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[それでも、追いすがろうとしたのは、自分の意思なのか、夢を見させた祈り子の想いか]
待って、追いかけないで……
[その声は、どこか懇願に近く。
そうして]
………逃げて!クレムお兄ちゃん!!!
[今まで、隠し通そうとしてきた名を、叫んで]
[足止めの効果はあったか無かったか。いずれにせよ、馬で追われることは無くなったから、なんとか逃げ切る事が出来た]
はあ...は...くるし...
[へたり込んだ、その道端が、ヒューゴの家の前だったのは偶然だったが]
[ヒューゴの両親の様子を見に来ていたアルビーネが、外の気配に気付いたのか、外に出て来た]
[最初はうずくまる自分を心配して様子を見に来たのかもしれないが、近付いてから、何かを感じたようで]
え...アルビーネ、さん?
[同時に、自分も彼女の中に、強い力を感じる。これほど近付く事がなければ、気付けなかっただろう、それ]
そう、か...貴女も......
[『祈り子』の力は、さすがに今は使えない、けれど、睡蓮の花弁は、まだ手元にあった]
だめ、なんだ...
[手を伸ばし、柔らかな花弁で、屈んで覗き込んできたアルビーネの頬を撫でる。封じの力は、平等に働いて]
まだ...捕まるわけには、いかない...
[崩れ落ちる身体を、懸命に支えて、そのまま横たえる]
ごめん、ね、僕には運んであげる力も無い......
[祈り子の力を使う事が出来ても、何も出来ないままなのだ、と...]
[せめて、と、ヒューゴの家の中から毛布を探し出して、アルビーネの身体にかけて、それから、またあてどなく、歩き出した]
[引き寄せられる様に向かうのは、森の方向**]
[会ったのは偶然。
けれど睡蓮の花弁を使ったのは意志をもってに思えた]
――…ん。
[髪に隠れ片方しか見えぬ眸が僅か伏せられる。
夢の中で懐いた感情と仄か重なりかけて]
邪魔する気なんてなかったけど
……邪魔、だったのかな。
[未だ彼に疑いを懐いてもいなかったアルビーネは
理由が分からず困ったように眉尻をへなりと下げた*]
[封じられたままあれば誰にも迷惑かけないだろうか。
少なくとも封じようと思った者がいる事を理解している。
今、こうして肉体と意識が切り離されるはその証。
十二年前に封じられるはずだった。
首に名残をつけたひとが封を望んだか死を望んだか
相手が誰かも忘れたアルビーネにはわからないけど]
十二年の猶予。
優しい恩人たちと暮らした日々はしあわせだった。
村のみんなもやさしかったし
クレイグに本のことをきくのもたのしかったし。
[自分にとっては十分すぎるほど充実した日々だったと思う。
だから自分はこのままでもいいかな、なんて
ぼんやりとそんなことを思ってしまう]
ああ、でも。
[その場にしゃがみこんで
眠りこむ自身の姿を眺めながら]
本、読みかけだった。
村に伝わるお話の本も、まだ読んでない。
[心残りと思えるものをぽつ、と零す。
他にも気になることは――。
他にも気になるひとは――。
はっきりと浮かびはするのに
言葉にするのは躊躇われて、
くちびるから漏れるのは物憂げな吐息だけ]
心配させちゃうかな。
[誰を、とは言わず]
無事でいて欲しいな。
[誰が、とは言わず]
ごめんね。
[支えられてばかりだったように思い
支えとなれなかったことを悔いて
零したのは謝罪の言葉**]
/*
よくよく考えたら私も結構判定タイミングとか逸脱してるね…。
人のこと言えん。
よし、気を取り直してクレム君追いかけよう。
[人も少なく静寂に近い大気を震わせる声はどこまで届いたか。
ヒューゴ以外にも届く可能性は大いにある]
ヒュー君、ビーネちゃんも眠らされちゃったみたい。
こんなところで寝るなんて考えられないし。
[一見すればその場で寝ているだけにも見えるけれど、アルビーネはわざわざ外に毛布を持ち出して寝るなんてことをする子ではないはずだ。
そんな推測も交えヒューゴに状況を伝え、手にある睡蓮の茎を握り締める]
…ヒュー君、あと、お願いして良いかな。
私、ちょっと森に行って来る。
[ヒューゴから他に問いがあるならそれに答えてから、行き先を伝えその場を離れた]
─ 村中 ─
…いや。
何時まで眠り続けたままかも今はまだ解らんが、少しでも早く対処を見つけてみせる。
不安にさせたままですまんが、様子見を続けてくれ。
何か変わりがあれば、すぐ診に行く。
[家族を案じる村人と別れ、当初の予定ではない方向に踵を返す。
親しい者まで眠り込んでしまったと知り、気掛りを確認しないではいられなくなったからだ。
昨日の別れ際に男がした頼みを聞いてくれているなら、恐らく彼女は両親の傍にいてくれるはずだと踏んだ読みは、当たっていたのだが]
…何だ?
[聞こえた声>>29の響きと、名前に駆け出す。
そうして見えた姿>>27に瞳を見開いて、傍らに膝をつき]
………アル、まで。
[家に来た当初の呼び方に戻ったのは無意識。
ポラリスからの推測>>30を聞きながら、毛布を落とさぬようにアルビーネの身体を抱え上げる。
アルカとエリィゼもポラリスの声でこちらに来ただろうか、だとしても男に挨拶などする余裕も無く]
ポラリス。
これは、この眠りは、どうしたら目が覚める。
『封』を破った者が眠りにつけば良いのか。
それとも『封』を戻せば良いのか。
そもそも、『封』は戻せるのか。
[浮かぶ疑問を勢いのまま問いに投げる。
答えが聞けたなら心にとどめ、解らないと聞けばそれ以上問いを重ねることはせず。
森に行くという彼女を見送ると、男は抱き上げたままのアルビーネを寝かせる為に家の中へと入っていった]
[例え眠っているとしても両親と彼女が共に居てくれるなら安心だからと、両親の隣に彼女を横たえる。
それから、その傍らに腰を落とし]
こんな時にまで、頼ってすまんが。
親父とお袋の傍に、居てやってくれ。
己の本分を怠る訳にはいかんからな。
[普通の家族なら傍について心配するのが当然だろう。
だが、同じように眠り込んだ家族を心配する村人達がいる。
それを放って身内にかまける訳にはいかない。
同じく医者であった父も、その妻である母も、すべきことをしないでどうすると蹴飛ばしてくるだろう。
だから。すべきをして、この傍に戻ってくるために。
眠っている家族の顔をもう一度確りと見てから、家を後にした**]
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