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〔と、ここまで一気に己の考えを吐露する…。しかし、目を瞑って小さく付け加える〕
…証拠となるものは、何も無いんだが、な。
ああ、そうだな。
俺みたいに考える人間がいるのを期待して、わざと仲間足りえる人間を喰ったのかもしれんな。
…そうか。
フランは、シャロンを疑ってないんだな。
〔やっと吸えた煙草を味わいつくすかのように、小さくなったそれを地面にぎゅっと押し付け、煙を消した〕
[聞こえるのは大樹と鈴の音ばかりのこの場所に、僅かに声が聞こえたような気がして立ち上がる]
[どちらからだろう。見渡してみるけれど]
[兄さん?]
[呼びたいけれど――口から出るのは]
………。
[意を決して遠吠えをひとつ]
[誰かが来て咎められたとして後悔はない]
[ただ祈るように]
そう、同じに。
ボクが、ここに来るきっかけの時と。
姉様が壊れてしまって。
父様と母様が人狼に殺された……。
……故郷が、なくなっちゃった時と。
[静かに口にしたのは、遠い日の記憶。
それは、忘れていた力の目覚めと共に、思い出したもの]
疑ってないわけじゃなくて。
…誰も信じられないというか…。
[潰される煙草]
[それを目で追いながら]
信じられるとすれば。
こうして目の前で話しているランディくらいかな。
[下を向いたまま]
[寂しげに笑う]
昔のままの姿……。そうか。
[考え込むように俯き。そして今一度、一面の花々を見渡す。]
そうかぁ……ここは、そういう場所、なんだな……。
時が止まって……
……ん、まぁ、しゃーねぇか…。
[独り言のように呟き。
次の瞬間、はっとしたようにディーノに向き直る。]
っ…てことは……ちょっと、待て。
お前まさか…お前も……!!
[目を見開く。]
お前の信じたい人間が見つかったんなら、良かったよ。
〔ほっとしたように、笑い、フランの頭を撫でる〕
…シャロンか…。
あんまり俺、喋った事ないんだよな。
そのせいかね。
妙に、信じようって気持ちにならんのは。
〔宿へ視線を移し〕
…嫌そうな顔されんのが、関の山かもしれんけど、話してみないとわからんのも道理。
玉砕覚悟で、疑問をぶつけてみっかな…。
…長話しちまったな。悪い。
俺、今からシャロンと話してくるわ。
あの時はボク、ほんとにちっちゃかったから……ほとんど、何にもできなかった。
いつも母様にくっついて、教えられたとおりに力を使って……人の魂を視るだけだった。
……もしかしたら、考えたくなかったのかも知れないけどね。
大好きだった姉様が……壊れて。
人狼の手助けしてるなんて、思いたくなかったもん。
[くすり、と。
ほんの少し、寂しげに笑んで、黒猫を撫でて]
そ、僕達昔からそっくりだったんだよ。
僕あんな顔してたんだなぁって思った。
[楽しげに話して。それからふと思う。
あれ? 今まであれだけ姿を見せなかったディが何故今になって?
どうして急に姿が見えるようになった?
何故、なぜ、ナゼ──]
あ、あれ…?
[左手で側頭部を押さえる。ディの姿が見えなかったのは僕には見る力が無かったからのはず。彼は既に死んでいるのだから。それが見えた。それを意味するのは──]
[頭を撫でられれば]
[くすぐったそうに目を瞑って]
あ、うん。
こっちこそ、引き止めちゃってごめんね。
あたしも後で…多分、行く。
まずは薬とか片付けてくる。
[また後でねと]
[ランディを見送るように]
[その場に立って]
[ずきりと頭が痛む。パトラッシュが死ぬ姿を見て。泣き叫んで。それからの記憶が無い。気付いたらあの暗闇の中に居て。そしてまたパトラッシュに会った]
(──ああ、もしかして──)
[ようやく自分がどうなったのかを理解する。そうか、だからディートリヒにも会えたのか、と]
[視線を移すとパトラッシュが空を見上げていて]
どう、したの?
[何かを感じ取ったらしいパトラッシュ。自分には何も聞こえない]
[エリカの言葉を、真摯に聞き。
そして。
ゆっくりと口を開いた]
・・・人の魂。
それは何度も輪廻転生を繰り返すもの。
きっと。
貴方が、姉さんを好きだったように、姉さんも貴方のことが好きだったんでしょうね。
・・・ほら。
貴方のそばで・・・いつだってそばで・・・笑っているのですから。
そうだと、嬉しい……けど。
[言いつつ、ふと目を伏せて]
……姉様がおかしくなった原因は、ある意味ではボクだから……わかんない……。
ん、いや……。
[よく判らない。聞こえたのは獣の声? 人の声?]
それより、大丈夫か?
[頭を押さえていたディーノに、心配そうに尋ね。]
なぁ、お前もしかして。…あの後、どうした…?
[確認を。ひとつ。]
・・・了解。
[何故だか、その声は―――とても弱く]
ねえ。エリス。
貴方はとても、優秀。
私が見た中では、一番優秀な人狼ね。
うふふ。
[耳を澄ましてみる]
[聞こえる声はどちらから―――?]
[聞き覚えのない声の主]
[浮かぶのは何故かあの子]
[衝動に駆られて灰色のコンテで描き出す]
[賢くてどこか不思議な]
[気をつけなさい、と言われていた彼の姿]
[寂しそうな瞳は優しくなって]
[よく懐いていた人と並んだ姿]
[私とは違って一人じゃない、二人の幸せな表情を]
[描いてる方まで満たされそうになって先とは違う涙が落ちる]
[眠らない月がほんのすこし優しく感じて]
[柔らかい風に身を委ねる]
エリカさん。
そうなのか、とか。
原因は自分、とか。
勝手にふさぎこまないこと。
最後まで気を強く持ちなさい。
最後まで―――。
[そう言って、シャロンが手袋を脱いだ。
その手は、何故か、少しも火傷を負っていないキレイな手で。
エリカの頬を撫でた]
あ、うん…大丈夫。
[一つの答えに行き着くと、頭の痛みは消えていて。続いた言葉には顔を伏せた]
…あの後の記憶が、無いんだ。
自分でどうしたのかも、覚えてない。
気がついたら、あの暗闇に漂ってた…。
―――じゃあ。
私、行かなければいけないところがあるの。
貴方と一緒に歩いてみたかったけど。
どうやら。
それは私の役目じゃないようね。
[脱いだ手袋を付け直して。
シャロンがエリカの返事も待たずに扉を開けて、小さく呟いた]
―――さようなら。
[パタン、と扉を閉まる音]
壊れたおもちゃは、最後まで壊れたまま。
何も、誰にも、いらなくなって捨てられる。
だから。
貴方には最後にちゃんと言っておこうと思ってね。
……そっか。
きっと、俺もお前も、もう……。
[言葉を切った。それだけで十分だろう、と。
顔を伏せたディーノを見て、そう感じた。]
守ってあげられなくて、ごめんな……。
[近づいて、いつかのようにその手に頭を摺り寄せて。
その瞬間、空から一条の光が差し込んだ。
パトラッシュたちに向けて、それは『上の世界』へ導くように。]
限界。
貴方には悪いけど、これ以上、壊れたおもちゃは動けなくなってきたの。
修理は自分の手では出来ないの。
だから、
もっと、
壊れていくだけ。
職人 ランディは、旅人 シャロン を投票先に選びました。
[ゆっくりと、振り返ることなく。
シャロンが外へと歩いていった。
終わらせるのは、きっと派手なほうがいい。
クローディアにはきっと会えない。
私の手は、こんなに汚れているのだから]
─早朝・自宅─
[まだ目覚めぬうちにと、こっそりと自宅へ上がりこむ。
リビングのソファーで、仕事着のまま仮眠している父親の姿。
何日も帰らなかった事を、心配していたのだろうか?]
……親父。
[素直に謝罪の言葉が出ない自分が、なんだかもどかしくて。
ずり落ちたタオルケットをかけなおそうと手を伸ばす。
緩んでいた包帯が、右手からはらりとおちて…]
…な、何これっ!?
[ぶつけた痣だと思っていた手の甲の星は、淡く青白い輝きを帯びていて。
思わず素っ頓狂な声をあげる。]
「……うっせぇぞコラぁ!!」
[寝起きの親父に渾身のアッパー食らって、あっさりダウン。]
[頬を撫でる感触と、投げかけられた言葉。
特に最後のそれは、戸惑いを強くして]
……シャロン……さん?
[胸を過ぎるのは、嫌な予感]
やだ……なんで、姉様と同じこと……。
[微かに、声が、震えて]
貴方には感謝してるわ。
信頼はしてなかったけど、
最後まで優秀で、
きっと、
私の望みを叶えてくれるでしょうから。
だから、誰が殺されるか分からないなら。
貴方の代わりに、行ってあげる。
―――ああ。
でも、
何もかもが分からなくなってきて、
頭の中が溶けていきそう。
壊れたものを無理に治すのは、今まで全てが消えてなくなること。
…うん、多分。
そうじゃなきゃ、ディに会えるはずが無いもん。
今まで、どうやっても会うことが出来なかったのに、さっき会えた。
きっと、そう言うことなんだね。
[切られた言葉は理解していて。手に摺り寄せられた頭をそっと撫でる]
ううん…パトラッシュが気に病むことじゃないよ。
もしあのまま僕だけ生き残ってたら、もしかしたら壊れてたかも知れないから…。
クローディアを失ったシャロンのようになってたかも知れないから…。
[村を滅ぼそうとする存在に。扇動されたとは言え、パトラッシュを手にかけたのは、村の自警団なのだから。
飽くことなくパトラッシュの頭を撫でていると、光が降り注いでくる]
え…何?
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