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[飼い主にまた抱き上げられる前にと、薄茶猫はするりと足元を離れる。そしていつものように白い鳥を狙おうと目をやり、抱えられてるのを見て興味をなくしそっぽを向いた。
そのはずみに目が合ってしまったアーベルに「ミ゛ァゥ゛(なんだよ)」と不機嫌そうに鳴く。
丁寧に磨かれ透明度を増した青みを帯びた石の首輪と硝子の小さな鈴は可愛らしいが、目付きと態度の悪さは相変わらずだ]
[この道はいつか来た道〜と、思う余裕も無く、妖精の環の周りに集まる人々の間を駆け抜ける。その後からどどどと土煙をあげて、特大イモ虫が通過していったとか]
はいはいはいはい。
[アーベルの抗議は聞いちゃいない。
思いっきりスルーした]
宿を貸すとは言ったが食事の面倒見るとは言ってないし。
/*
そちらが霊能さんですかぁ。
……ええと、占いはどこでしょう?
というか、守護先どうしましょうねぇ……。
初回は、狙われそうにないところに合わせないと。
[しょんぼりしたところで目が合った猫に、不機嫌そうにされた。]
んんん。
……猫君、似合ってるよ。
[かわいらしい首輪に、にへらと笑った]
またたび、おいしかった?
……て。
ええっ!?
[首を傾げていたら、何かが通り過ぎて行った。
が。
通り過ぎて行ったものは、あんまり見たいものではなかった]
……い、今の。
錯覚、ですよ、ね? ね?
[誰にともなく、必死で同意を求めてみたり]
[走って走って走って走って、実はすでにゴギー婆さんが土の中に消えてしまったことにも気付かずに]
みぎゃー!みぎゃー!
ごめんにゃさいにゃーーーーっっ!!
[どうやら、嫌な思い出があるみたいです、はい]
おや、そうなのかい?
それならツィムトに食べないよう良く言い聞かせとかないとねェ。
[ユリアンの翻訳と鈴におびえた妖精にそう言って、降ろした飼い猫を探す。その目の前をティルと巨大芋虫の追いかけっこが通過して、思わず口をあんぐり]
…ゴギー婆さんに怒られるとは、らしいというかなんというかねェ。
[果実を守る芋虫妖精がいきなり襲うとは思わずに、そんな感想]
[疑い向けられて膨れる瓶詰妖精さん。
だが恐らくその指摘は正しい。
と、横切る小さな影。
その後に続く巨大な虫。
びっくりしたらしい彼の手から、妖精入りの瓶が落ちて転がった]
[しょんぼりしながらエーリッヒに返す――]
そりゃそうだけ
[ぴたり、止まった。]
[さっき言ってた猫が、猛ダッシュで走ってきた。]
……普通の芋虫じゃないだろうな。
うん。
[腕を組んだまま頷き、転がっていった方向を見やった]
ここに住んでいる妖精とも思えなかったが。
錯覚錯覚錯覚。
[ぶつぶつぶつぶつ。
何やら、自己暗示モードに突入したらしい]
何も見てない、見てない、見てないのですっ……。
[正確には、見た事を認めたくない、かも知れない。
幼い頃から見知った相手であれば、この反応の意味はすぐにわかるだろうが。
とにかく、イモ虫毛虫の類だけは、どうにも苦手だったりする]
錯覚じゃァないなァ。
わたしゃまだそこまで耄碌しとらんよ。
[ミリィの希望をあっさりと否定し、ひき潰されかけて慌てて逃げてきた飼い猫に目を向ける。さすがに驚いたらしく、転がってきた小瓶にも襲いかかる事なく前足だけを伸ばして恐る恐る突付いてる程度。
妖精さんからはピンク色の肉球がガラス越しに迫って見えてるので結構怖いかもしれないが]
あー。
ミリィ、大丈夫か?
[何処か遠くに言っているミリアムに近寄り、芋虫の通った跡は視界から遮りつつ、目の前で手を振ってみた]
うん、見てないな。見てない、見てない。
[お子様扱いで、頭を撫でようと手を伸ばした。
のは、固まった直後の事]
…おや、ゴギー婆さんはこの森にゃ住んでなかったのかい?
ずっと小さな頃から言い聞かされていたんだがねェ。
[エーリッヒの声に不思議そうに青年を見上げる。
一目見てあれが果樹園を守る妖精のゴギー婆さんとわかった程度にはよく耳に馴染んだ名だが、実際に見たのは初めてだ]
[暫く唖然としていたが、近くの茂みに分け入り。
飛ばされた先で頭でも打ったらしく伸びている妖精王を引っ張り上げた。
指差し示しつつ、こいつどうする?と首を傾げた。
瓶詰妖精さんは瓶詰妖精さんで、落ちた衝撃で気絶しているようです。
迫り来る危機(肉球)にも気付かずに]
……ふぇぇ。
[なんかもう、色々とテンパっているらしい。
ようやく出たのは、今にも泣きそうな声]
なんで、あんなのがいるですかぁ……。
今まで、見た事ないですよぉ……?
[基本的に、悪さしなければ遭遇しない妖精だからというのはさておいて。
苦手なものの巨大化版の通過は、色々とショックだったらしい]
…あらま、あそこまで苦手とはなァ。
ちょいとツィムトおやめったら、おやめ。
それは食べちゃいけないよ。
[言っちまったのは仕方ないとミリィはエーリッヒに任せ、猫に弄ばれてる小瓶の妖精さん救出にかかる。
どのタイミングで気絶したのかは知らないので、なんだかぐったりしてる様子に目を剥いた]
あわわわ!
ちょィとユリアン! 妖精が…!
こっちかな。
[なんだか大変そうだった人たちは置き去りにした。]
……うーん、まあいいや。てきとうに行こう。
おー
[やる気なさそうに呟いて、]
あ、きのこだ。
食べられ……ないな。これは、多分、わらいだけ。
[あたりを見物しながら、進んでゆく。]
俺も、じっちゃにはよく聞かされたけどね。
[ヨハナの声に顔だけを向け]
渡って来たっていうなら別だけど。
そもそもああいうのって、もっと西に住んでるんだよ。
それに、ここって仮にも「妖精に祝福された村」だから、悪戯をするような妖精は早々いられないらしいんだ。居心地悪いのかな。
子供を脅すための、話にすぎないんじゃないか。
[眉を寄せて、憶測混じりといった様子で言う。
何にせよ、あれだけはっきりした形で見えるのは珍しいだろう]
[面白い……のだろうか。
楽しげな声響きは普段聞く彼の声とは違っていて。
これがどういう意味なのか問いかけようと口を開いた。]
あぁ、もう、泣かない、泣かない。
[宥めるように、ミリアムの頭を撫でる。子供ならばともかく、もうすぐ大人になる少女に対しては正しい対処なのかは置いておくとして]
……さあ、わからないけど。
これも、守護妖精の封じられた件と、関係ある……のか?
[問いかけようとして、ようやっと、妖精王も被害にあっていたことに気付いた。ユリアンが摘み上げているのを見て、もう片方の手で、手招いた。
右手の怪我は完治したのか、熱の気怠けさも既にない様子]
おーい、ティー君?
……困ったな、寝てる。
でもどうしてこんなところで。
もしかして寝てるんじゃなくて、倒れてるのかな。
[少し悩んで、その先へ行こうとして、ぶつかった。]
[慌てた声に目を覚ました妖精さん、迫る猫の肉球に驚いてきゃーきゃーと瓶内を逃げ回ります。
鈴の音が遠ざかるのにも気付かないくらいとても元気です。
片やぶら下げられたまま未だ気絶している、誰にも気に止められない妖精王。
白目に半開きな口が何だか不気味です]
[言おうとしていた言葉も思考も、全て目の前を通り抜けて行った怪異に持って行かれる。]
り、竜?
[地を疾走する巨大な長虫に、出て来たのはそんな言葉。
その前を悲鳴をあげて駆けて行った少年の存在は奇麗さっぱり忘れ去られている。]
……いたい。
何、これ。
ううん、あんなはやかったし、ぶつかったのかな。
[つんつんとティルの頬をつついてみた]
仕方ない。
待とう。
運ぶのは骨が折れるし、仕方ないよね。
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