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嗚呼、そうそう。
ウェンデルさんが違うと云ったのは、
不思議な力を持つ人――能力者ではないということです。
クロエさんはどうやら霊能者のようですね。
[昨晩の会話も一応覚えていたらしく、
マイペースに説明としては言葉が足らない囁きを送った。]
─宿屋─
…死んだことを、教える、声。
[クロエの返答に小さく息を飲んだ。この子が、と声には出ず心で思う。声にはせずとも思い起こす単語はライヒアルトが密かに発したものと同じ]
……そうか……それで、あそこに。
…おめぇにその力が備わったのは、良いことなのか良くねぇことなのか…。
[力を持つ者が見つかったことは状況的に喜ばしいことではある。けれどクロエの状態を見ると、精神が持つのかと不安が募った]
ああ、分かったから。
後は、思い出さなくて良い。
[身体を震わす様子にそう声をかけて。アーベルに視線で、部屋へ、と促す。
右手がぺちりと額を叩く。手を当てたまま、しばらく考え込むように沈黙した]
―宿屋・酒場―
…そうくるか。
[クロエの回答とライヒアルトの落とした単語に低く呟いた。
フーゴーの視線には頷きを返し、震える肩へと手を伸ばす。抱き寄せるまでは強くなく、身体を支えて]
親父さんの言うとおりだ。無理に思い出さなくていい。
いいから、今は何も考えるな。
[顔を上げたことでカウンターのダーヴィッドには気づけたが、足音を殺したユリアンが出て行くのまでは気づけなかった]
部屋まで戻れるか?
一緒にいくから。
─回想・夜 酒場─
そう、だな。
こんな、感じか?
ゲルダ。…良いのか?
[仕事道具を持ってきていたので、フーゴーの細工仕事の注文を試しに彫ってみせたりしつつ。
ゲルダが戻ってきたのをみればその手を止めて片付けながら、クロエのことを問いかけ。
大丈夫そうだと言われれば、送っていく、と言って。]
俺も、そろそろ帰る、つもりだった。
一人で帰るより、お前と帰る方が、にぎやかで良い。
[そう言うと、フーゴーに声をかけてゲルダと共に酒場を後にして。
ゲルダを家まで送り届けると、自分も海辺にある自宅まで帰り。
一日の内に色んなことがあり過ぎて疲れ切ったのか、そのまま朝まで横になって。]
─宿屋─
[周りに意識を向ける余裕は今はなく、故に人の出入りにも気づけない。
抱えられていたぶち猫は、ライヒアルトが出て行く様子に、にぃあ、と一声鳴いていたが]
……う、ん。
[伸ばされた手の支えに、震えはやや、静まる。
二人から向けられた、思い出すな、という言葉に頷きはするものの。
焼きついたいろは、容易には落とせそうになかった]
ごめ……なんか、みんなに手間、かけさせて、ばっか……。
[思わず、口をついたのは、こんな言葉で。
戻れるか、との言葉には、しばしためらってから、頷いた]
― 港(砂浜) ―
[サクサクと音を立てながら、砂浜を歩む。
まだ嵐の影響を色濃く残す海は、荒れてうねっている。]
…――昨日は森には行けてませんし、
こちらは適度に切り上げるべきですね。
[潮の流れか、いつも見られるものとは違う種の貝殻を幾許か拾う。
懐から取り出した袋に貝殻を入れてから、一度海を見やる。
踵を返せば、眸に映るのは森。
海の絵の具と、森の絵の具を混ぜたような学者の眸は、
つぃと森へ続く道へと向けられる。
また、サクサクと音を立てて歩む足。
それは人が殺されたことなど感じさせない日常のままに。]
―宿屋―
気にするな。
手間とか思ってやしないよ。
[トン、トンとゆっくりしたリズムで肩を叩く。
頷きが返れば手を貸してゆっくりと歩き出す。
ぶち猫も心配そうに足元から見上げている]
今はゆっくり休むのが仕事だ。
でないとそれこそ皆また心配しちまうぞ。
─宿屋─
そう……かな。
なんか、自分で、ちゃんと、動けないの……情けない、よ。
[気にするな、といわれても、こう言ってしまうのは多分気質。
ゆっくりと歩きつつ、休むのが仕事、という言葉に、ん、と頷いて]
……自分がそれ、言われるとは、思わんかったなぁ……。
店自分でやる、って決めてからは、ウチがかあさんにそう言ってたんに。
[ため息混じりに呟く。
ぶち猫の視線には、へーき、と言いつつ、少し無理して笑って見せた]
─早朝・自宅 アルダー工房─
[夜遅く帰った後疲れ切って眠ったものの、自衛団長に宣言された事由や宿に残してきた体調不良の者達のことが気に係り、早く目が覚めてしまって。]
……朝、か。
[疲れは取れないものの、改めて寝直す気にもならず、シャワーだけ浴びて軽く身支度を済ませると宿に向かうつもりで外へ出る。
自宅があるのが海辺な為、既に仕事を始めている漁師達とは当然顔を合わせる、のだが。
あからさまに顔を背ける者が多く、表に出さないながらも本当に疑われているのだな、と内心悲しく思い。
それでも、あらぬ疑いはすぐ晴れるから気にするな、と声をかけてくれる者もいて、心からの感謝を返してその場を去ろうとした。
その時。自衛団員が慌ててこちらに走ってきた。]
───ライヒアルトの家・早朝───
んん……。
[ライヒアルトに声をかけられて、ゆっくりと薄目を開けた]
おはよー……。
[まだ寝起きの為に頭がボーッとする。
ごしごしと目をこすって、瞳を開かせようとしている間にライヒアルトは早々に自分の予定を述べて、客室である少女の部屋から出て行った]
あー……行ってらっしゃ〜い……ふぁ。
[のんびりとした口調で、聞こえるか聞こえないかぐらいのタイミングで少女は言い、大きく伸びをした]
ん。ん〜〜〜!
どうし、た?何かあ…
[あったか、と聞こうとした所で、自衛団長が殺された、と涙ながらに告げられ。
その言葉が理解できなくて、数拍の時間が空いた後]
………なん、で。
[ただ、その一言が零れ落ちて。
思い返されたのは、昨日の、宿屋での事。]
―森―
Once upon a time …
[むかしむかし、そうかたりだすのは、ものがたりの常。
目をとじたのなら、うかぶ情景。
人と、そのなかにまじる狼のものがたり]
…ここは、こんなにしずかなのにぃ。
[森自体は数日まえの嵐で荒れたかたちになっているが。
それでも梢のふれあう音が、しずけさを引き立てる。
とぎれとぎれにつぶやくのは、瞼裏のものがたりの断片]
―宿屋―
そう思えるのは立派なところだけどな。
……たまには頼る側にもなっとけ。
無理して笑ってばかりいるな。
[少しの距離を時間かけて移動しながら、苦笑混じりに返す]
……あれ?
[ある程度、頭の回線が繋がってから、少女は自身の体にしっかりと掛け布が掛けられているのに気づいた。
それから、なんとなく夢見が良かったようなことにも]
……?
[思い出そうとしても、あまり昨日のことは思い出せない。
なんか、とても嫌なことがあったような気がするが……]
みゅう。
[小さく呟くが、思い出せないことを気にしてもしょうがないので、もそもそと寝床から這い出して、身支度を済ませると、食堂へ出向き、用意してある食事を食べ始めた]
うん。初めて食べたけど、これ美味しい。
[そう言いながら、少女は上機嫌で食事を平らげた]
[食事を終えると、途端に暇になった。
せめて、居候になっているのだから、掃除をしようだとか、洗濯をしようだとかの、家人に対して何かをしようなどという心構えは全く無いようではあった]
うーん。
[とりあえず、ころころと転がってみたが暇なことには変わらず、何をしていいのかと持て余す]
私も外に遊びに行こっかな。
何処に向かうかは、その時の足の気分により、って感じでGO!
[そう言うと、そのままの勢いで外に飛び出した。
当然、鍵はかけていない]
―自宅―
[簡単に珈琲だけを飲んだ後、昨日のギュンターの言葉を思い返して気が重い、と言うように吐息をもらす。]
誰か差し出せ、といわんばっかりだったもんなあ……
[どうしたものか、と悩むように呟いていれば、ふと、玄関のほうが騒がしくて。
なんだろうと思って外を覗けば、住民たちがどこかざわめいている。]
─宿屋─
[苦笑まじりの言葉に、黒の瞳は唐突に伏して。
微かに走った震えは、伝わるか、否か]
……そう、言われたって。
自分でやらないとなんない事、たくさんあるの、事実、だモン……。
[間をおいて返したのは、どこか拗ねたような響きの言葉]
他に、誰も、いないん、だから。
[甘えを是と出来ない気質は、こんな状況下でもそうは抜けないようで]
[脳裏に浮かんだそれは、つまり自衛団長の言葉が正しかったことを示すもので。
しかし、それを信じるということは。
あの場に居た者の中に人狼がいるということ。
疑わなくてはならないということで。
あの中の誰かが、自衛団長を殺したということ。
呆然と、その場に立ち尽くす己に、事を伝えにきた自衛団員は泣きながら、お前がやったんじゃないのか、と言いたげな視線を向ける。
その視線をまっすぐに受けながらも、やはり、しばらく動く事は出来ず、ただ、涙だけが零れ落ちた。]
───広場───
〜♪
[早朝故に、人の数は仕事場に行く人の分だけ多く、いたるところに人が行き来しているはずなのだが、今日に限ってはその数も少ない。
島ということで、猟師の数が多く、更に早くから海にいる者が多いということもさることながら、それ以上に、ある事件が起こり、そこに人が集まっているということが一番大きかった。
そんなことも露知らず、人の少なさに上機嫌になりながら鼻歌を歌い、少女はぽてぽてと歩く]
……?
[いや。
少女の鼻がひくひくと動いた。
潮風に混ざり合いながらも、微かに漂うその匂いを、少女は敏感に感じ取った]
……これって……。
/*
い、一番つつかれると怖いところに、真理つつかれたたたたた。
[くろねこ、動転したっ]
中身バレは今更だろうから、くろねこの地雷気質はわかってらっさると思うのだけど。ど。
……突っ走って、いいんだろか(汗。
拘束性高いタイプの地雷なんで、色々と心配が。
[なら仕込むなと。
デフォセットなんだよ!(なんですかそれ]
[少女にとって、その匂いは非常に身近なものだ。
いや。身近なものだった。
だが、記憶を失ってからの短い時間に、その匂いを感じることなど無かった。
ましてや、記憶を失う前だったとしても、これだけ遠くから感じるぐらいの大量の匂いなどはありえなかった]
みゅう!
[それが一体何から放たれている匂いなのかが心配になった少女は、急ぎそちらに向かおうとして、足がもつれてこけた]
んきゃ!
[受身を失敗して盛大にこけながらも、すぐに起き上がり、少女はその現場へと向かう]
―路地―
[ヘルムートの言葉には無言で頷き了承を示した。
集まっていた人は団員の手により徐々に散り始め。
結局内部での反対もあったか、遺体を教会に収めることは拒否された]
……やれやれだ。
[少し離れた場所から血の跡を見つめながら、煙草に火を点ける。
紫煙が一筋立ち上った]
[周りに居た漁師達はとにかく団長の元へと詰め所の方へと向かうが、周囲に誰も居なくなった後もいまだ動けず。
何時間過ぎたか、それともほんの数分か、立ち尽くしたまま海を見つめていると、幼馴染の姿が見え。
ようやく身体が動き、そちらへと声をかけた。]
ライ。
………聞いた、か?
[問いかけるのは、団長のこと。]
─宿屋─
[クロエがアーベルに連れられ宿泊部屋の方へと向かった辺りでフーゴーは額から手を外した]
(あの様子じゃクロエの意思とは関係なく力が発揮されてるようだな。
死者を判じる力。
もしかしたら生者を判じる力よりも精神的にはきついか)
[『死』はそれだけで悲しみを生む。それを強制的に伝えられ、更にはそれが何者だったのかを知らされてしまうクロエの力]
(無理はさせたかねぇが……探すためには必要な力、なんだよな…)
[額から離れた手は胸の前で腕を組む。しばらく思考が続いたが、一度気分を切り替えるように頭をゆるりと横に振る。そうしてようやく周囲に視線を向けた。
風邪が辛そうなダーヴィッドには無理しねぇで寝とけよ、と声をかけ。自分も腹ごしらえするために一度厨房へ。適当な料理を作り上げると、厨房に居るままそれを腹に収めた]
[カウンターに戻ると昨日ヴィリーが作ってくれた細工がそのまま置かれてあり、それを一つ手に取る]
……本格的に頼む暇は、ねぇな。
[小さな嘆息。それでもその細工はカウンターの上に飾り付け、装飾へと変える。その後、店のことはリッキーに任せ、フーゴーはパイプを手に店の外へ出た。いつもの一服のように出入口傍の石へ腰かけ、何かを考えるようにしながらパイプから煙を吐き出した]
─ →宿屋外・出入口傍─
……あぁ、そうかい。
[丁度その頃か、律義にもクロエの無事を伝えに来た学者にはそう言って。
背を見送りつつ、煙の混じった息を吐いた]
ったく、面倒な容疑掛けて逝きやがって。
どうやって見つけろってんだ。
[ぼそぼそと愚痴を零す]
― 港 ―
おや、ヴィリーさん、
もう、こんにちはでしょうか?
[森へと向かっていた足は、しかし、
立ちつくしていた幼馴染の姿を視界にとらえると、ひたりと止まる。]
…――嗚呼、見ましたよ。
[傍から見れば会話になっていないだろう会話。
幼馴染みの阿吽の呼吸で、何について尋ねられているのか悟り、
短く返す言の葉。
表情は常と変らない無表情で、ひとつ頷いた。]
───殺害現場───
……!
[少女がその場で見つけたものは、とてつもなく恐ろしい物体。
つい昨日ぐらいまで生きていた生物が、まるでおもちゃのように慰みにされて静物にされてしまった物。
思わず、少女は目を見開いて、それをじっと見つめ続けた]
……うう。
[多少なりと、その壊れた物体の顔が判別できたが、見たことも無い人物の顔だったことは、少しだけ安堵できた。
それでも、もし、そこにあったのがライヒアルトだったのならば、と思うと少女はとてつもなく不安に駆られた]
[住民たちのざわめきを不思議そうに見やり、ふと、何かを思いついたように瞬く。]
犠牲者、とか……?
[一つ吐息をもらしながら小さく呟き。
そして、ちょうどこちらを見た自警団員と視線が会えば、それが此方へと向かってくるのが見えて顔をしかめた。
ため息をついて団員を出迎えれば、団長が襲われたこと、クロエがそれを発見したことなどを告げられて――]
え、クロエが……?
なんで……
[団長が襲われたときいて僅かに青くなるものの、それよりもクロエが発見したと言う事に、驚く。
伝えるだけ伝えた団員が疑いの目を向けてくることも気にせずに、ふるりと首を振って歩き出す。]
[幼馴染から挨拶をされれば、あぁ、と自分も挨拶を返し。
みた、と言われると表情を翳らせて]
そう、か。…他、には。
[誰か犠牲にあったものがいるか、変わったことがあるか、と短く聞いて。
幼馴染の隣には昨日と同じように少女の姿はなかったが、そちらについてはもう心配はしていなかった。]
……。
[少女はうつむき、嫌な未来を拒否するかのように、呟く]
……ヤだ。
[小さいながらも、しっかりとしたその響き]
ライヒアルトがいなくなるなんて、ヤだ。
[それは、はっきりとした拒絶の言葉]
失いたくないもん……ライヒアルトは、私の道しるべなんだもん……だから、絶対にヤだ!
[涙目になりながらも、最後には大きく叫んだ]
─宿屋─
だから。そうやって自分だけで何もかもしようとするな。
こんな時くらい、少しはこうやって…寄りかかれ。
[身体を支えていれば、小さな震えでも感じられてしまう。
暫し躊躇い、溜息をつくと寄りかからせるよに腕を回した]
嫌になったら振り払っていいから。
変わってやることはできないしな。
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