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―朝―
[屋上から階段をおりてゆく。
あかい足跡が残る度、ぴしゃりぴしゃりと床と靴が音を立てた。
それもまた愉快だ
なにか…だれかにみられている気はした。それでも、それより。]
さっさと流さないとしみになっちゃう
[少しだけ混じった固形の黒ずみが、わずらわしくて目を細める。
足早に向かうは、浴室。
だから上でのことなど、彼女には知るよしもない]
[最後の一段を降りて。
ぱたぱたと体を、服をはらう。
なかなかとれない]
……あーもう駄目かなぁこの服
[くすくすと笑いながら、そういえばショウはどこへいったのかと思う。
いないのならばそれはそれで構わなかった。
誰がいようが、誰がいまいが。
一度桜の薄紅を目にいれただろうか。しかし不快さに近付きはせず]
[桜が、咲いていた。咲っていた。
はらはらと、
薄い色の花弁が雪のように降る。
緋色すらも、覆い隠していく。
その色の中に、溶け込むように。
ぼんやりと桜の大樹を見上げ、首を振る。
ほんの少し遠巻きな位置に、人の姿を見た]
[さっさと体を洗いたくて仕方がない。
一度とめた足をすぐに寮に向けなおした
誰かがそこにいようがいまいが、彼女な決めたことにはなんのかわりもない]
[小さな人影は通り過ぎようとして、
大きな人影は近づいて来ようとしただろうか。
茫と、それを見送ろうとして―――
遠目にも、少女の纏う、色彩の変化に気づいた]
―――…舞子っ!!
[愕然としながら、名を呼ぶ]
……っ、
[痛むのは、傷ではなくて。
胸元を押さえた。
緋に濡れた手は薄い色のパーカーも、
同じ色に染める。
それ以上追及する事は出来なかった。
自分と彼女と、何が違うというのだろうか]
[苦しげな彼の様子に、どうしたのかと首を傾げ。
倒れている体を今更見た]
あれ、さくませんぱい。
しんじゃったんですか?
犯人がわかったら教えるって約束したのにー
[裏庭に向けて備えられている、
いかにも日頃から使われて居なさそうな、錆びた非常扉を開けた。鍵は壊した。歩いたあとに、血痕が残った。
そういえば、フルートは何処へやったろう。
嗚呼、あのとき
ウミを止めに走った時に屋上へ置いたままだった。そういえばあの時はまだ、小さき憑魔も居た。今となっては]
[その言葉を口にする少女は、
まるで何でもない事のように。
また1つ、事実を突きつけられる]
洋、亮は………
…オレ、が。
[顔が蒼褪める。]
せんばいが?
あぁ、もしかして殺しちゃったんですか
[青い顔にそう悟って]
ショウせんぱいは、なんにも悪くないですよ
だって殺したってことは何かあったんでしょう?
[せんぱいは優しいですし、と]
さくませんぱいの分も、ちゃんと犯人……あ、人じゃないっけー
まぁ見付けなきゃいけませんねぇ
[ふと思い出すのはフユの言葉。
気を付けろといわれたか]
[事象として何が起きたのかは、問わずとも明らかだった。解らなかったのは、それが何故起こったのかということだ。しかしその問いに答えられる者は、そこに無く、そして、己自身、問いを発することも出来なかった]
………
[混乱する様子のショウに近付こうとして躊躇い、道場から出て来たマコトが、一人屋上へ向かうのも止めることが出来なかった。一人で行かせるのは危険だと、心の内に警鐘を鳴らすものがあったにも関わらず…そして、再び絶叫を聞く…それが、己の役割ででもあるかのように]
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