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─白雪亭─
[ぱたぱたと手を振り、イレーネを見送る。
誰もいない食堂にぽつんと一人座る。]
………………あ、あれ?(ぽたり
[つぅっと頬を一筋の雫が零れ落ちる。一筋が二筋に、そして止め処なくはらはらと零れ落ちる。]
あれ? おかしいな。一人になったら、涙──止まんないや。
はは。緊張の糸、切れちゃったみたい。
[泣き笑いで一人呟いていたが、]
…………やっぱ悲しくて苦しいよ、ウェン……くん。
[締め付けられるような胸の痛みに身体を掻き抱き、一人静かに*泣いていた*。]
[ミハエルの様子に、親友はその頭を撫でていたか、声もかけていたことだろう。
自分は、ミハエルの方を見ながら]
それでミハエルが後悔しないのなら、それもあり。
悲しむことはあっても、後悔はなるべく残さないように。
[できるだけかける声は優しく、気をつけたつもりで、
二の舞を踏むわけにはいかなかったから]
すまない、うまい言葉をかけれず。
…あまり残さなかったから。
私が作ったパンも、すぐに無くなる。
レシピも、ほとんど紙に書いて残してない。
だから、すぐに忘れてもらえると思ってたんだけど。
…きのこの名前だけは予定外。
[そういい、違うと否定するレナーテに、緩く首を振った。]
それでいいから。
[向ける笑みは、儚い。]
[ミハエルの名を聞いて、身体を強張らせるのを瞬いて見ていた。
歯が擦れる音を聞いて、ぽつりと。]
ミハエルが、悲しんでるけど。
何をしてやればいいか、わからない、って。
[誰がそう言った、とは言わずに、そう告げた。]
─道具屋─
……泣かなくて、も、不安。
[心配させないように、という気持ちが裏返しになること。
多分、直接指摘されたのは、初めてで。
一番大切、と繰り返されると、み、と短く声を上げてまた、俯いた]
……ずるいんだ、リィにいは。
そんな風、言われた、ら。
[ぽそぽそと、紡ぐ言葉は辛うじて届く程度のもの]
一番、大事……わかってたのに、わかんないって、言った意味、ないじゃない、かぁ……。
[一番深いところに沈めておいた言葉が浮かび上がってしまったら。
抑えていた色々が、滴と泣き声になって零れるのを、止める術は、見つからなかった**]
レナーテは、
… いのちは、消えることもあるもので、
ボクらが、蜥蜴を口に運ぶように、
刈りとられることで、廻り次に繋がるものであって
悲しみだけを産むわけではないのだと。
狩の、こころを、理解してくれていて
安心だと、言って──くれたのだよ。
[謝るユリアンに、ゆるゆると首を横にふる>>47。]
なのにだ。今のボクときたら、
── どうして、と、聞いてしまいそうなのだ。
[眉を寄せて笑う。ユリアンに向ける翠は、困ったようでも──抑えている様でもあって]
─パン屋─
…独りで、消えちゃったんだね。
さみしくなかった?哀しくは、なかった?
[中は、まだ彼女の痕跡をそのままに残していて。
本当にまだ、ゲルダが居るみたいで。
淡々と語りかけている自分は滑稽だったかも、しれないけど。
じわりと浮かぶ涙は堪えて、小さな声で問いかけた。]
ゲルダにも、あたしみたいなしるしがあったのかな。
[答えが返ってくるわけはなかったけれど。
しばらくその場で、ただ黙って立ち尽くして。]
…ごめんね、邪魔して。
それじゃあたし、帰るよ。…また、ね。
[想いが残るなら、彼女にも届くかもしれないと。
そう思いながら誰もいない店内に手を振って、家路についた。]
/*
長考しすぎた(とおいめ。
さすがに寝ないと、なぁ……。
それにしても。
にゃーにゃーにゃーにゃーにゃー。
[ほいでもってやっぱりころがるようです]
[ミハエルを抱きしめようと、伸ばされる手は親友の手か、自分の手だったか]
難しいことはいい。
感情と理屈は違う。
思う気持ちを、レナーテが否定することは、ないはずだ。
[儚い笑みを向け緩く首を振るゲルダに軽く眉を寄せた]
…いのちがひとつ尽きても。
[思い出したのは先日のこと]
[ミハエルの声が蘇る]
言葉は、残る。
そうして、言葉には、心が宿る。
美味しいという言葉にも、心は宿らないだろうか。
[言葉を借りてもやはり上手くは説明出来ず]
[困ったような顔で小さく微笑んだ]
ただ。
そう思うゲルダの心も。
まったく分らないわけではないかもしれない…。
─道具屋─
[繰り返す言葉には、うん、と小さく頷きを返し。短く上げられた声と続く小さく紡がれた言葉をしっかり耳にすると、軽く目を見開いた]
ずるいかな、俺。
俺は想っていることを、伝えたいことをはっきり口にしただけだよ。
この間ユーディットに言ったようにね。
[声には少しからかいが載っていたかも知れない。ようやく泣き出したユーディットに、少し安心したように息を吐いた。少女の背に回していた手で、あやすようにとんとん、と背を叩いてやる。ユーディットが落ち着くまで、その仕草を繰り返すことになるだろう]
[声が震えないようにするのにはかなりの力が要った]
いのちは散るものだ。
だからこれもまた自然の流れの一つだ。
けれど。
悲しませたくはなかった、な…。
[腕が小さく震えるのは止められなかった]
わからない。
わ、か… 、っ
[伸ばされる腕の服を震える手が藁に縋るように掴む。]
訊く、だけ、なら、まだ…いい。
でも、
… でも、今は。
ユリアン。ボクは
[段々と抑えていた感情が溢れるように声が揺れて翠が──涙に滲む。]
責めて──しまいそうだ。
どうして。と、
… 何故、と。
[声に感情が戻る。指先が震えて、どうしようもないように、口許を手で押さえ]
恨み、たくはないし、
…… 憎みたくもない、と思う
それ、は。それは。
…レナーテが、後に、伝え、ようとした、
こころを、捻じ、曲げるんだ。
[悲しみ以外を生むわけではない、と。そう、彼が言った言葉が、恨みや、憎しみを指すわけではきっとないから]
うん…。
レナーテの言ってる事は、わかる、よ。
[眉を寄せこちらを見る人を、困ったように見上げて。]
でも言葉を残して、心に残してしまって。
…自分のせいで、私が死んだと思われたから。
私の事を思い出して、泣くくらいだったら。
いっそ忘れて欲しい。
忘れて、幸せであって欲しい。
[一抹の願いを呟いた。
全く分らないわけでもないと、言われれば少しだけ目を細めた。]
─村の通り→道具屋─
[遠回りをしたので、自宅に戻ったのは結構な時間が経っていて。
レナ心配してるかな、と心なしか早足で帰ってきたが。]
エーリ。
………ユーディ?
二人とも、どうしたの…?
[遠目からは、エーリしか見えず。
近くに寄ると、エーリの腕の中のユーディがないているのに気付き、胸のうちに言い知れぬ不安が沸いて。]
…ミハエルは、ユリアンの家にいるよ。
[影はそこから伸びた。
あまり時間は経っていないから、おそおらくまだそこだろうと思って告げて。]
…行かない、の?
[微かに震える腕を見て。
震えないようにと、声を固くするレナーテに、問いかけた。]
中
イレーネに返したいが、タイミングがががが
えーん。どしよ。
ユリアンのところも何となく修羅場の匂いがするから行きたいんだg
─道具屋─
[ユーディットが泣き止む前か後か。イレーネが戻って来たのを見て、視線だけ向ける。ユーディットは腕の中に抱えたまま]
イレーネ。
……うん、ちょっと。
[歯切れ悪く言い、一度視線が地面へと落ちる。それから一呼吸置いて、イレーネへと視線を戻し]
…イレーネ、心して聞いてくれ。
───レナーテが、消えてしまった。
[一言前置きをしてから、肉親の消失を告げた]
ミハエル、今は泣いていいときだ。
[そっとミハエルの背を撫でる手]
ここであったことは誰にも、言わないでおく。
[親友にもそれで頼むと視線だけで、きっと親友からは了承の意が返るだろう。
ぽつりぽつりと、語られる言葉に]
ここで全部出して、後に残さない。
それもありじゃないか?
いっそ恨まれたほうが、楽なんだが。
難しいものだな。
[呟くコエ]
これでいいのか?
よくわからない。
ゲルダにもこうして、手を差し伸べてあげるべきだったのか。
[答えの返ることのない、コエは自問のように]
心を残してきたことは後悔しない。
残された心が支えになることも知っているから。
[それは死んだ母のことだったかもしれないし]
[気丈に振舞おうとしていた食堂の少女のことだったかもしれない]
けれど泣くくらいならという気持ちは分る。
幸せになってもらいたいというのも分る。
[息を吸って吐く]
ユリアンの所か。
ありがとう……いってみるよ。
[少し強張った微笑でゲルダに頷く]
[ウェンデルもまだ傍にいたなら片手をあげて背を向けた]
[距離も時間も曖昧な感覚に包まれて村の外れの茸畑へと向かう]
─道具屋─
うん?
………え…?
[いつもの飄々とした様子ではなく、言い難そうにしているエーリを怪訝に見て。
続いた言葉が、一瞬理解できなくて。
強張った笑みが浮かんだ。]
やだ、そんな冗だ…
[言いかけて、エーリがこんな冗談を言うわけがないと口をつぐんで。
俯いて、小さな声を絞り出し。]
…エーリとユーディが、側にいてくれたの?
[兄の最期を聞いた。]
─道具屋─
[イレーネの笑みが強張る。それを見て、軽く眉を顰めた]
俺は、直接見たわけじゃないんだ。
ここに来た時にはユーディットしか居なかった。
ユーディットから消えたと、聞いたんだ。
[自分が知り得る限りをイレーネに告げて。最後の言葉と共に視線は腕の中のユーディットへと*向けた*]
そう言えるレナーテが…少し、羨ましい。
[自分が残したものは、嘆くものにしかなっていないような気がして。
誰かの支えになったろうかと、どこか遠く思った。
分る気持ちもあるといわれれば、こくりと頷き。
礼には緩く首を振った。
去り行く背を見送り。
こちらもふらとその場を離れた。
ウェンデルがまだ居たなら、家に言ってみると告げて、一度パン屋の方へと戻った。]
─道具屋─
……そう。
ありがとう、ユーディ。
…レナの傍に居てくれて。
[エーリの言葉を黙って聞いた後、ユーディの頭を緩やかに撫でて。
ユーディに向けた微笑みをそのままエーリに向けた。]
…ごめん、エーリ。
ユーディ、送っていってあげてくれる?
[どのような返答が返ってきただろうか、それに対してはユーディのこと頼むね、とだけ返して。
二人が見えなくなるまで見送ると、店内に入って兄が作業していたらしい跡を見て、子供の頃母の狩りについていく兄が羨ましくて駄々をこねた時を何故か思い出した。]
…また、置いてかれちゃった。
─ユリアンの家─
ユリアン。
でも、
[でも。と、重ねかけて、黙り、]
─── ボクは、嫌な…子、だ、な。
[レナーテにも、エーリ兄にも。嫌われてしまう。と、自嘲のような泣き笑いを浮かべた。]
レナーテでなければ、
イレーネだったかもしれない。
…ユーディだったかもしれないんだ。
レナーテは。
覚悟を、していたはずなのに、
なのに。
…… 違っていたら、いいと、思ってしまったのだよ。
[ふる。と首を横にふる。]
…なでてもらえないのも、ふれてもらえないのも、
あの紅い目を、もう、みつけられないのも
いやで、いやで、さみしくて、
かなしくて、ひどく──くるしいが、でも
…っ、
[声が詰まり]
どう──して、レナーテだったんだ?
[声が尋ねて、ぱた。と、翠から滴が溢れて頬を伝う。]
どうして。
[答えの返らない問いを重ねて]
─道具屋 店内─
[思わず零れた呟きは、誰も居ない店内に思いのほか響いて。
堪えていた涙が、耐え切れずに流れ落ちた。]
兄さ…にい、さん…っ…
……おにい、ちゃ…んっ…!!
[名を呼んで、子供のように泣きじゃくって。
その場にしゃがみこんで、*泣き続けた。*]
どう、して、ボクは。
こんなに、未熟、なの…、だろう。
ボクだけが、悲しいわけじゃ、ないのだよ。
こんな、……
ボクの元には、確かに、
遺して──もらった、大事なものが、あるのに。
[ぎゅう、と服を掴む指が震える。]
どう、して、こんなに、
胸に…、穴が、あいたような、
気持ちが。するの、だか───…っ
[泣くを恥じるように顔を隠す様に、腕に顔を押し付けて]
う、ぁ、
[──その。]
ふ…、ぁっ、ぅ、ぁあ、…っ
[押し殺したような泣き声が続くのは、感情に振り回されることに疲れて、そのまま。──子どもの様に、糸が切れたように*眠りについてしまうまでの、間の事*]
/*
お兄ちゃんのばかああああああ!!!!
っていうかラ神のバカーーーーー!!!!!
ミハエル泣かすなよぅ…(めそめそ
語り部見習い ミハエルが時計を進めました。
[ユリアンの家にいたのは感情の波に耐えるミハエルだった]
[口にされる言葉一つ一つに抱く感情の重さが窺える]
[そうしてしまったのが自分かと思うと胸が酷く痛かった]
すまない…すまない。
苦しませるようなことにしてしまって。
何もしてあげられなくて…。
[ゲルダの気持ちが特によくわかる気がした]
[それでもと思う自分はなんて我侭なのだろうか]
[ユリアンに縋り泣く姿を見つめながら身体を震わせた]
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