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[数刻の後、]
[何事も無かったかの如く]
[『器』の在るエリアは開かれる]
[訪れる者を拒む事も無いだろう]
[されど、][竜は眠りについたかの如く][何の反応も示さない]
―廃棄エリア―
[ファクトリーエリアの扉の前に立つ。
しかし扉は開かない。
両手をかけて引っ張ってみた。びくともしない。
扉に凭れて、座り込んだ]
案外冷たくもないのかと思ったけど
そうでもないのかな
ちょっと悪いこと言ったかもとか思ったのが
馬鹿みたいじゃない。
[命を削って与えた為に躯は冷えていたが、
それでも尚、扉の冷たさが勝っていた]
─移動中─
……誰がおとーさんですかと。
[いい加減、諦めた方がいいと思うが。
やっぱり突っ込んだ。真顔で]
無茶はしない……と言いたいが、向こうの出方次第だろ。
最悪、『全力』も考えにゃならんさ。
[『全力』とは即ち本性の解放。雷精にはそう言わずとも伝わるだろうが]
ま、大丈夫。後先顧みずに走りはしねぇ。
『現在(いま)』は……。
[続いた言葉は、*舞い落つ白に、溶けてゆく*]
[無限鎖を介して響く歌。
それは意識を穏やかに。
人知れず、固める決意を静かに支える]
……大丈夫。
[零れた言葉は、呼びかけと言うよりは*独り言めいて*]
シスター ナターリエが「時間を進める」を選択しました
シスター ナターリエは、青年 アーベル を投票先に選びました。
―廃業エリア・焼却溶鉱炉―
…ってぇ……。
[転送の余波で気を失ったのか、浅い眠りから熱気に目を醒ます。
規則正しく続く作動音。
次々の放り込まれる、魂も命も無い鋼の体の残骸。]
…また新しく、生まれなおす為?
[炉の熱に溶かされ、その姿の痕跡も残さず。
ただ冷やされて、次の機体の材料になる。]
墓場、なのかな?
[続く作業には、追悼も感慨も感じられず。
ただ淡々と続く、再生への破壊。
温度は熱くとも、光景は薄ら寒い。]
[プラグに貫かれた無数の傷は跡形もなく癒えていたが、
背中に残る、古い傷痕。朽ちた翼は癒えることなく。
血の通わぬ冷たい機体が、無造作に弔われて行くのを眺める。]
それでも…、
冷たく虚ろな翼でも、朽ちて飛べないよりはましだ。
[生命の子はああ言っていたけど、
命と魂に見捨てられ、朽ちて死に絶えた翼には、
頼れるものはもう一対だけで。]
[彼は独りだった]
[輪転を司る生命]
[混沌を司る精神]
[対たる二つの子であったが故に]
[生命の魔と似た出自なれど]
[異なるは庇護する存在の有無]
[彼と同じものは居らず]
[彼の傍に在るものもなく]
[だから、捜し求めた。]
―――――人間界、とある街の街角―――――
[時刻はやや遡る。
ミハエルは、洋菓子を扱う店に居た。
陳列された品々の中からミハエルが選び出したのは、焼きたてのマフィンだった。如何にも暖かげな湯気を立てているそれを食べるのは、勿論ミハエル自身では無い。100年ばかり不思議な同行者と旅をし、100年前には考えることもしなかったような変化を受け入れ過ごしてきたが、こと食に関してミハエルの嗜好自体は然程変化していない。
甘い物は苦手である。そもそも食事自体を殆ど必要とせず、食べるものといっても本性である狼の嗜好が勝る。まして、”氷破”に属する精霊であるミハエルは、暖かいものを率先して食べようとはしない。
同行者のための物だった。]
―廃棄エリア:第二集積所―
あいたっ。
[転送され、どすっと尻から落ちた。
腕の中のミリィが、苦しそうに身もだえたのを見て、そっと背中を撫でてやる。
揺れないよう、細心の注意を払いながらも、その頬に現れてた根のような管を心配そうに見やる。]
[同胞を]
[故郷を]
[還るべき場所を]
[けれど、]
[永い時を彷徨えど]
[彼方の地に赴けど]
[彼の望むものは見つからず]
[満たされる事は無く][足りなかった。]
[同行者、ブリジットは甘い物に目がないようで、人間界を旅して回る間も大きな街に着けばやたらとそういった物を買いに行ったり、時にはミハエルを連れてわざわざ店へ食べに行く。
ミハエル自身は今でも全く甘い物に対して感慨を覚えることは出来ないが、菓子を食べて喜ぶ彼女の笑顔は好ましいと思っていた。
紙袋に入ったマフィンを抱えた。薄い紙越しに伝わる熱気が疎ましい。試行錯誤の結果、袋の上部を指で摘むようにして持つことにした。
傍目には如何にも不愉快そうなミハエルだが、心中は意外にも穏やかで、マフィンを渡したときにブリジットがどういった顔をするかだとか、何と言って渡そうか、といったような事を考えていた。]
[心も身体も衰えていたか]
[捕われたのは、そんな折]
[甘言に誑かされたのだったか]
[罠に嵌められたのだったか]
[それは憶えてはいないけれど。]
[生命と精神の子]
[相反する属性を兼ね備え]
[何方でも無い存在]
[それは好い「実験材料」だった。]
[紙袋を携えて、ブリジットとの待ち合わせ場所に向かう。程なくして、すぐ後ろの路地裏に待ち人の気配が現れた。
如何にも人通りの少ない裏通り。一人でそういった場所を通ることは危険だから止めるようにと、何度言ったか知れない。恐らくその路地が、いまミハエルの立っている場所への近道だったのだろう。ミハエルは溜息を吐いた。
罰として、というより見せしめに、マフィンを一つ、目の前で食ってしまおうか。ブリジットの気配が唐突に断絶するまで、ミハエルはそんな事を考えていた。
それほどに唐突な消失だった。
ミハエルとて、呑気な性格の持ち主では無い。何らか襲撃者が身近に潜んでいて気付かない程、世の中が平和だとも思っては居ない。それでも、そういった兆候は全く感じ取って居なかった。先ず襲撃者の意図が分からない。
そういった、状況判断を全て後回しにし、襲撃者がまだ近くへ潜んでいるであろうといった危険をも顧みず、ミハエルは路地裏へ駆け込む。]
ブリジット?!
< 落ちた猫の体。
床の上におちたとき、少しだけ、身じろぎました。でも、猫は目を覚まさずに。 >
―→廃棄エリア:食料庫―
―廃棄エリア―
[ファクトリーエリアとの間を隔てる扉の前に座り込んでいたが]
[急に音もなく扉が開いた。
リディは、ファクトリーエリアに転がり込む羽目になった]
―ファクトリーエリア―
[身を起こしたが、そこにアーベルは居ない。
化石のような、沈黙する竜が在るだけだった]
< 白い猫はまたまっしろになりました。
さすがにおっこちて、目をさましました。
……猫、にゃーん。
なんだか、なさけないなきごえでした。 >
< 白い粉を体にくっつけて、とうぜん青い布にも――赤い血はぱたりとおちて、小麦粉を濡らしました。
すこし困ってしまった猫は、そこから飛び降りて(足を落としたとき、すごく痛かったです)、そこでぷるぷると体をふるいます。
白い粉がとびちって、猫、せきこみました。
それから人の姿になって >
……手当てしないと、駄目かな。
< 左の腕の青い布を外して、心臓より高く、持ち上げました。 >
[そして][彼は己を][亡/失/無くした。]
[何が大事か、][問われたなら答えるだろう]
[――自身であると。]
……アーベル、どうしたんだろう。
< 猫は小さく口にしました。
こなっぽくて、あんまりいい気分ではありませんし、ここに火がついたら、危険ですが……そんなの、猫は知ったことじゃありません。
食料庫の外にでて、すぐに扉をしめました。
ふんじんばくはつ なんて、しりません。 >
−南東部:海岸−
[戯れるような波]
[彼の足に触れては引く]
[影輝の精のちからによってか、]
[海は穏やかだった。]
[断続的な波の音]
[子守唄か][ノイズか]
[揺らぐ海面]
[映り込む彼の姿]
[*その表情は沓として知れず*]
―…→ファクトリーエリア―
< そこにあるって、認識したその場所に、猫はむかいました。
扉が、あいていました。
そして、リディがいたので、思わず声をかけます。 >
……リディ?
< アーベルと話していたのを、猫は知りません。
ただ、なんでここにいるんだろうって、しかもなんだか転んだみたいにいるんだろうって思いました。
左の手をあげたかっこうだから、ちょっとまぬけかもしれません。 >
―廃棄エリア・未開発区画―
[黒猫を通常階に残して、飼い主は。
金属の床の上に転がる(というか落ちてきたそのまま今も目覚めないのだが)
呼吸はあるので、生きていることはわかっただろうけれど、瞼閉じて横たわるその表情はやや幼く*見えた*]
[路地裏には、ブリジットどころか人の一人も居なかった。]
……ブリジット、何処に居る。
つまらない冗談のつもりなら今すぐ出て来い。
[ミハエルは、焦りを押し殺しながら言った。ただ、苛立ちだけは酷く現れていた。
返事は無い。]
……。
[ミハエルは屈み込んだ。微かに、足跡のように影輝の気配が残っていたが、それもすぐ風に消えた。]
―ファクトリーエリア―
猫さん……。
[事実、転んだみたいな格好だったのでもそもそと起き上がって、スカートの裾をはたいた]
アーベル知らない?
どっか行っちゃったみたいなんだけど。
[ねえ、と竜に声を掛けたが、黙して何も応えない]
―ファクトリーエリア―
< 一歩、中に入ると、じくじくと痛むきずあとから、あたらしい血が流れました。腕まで伝っていますが、そのうち治るだろうと、特別気にもしていません。 >
アーベルが、どこかに?
……どこに、いったんだろう。
< そして機鋼の竜に声をかけるリディをみて、そちらに近づきます。そっと、血のながれていないほうの手をのばして、 >
……教えてくれない、かな。
< 少し、かんがえるように、いいました。 >
―ファクトリーエリア―
[竜は、自身が死骸であるかのように微動だにしない]
……くれないみたいね。
それと
[キッとエーリッヒを睨み]
猫さん、反対の手!
―ファクトリーエリア―
そう、だね。
< 動かない竜に、触れた手。
そっと撫でて――リディの剣幕に、猫はたじたじ。 >
ええと。
これは、だいじょうぶ、だよ。
……ここ、来るために、やった、だけだから。
< 流水のちからが、とても強くて、猫の血はまだ止まりそうにありませんけれど。 >
[ブリジットの思い付いた悪戯であればいいと、そのときまでミハエルは確かに願っていた。彼女が影輝の精霊ならば、自分に悟られないよう気配を消すことも出来るのかも知れない。
だが、掻き消える前、ほんの一瞬、馴染みのない力の残滓を感じた。ミハエルは、何者かの介入と、ブリジットの失踪を直感する。]
[封印]
[氷破の力を解き放つ。
街自体を封鎖する。何者かがブリジットを拐かしたのであれば、なんびとも街から逃すことのないように。]
―ファクトリーエリア―
[無機質な空間に、血の流れる匂いが漂う]
だーめ。
血をずっと出してるとね、体力を消耗するんだから!
命を零しちゃってるようなもんだよ!
[リディ自身の手を差し出し、手を出せ、と催促する]
―ファクトリーエリア―
だけど、リディには、
この前も、なおして、もらったし……
< かの女が、自分の命も、わけあたえるというのを、知っていたら、もっとひどい反対だったでしょうけれど、猫はそれを知りません。
首を振って、手を、かの女から遠ざけようとしました。 >
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