った、と言いつつそちらに歩み寄る。
青年の近くに寄れば、カーバンクルは挨拶するように鳴いて、尻尾を揺らし]
……フラウ?
[丁度、階段に差しかかった時に、聞こえた悲鳴。
気づいてからの執事の行動は早く、そちらに手を伸ばして支えようと]
[どうしたものか。今から使用人に話を聞くぐらいなら最初から聞いておいたよかっただろうと。それを今更聞くとなると、なんとなく癪である。
そして、そんな自分の不器用さになげやりな気分になりだした頃。
一人、ホールへと入ってくる気配がする。
どうせまた使用人の一人だろう。ぐらいに思いながら顔をそちらへと向けると。そこには艶やかな笑みを浮かべるヘルガがいて]
あー…察しの通り、あまり機嫌はよくないですね。
[女性を目の前にしてその応対はどうなのか。と思うかもしれないがそんなこと...は考えなかった]
なんかよくわからないけど、慌しいようで…
[そこでホールに来た目的を思い出して。]
そういえばなんで屋敷がこうなっているのか。ヘルガさん知っている?
[と、ヘルガがくすりと笑む意味など気づきもせず、何気なく聞いた]
おー俺ですよ、と。…ん、どっからか見えてた?
チビ、元気かー?
[入ってきたのさっきだよな?と首を傾げ。
近寄ってくる様子に、ひらりと手を振りつつ。
カーバンクルが尻尾を振る様子に、へらり笑んで]
[倒れ込んでくる身体を、確りと受け止めて]
大丈夫ですか、ナターリエ様。
[片足を階段にかけたまま、揺らぐ事もなく。
やや首を傾げて、胸元の女性に訊ねる]
さっき、窓から見たら人影が見えたんでね。
誰かいるんだろうな、と思ってた。
……そちらも、邸の中が慌しくて落ち着かない組……かな?
[首を傾げながらの問いに、さらりと返してから何気ない口調で問いを投げ。
元気か、と問われたカーバンクルは、みゅう、と鳴きつつ頷いた]
[よろけた体はなんとかそこで体勢を立て直し。]
…ごめんなさい。
大丈夫よ、ありがとう。
[少し恥ずかしそうな顔をする。]
情けないわ、転んでしまって。
ァラン…、お邪魔でしたかしらァ?
[不機嫌だと肯定されても、笑みを浮かべたままでゆらり歩み寄る]
エェン、そうなのよネェ…慌しいみたいィ。
馬車も呼べないくらいですものォ。
イィェ…、私もゥそれが知りたくて来たのォ。
貴方はァ、何か知ってらしてェ?
[睫毛の影に隠した瞳で、ユリアンの瞳を覗き込む]
…うーん…
[…あの後、帰り支度を整え、鞄を持って部屋の外に出れば…
ふと、何か落ち着きのない使用人にばったり出くわした]
ぁ…あの、もうそろそろ、お暇させて貰おうかな、って…
出来れば、馬車…の、手配を、お願いしたのですけど…
[流石に祖母の家までの道のりを、少女が一人で歩いて帰るにはかなり遠いと言えた。
だから、頼んでみたのだが…
使用人は困ったように視線を彷徨わせ…]
…ぇ?
[帰ってきた返答はまだ、滞在なさってはいかがでしょう?という言葉だった]
で、でも、お婆さまが、心配するし…
[恐らく、祖母もパーティーが終わったら帰ってくるだろうと考えている…と思う。
少女も困ったように口元に手をやると、使用人は…
ならば、こちらで手紙を出させていただきます。主が少しお疲れのようで…まだ、充分に皆様に楽しんで貰えていないとのことで…
…等々、流れるように言われれば、少女は、はぁ…としか言えなかった]
…うーん。
[少女は部屋の中でうろうろと歩いていた。
いくら少女が鈍くても、屋敷の中の空気が何か違うことは分かる]
…
いいえ、お気になさらずに。
お怪我がなければ何よりです。
[勝手に触れてしまって申し訳ございません、と
その身体を離して、頭を下げようと]
…窓。
―――…あぁ、もしかして、さっきの唄って。
[にーさんか。と、何処か納得した様子で頷いて。
続く言葉に、けらりと笑みつつ]
ん、なーんか皆が皆「主の体調が思わしくないのでー」とかで
慌しく1日おわりそーだったから。
…夜の目一杯まで待ってたら、落ち着くかと思って。
そちら『も』って事は、にーさんも?
[カーバンクルの返事に、良い子だ!、とか声を掛けながら]
[体が離れて、その手は手すりに捕まり。]
ううん、助けてくれてありがとう。
あ、執事さん。
ギュンターさんは、ご病気、悪いの?
[心配そうに尋ねる。]
そっか…ヘルガさんも知らないのか
馬車も呼べないって何があったんだか…
[内心がっかりするものの表には出さずにおいて、ヘルガに逆に問われれば、またぶすっとした顔になり]
…ああ俺も知らない。だって誰にも聞いていないし
[と言った。瞳を覗き込んでいるヘルガにはそれが本心とわかるであろう。
そして、勝手に聞くのを遠慮して、不器用に聞くのを諦めて、そして周りを無関係に不機嫌になる。
その様子はさぞかし子供っぽく見えることであろうが、...はヘルガの瞳が睫に隠れているため気づいていない]
中/
エェン、あの御方なら隠してくださるでしょうけれどォ…もって一日…かしらァ。
潜伏がァお見事すぎましたわネェ…。[微苦笑]
マァ…人数が人数ですしィ、2連吊りでもありですけどォ。
ただ吊りはオルゴールの引き寄せですからァ、バレ=即吊りにはならない…といいですわネェ。
ん……聞こえてたのか……って、当たり前か。
[納得した様子に、苦笑しながらこう返し。
疑問の声には、一つ、息を吐いて]
まあ、そんなとこだな。
どうも、朝から……落ち着かなくて。静かな場所で、気を鎮めたくなった。
[実際には、一人でいる事に妙な不安があったのだが、それには触れず]
……とはいえ、そう簡単に収拾はつかんかも知れん……。
[その代わりと言う訳でもないのだろうが。ぽつり、とこんな呟きをもらす。
その瞬間の翠の瞳の翳りに、カーバンクルがみゃう、と低めの鳴き声を上げ]
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