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……歌、ね。
[くすり、と笑う。
響く歌声をしばし、目を細めて聴いて。
ふと何か思い出したようにポケットに手を突っ込む。
取り出された布の包みの中から出てくるのは、銀色のハーモニカ。
その表面を軽くなで、歌にあわせて曲を奏でる。
それは、ピアノ主体の作曲をするようになってからは、余り使わなくなった楽器。
僅かながらも思い出があり、いつも持ち歩いていたもの]
ええ、全っ然変わらないんですよ。
あ……でも、少しだけ素直になった、かも?
[にこりと笑って。]
うん、あのときは。お互いに、ですね。
お陰でそうとは気付きませんでしたけれど。
……痛いのは治ったみたいですね。良かった。
[と、ばったんと派手な音に振り返る。]
ハインリヒさん、何やってらっしゃるんですか?
[きょろと、ミリィとユリアンを交互に見て。
少しだけ行きたくない気持ちもあったけれど。]
…うん、行ってくる。
まっててね、ちゃんと戻ってくるから。
[言い後ろを振り返りながら、少しだけ、歳が離れた親友の元へと向かった]
ミリィ、ミリィ!
はいはい。
[ユーディットを見送って、緩やかに、周囲に視線を向ける。
奇妙な光景だと、思った。
馬鹿馬鹿しいとは、思わなかったけれど]
ハインリヒさん。
もっと、空に浮かぶように踊ろう!
此処ではなんだって出来るよ!
大人でも、子供でも、そんなの関係ないってぐらい楽しくなればいいんだよ!
[ふわりと、風に乗って、少しだけ宙に浮かびながらそれでも踊り続けた]
イレーネ。
久しぶり!
避けられていたことも、話せないこともあったから、もしかしたら、ずっと、貴方に嫌われていると思ってたこともあったんだ。
だけど。
それでも、私はイレーネが好き。大好き!
嫌ってくれてもいいから、私がイレーネが好きなのだけは許してね!
さあ―――踊ろう!
なるほど。
彼も変わりますか。
[クス、と笑って。踊る途中でコクリと頷き]
まあ、あの時はまだ。
痛みは癒してもらいましたから。勇気を分けてもらうのと一緒に。
[誰に、とは言わない。
だが愛しいものに向ける視線でミリィを見て]
ハインリヒ、お気をつけて。
[派手な音に視線を転じると軽く笑った。
流れてくる風琴の音色。空と虹が良く似合う旋律]
…ああ。
[戻ってくると言うイレーネの言葉に頷いて。
ミリィの下へ駆け出す様子を見つめる。
腕に抱いた我が子は既に寝息を立てていて。
己にかかる重みに小さな笑みが浮かんだ。
少しだけ、ミリィ達の居る場所との距離を縮めると、輪の外からその様子を眺めた]
[ユーディっトに転んだところを見られた為か。バツが悪そうに腰をパムパムと叩きながら立ち上がり]
っせーな。
床掃除でもしてるように見えるかよ。
休憩ってやつだよ。休憩。
[と誤魔化してはみたが、ある意味ちっとも誤魔化せておらず]
…空に浮かぶように…ねえ?
俺はネバーランドには永住する趣味はねーんだよ。
大人も子供も関係ねーって言うけどな。
俺は今の俺が好きなんだよ。それなりにな。
[とミリィに向かってニカと笑った]
そんなところで休憩って。
ハインリヒさんって、変な人。
[ふとミリィの足元を見遣って、彼女が宙に浮いていることに気付き、目を丸くしたが。ああでもここは多分、何だって有り得るんだ。そう納得した。]
[ミリィの歌声にあわせ、ハーモニカの音色が響いてくる。
ふ、っとそちらに目を遣った。]
……エーリッヒ様!!
[ミリィの手を離して、転がるようにエーリッヒの元へ駆けていく。]
―――うん。
ハインリヒさん。
私も、今の貴方が大好きだよ。
もし、先生に出会わなかったら、ハインリヒさんに惚れちゃってたかも。
[フフッと笑いながら、風に抱かれて踊り続ける。
ふと、ハインリヒの後ろを見ると、その母親が元気に手拍子をしている姿が見えた]
おばさーん!
いつも可愛がってくれて、ありがとねー!
[ユーディットは、ぱたぱたぱた、と駆けてきて――
ばっとエーリッヒに飛びついた。]
すみません! ごめんなさい!
勝手なことして、エーリッヒ様のこと一人置いてきてしまって!!
大丈夫ですか、今は――
ちゃんとお食事も睡眠も休憩もとってらっしゃいますか?
[眉を寄せて心配そうに尋ねる。]
[ハインリヒのぼやきにも笑い]
ああ、君も。随分と立派になって。
[途中でティルもやってくる。
少年から青年への階段を昇るその子の頭を、だが前と変わらぬように何度か撫でて]
ほら、エルザもこちらを見ていますよ。
いってらっしゃい。
[ポン、とその背を押した。
そして視線を外に向け、眠る子を抱く青年を見つけた。
静かに頭を下げる]
っと!
[飛びつかれて一瞬戸惑うものの、直後の問いに、掠めるのは苦笑]
謝らなくていいよ、ユーディが悪い訳じゃないんだし。
ちゃんと食べてるし、寝てもいるから、大丈夫。
仕事も、ちゃんと続けてるしね。
だから、心配いらない。
[問いに答える声は、穏やかなもの]
ミリィ。
[走って近づいて。]
…違うよ、嫌ってなんかない。
好きだよミリィ、私の大事な、…友達。
[親友と、言っていいのかは迷った。だから友達だとだけ伝えた。]
ミリィの絵、綺麗だった。
怖いくらいに綺麗だったよ。
…踊り、うんと、今はちょっと大変、だから。
[歪な両足は上手く動いてはくれない。]
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