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[牧師さまに声を掛けられて、老婆は我に返りました。まだその場からは動けませんでしたが牧師から話を聞くにつけ、少しだけ落ち着いたゼルマでした。]
ホラントもアナを遺すなんて、、、可哀想に。
牧師様、昨日の今日でアレですが、熊とか虎とかの仕業なのよね?
[老婆は牧師に尋ねましたがはっきりした答えを聞くことはできませんでした。
ゼルマも薄々は分かっていたでしょう。誰かに違うと言ってほしかっただけなのかもしれません。]
[眠れない夜が明けました。
誰か訪ねてきたらと思っていたから、ですけれど。
眠るのが怖かったのかも知れません。
やがて光が差し込んで、それがこころを静めてくれました。]
……大丈夫、かしら。
[ちいさく呟いて、いつものようにお仕事を始めます。
やがて牧師様が戻られ、それから。]
……ホラントさん……が?
[木こりに運ばれてきた、幾つかのもの。
眼鏡の向こうで瞳が伏せられました。]
……占い師。霊能者。
[ドミニクの問いかけ。ちいさな声で、繰り返します。
けれど、それに何か答えるよりも先に、木こりは行ってしまいました。]
……わたくし、ちょっと、出かけてまいります。
アナちゃんの事も、気がかりですし。
[祈りを捧げる牧師様にこう言って、教会を出たのはゼルマが訪れるより前の事でした。]
……ああ。
どうしましょう。
どうすれば。
[村の方へと歩きながら、ちいさな声で呟きます。]
今までは、何もなかったのに。
[声は少し、泣きそうですけれど。教会へと向かう人とすれ違うときは、頑張ってそれを隠そうとします。]
……お話しなければならないのでしょうけれど、でも。
何方にお話すれば。
/*
さて、どうしましょうか。
PC視点表に出るのはよいのですけれど、みんなの前でばばん、というスタイルではないのですよねぇ。
情報をパスしやすいのは、御隠居様か白確認しているアルベリヒさんなのですけれど。
上手く会えますかしら。
〜 ××××とアナの家 〜
〔ちいさな家は、今日はやけに広かった。
りっぱな鏡のまえで、アナはじぶんとにらめっこ。黒い服に、黒い帽子。靴も黒くて、いつもと同じなのはリボンだけ。〕
よし、これで、いいかな?
〔振り返って、尋ねるアナ。
その先に人はいなくて、物音ひとつ、しやしない。〕
〔うん。
とても、よく、似合うよ。
ぼくは言う。
いや、言えはしないから、想う。
アナのそばに長くいて、話せたことは、ほとんどないけれど。
望むのは、きっと、ぼくのことばでもないけれど。〕
〔アナは満足したふうに頷くと、ランタンと籠を持って、ぱたぱたと家を出ていった。〕
お花、摘んでいこうっと。
〔向かう先は、村はずれ。
村の道を歩いていく。
黒ずくめのアナは、よく目立っていたけれど、通りかかる人は少ないし、誰もがアナから目を逸らすんだった。〕
[ぼんやりと、考え事をしながら進む道。
ふと、前を見ると、黒ずくめの姿が見えました。]
あれは……アナちゃん?
[ちいさな声で呟くと、少し、足を速めてそちらへ近づきます。]
[くるり、振り向く様子は、いつもと変わらないようにも見えて。
ほんの少し戸惑いながら、きょとり、と瞬きます。]
ああ、昨日の事はいいのよ?
……これから、教会に行くのかしら。
お花を摘んでから、行こうと思ってました。
お兄ちゃん、いらないって言いそうだけれど。
〔困ったように笑うアナ。
腕から提げた籠の中は、まだ空っぽ。もう片手のランタンの中も、空っぽだ。〕
あ……っ、きれいなお花!
どこで、見つけたんですか?
――翌朝――
[次の日も、お日さまはいつもと同じように昇ってきました。けれど、なんだか村の雰囲気は、いつもと違うようなのです。
かあん、かあん。教会の鐘は、誰かがいなくなった時の音。
そして、村を行く人々は、みんな黒い服を着て、俯いて歩くのでした]
おお……なんという事じゃ、ホラントが。
[その知らせが入った時、おじいさんはがっくりとした様子で呟きました]
昨日のうちに、もっときちんと探しておくべきじゃった……。
[おじいさんは項垂れたまま、けれど最後のお別れをするために、教会へと急ぐのでした]
そうね、お花はあった方がいいわ。
あら、いらない、だなんて、そんな。
大切な気持ちなのに。
[何気なく答えてから、一つ、瞬きます。
何か、引っかかるような気がしたのは気のせいでしょうか。]
え? ああ……これ?
ううん……これのある場所は、教えてあげられないの。
そうなんですか? 残念。
〔アナは眉を下げて、しょんぼり顔。〕
村のはずれに行ったら、あるのかな。
とりあえず、いってきます。
早くしないと、お兄ちゃんのからだ、会えなくなっちゃう。
ごめんなさいね。
[しょんぼりするアナに、ちょっとだけ困ったように笑いかけます。]
ええ、いってらっしゃい……。
[早くしないと、という言葉に頷きますけれど。
『からだ』という言い方は、何だか不思議に思えました。]
――教会――
[おじいさんが教会に辿り着いた時、棺はまだ土の中に入れられる前でした]
可哀想にのう……まだ若かったのに……。
[すぐそばには、もう一人のお年寄りであるゼルマがいました]
わしらより先に天に召される者がいるとは、思わんかったわい。
アリーにベリー、シリーにデリー、イリーに…おいおい、エリーにフリー、あんまり遠くに行っちゃだめだぞ?
[狼は怖いけれど、羊飼いはいつもの丘に羊の放牧に出掛けていました。だって青々とした草を羊に食べさせる事は、真っ白でふかふかな羊毛や、美味しいチーズの為には欠かせないのです]
やれやれ、今日も羊達は落ち着かないな。おいらもちょっと落ち着かない気分だけれど。
おや?あの鐘の音は…?
アリーにベリー、シリーにデリー、イリーに…おいおい、エリーにフリー、あんまり遠くに行っちゃだめだぞ?
[狼は怖いけれど、羊飼いはいつもの丘に羊の放牧に出掛けていました。だって青々とした草を羊に食べさせる事は、真っ白でふかふかな羊毛や、美味しいチーズの為には欠かせないのです]
やれやれ、今日も羊達は落ち着かないな。おいらもちょっと落ち着かない気分だけれど。
おや?あの鐘の音は…?
[宿の中は静かです。
旅人は食事を作り終えると、テーブルの上に置いて、上から布をかぶせておきました。
きっとまずくはないのですけれど、いつもと比べると量も見た目も物足りないかも知れません。
旅人は先にアナと一緒に食べていましたから、それらには手をつけないまま、宿から外に出て行きました。]
[駆けて行くアナを見送った後、しばらくそこに立ち尽くします。]
『からだ』。『からだ』って?
……どうして、そんな言い方するのかしら?
[考えても、答えは出ないのですけれど。]
誰が亡くなったんだろう?
まさか、女将さんが?
いやいや、まさかそんな…
ほーい!ほーい!アリー、ベリー、シリー、デリー、イリー、エリー、フリー、みんな帰るぞ、大急ぎだ!
[慌てて牧場に帰り着くと、羊達を大急ぎで小屋に入れて、羊飼いは一張羅の黒い上着を羽織って村への道を辿ります。小屋から抜け出した子羊のエリーとフリーが、とっとこ後を追って来ましたが、気付く余裕も無いのでした]
まさかまさか、狼なんかいるわけないよ。
狼が人を襲うなんてあるわけないよ。
狼…いいや、ジンロウだって?
[擦れ違った村人がひそひそと噂しているのを耳にして、羊飼いはぽかんと口を開けました]
そんな…だってあれは、ホラントの、ほら話だろう?
[静かなのは宿の中だけではありませんでした。]
小さな村だからな。
それにしても急だけれど。
一体、だれが亡くなったんだろう。
[呟いてから、旅人はふと立ち止まります。
村人たちのうわさ話が聞こえて来たからです。]
『人狼』。
……ああ、それよりも、わたくし自身の事ですわね。
本当に、どうしましょうか……。
[小さく呟くと、歩き始めます。
足取りは、どこか覚束ないかも知れませんけど。]
まさか。
ベリエス殿も言っていたではないか。
惑わされてはいけないと。
[そう言いながらも、旅人はマントの内側に手を入れました。
そこにはいつも隠して持っている短剣がありました。
旅をするのにはなにかと役に立つのです。]
おや。
[ふと人の姿が見えたので、旅人は剣から手を離しました。]
〔村外れの丘にたどり着いたアナは、しゃがみこんで、花を摘む。残念ながら、ドロテアの持っていた花はないみたい。白の代わりにとりどりの花で籠を飾っていく。〕
今日は、みんな、いないのかな?
〔いっぱいになった頃、しずかな丘に首を傾げるアナ。
教会に行く前に、少し、寄り道。
けれど牧場に羊飼いはいないようで、小屋のほうから鳴き声が聞こえるくらいだった。〕
さあて、今晩の獲物は誰にしようかのう。
[棺の中からは、まだかすかに素敵なジュースの香りがしていました。
狼の鼻は、それを嗅ぎ分けてひくひくと動いています]
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