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水……、命……。
アーベルと、イレーネ。
[属性のことを云われても、よくわからなかったでしょうか。けれども名前はきちんと憶えていましたから、こくん、と肯きを返しました。]
ああ、約束は、駄目になってしまったのだね。
[指きりをした自分の手に、眼を落とします。ふっと顔を挙げると、じっとティルの腕を見ます。せいかくには、腕のある筈の場所の、なんにもないところを。]
腕。どうしたの?
―墓地―
[ふんわりふわり。三つ花を風で弄んでいると]
[ばさり倒れる音と静寂を切り裂く叫び声]
アマンダさん…!
[慌てて駆け寄ろうとする...に、
千花が前に回りこみそれを阻止しようとする]
…!
そうか、対極の僕が近づけばアマンダさん傷つく。
でも、このまま放置というわけにもいかないし。
[噛み付きそうな勢いの千花を前に、思い悩む]
約束……?
[少し、意識を他へむけていた苗床は、その言の葉にかの女を見やる。
それから、尋ねられたことに、あぁ、と見やり]
これは、終わりの時間がきたから壊れただけだよ。
困ることはないから、大丈夫。
[水面から顔を出し、しばらくぼんやりと流れの中に佇む。
流れがその身体を冷やし、力は静まっていく。
失ったものを補うように、その身を晒す。]
取り戻さなくちゃ…な。
[構造までは知らないが、あの結界のなかには、捕らえたものを逃がさぬ迷宮があるらしかった。]
再封の時に、救出できるだろうか…。
[しかし悩むのはあっさり止め]
とまあ、悩んでも仕方がない。
やったことないからうまくいくかどうかわからないけど。
ティル、はなの力をちょっと借りるよ。
[つうと腕を掲げ、優しく蝶の名を呼ぶと、
薄紅色の光は彼の中指の上に止まり。
その羽を振るわせる]
[ふんわり彼の表面を覆う風。
しかしその風は彼本来の束縛を嫌うものではなく。
大地に根付く、樹の力]
[冷気に気付いて、目をやれば氷の気配。]
…居たのか。
[部分的に鱗に覆われた身体を水の中から引き上げる。]
…だいぶ、落ち着いた。
うん、ありがと。
[森の方へと向かうミハエルを見送りながら手を振って]
ナターリエさん、そろそろ戻ろう?
[声を掛ければようやく彼女も回復してきたようで。
アマンダが倒るのには再び歩みが止まったが、すぐにユリアンが駆け寄り、優しい力を使うのを見て]
お任せすればいいね。
[そう言うとナターリエと一緒に町へと戻って*いった*]
うん、変な人が居たら、教えるのだって。
約束を。
[困らないとの言葉には不思議そうにティルを見ていましたが、椅子に座ったままで、前のように触れることはありませんでした。]
終わりの時間。
……ああ、かたちあるものは、いずれ、壊れるのだね。
[花は散るからこそ、美しい。そう云ったときと、おんなじように。]
変な人?
[困惑の眼差しで問いかけようが、
少し、疲れの色は見えるだろか。]
そう、形あるものは。
僕も、君もかな。
[そう笑った。
*区切りがつくか何かすれば、部屋に戻り眠るだろう*]
[力のあるものならわかるだろうその変化。
しかし今の彼には実感がわかず]
千花、これでいいだろ?
…多分大丈夫だと思うけど。
[彼を見て、千花は黙って頷き道を空けて]
[翠樹の気配をまとったまま、アマンダを抱きかかえ]
さて、気の強い眠り姫を送ろうかね。
[ぶつぶつ呟きながら、しっかりとした足取りで歩き出す。千花もその後についてくるだろう]
そうか。
冷ましてやろうと思ったが
[河岸を、ダーヴィッドのほうへと歩いて、手を伸ばす。
崩れたバランスと怒りに呷られて、乱れた力の細く流れ出る手から、滴る川の水は見る間につららのように*凍っていった。*]
…暖めてくれないか。
このままでは宿へも戻れない。
[凍りついた水面に触れると、それは静かに溶けてゆき。]
水を介して、対なんだろうな…きっと。
[濡れた身体を乾かして、服と鎧を身につける。]
[疑問を抱く少女に、一つ一つ、教えてゆく。
世界に在る十四の属性と、此処に集う彼等の繋がりを]
[来るべき時の為に]
そうだね。
ティルも、ベアトリーチェもだ。
……もしかすると、世界も、なのかな。
[後から小さく呟いた声は、*聞えなかったかもしれません。*]
―アマンダの工房―
[ベッドの上にその肢体をそっと横倒し、
そっと布団をかけて]
しかし、こうしてみるとアマンダさんも普通の大人の女性にしか見えないな。柔らかくて温かかったし。
[素直に思った感想を口にだすと、
千花ががぶりと噛み付き]
冗談だって。僕がここでアマンダさんを襲うとでも思ってるのか。いくらなんでも、そんなことしな…あれ?
体に力…が入らな…い……
[ずるずると彼の体が崩れ落ち、
ベッドに上半身を突っ伏すように倒れこむ。
コントロールしきれない力が、彼の許容範囲を超えたことに気がつく前に、そのまま意識は闇の中へ]
[三つ花の蝶がひらりひらり
*そんな二人を上空から眺めている*]
[差し出した、まだ火照りの残る大きな手を、冷たい小さな手はとっただろうか。
途中で拾った、小箱のチョコレートを、一本相手に渡す。
共に連れ立って*森をあとにした。*]
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