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[闇に紛れ、人から隠れ、その部屋に向かった衝動は何だったのだろう。
ウェンデルは確かにその部屋に行った。
そしてこの本を手に入れた。
――人狼は、人間に戻れない。
雑な字で書かれたページをつい開いてしまうのは、
希望なんて無いのだと、自覚したかったからかもしれない]
[大切な人間を喰った時、彼は狂気に染まってしまった。
己は、だから彼らを喰らおうとはしない。
幼い友人を喰らう事で、
少しずつ箍が外れてゆく事を理解しても、
最後の一つだけでも、残すのだ。
――それが自分を保つ、手段]
[外の音には気付かなかった。
悲鳴があったとしても、出て行かなかったに違いない。
喉の渇きを覚えて食堂へと向かいかけて、
其処で漸く、ゲルダの死を知った。
カルメンはエーリッヒに連れられた後の事]
また水、流さねぇと。
[赤い色を見ながら、呟く。
ゲルダを見る目には、哀れみの色が*混じっていた*]
[ゲルダのことが一段落ついた後、ブリジットのところへと戻って鍵をかけて寝るよう告げて。
それが実行されたのを確認してから宿屋を後にした。
部屋を借りるかは少し迷ったものの、その日は自住居穴へと戻って行く。
その頃にはもう、リスも大人しくなっていた]
─ 翌朝/自住居穴 ─
[その日の目覚めを齎したのは───リスの鳴き声。
昨日、ゲルダが殺された時と同じ鳴き声を奏でているリスは、一際忙しなく部屋の中を動き回っていた]
…ん……なん、か…今までで一番…酷い……?
[耳に届く音に軽く眉を顰め、右手で右耳を覆う。
朝食も準備せず出る支度をして、ふと、仕事道具である裁ち鋏が目に入った]
────………。
[ゆるりと手を伸ばし、その重さを確認するように両手で持ち、隻暗緑で見詰める。
脳裏に浮かぶのは昨日見た紅い光景。
少し逡巡した後、それはズボンのベルトに差し込まれた。
紺のコートを羽織れば硬質なそれは傍目からは隠れてしまう。
いつものようにリスをコートのポケットに入れると、宿屋を目指して自住居穴を出た]
─ →翌朝/宿屋 ─
[目覚めに聞いたリスの鳴き声は嫌な予感しか齎さない。
宿屋に入ると挨拶と共に朝食の準備も頼んだ。
アーベルが居たなら、ブリジットのところへ行って来るとも告げる。
行き先の宣言をした後、早く彼女の無事を知りたくて昨日共に居たブリジットの部屋へと向かった]
ジティ、おはよう。
起きてるかしら?
[三度のノックの後、部屋の中へと声をかける。
無事であればと言う想いが急いて、鍵が壊されていることに気付くのが遅れた。
返事が無いことに焦り、ドアノブへと視線を落として。
そこで初めて扉にある異変に気付く]
────っ!!
[それを視認した後、勢い良く扉を開け、部屋の中へと一歩足を踏み出した。
ダンッ、と、勢い付いた扉が壁にぶつかる音が響く]
あ、ぁあぁ、ああぁあぁ────!
[大きな叫びではない、震える声が口から零れ出た。
先ず目に入ったのはベッドと床を汚す紅。
その下を探して視線を彷徨わせると、力なく横たわるブリジットの姿が隻暗緑に映った]
い、や………そんな………!
[両手で自分の顔を挟んで、緩く、首を横に振る。
髪が乱れ、常ならば隠れている異眸の瞳が光の中に晒された]
いやぁああぁあ! ジティ───!!
[ようやく上がる叫ぶような声。
部屋の中へと駆け込んで、骸となった少女を抱こうと手を伸ばす。
喉を食い破られていて、身体を持ち上げるとカクリと首が後ろへと落ちる。
千切れそうなそれを慌てて左腕の肘で支え、ブリジットの上半身を抱え起こした。
腹部が不自然に折れ、空っぽになっていたそこから溜まっていた命の源の残りが零れ落ちていく。
胸にも、腹にも、二の腕にも、腿にも齧り痕が残っていて。
その凄惨な姿に赤と暗緑の瞳から、はらはらと滴が零れ落ちた]
ぅ、ううう……あああぁああぁあぁあああ!!
[泣きながら少女の骸を抱き締める。
顔の横に来たブリジットの頭にも抉られたような痕があり、その中に収められていたものも欠けているようだった]
[エーリッヒは誰かが来るまで泣き続ける。
リスがポケットから飛び出し廊下へと出て。
何かを訴えるように「ギー!ギー!」と鳴きながら、宿屋の中を走り回って*いた*]
[誰を襲うかの算段にエーリッヒの名が出ても>>4:*22>>4:*24
女は二人の食餌に口を挟まずにいた。
ノーラとウェンデルの二人以外の人狼が
そんな話をしていたら即座に聲を発していただろう。
対象がブリジットへと移ろえば>>4:*23>>4:*24
心の何処かで安堵してしまう。
偽る事を決め覚悟を決めて二人に向けた囁き。
案じるノーラに聲返した後、
ウェンデルの囁きが聞こえて>>4:*11]
――…うん、わかってる。
気をつけるから、ウェンも、気をつけて。
[何が起こるかわからないからと言い添えて案じる聲を返した。
その夜は、――二人と行動を共にする事は出来なかった]
― 回想/了 ―
― 翌朝/宿屋 ―
[今日も悲鳴が届いた。
今日も男は、目が覚めた。
唇を舐めて起き上がり、声の方へと足を進める。
栗鼠が騒ぎ立てるのを見たが、自分の方にはやってこなかった。
ちょこまかと走って行く]
――エーリッヒ。
[部屋の入り口から、声を掛ける。
彼が抱く存在に、男は一度視線を向けて、そして足を踏み入れた]
弔うぞ。
手を離せ。
[エーリッヒの手をぽんと叩く。
声も、表情も静かだった。ただ事実を、受け入れる様に**]
神学生 ウェンデルが「時間を進める」を選択しました。
─ 前日/食堂 ─
……確かに、な。
想いの巡りは多用……一概に、どちらが是で非で、とは、言う心算もないが。
[エーリッヒの呟き>>44に、漏らしたのはこんな言葉。
自身もまた影に身を潜めるから、そこの是非は論じる気はなかった]
……汚したくない?
[告げられた言葉>>33に、微かに眉が寄る。
けれど、それ以上の追求は躊躇われたから、何も言わずに、ただ]
……無理は、するなよ。
[短くそれだけを告げて、玉はポケットへ落とし込み。
一度部屋に戻ると、玉の入った袋と横笛を持って、宿を出た。
外に出たなら、当然の如く、団員に呼び止められるが]
……泉に行くだけだよ。
どこにも逃げようなんてないんだから、仕事くらいは普通にやらせろ。
[冷えた翠を向けて淡々と言い切り、それ以上の反論は無視して泉へと向かった。
道の途中──団長が発見された場所では、また引き止められたものの、同じように押し切って。
玉泉までやって来ると、は、と大きく息を吐いた]
─ 前日/玉泉の辺 ─
[ぱしゃり、と音を立てて、玉を収めた袋を泉の水に浸す。
組紐の袋が水の中で揺らめくのを見つつ、巡らせるのは、思考]
……それにしても、やっぱり腑に落ちん、な。
何故、誰も襲わなかったのか……喰らうに満足したのか、殺めすぎて隠れ場所がなくなるのを畏れたか……。
……それとも、単純に、襲える場所にいなかったか。
喰らおうとする本能を拒否した可能性……も、捨て切れん、かな。
[考えられる可能性は複数。
その内、喰らうに満足した、というのは今ひとつ、ピンとこない。
その理由は、食堂でゲルダに答えたものなのだが]
……ったく。
見えるものが多いからこそ、見えるものにだけ惑わされるなって事なんだろうが。
ここまで曖昧だと、さすがに投げたくなるぜ、親父……。
[口をつくのは、愚痴めいた呟き。
見分ける力がある、と言い出したものが二人になったことで、要素は増えて。
それと、自身から見えるもの。
そこから、導き出せる答えは何か、思考は巡る]
最初の旅人の時……は、ちょっと置いといて。
……団長が襲われた時と、ロミが襲われた時。
それから、誰も襲われなかった時。
誰がいて、誰がいなかったか、は、ちょっと把握しておいた方がいいかも知れんな……。
[ここらは、女将かアーベルに聞けばわかるだろう、と、思考に区切りをつけて]
……問題は、どちらが真実を言っているか、か。
[思考が向かうのは、ゲルダとカルメン、二人の事。
伝承や御伽噺でも、同じ力の持ち主が存在した事例は見た事はない。
死者から解を得る者が失われた現状、どちらが真実を告げているのかを見極めるのは重要なのだが]
……………………と、いうかだな。
これって、俺としては非常に、頭の痛い比較なんだが……。
[人と判じられた者たちからの見極めは、色々と頭が痛かった。
しばし考えを巡らせるものの、結局はまとまりつかず。
気を鎮めるべく、横笛を構えて音色を紡ぐ。
洞窟の水音に重なる調べは、異国の子守唄。
父が遺した、遠い血の記憶に纏わる数少ないもの]
……いつか、行ってみたいっていうのは。
叶わない、かな……。
[一頻り、曲を紡いだ所でこんな呟きを漏らし。
泉に浸した袋を引き上げ、宿へと戻る。
戻った先に待ち受けるのが、赤の跡と、ゲルダの死の報せとは知る由もなく。**]
細工師 ライヒアルトは、神学生 ウェンデル を投票先に選びました。
/*
くろねこさん雷の中お疲れ様です。
カルメンから何かあるかなーと思ったけど、時間掛かってるのかしら。
ウェンに返して着替えてこようかしらね。
/*
とりあえず、とっかかりは作ったんで、投票先は暫定ここ合わせ。
つか、守護者視点からの独自考察は。
やると楽しいんだが、纏めるのが辛い。
とはいえ、ここしか取っ掛かりないからね、うん。
情報取得のペース配分見誤ったなあ……。
…ウェン、シーツ、取って来てもらって良いかしら。
あと、タオルも。
[次の行動へ移るための気持ちの切り替えは早かった。
手の甲で滴を拭いながら、ウェンデルに頼みごとをする。
シーツとタオルが届いたなら、広げたシーツにブリジットを横たえ。
彼女の顔についている紅をタオルで拭ってやる。
自分の手もタオルで拭ってから、ブリジットの骸を丁寧にシーツで包んで行った]
……誰か、自衛団に……。
ジティを、家に帰してあげて。
[懇願するような声。
護れなかったと言う意識がエーリッヒを疲弊させる。
誰も自衛団員に近付きたがらなかった場合は後で自分で伝えることにして。
アーベルに断りを入れて湯を借りることにした。
紅がべったりとついたベストはそのまま処分することになる。
顔や手に残った紅が取れるまで、エーリッヒは浴室から出て来ない**]
― 回想/前日廊下 ―
[薄れゆく意識の中、名を呼ぶ声とリスの鳴き声が聞こえる。
伏せた睫がピクと震え、反応を示した。
肩を支えるエーリッヒの腕を感じ、重い瞼を持ち上げる。
視点定まらぬ蒼が彼の姿を結ぶのに僅かな間が空く]
――…ぁ、…エ、リィ 。
[怪我の有無を問われれば
亜麻色の髪が微かに揺れて、首を横に振ったのが辛うじて伝う]
…………、
[何か言おうと淡く開かれたくちびるは音を為せぬまま。
彼の腕の中で意識を手放し、部屋まで運ばれる事となる]
― 回想/了 ―
―宿屋個室―
[僕が死んでしまったことも。
死んでしまったはずなのに、それで僕の存在が終わらなかったことも。
終わらなかった所為で――こうして今、大好きな人の嘆きを見て、聞いてしまっていることも]
……。
[僕はその人を良く知っているはずなのに、こんな表情は今まで見た事がありません。
怒ったり、泣いたり、そんな負の感情と無縁であるはずがないのに、僕の前ではいつも笑って、元気づけてくれました。昨晩>>46だってそうでした。
その見た事のない、見たくなかった表情をさせてしまっているのは、まぎれもなく僕の所為です。
彼の抱く、僕の亡骸の所為です]
[昨晩、彼と一緒に居る時、僕は何かの音を聞きました。
だけど様子を見てくるという彼の言葉に甘えて、自分で確かめに行こうとはしませんでした。
刺繍師さんが居なくなってしまったのを聞いたのは、その後のことです。
自分を庇ってくれた人のことを、結局僕は最後まで信じきることができませんでした]
……。ねえ、
[これはその報いなのでしょうか]
― 翌朝/自室 ―
[いやな夢を見ていたように思う。
ピク、と指先が跳ねて、目を覚ました。
よく知る宿屋の部屋の天井が見えた。
如何して此処で寝ているのか分からなかった]
……?
[分からぬまま、記憶を辿る。
エーリッヒに支えられた一場面が蘇り
如何してそうなったかを続けざまに思い出した。
血に濡れたゲルダの姿が脳裏に浮かぶ。
肌を、肉を、裂いた感触が――]
……、っ。
[ひ、と引き攣る悲鳴染みた音が漏れた。
右手に恐る恐る蒼を向けるが介抱してくれた彼が
拭ってくれたのか、其処に血の色は見当たらない]
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