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[問い返され、しばし沈黙が流れる]
……玄関ホールの、番人のことは、聞いた?
彼が昨日言ってたことは事実だった。
それが意味することは……。
[そこまで言って言葉は途切れる。話を聞いて居たのであれば、言わんとすることは伝わるだろう]
それで、探し物って?
……化けて出るほど、生に未練があったようには見えんかったけどね。
[冗談めかした口調で言いながらも、手は止まらず。
やがて、緋の一画に土の褥が口を開ける]
……こんなもん、かな?
[独り言のよに呟きつつ手を止め、『番人』の亡骸を見やる。
緋の髪の少年が訪れていた事には、その時にようやく*気がついた*]
―玄関ホール―
[階段を下りる時に真っ先に感じたのは、階下に漂う緊張した空気と、そして異様な臭気。]
[男は訝しげに眉を顰め、足を速めた。]
ううん。
オレは何も、してないよ。
[ゆっくりと頭を振る。
傷の男でも布に包まれた遺体でも花でもなく、
広げられていく穴を、最期の寝床を見ていた]
キャロが花の切り口に触れていたんだ。
あれには毒があるから。
きちんと洗っていると、いいけれど。
はい。
つい、先程。
[後に続く言葉は、聞かずとも察せます。
だから頷くだけで、先を促すことはしませんでした。]
…あ、ええと。
さっき、指を切ってしまって。
それで、何かで消毒できないかと。
[指先を掲げます。
傷は大したものではなく、血も固まりかけてはいましたが。]
[知っているならば、とそれ以上のことは言葉にはせず。事情を聞くとニーナの傍へと歩み寄った]
指を切ったって、大丈夫?
手当てするものはあったかしら…。
代用するなら、アルコールなのだけれど。
[言いながら、掲げられた指先に視線を向ける]
―玄関ホール―
[開け放たれた扉がまず目に入り、]
[次に跪いて一心に床を拭く緑色の髪の少女に気付く。]
おはよう。ネリーさん。
[死体は既に無く、拭われてなお薄く残る赫だけが惨事の痕跡を残し]
[挨拶をする男の声は明らかな疑念を含んでいた。]
大したことはないんです。
でも、一応。
[近付いてくる影を見て、少しだけ手を下げました。
あまり見せつけたいわけではありませんから。]
此処には、ありません…よね。
…アルコール、ですか。
[お酒の臭いを思い出して、少しだけ眉が寄ります。
苦手なのは前に何かあったからなのかも知れませんけれど、そこは分かりません。]
[一度地下室へ戻り荷を置こうと向かう途中、玄関ホールを通る。既にない死体の代わりに熱心に血の跡を消す少女を見た]
だいぶ綺麗になったじゃねえか。
さすが本職といったところかねえ。
[お仕着せを目線で指して立ち止まる]
[染み込み消えなくなった痕をそれでもまだ拭き続けて。
掛けられた声にフッと顔を上げた]
ナサニエル様。
おはようございます。
[赤黒く染まった布を手に立ち上がるとペコリと頭を下げる]
今までお休みでしたか。
それでは何もご存じなく?
[聞き覚えのあるネリーへの挨拶の声に、胡乱な目を向ける。ナサニエルの顔色を見、鼻を鳴らす]
そっちも随分元気になったようだな。
いいもんでも食ったのかい?
生き延びる為の、毒。
[指先を腫らした毒液は、違わずその為のもの]
[巻かれた白を指先でなぞり、碧眼は立ち去る男の背を追った]
[他人に背を向けるのは危険ではと言いかけ]
[その前に扉が閉まる]
――はい。
[頷きが届かない事は分かっていた]
[別の方向から掛かる声に振り返る]
あ。
まだ残っているのですが…。
[一度だけ見た相手の名前は知らず。
他者が呼ぶのも聞いてはおらず。
困惑の表情でペコリと頭を下げる]
うん、消毒はしておくと安心ではあるからね。
残念だけどここには無いわ。
キッチンか、専用の保管庫か…。
……あの人なら知ってそうだけれど。
[思い起こすのは不精髭を生やした男性。けれど先のことがあって表情はやや不機嫌そうなものへと変ずる]
アルコールが嫌なら、綺麗な布で押さえておくのが良いかもね。
これは一体……
[ネリーの持つ布切れと、桶の水を染める赤に目を落とす。]
……血、ですか?
誰かが怪我を?
[臭いが耐え難いというように、片手で顔の下半分を覆って尋ねた。]
[玄関ホールに集まる皆に対して]
で。どうするんですか?
[メモを広げて、あれこれ考えている。]
被害はできる限り、少ない方がいいでしょう。
亡くなった彼の話だと…続くんでしたっけ、これ?
/*
クインジーに薔薇臭が漂うのは何でじゃろう(ぁ
ハーヴェイやラッセルばっかり気にかけてるように見えるからだ、きっと。
そしてねもい。
はい。
[再び振り返って頷いた。
何かを報告するかのように感情の篭らない声で続ける]
終焉を齎すものによって、番人の方が殺されたのだと。
今、外でクインジー様達が弔いを。
―玄関ホール―
いいものと言いますか……
昨夜シャーロットさんとネリーさんと一緒に夕食を作りましてね。
お陰様で、だいぶ。
[ケネスの胡乱な視線に、不思議そうに返答する。]
[嫌なら、という言葉に、眉が寄っていたことに遅れて気付きます。
戻すよう努めながら、]
あの人?…ああ。
茶色の。
[彼女もあの臭いは好かないのだろうかと思いました。
或いはひとのほうかも知れません。]
布か、アルコールか。
…そうですね、探してみます。
[礼の意味を込めて、頭を下げました。
それからわたしは再び、廊下へと*踏み出します。*]
[布地までをも染めた遺体が褥に引き摺り込まれ、
土を被せられていく。
咲き誇る花と同じように。
されど花と異なり、其処に生命はなく。
生きる花の糧と成るように]
燃やすこともあるんだ。
燃やしてしまったら、何になるのかな。
[不意に、男を見上げた。
鏡の如く、その姿を映す]
[顔の下半分を覆うナサニエルから呆れた顔を逸らし、頭が下がると同時に揺れる常盤色のお下げを眺める]
いーやアレからすりゃかなり綺麗になってるぜ。
ま、もっと頑張るってなら止めねえがよ。
[メモを広げる女を一瞥し、さてねと肩を竦める]
燃やすこともあるな
[地面に呑まれてゆく死体を、ただ見る]
[口調は淡々としていた]
灰になる
――それだけだ
[視線を戻し、見下ろす目]
[片手をゆっくりと上げると、その緋の髪へと伸ばす]
そうかい、俺はてっきり…なあ?
[ナサニエルの返答に鋭い目が移るのは今はない緋の華が咲いた場所。それ以上言葉を続ける前にネリーの感情の篭らぬ説明と、それに対する二人の反応をぎらつく目で眺める。既に知っていることに対しての態度は冷静]
[名前を知らずともどうやら人物の疎通は出来たようで。茶色の、と言う言葉に頷きを返す]
うん。
ああ、気を付けるのよ。
ただでさえ視力弱いんだから。
[再び廊下を歩き始めるニーナの後姿に声をかけた。気をつけて、と言うには少々微妙な気分になったりもしたのだが]
殺された……?
番人の方が。
弔い、ですか……
[血痕の残る床に目を落とし、思案に暮れたように]
[その顔は僅かに青褪めている。]
……誰が人狼なのか、分からないんだもの。
[ニーナがそうなのかもしれない。けれど調べる術は今のところ持ち合わせては居ない。他の誰かかも知れないが、それを知る術は無い。けれど、ここに留められた誰かの中に、人狼は紛れ込んで居るのだ]
終焉を齎すものがいる限りは。
続くように聞こえました。
[翠を伏せてイザベラに答え]
これ以上はなかなか消えてくれません。
綺麗だと仰っていただけるなら、今はこれで。
[手に持ったままの布を、桶の中へと落とした]
しかし、新鮮でない血の臭いは耐え難いな……
[顔を顰めているその理由は、鋭敏な嗅覚ゆえに、であったが。]
[押さえても指の間から洩れる屍の臭いは、彼にとっては不快なものであるらしい。]
私は遺体の様子を存じませんが。
人の手による傷ではなかったそうです。
[淡々と告げる声]
はい、離れた場所に埋めるべきかと。
そう仰っておられました。
…大丈夫、ですか?
[ナサニエルを見上げていた翠が瞬き。
ようやく感情の伴う声が出た]
わからない。でも、続く……。
[ふぅ、とため息をつく。]
正当防衛ですよね。そうでないと、自分が危ない。
たとえ、間違っていても…いや、そうしないと、
自分が。正当防衛ですよね…うん。
[自分に言い聞かせるように。]
そう――灰に。
もう動きもしないし、あたたかくもないね。
[頭上に翳される手の作る影の下。
感情の篭らない、
冷たいというよりは、それを知らぬ幼子に似た眼。
男の表情を、硝子の如く映している]
生きとし生けるものは、
終わるものゆえに足掻くんだって。
あなたも、その為に誰かを、オレを殺す?
[声にもまた、恐れも何も無い。
疑念を形として発しただけのもの]
[答えを望む問い掛けは、されど、誰も居ないその場に落ちる]
されど、それでは私に必要な毒とは何なのでございましょう?
[碧眼がキッチンの中を巡る]
[此処にあるのは、食材と香辛料と、ナイフと]
何か作った方が良いかもしれませんね。
それこそ、誰かに毒を仕込まれぬうちに。
[案外に手慣れた仕種で女は包丁を握る]
[南瓜のポタージュと、青菜を刻んで混ぜたオムレツ]
[白を纏う指先に、妨げられることは無い]
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