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―2階・廊下―
[部屋を出ると、堪えていた咳が零れる。
壁に凭れかかると茨が凭れた腕を大きく引掻いた。
咳が、止まない…止まない。
自分は…俺は、この手で――「何」をした?]
…ッ、グ、ッ、ケホッ!ゲホッケホッケホ…!!
[この手は…助けるための、護るための…
――救うための手ではないといけないのに。]
……とりあえず、は。
薬、もらってくる、か。
[気を抜くと、霞む視界。
動けるうちに、できる事を、と。
そう思い、ナターリエを抱き上げながら、立ち上がり]
……実験室での助手が必要なようなら、行きます。
薬剤は専門外ですが、器材の扱いはできますし、多少はお役に立てるはず。
[ヘルムートに向けてこう呼びかけると、ひとまず二階へと向け、*歩き出した*]
[呑まれていく。]
[思考が…侵食されて]
[衝動(深層)に、呑み込まれてしまう…。]
[自分が自分ではないような…]
[鏡の中に取り残されてしまったかのような。]
―3階廊下―
[ダーヴィッドが蛇を殺す瞬間は見ないようにしながら、礼を言おうと彼の顔を見た。視てしまったのだ。
その瞬間、恐怖で堪えていた涙が零れ
―――落ちる途中で石になって落ちていった。]
…どうして、…
[ゲルダに抱き寄せられて、言葉を聞いて]
……先生が?
[嫌な予感。あの時と、同じ]
うん、がんばる、けど。
でも。
[ゲルダの去っていく足音。
下に敷いてあるものが、手触りでジャケットだとわかる。
そろそろとそこを避けて、立ち上がった]
先生?
又、どこかいったのかな。あんな、酷かったのに。
…ツヴァイさん……。
[つらそうな姿。思わず歩み寄って背中を撫でる。
何か言いたくて、でもなんて言っていいのかわからなくて。]
元気じゃないと、ダメだよ。
…誰かを助けたかったら、まず自分がしっかりしなきゃ。
[労わる手は、背中にぬくもりを残して、階段へと立ち去る。]
/*
とっこみたいけど、それやると睡眠時間が足りねーw
そして、そっちかぁ。
さて、どーなるんじゃろねぃ。
というか。
ほんとに。
何で俺、未だに一票もはいっとらんのかしら。
狂化ない限り、襲撃以外の死亡はむりぽ?
[廊下から、咳が聞こえた。誰のものかわかる]
ツヴァイさんは廊下にいるのね。また苦しいのを隠してるんだわ。
自分だって注射を早く打つといいのよ。
[杖を探して床を探る。指先が、石に当たる。
さっきまで、なかった気がした。そんな場所に、確かになかったはずであるのに]
だ、れ?
[掠れた声。判ったのに。わからない振り]
>>65
ノーラ、大丈夫だ。
[その流れる涙に微笑んだ。]
僕も、ベアトリーチェは好きだよ……。
[そして、ヘルムートがこちらに来る前に、ノーラの横を通り過ぎながら…]
あの子を治すんだろう?
[………振り返って微笑んだ。]
―――………だから、もう少し、時間をくれ……。
[気を失う前に、聞いた音。何かが、切れたような]
……私。
死ぬ気なんかないから。大丈夫だよ。
生きてほしい人がいるから。
護るために、生きるの。
[背を向けて。でも石に語りかけるように]
[エーリッヒに続いて、目の前でユリアンが死んだのがノーラにも応えたのだろうと思う。ダーヴィッドがノーラを追ったのを見て、ライヒアルトとナターリエに身体を向けた。]
ああ、薬がまだだったな。
はやく取りに行くと良い。
[抱きかかえられ無防備に落ちた、ナターリエの右手の皮膚が変色しているのが見えたから、そう言った。薬箱から消毒用アルコールと包帯を少しだけ分けてもらう。]
ナターリエ。
否、何でも無い。
──自分の手当てをしてくれ。
[女性に掛ける言葉は思い浮かばず、結局はそれだけを口にする。ライヒアルトに礼を言いその場所を後にする事にした。
ユリアンの遺体に礼服の上着を掛けてから──遠ざかる。石化しない皮膚が冷えて硬化していく様子が胸に痛く。]
[空間が切り取られたように、自分の音しか聴こえなくなる。
自分の背に感じる温もりに気付いたのは少し後。
振り返った時には、誰もいなかった。]
―――……ッ、…ケホ…ッ
[誰だかはわからない、けれど…
その温もりを感じてから少し咳が和らいだように感じる。
その場から動くことはまだ困難で…壁に凭れたまま
崩れるようにその場に座った。苦しげに息を吐く。]
政治家 ヘルムートは、写眞家 アーベル を投票先に選びました。
ユリアン…。
[場所は、なんとなくわかったからそちらへと真っ直ぐに歩む。]
馬鹿、だよ…ほんっと馬鹿。
自分だけ病気じゃないからって、そんな無理することないのにっ。
[悔しいのか悲しいのか、もうわからない。]
[石の涙が地面に落ちて―――音を立てて砕けた。]
…、…
[ベアトリーチェ。大切な少女の名前。
その名は何だか急に出てきたように思えた。
治したい、護りたい。繋がっているからとか
そんな理由ではなく、その前から思っていた事。]
……っ
[「時間をくれ。」
私達に時間なんて――そんなに残されていないはずなのに。
彼の笑顔に笑みも返せないまま
研究室へ入る彼の背を見送った。]
[痙攣をしていた。苦しかったのだろう。
石になるのとどちらが楽だっただろう。
良くない思考がぐるぐると回る]
……。
[何も言えず、何も言わず。
知らないうちに顔から表情も*抜け落ちていた*]
―→2階へと通じる階段前―
[ライヒアルトとナターリエ、そしてヘルムートの姿もあったろうか。奥へと駆けるゲルダとすれ違っただろう。
その誰にも―――何も語れずにいた。]
[よたよたと足を運んで辿り着いた先は一体の石像の前。]
エーリッヒ…
私は――どうしたらいい?
[弱弱しい笑みが自然と顔に浮かぶ。彼を見て零す涙は石にならず、そのまま頬を*滑り落ちた。*]
[腕を大きく引っかかれたような痕、
血の滲むその先にあるのは、男の利き手だ。
この手で…多くの薬を作って。
この手で…多くの薬を打って。
けれども
この手は…多くの者は救うことができず。
そして
この手で…――――――]
――――…ッ
[衝動のままに…
血に滲む拳を握り締めて。
いばらにぶつけるかのように壁に殴りつけた。]
[気付けば暗闇の中にいた。
先ほど待って体の痛みはもう既に無かった。
まさか、本当に寝ただけ治るとは思っていなかった。
自らの頑丈さに感謝しつつ起き上がる]
よっとっ!!
で、ここはどこ、です?
これはなん、です…………?
[体を起こす。
そこにあったのは横たわる自らの姿。
そして、守ることが出来なかった女性の姿だった。
許容範囲を超えていた、全くもって理解できない。
脳が頭痛というなの抗議をしていた。
だけどその抗議にも答えることは出来ず目の前の光景を呆然と見詰め続けた]
…ヘルムートさん。
[ユリアンの亡骸を離れて、こちらへ向かってくる姿を見あげる。]
先生…オトフリート先生が、亡くなりました。
[殺された、とは言わず…失われた事実だけを告げる。]
/*
寝る前に星占い見たら
「自分の役割をしっかりと自覚しましょう」
っていわれた!
なにこれあたりすぎだよ!
星占いすごいわ…。
……!?
[一度はいばらに当たった利き手は、血を流して。
もう一度と振り上げると背後から聞こえる声。
驚いたように、紺青を大きくさせて]
――…触、れ るな…!!!
[こちらへと伸ばされる手に怒鳴るような声で告げる。
その後ケホ…と、咳がまた零れて。
血の滲む右手を隠すようにして向き直った。
沈黙…長い溜め息が零れて]
――………すまん。
…薬は…効いてきそうかい…?
ッ、…!
[びくり
叩きつけられた声に、伸びた手は途中で止まる。
眼を大きく揺らして唇を噛んだ。]
…、――
[薄く唇を開く。声ではなく、息の音。
少しだけ、眼を伏せた]
…―― … 痛い わ
[だから、効いてる。と小さく謂った。]
ゲルダ。
──ッ
オトフリートも、なのか。
零れ落ちて行くものばかりだな。
[6の部屋で集まった時も、しゃべりにくいそうに右側顔面を歪めながら、ずっとカルメンの心配をしていた記憶がある彼。]
三階では、ユリアンが。
否、言わなくてもすでに、
私には聴こえない声を識る事が出来るんだったか。
蛇の屍骸ばかりだ。
[ずっと礼服の上着を脱いだ状態でいると、白いシャツ姿の自分が何処か無防備な物に思えた。]
ゲルダは大丈夫か?
さっきは随分と辛そうだった。
―――…、……っ
[止められた手に、大きく揺れる眸に。
思わず伸ばしそうになる手を強く握り締める。
床に、擦りつけたような薄い血の色が滲んだ。]
…そ か。
痛みが…、痛みが消えない内に…
治さないとな。
[紺青が数値を窺うと、確かに僅かにだが落ち着いている。
よかったと、言葉にする代わりに息を短く吐いて。
かえるのだと…待っていると、そう言って。
その言葉におびえて涙を堪え続ける少女を、
怖がらない場所へと連れて行きたい。
護りたいと…、そう願うだけなのに。]
……願うことはこんなにも容易なのに……
…叶えることは…なんでこんなにも…難しいんだろうな。
…うん。
薬、効いたから…かなり楽になったよ。
[ユリアンも知っているかと問われて、小さく頷いて。]
難しいよ、色々。
…どうすれば正しいのか、どうすればいいのか判らなくなる。
でも、迷ってるほど時間は…ないんだよね?
……、――
[血の色が見える。
眉を寄せて、じっと見た。]
――そう ね。
……痛くないほうが…怖いかも、しれないわ。
[自分のゆるく手を握った。
紺青の眼を、そしてその頚元を見て
また少し、怒ったような、泣きそうな顔をした]
ただ、… ――そうしたいと
思うだけなのに ね
…―― 誰かの、願い と
―― … 誰かの望み が
ぶつかるの きっと 同時に 為されることは
…難しいの、かも しれないわ
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