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うわあ。
とても聞きたくない話を聞いてしまいました。
耳栓耳栓。
[反射的に、服のポケットを探り。]
……って、仮にあっても意味ありませんね耳栓。
心残りはもうほとんどないのですが。一つだけ。
……お父さん、と呼ばれたかったな、と。
ははっ。生きている間に、お願いしてみれば良かったな。
死者のために、仇をとるかもしれない。
…そう、あの少年もあの女の仇を討つ気だったんじゃありませんか?
[倒れた怪我人の男を一瞥。]
面白いものが見れそうだ。仇の仇の仇…そうやって人は殺し合い、滅ぶ。
[息絶えた少年と、彼を抱き抱える男性。傍で涙を流す少女―巫女―と、頽れ倒れる男性。
彼らを見つめるのは何を想うのか、冥く静かな*翠色*]
[何があったというのだろう?
今、自分の手は新たな血で汚れて
違うのは
それを行ったのは自分だと言うこと。
事故、そういってしまえば済むだろうか?
だけど、あの時、彼に対する負の感情は確かにあって]
俺が、殺した。
そうだ、俺が……ローズを殺した奴と同じ……
俺は……
[思考が闇へと捕らわれて
いつしかそれは深遠へと*飲まれていくだろう*]
その方が、美味。
あなたも美味しい苺を食べるためになら、きちんと世話をするでしょう?
…尤も、人の中で育った彼の人は、僕とは違うようですが。
[ 呆然としていた瞳に光が戻れば漸く足を緩慢に一歩を先へ、広間へと踏み出す。其処に数日前までの平穏な光景は無く、血塗られた凄惨な姿を曝していた。
視界の端で神父が形式的な聖句を唱え十字を切るのが見えたが、其の祈りは果たして天まで届くか、果たしてナサニエルが望む様に柔らかな微笑を湛えた彼女の元へと逝けたのか。――往く先が天の国であるならば、此れが均衡を喪った人間の本性の表れだと云うのならば、此処は正に地獄と云えようか。]
……同じでは、有りませんよ……。
[ 呟いた言葉には昏き思考の海に呑まれゆく男には届いただろうか。]
……ふむ。
では、ちょっと聞いていいですか。
どうせ生者には聞こえませんから。
ハーヴェイ君は人狼ですか?
[胸の内にあった、最大の疑念。]
…単に、姉の好きだった花を集めただけ。
クリスマスローズは「追憶」「私を忘れないで」「私の不安を取り除いてください」「慰め」「スキャンダル」。
この花は猛毒だが、強心剤なんですよ。
他にクスノキとキョウチクトウ。…そういえば紅茶も入れましたっけ。
…彼を死なせぬための薬としてね。
[ 然う、異なるのだ。己が為に食を欲して生を喰らった彼と憎悪の感情の果てに生を奪った男とでは。]
……此方の方が余程生産的だ。
[ クスと哂う聲。嗚呼、もっと喰らってやれば良かったか。]
ああ、「追憶」だけしか載っていなかったのですよ。
私が持っていた本にはね。
ええ、猛毒である事は知っています。強心剤である事は知りませんでしたが。
「私を忘れないで」ですか。
勿忘草の方が有名ですね、それ。
僕は、人々が嘆き悲しみ、疑い合い殺し合うのを見るのを好む。
あなたは、正義の使者が悪者を退治して皆が平和に笑いあうのを好む。
故にあなたは急ぎすぎ、そして死んだ。
ところで人狼さん。
遺体の喰い方がいちいちグロいのですよ。
……見たときちょっと吐きそうに。うっぷ。
[口元を押さえてみる。]
正義の使者、ねえ。
……いるんですかね。
[はて。]
まあ、いつか死ぬだろうとは思いましたから。
色々遺しておいたわけですよ。
確かに、少々急き過ぎましたが。
さて。本日はこれにて。
ちょいと屋敷で覗いてきたい場所がありますので、ね。
また、いずれ。
[恭しく会釈をして*ぼわんと消える。*]
その方が美味だからですよ。
苺も、練乳をつけたりケーキにした方が美味しいように、
人間も生かしたままじわじわ痛めつけて貪った方が美味しい。
事切れたら早く喰わぬと味が落ちるもので。
せっかくの機会、楽しまずにいつ楽しむと?
一口でぱくんじゃつまらないでしょう?
[ 物云わぬ亡骸と成り果てた少年は仄暗いランプの光に照らされ、流れる緋色は敷かれた絨毯にジワリジワリと染み込んでいく。其れは恐怖と狂気が人々の心に沁み込んでいくが如くに。仰向けに横たえられた少年の瞳の濁りを交えた緑玉が未だ薄く覗いているのを見留めれば、そぅと其れを閉じさせる。最期に少年が見たのは憎悪の焔に燃える情景だろうか。]
……メイ?
部屋、戻っとけ。後は、任せて。
[ 永遠の睡りについた少年から薄紫の瞳から涙を零す少女へと視線を移して紡ぐ言葉は、此の様な時でも――或いは、だから――無器用なもので、唯、静かに声を掛ける。*僅かに揺らめきを持つ其の双瞳を彩る色は、何の感情を示すか。*]
…そう、ただ殺すなど本当にもったいない。
トビーはきっと良い味だったでしょうに。
[聞こえた声に*くすりとわらう。*]
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