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[鍵を開け、道場に入る。射場の脇に立てかけられた練習用の弓には目もくれずに、奥の倉庫に向かった]
…………
[ぐるりと見渡し、配置が二年前と変わっていないことを確認する。そうして、部員達が置いている荷物や、折れた矢を溜めこんである箱を退かすと、一番奥に置かれた、埃を被った桐の箱を引っ張り出した]
[力なく前に投げ出された足。]
[真っ白なTシャツは引き裂かれ、抉れてた左胸から滴る血。]
[青白く透き通る頬と青ざめた唇。そして、虚空を映す瞳。]
[ゆるく纏め上げていた髪は乱れ、さやかな月明かりを受け光る。]
そうだった……私は、殺されたんだっけ。
[そうして、声を上げ笑い出す。]
なんで、こんな単純なことすら忘れてたのかしら?
ツカサ。
[廊下に出てきた影。
マコトの姿をまっすぐに見据えて]
やだ。
じゃましてほしくないし。
[渦巻き始めた風に眉を顰めながらも動かない]
[マイコの言葉に、一瞬、言葉が詰まる。
人間なのかなんて、──自分が聞きたい。
決して「人間」が持ち合わせる事の無い力を持って、
それでも、自分が人間だという保障も、無い。 けれど、]
……少なくとも、
…俺は人間を辞めたつもりは、無いよ。
[ただ、短くそう告げて。
と、歩み寄るショウに、緩く瞬いた。
如何したのかと、問う前に発せられた言葉に
僅かに、目を見開いた。]
───、センパイ?
――これは現実?
いや……現実であろうと非現実であろうと、彼女に殺された、それが真実、か……。
[不思議と平穏な気持ちに包まれる。半身ともう生きて逢えない、ただその事だけが悲しかった。]
[箱の紐を解き、中に収められた一本の弓と、五本の矢を取り出す。それは二年前、自分自身が部に寄贈した弓矢だった]
[弓は、竹の弦を強く巻き付け、強度を増したもの、矢には競技用では有り得ない、返しのついた鋼の鏃がついている。刀で言えば真剣…本来は観賞用…或いは、特別な祭事にのみ使われるものだ]
ああもうまったく。つくづく化け物じみてると言うか
じゃあ、避けられないように工夫するだけです!
[そう言うと前ダッシュしながら次弾装填。発射]
[未だ人間以外のものがいるという認識は薄い。
しかしその腕の中でなくしているから、そういうものがいるのだろうとは思っていて。
ただ、それが人の姿をしているかもしれないなど、本当は今まで思っても居なかった。
のだが。
ショウの動きを見ながら、思う。
アズマの力を思い返す。
*何にせよ、弱い自分に出来る事は、情報をあつめて、はかなくするだけだ*]
[舞い散る桜に抗う様にふわり、桜の樹の天辺に立ち、地上の喧騒を眺めながら。]
もしかして……私はもう、何処でもいけるの?
[そうして、樹を蹴り塀の外へと向かう。遠くに街の灯りが見えた。]
やだっていったよ。
[ニコリと微笑む。
どこか無邪気にすら見える笑み]
ここをとおさないのは、ヨウコの、のぞみ。
じゃましないでほしいのは、音色の、のぞみ。
だから、どいてあげない。
[そこで小さく首を傾げて]
ミヅキせんぱいだって、じゃましてほしくないんじゃない?
あんなにしんけんだったんだもの。
人から生まれて、
人に憑くモノ―――
ソレが、“犯人”なんだろ。
なら、今こうしているヤツらの、
誰がそうかなんて、わからない。
[冷静に考えれば、
きっと、彼は違うとわかった。
それに、違うと信じられたはずだった。
少なくとも、…昨日までなら。]
[捕えた矢を、床に捨てた。]
化け物、ねえ。
悲しくなる。
[次弾は、先程よりも身体の近く
顔面の目前で、二本の指に挟まれて止まる。]
寮とはいえ同じ部屋で暮らしたっていうのにね。
[ガラス片は、握り締めると榎本芙由の手に食い込み
血が廊下に滴った。
接近してきた水月海にガラス片の鋭い切っ先を向け、
細い腕が風を切るほどの速度で投擲した。]
殺したのとは違うって、
でも、ソレじゃあ、
誰が、やったんだよ!!
[無茶区茶な問いかけ。
手にしたままだった懐中電灯が落ちて、
大股に歩み寄り、自分よりずっと高い位置にある
後輩の胸倉を掴もうと手を伸ばす。
仔犬が鳴き声をあげた。けれど、ショウには届かない]
真剣……か。
確かにね。
[ふ、と。
掠めるのは、笑み]
自分で決めた事なら……なおの事、俺の手出しは邪魔かもしれない。
[だけど、と。こぼれるのは、小さな呟き]
……護りたいのが、俺の望み、だから。
―寮―
[人の気配の無くなった寮はとても静か。]
いざと言う時に動けない…
そうじゃ、ありませんでしたっけ。
[振り返って手のつけられた様子のない食事を見つめ。ぽつりと呟いた声も妙に大きく聞こえた。]
……ま、いいか。
[目を伏せ。
それからゆるりと、扉に向けて歩みを進めた。]
ヨウスケが「時間を進める」を選択しました
人から生まれて、人に憑くモノ―――『憑魔』。
ソレが、“犯人”ですよ。
…普通、誰が『憑魔』かなんて判らない。
──否定は、しませんけど。
[ショウの言葉に、短く、途切れ途切れに言葉を返す。
何で、どうして。
思いも掛けない相手から、向けられる感情に混乱の色を浮べ]
んなの、知らないッスよ
…俺が来た時にはあの人は倒れてた。
…ッ、俺じゃない! 俺は、殺してない!!
[歩み寄りながら、強く投げられる問いに。
答えを返す言葉も、次第に荒く変わる。
胸倉に伸ばされる腕は、避けずに──避けられずに]
うん、だからここにきたんでしょ。
でもダメ。
[牽制するかのように。
生徒会室から持ち出してきた果物ナイフを取り出して]
ヨウコはここをとおしたくないの。
だからとおしてあげない。
[再びニコリと笑みを浮かべて]
音色がたすけてくれたから。
こんどは音色をたすけたいんだって。
それが、わたしの、のぞみ。
[まだカバーの付いたナイフを握ったまま。
クスクスと笑う]
逢いに、行くよ……。
[呟いた瞬間、阻む壁の存在につき当たり。]
……ちょっと。
死んでもまだここに閉じ込められるの?
[不満げに軽く口を尖らせ。]
よく言う。それを言うあんたは先輩であって先輩じゃないんじゃないの
先輩の口でこれ以上喋r……!
[投擲されたガラス片をなんとか避けようとする。避け切れなかった脇腹に朱が走る。痛みを歯を噛み締めて押さえ込むと]
危ない……なぁ!!
[反撃の一矢]
俺は通りたいから、通してもらわないと困るんだけど?
[クスクスと、幼子のように笑うヨウコとは対照的に。
瞳は静かで、口調は冷静で]
助けてくれたもののために何かしたいんなら、同じなんだけどね……。
[一つ、息を吐く。
制御しなければ、と。
それができなければ、自分の風がどこまで吹き荒れるのか。
正直、それは検討もつかなくて]
/*
ちなみに、あずまんVSショウは、あんまり見たく無いカードだった。
でもグロありバトル村でそんなこと言ってらんないので、もにょりつつ我慢…
[途中で給湯室に立ち寄り、水を一杯だけ飲んでから再び外に向けて歩み出す。
先程此処に来る前に、言葉を交わした少女を思い出す。彼女はきちんと約束を果たしてくれるだろうか。]
[そう考えていた所為なのかは分からない。気付けば視線の先には桜が咲き誇る。
此処でクラスメイトの少女が死んだことを洋亮は未だ知らない。ただ感情のぶつかりあう声が聞こえた。]
―桜―
……いいよね。
ミヅキ先輩はいいよね。
[ふとその口調が変わった]
好きなように動いて。
自由に過ごして。
それでも傍に心配してくれる人がいつもいて。
羨ましい。
[軽く伏せられた目。
視線を外すほどではないが、表情が曇る]
……。
[僅かに、言葉に引っ掛かりを覚える]
オレも、知らない。
夢じゃないって思うけど、現実だって証拠もない。
違うって、そう思いたい、でも―――
何ひとつ確かなモンなんてなくって、
………それでも、
やんなくちゃいけない事はひとつで、
だからっ、
[言っている事は支離滅裂で、
ただの八つ当たりなんじゃないかと、何処かで思う。
それでも、手は止まらなかった。
左手で掴んだ胸倉を引き寄せてから、1度離す。
間を与えず、右手で拳を作り、殴りかかった。]
流石に物わかりが良い。
助かるよ。
アンタは本当に手の掛からない後輩だったからね。
[再び、矢を床に捨てた。
回避動作を取った水月海に向けて二歩、
大きく跳躍して距離を詰める。]
[放たれた矢は、振り上げた前腕を深々と射貫き、
矢の中程まで刺さって止まった。]
[走り幅跳びの要領で、三歩目に大きく跳び
床からすくいあげるようにして、
射撃動作を終えたウミの顎を目掛けて蹴り上げた。]
でも、ヨウコには。
ヨウコの見ていた人たちは皆、別の方を見ていた。
仕事や勉強、或いは他の誰かを。
そこにはヨウコの居られる場所は無かったんだ。
[相手の言葉も聞こえていない様子で]
それでも良かったんだ。
良いと思ってたんだ。
でも、それは間違ってるって。
手を伸ばせば届くのにって。
[騙し絵のように、またクルリと表情が変わる。
フワリと微笑んで]
だってそうでしょう。
てをのばさなかったらとどくものもとどかないもの。
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