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……やっほ、じゃねぇだろ。
[凄惨な骸。
日常生活では死体慣れなど当然してはいないから、長時間の直視には耐え難いのは確かだが。
過去の記憶と、超常体験は、最低限の冷静さを保たせた]
……確かに、疲れてたかもな。
[張り詰めていた様子を思い出し、は、とため息一つ]
けれど、死んでそれで救われるかどうかなんて……当人にしか、わかんねぇだろ。
それに……この、死に方だと。
あんまり、安らかだったとは、思えんよ、俺。
…………喰われた。んだろ。『憑魔』に。
[最後の言葉は、やや躊躇いがちに、声へと乗せた]
[伽矢の申し出に手を離して千恵を促す。
千恵を伽矢がおぶる様子を少し眺めた後、その後ろからついていく。]
はぁ…
[思わずその二人を羨ましいと思う自分にため息が出た。
前を歩く二人には気づかれないだろう。
しばらく行くと桜が見える千恵の呟き、そっと後ろからやさしく頭を撫でた]
うん、さくらだね。
─住宅街→中央広場─
[抱き上げた小さな身体。
小さな手が蓬色のマフラーを握る。
背中を軽く叩く仕草を続けながら、オレは周りと一緒に歩き続けた]
[各所から移動すると通らざるを得ない中央広場。
桜が眼に入ったのか、従妹の呟きが聞こえた]
────………。
[つられるようにしてオレは桜を見遣る。
異変の象徴でありながら、静かに座すだけのそれにオレは軽く睨みを向けた。
全ては桜の開花から始まったのだと、そう思うが為に]
にーさん羨ましいなぁ、チカラを手に入れて。
さぞかし旨かっただろうに。
[桜の樹の下、微かに残る痕跡。
鼻をひくつかせ、蓬色のマフラーの下で口端を持ち上げる]
オレも早くチカラ、手に入れたいよ。
[オレは桜に近付きたくなくて、広場の隅を歩いて移動する。
少し前、その桜の樹の下で惨劇が起きていたことなんて気付かないままに]
─ →繁華街─
うん。分かってる。
安らかじゃないってのは、分かってる。
それでも、全てが終わった後は、お疲れ様って、送ってあげたいの。
悲しみに沈み、地に縛られないように美しい華を咲かせてあげたいんだよ。
[じっち綾野の顔を見つめながら、そう告げた]
……うん。憑魔に食べられたんだろうなって思った。
そういう感じに「視えた」から。
ねえ。ひふみん。
あやのっちの体、消してあげてもいいかな。
みんなにこの姿あまり見られたくないと思うから。あやのっちだって女の子だもん。恥ずかしい姿、あまり見られたくないよね。
[問うその姿は、相変わらず綾野に向けたままで]
百華よ。伽矢の母。で、この子の伯母。
[と、雪の男を見ながら千恵ちゃんを指す。
瑞穂ちゃんが家へと誘ってくれた。
私は家へ戻れないから、ありがたく申し出を受ける事にした]
本当に、そっくり。
[傍の者には聴こえているかもしれない。
伽矢が千恵ちゃんを抱えて動くのが、やはり旦那そっくりで……
私はぺろりと唇を舐めた]
桜、気味悪いくらい綺麗ね。
/*
あ、しまった。
なちゅらるに会話成立させちゃったけど、相互に知識がある認識ないだろ、この二人って。て。
いかんいかん、視点の切り離しが出来てない。
……文字通り、最期の一花、ってわけか。
[小さく呟き、視線を上へと。
舞い散る花弁は、薄紅の雪さながらに舞い落ちる]
……消す、って。
[それから、向けられた言葉に再び神楽へと視線を戻す。
さほど多くが知るはずもない、『憑魔』という言葉をあっさりと受け入れた事と、今の言葉。
そこから、導きだされる結論は端的]
お前……お前、も。
『力あるもの』?
[無意識、紡いだ言葉の意味は。
神楽には、どのように伝わるか]
そっくり?伽矢くんのお父さんにですか?
[百華の声にそう疑問の声をあげる。
自分の記憶にある伽矢のお父さんの姿を思い浮かべながら。
視線は伽矢達の方に向いていたので唇を舐める様子には気づかない]
綺麗か…、
私は少し怖いです。あの桜がすべての原因なのだとしたらそれは私たちを魅了してとりこにしようとしてるんじゃないかって。
―公園前→繁華街―
[瑞穂のため息には気づかないまんま。
さくらだねと、告げる声と撫でてもらう手にちょっとだけ目を細める。
それでもじーっと桜を見る。おうかの姿は今は見えない。
伽矢が睨んでいるのは、顔の位置が悪くて見えなかった。
気味が悪い、そう言う百華の声も聞こえて。]
……おうかが、おうちに帰れなくしたのかな?
[呟く声は小さくて、周囲には聞こえただろうが、きっと桜には届かない。
うさぎはそしらぬ顔のまま。]
おうかにお願いしたら、おうちに返してもらえるかなぁ…。
[そんな事を考えていたら、ようやく繁華街までついた。]
……察しがいいのね。
あの子は姿形はともかく、心は旦那にそっくりよ。
知りたい? あの子の……あの子の、父の事。
[少し笑って、隣の娘を見る。
若い。美しい。綺麗。
そう、この娘はあの桜より綺麗。
私よりも、余程。
唇をぎりと噛む]
私達を、とりこに?
……確かに、吸い寄せられるよう。
[私は桜に吸い込まれていった童女を思い出し、
彼女が現れてから起こった異変を思い出し。
慌てて首を振り、頭の中を満たす考えを追い払った]
―回想・移動する前―
[百華と雪夜が提案を受け入れるのに頷いて、黒江はどうだったか]
それじゃあ行きましょう。
[千恵の本に気づき問いかけ、千恵が答えるのに補足するように。]
私の家、本屋なんです。
氷雨さんも本は好きなんですか?
ひふみんの言う『力あるもの』が『司』を指すんなら、そうだよ。
私は霊能者。
はは……あんまり、今までと変わらないけどね。
やれることだって、変わらない。
いつもと同じことだけだよ。
[そんなことを言いながら、ゆっくりとした動作で立ち上がり、懐から扇子を取り出して、綾野にかざすように突き出して、ぱっと開く。
その開いた扇子の上に、桜の花弁が一つ舞い降りた]
黄泉桜。私の代わりに泣いて。
嘆いて、逃げ出すことも許されない私の為にも。
[ひらり舞い踊る。
それは今までと同じようで、更に神秘的な舞だった。
遥か黄泉国まで辿り着けるように、御霊が迷わぬように、神楽が舞う。
その神楽の周りを、桜の花弁が散り、まるでこの世の光景ではないほど美しく見えたことだろう]
おうか?
[少し前を行く伽矢の腕から聴こえた声]
おうか……桜花?
[けれど、こんな小さな子供が何を知っているというの?
私の目は少し彷徨い、傍に居る雪の男――雪夜君の髪に留まった]
貴方の髪も、綺麗。
─繁華街─
[通りに人の気配は無い。
広場に集まっていた人達はどのくらい残り、どのくらい居なくなったのだろうか。
纏まっているところを襲われるような気配がないだけ、今はマシかも知れない]
おうかって、桜のところに居た?
…あれは、ただ見てるだけな気がする。
あそこで咲いてる桜みたいに。
[幼い従妹には残酷な言葉だったかも知れない。
それでも、あの童女が願いを聞いてくれるとは思えなかった]
[しばらく歩いて、ようやく幼馴染の家に辿り着く。
けれどオレは従妹を抱えているために鍵を開けることは出来なかった]
瑞穂。
[家主が居るのだから、と幼馴染の名を呼ぶ。
その態度が、開けてくれ、と言っているのは明白だった]
[百華の申し出には首を横に振った]
若いときのことは知りませんけども、伽矢くんは伽矢くんですから。
[百華にそう笑いかける。
唇をかむ様子に首をかしげるが深くは聞かない]
憑依されると憑魔とかいうのになって、人を襲うらしいですよ。
きっとあの桜に関係があるんだと思います。
[神楽から聞いた話を自分なりに解釈した言葉で百華に話す。
首を振る様子に心配そうに声をかけた]
あの、大丈夫ですか?
[は、と。
零れ落ちたのは、ため息]
……なんで、俺の周りには。そんなんばっかり集まるんだか。
[昔馴染みに茶飲み仲間。
気を許せる相手ばかりが背負う、業。
以前にも感じた、もどかしさがまた、過ぎる]
……桜の舞……か。
[神楽の舞、それにあわせて散る花弁。
その舞に、しばし、目を細め]
……と、言うか。
お前、ほんとーに。
……明け透けというか、無用心というか……。
[舞の後、向ける言葉と共に落ちるのは。
露骨に呆れた、と言わんばかりの、ため息]
[伽矢の千恵への返答、残酷な言葉だが確かにその通りなのかもしれない。
フォローの言葉は思い浮かばずそっと千恵の頭をやさしく撫でる]
うん、今開けるね。
[しばらくして家に着くと伽矢に名前を呼ばれ鍵を開け、
皆を中に招き入れる]
二階にあがっててください。
[皆が先に上にあがるのを待つ]
ええ、そうね。あの子は、あの子。
[首を振る瑞穂ちゃんに、頷いた。
彼女の笑顔にこちらも笑顔を返す]
憑依? 憑魔? ……なんなの、そのオカルト話。
桜が、一体何故?
ま、あんなの見ちゃったら信じないわけにも、ね……
[大きく溜息をついた。
心臓を抜かれた女、それを喰らう男。あの映像が頭から離れない]
んん、平気よ。大丈夫。
ありがとうね、瑞穂ちゃん。
[にっこりと、柔らかく笑む。
男達がたちまち頬を緩ませる笑み]
[舞い終えて、綾野の体は桜が吹きすさぶかのごとく、この場から消えていた。
はあ。と一息つき、なんとか気持ちの切り替えを済ませて、札斗へいつも通りの顔を向ける]
お粗末なものにつき合わせちゃってごめんね。
[聞こえる言葉には、大きく頭の上で「?」を浮かべた]
何が?
ああ。そっか。そういや、あやのっちに私が司と明かすのは危険とか言われていたっけ。忘れてた。
まあ、いいじゃん。ひふみんなら問題ないよ。
あなたなら信じられるからさ。
せったんと一緒で、あまり自分を作らないでかっこ悪いところまで見せられる仲じゃない。
みずちーとかに、こんなところ見られなくて助かったよ。普段の頼れるお姉さん像がガタ落ちだし。
その気持ちわかります。
本の中の世界には夢や物語や…いろいろなものがいっぱい詰まっていますから。
[雪夜に微笑みかけ、そう語る言葉はどこかうれしそうだった。
後に続く言葉ともに目をそらされると]
わかりました。すみません、いけないこと聞いてしまったみたいで。
― 繁華街・稲田家 ―
ありがと。
私、手伝える事ないかしら?
[瑞穂ちゃんに声をかける。
何もないと言われれば、大人しく二回へ向かうだろう]
─瑞穂の家─
[扉が開くと真っ先に中へと入る。
一度従妹を降ろし、靴を脱がせて共に家へと上がった。
勝手知ったるの要領で二階へと上がって行く]
…………。
[部屋に入ると疲れが押し寄せ、壁に凭れて座り込んだ。
知らず、ハンチング帽のつばが下へとずり下がる]
……腹減ったな。
[呟きはマフラーのせいでくぐもったものに]
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