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ひとりじゃ危ないでしょう?
[上目遣いの少女を諌めるように、
背を撫でていた手で帽子の上から、ぽんと叩く。
ほんの少し、眉を釣り上げた]
何処かのサボり魔だって、お目付け役が一緒だわ――
あら。
[言った拍子に、話題の人物が目に入った]
[頭を下げるライヒアルトの険しい表情や、姉と、カヤの様子。
昨日の事に関わりある、というのはすぐに察しがついたものの]
……お目付け役必須で、悪うございましたね。
[何となく、最初に口をついたのは、こんな言葉だったとか]
で、どしたの、道端に集まって。
─大通り─
[だるそーに、大通りを歩いていたのだが]
ん? …………んん〜?
[ふと前方に見知った顔の集団発見
当初の目的の人物であるエルザも居るのでちょうどいいやと近づいていったのだが]
…………あれ? どうかしたんですか
何だか深刻そうな顔をして
[そう言って首を傾げる]
…いいのか?
なら、お願い、する…。
詰め所では、目撃者居ないって聞いたんだ。
何処からさがそう。
[マフラーの中、もそもそと言葉を零す。
ライヒアルトとエルザを見上げ、それから釣られたようにアーベルに、そしてゲルダに視線を移して]
うん、爺っちゃん探索隊…
[楽しそうな言葉だけれど、表情は曇ったまま。]
[昨日は不在を弟に悟られることはなかったけれど、
とっくに調律を終えていたモニカにはじと目で見られた。
訊かれも叱られもしなかったから、エリザベートから何か言うことはなかった]
[けれど、家に帰ってからも話題を避けるアーベルとはまた別に、エリザベートも口数少なくしていたし、今朝も食事を用意しただけで家を出てきてしまったから、きちんと会話を交えるのは、ほぼ一日振りだった]
自覚はあったのね。
[返すのは、昨日の空気が嘘のようないつもの台詞だが]
詳しいことはぼくは知らないのだけど。
自衛団長がいなくなったそうだ。
[丁度現れた人形師にも頭を下げる。
尋ねられたことには少女を目で示し、手短な説明を返した]
[続く問いに答える前に、また一人と、近寄ってきた女性]
ああ、ミューラさん。
[ライヒアルトの説明に同意の頷きを返す]
[翳る表情を見せるカヤに視線を落として、]
楽団の練習だって大事だけど、カヤちゃんを放っては置けないわ?
[あ。
と、自分の口にした単語に、修道士に顔を向けた。
頼んだことを、今思い出したと言った様子で]
[ゲルダの姿を目にすると、よ、と言いながらひらりと手を振り]
ああ、爺様を、か。
[カヤの言葉に、微かに眉を寄せる]
捜して、見つかる場所にいてくれれば……いいんだけど。
[続いた呟きはごく小さなもの。
もっとも、自身はその可能性は低く見ているのだが]
……そりゃ、まあ。
[姉の言葉には、心持ち視線を逸らしつつ、こう返す。
直視を避けたのは、これからやろうとしている事が、明らかに心配をかけるとわかっているから]
ん、…ああ。
そう言えば、ゲルダ。
[楽師の視線を受けて瞬き、程無く当初の用事を思い出した様子。
彼の視線は楽師から、人形遣いへと移る]
[エルザがライヒアルトを見るのに、
首を傾けて視線を追い、彼を見る。
アーベルと、ゲルダにも視線を流し]
…爺っちゃんが見つかれば勿論だけど、
せめて目撃者とか居ないかな…
[マフラーの中で呟いた。]
[各々の口から返される答え
それは呼び名は違えども一人の人物を指すもので]
えっ……ギュンターさんが
それって昨日のことなんですか?
[驚いた様子で問う]
[どうにもはっきりしないアーベルの口調に、そちらを見やった。
たったの数秒。だが、恐らくは長い数秒間。
半眼でもなく、怒りの表情もなく、視線を注いだ]
[それから、つい、と外す]
[人形師に意図が伝わったなら、楽団の件のほうはひとまず本人たちに任せることにする。
そして今度は見習いの青年へ眼を向けた]
君は、何か知らないか。
[呟きは捉えたのか否か。
真剣な眼をして問うた]
パトロールから、ということは、
……その道順を辿れば、何かわかるかしら。
表通りなら、自衛団の人が探しているだろうけど、
今はお祭り前だし、この街も狭くはないし。
[カヤの頭からも片手は離していたが、彼女の傍には佇んだまま。
思考を口に出すも、眼を伏せた表情は思い悩むさまを表す。
長く住んでおり、今までに起こった失踪事件を知っていれば、
無理もなかろうかと思われるものだった]
[姉とライヒアルトの様子に、一瞬きょとり、とするものの。
カヤの呟きに、意識はそちらへ]
……目撃情報、かぁ。
昨日、自衛団の詰め所で聞いた話じゃ、それが全くないんだよな。
今まで起きてた失踪事件で消えた連中も、確か、そうで。
……結局、あれから音沙汰ナシで、どっからも情報なかった……となると。
[行き着く結論は、一つ。
自分的には、望む所だが]
[ライヒアルトがゲルダの名を呼ぶのは聞こえたが、
失踪事件のほうも、やはり捨てておくことは出来ないまま。
アーベルが並べる事実と、語られない結論を、黙って聞いた]
― 回想・露店 ―
え、もうそんな時間ですか?
[師匠の声に、鈴の音に集中していた顔を上げる。未だ人の姿はあれど、おそらく師匠が片付けると言うからには、あまり売れ行きは上がらなそうなのだろう]
[手早く片づけを終えると、運べる程度の荷物を手にして]
はーい、わかりました。
気をつけて行ってらっしゃーい。
[師匠の姿を見送った後、素直に宿へと足を向ける。師匠の帰りを待ち、宿で鈴の音を鳴らしながらいつしか眠りに落ちていった]
ん? …………あぁ
[ライヒアルトの視線を受け、僅かに首を傾げるが、すぐに思い至って、ポンと手を打つ
そも、今日眠いのを我慢して出てきたのもそれが目的だったわけで
しゃんと威儀を正して営業モードに入り、エルザに視線を向ける]
えっと……話はライくんから伺いました
一応、相応の報酬をいただけるのであればお受けさせていただきたく思います
ただ、先に決まっている私の方の公演もありますので、構成など多少妥協していただかなければならないと思いますが、それでもよろしいでしょうか?
[ジッとエルザの目を見つめて、こちらからの要求を伝える]
…………。
[姉から向けられた視線。
短いはずなのに長いそれには、きっちりと固まっておりました]
俺も、自衛団の詰め所で聞いた事しか知らないから……。
[それから、気を取り直して、ライヒアルトの問いに答える]
ただ、爺様、例の失踪事件追っかけてたし。
……それ絡みのトラブルの可能性は、高く、見てるよ。
むしろ、祭り前の大事な時期に爺様が戻ってこないなんて状況……他に、理由なんて思いつかないよ、俺は。
[だが、すぐに苦笑を浮かべると]
とはいえ、まあ現状はそれどころじゃなさそうですよね
下手すると、私のと楽団の両方の公演がおじゃんになる可能性もありますから
んー、ギュンターさんかぁ
私は昨日は見てないなぁ
[顎に指をあて、そう呟く]
― 翌日・宿 ―
[目を覚ますと、いつの間にか毛布を被ってベッドの上]
……あれ、アタシあのまま寝ちゃってた?
[窓から外を見れば、今日もよい天気のようで、差し込む明かりに目を細めて]
今日もお仕事日和みたいね。
[着替えをすませ、師匠を食事に誘う。宿で朝食を取ると、荷物をまとめて露店へと向かう]
― 大通り ―
[露店への道すがら、人が沢山集まっているのが見えた]
おっはよー。
……どしたの、朝からみんなで何の相談?
[近づいて声をかける]
店員 ベッティは、人形師 ゲルダ を投票先に選びました。
[嘘は吐いていないパートナーと、罪悪感の混じった演技をする連絡役に対して、彼女は臆面もなくさらりと嘘を吐いた
ギュンターを連れ去った張本人であるにもかかわらず、そこに一切の罪悪感はにじみ出ていなかった]
…そうか。
[青年からの答えに目を伏せた。
そのまま言葉を紡ぐ]
失踪事件を追っているのは知っていたが…
そうだろうね。あの団長なら、事件もあるのに急に居なくなるわけがない。
…団長がいなくなれば、自衛団の統率も危うくなるだろうし。
[最後はやや小声だった]
[仕事モードのゲルダに見つめられ、はたりと瞬いた]
……ああ。
件の方って、ミューラさんだったんですね。
周り道をしてしまいました。
でも、ホフマイスターさんの紹介なら安心だわ。
[苦笑から微笑に変え、先とはまた異なる真剣なものになる。
その間にカヤの手が離れたのには、気づいていたか]
報酬の方は、私の一存では何とも言えませんが。
「皆に楽しんで欲しい」――その気持ちを抱いて、
共に舞台を創り上げて頂けるのでしたら、惜しむつもりはありません。
[次いだ言葉には、確かに、と一つ頷く]
長年続いてきた祭りですから、早々中止になることはないと思いますが、
中止にならなければ良いという問題でもありませんね。
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