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――二階廊下――
食べ物相手にニッコリしてた方が、まだましってものだよな。
さて…
[この頃は一階に下りればいつも良い匂いが自分を迎えてくれる。
うきうきと扉を開いて、だがユリアンは顔を顰めた]
何だ、この匂い?
[匂いの元はすぐに分かった。
空き室のはずの左斜め前の部屋から…
それとも部屋に向かって?
どちらかは分からなかったが、点々と廊下から階段に続く染みは、乾いた血の色をしていた]
…誰かが怪我でもしたんだろうか。
[いやな音をたてる胸を肌触りの良い服の上から押さえ、一階へと下りて行った]
投票を委任します。
シスター ナターリエは、神父 クレメンス に投票を委任しました。
[アーベルは書斎から出てきた様子。
気配を消しているだとかは分からなかったが、なにやら慎重に見えた]
アーベル。・・・こんばんは。こっそり、どうしたの?
……っと。
[書斎から少し離れてあれこれと考え込んでいる間に、逃れてきたシスターが出てきたのが視界の隅を掠める。
直感が、奇妙な危機を告げた]
……気づかれる前に、撤退。
[そんな呟きを漏らしつつ、足音と気配を忍ばせて広間へ向かおうと思った矢先、声をかけられて]
……って……あ、ああ。
いや……なんでも、ねぇ。
[シスターから逃げてきたというのは、さすがに情けなく。
つい、言葉は濁された]
[珍しく言葉を濁らせるアーベルに、首を傾げる]
なんでもないのに、こっそりするなんて、変。
[少し可笑しかった。それは表情に出ているだろうか]
−過去・夢の中−
[痛い][いたい][イタイ]
[立ち込める血のにおい?]
[ふと気づけば、魂は身体を離れ、無残な亡骸と化した己を見下ろしている]
[己?]
[そう、己。白髪の老人の姿…]
――一階――
あ…。
[不吉な血の痕を目にした後、この広い屋敷に一人きり。
そんな事にはならなくてほっとする。
誰かしら人が居るだろう広間へ向かう途中、書斎近くに佇むイレーネと彼女に話しかけられるアーベルを見つけ、近寄った]
イレーネ、アーベルさん。
[近寄ってから、黙って真剣な目でじっと彼らを頭の上から爪先まで見下ろす。どうやら怪我はない]
…二人とも無事みたいで、良かった。
あのさ、俺廊下に血が点々としてたのを見たんだけど。
誰か怪我した…?
……そうかも知れんが……それは、言うな。
[何となく強引にまとめつつ。
僅か、笑むような表情の変化に、一つ、息を吐いて]
……いや、そっちには笑い事かも知れんけどな。
……!
[はっと目を開ける]
[ひどい汗。シーツまでも濡れてしまっている]
あの、顔。ギュンターといった…。
[背筋を駆け上る悪寒]
[この感覚は、夢などではない]
[それはもはや確信]
[呼びかける声に気づいて、そちらを見やる]
ああ……ユリアンか。
[投げられた問い。それに何故か、僅か、逡巡して]
……あの無表情が。
死んだ。
[それでも、端的に、要点だけを告げる。
隠した所で、どうなるものでもないから]
Bの部屋と、一階の階段下か。…さすがに臭いもわからないわね。部屋のサイズから考えて100mくらい先だわ。
一度一階に降りてから通り抜けて発見、か。
[ユリアンの声に振り向く]
あ、こんばんは。ユリアン。
[問われたことへの答えに迷い、一瞬のあとにアーベルからかなり端的な説明がされた]
・・・・・・。
……今、随分と可笑しそうにしてるように見えたが。
[驚いたような反応のイレーネに、さらりとこう返す。
自分の観察力が人とややずれているのは、取りあえず棚上げらしい]
何だよ、慌てて…
[表情をくるくると変えることはしない印象のイレーネに笑われて、悪戯を咎められた子供にも似た苦笑で何事か誤魔化すアーベル。
首を傾げ、ユリアンはちらと書斎への扉の方向に目をやった]
何で笑ってんのイレーネ…、アーベルさんが何かやらしい本でも探してたところを目撃した?
[くすくすと笑って扉から顔を戻した表情はしかし、凍ってしまった]
…死んだ?
[あの無表情。
アーベルらしい表現だったが、誰を指しているかはわかる]
あの可哀想な爺さん…え、老衰…じゃないよな。
[廊下に落ちていた乾いた血の色は、容易に不審死を想像させる。
不安に思うことなど何も起こっていないと信じたい顔で再び笑おうとしながら、死因を尋ねた]
へぇ。
[アーベルの言葉に、なぜか他人事のような、間抜けな返事をしてしまう]
・・・アーベルもあたしも、無愛想だと、思ってたんだけど、じゃああたし、勝ったかも、ね?
[首を傾げながら]
うん。
こんばんは…。
[意外と可愛い顔で笑っていたイレーネの表情が、アーベルの端的な説明でギュンターの死を思ってか少し硬くなった気がするのを見ながら反射的に答える]
お前、それはどういう解釈だ。
[最初の問いには一応突っ込んでおいて]
……明らかに、他殺。
何かに……喰い殺されていた。
[それから、次の問いに答える。
目の前で消えた死体。
その様を思い返しながら]
[ひどい汗で、全身すっかり冷えてしまっていた。起き上がると、バスタブに熱いお湯を張る。
クローゼットの着替えを出そうとして、『それ』に気づいた]
…こんなもの、昨日からあったかしら?
ユリアンに尋ねられたことも少し可笑しく。
しかしアーベルがユリアンの問いに答えるのを聞いて、今朝の様子を思い出す]
・・・・・・。
[人狼がいる。この中に]
/中/
……気がつくと。
また、発言pt消費量でダントツトップな俺がいる。
長文が多いだけでこうなるかというか、今日に関しては、発見描写のせいという事にしておきたい。
あれは…
アーベルさんと、イレーネさんと、ユリアンさん。
たぶん…違いますね
……あなたは誰なのですか?
[talk to someone]
[アーベルの言葉に]
うん・・・あたしのことだよね。
[なぜか独り言のように、確認するように言って。
表情の凍ったユリアンの方を見る。
この人は、表情豊か]
く、喰い殺され…?
[顔が青褪めた気がして手で覆う。
誰かが彼を心配してやる度、あの老人が呟いていたことが現実になってしまったらしい]
はは…じゃ、犯人は…
人狼ってとこ、なんだろうね。
[あまりにも突飛なことが起こっていて、死体も目にしていないユリアンには現実味が湧かない。
思い出すのは赤茶の色だけ]
…ふふ、ごめん。楽しい会話の邪魔しちゃってさ。
風呂入ったから喉渇いたよ。水でも飲みに行くわ、俺。
[ぺちんと頬を叩いて上げた顔は何とか笑えていて、本当は話を聞いたことによる渇きかもしれないが、そう言って台所へ向かうべく踵を返す。だけど一度立ち止まり、振り返ると]
無愛想勝負だけど…さっき初めて見たところによると、笑った顔が可愛いのはイレーネだね。アーベルさんも頑張れ。
[きっと誰かは抱きしめたくなるほど喜んでくれるよと軽口を叩き、今度こそ台所へと向かった]
[異国風の、黒鞘の懐剣]
[舞台の小道具で使ったことがなければ、ただの美しい細工物としか思わなかったかもしれない]
…重い。
[金蒔絵の細工が施された美しい懐剣は、しかし小道具とは思われない]
[そっと抜き放てば、乱れ刃紋が青白く光る]
[以前青龍刀を見つけたときとは違う衝撃だった]
…殺せ、と…。
生き残りたければ…。
[妖しくきらめく刃に見入っている]
……それ以外の誰の話なんだよ。
[問う声には、思わず呆れの響きが混じったかも知れない。
感情の起伏がないと言うか、変化が現れないと言うか。
その様子はふと、『協会』で暮らした自分の四年間を思い起こさせた]
[水のあふれる音]
…!いけない。
[あわてて懐剣を鞘に収め、バスタブに駆け寄る]
[懐剣を手放してはいけない気がして、迷った挙句着替えと一緒においておく]
[ユリアンの渇いた笑いをなんとも言えず静かに見つめる。
去っていくのを視線で見送っていると振り向かれ]
・・・・・・えっ。
[言われた言葉に、変に手が泳いだ]
まあ……そうだろうな。
[「犯人は人狼」。その言葉に、一つ、頷く。
死体の状態を見た時から、それは既に確信となっていた]
いや、別に邪魔じゃねぇが……って、なんだよ、それ。
だから、何の勝負なんだ?
[それから、立ち去り際の軽口に思わず呆れたような声を上げつつ、前髪をぐしゃ、とかき上げて。
一つ、ため息を]
−部屋→西側階段→1階広間へ
[ややあって、しなやかな薄紫のアンサンブルをまとって部屋の外へ出る]
[手にしたバッグに、懐剣を忍ばせて]
[アーベルの「誰の話なんだよ」という言葉に]
う、うん・・・。
[僅かに戸惑いだけが感じられる声。
ユリアンの言葉に頬が熱くなりそうな気がして、なんとなく下を向く。
でもしばし考え、顔を上げた]
アーベル、笑ったら、可愛いんじゃないかな。
[無表情で淡々と言う]
─自室─
[その長い柄の月の刃を、隠そうともせぬままに、
ひらりと立ち上がればスカートがふわり。
部屋に置かれた人形の家には、ずたずたに引き裂かれた老人の人形。]
だれから おこして あげましょう
よいこは さきに
わるいこ あとに
[ひゅん…と、月の刃を振れば、暗い部屋の空気に、青白く光が残る。]
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