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まあ。
多分、アーベルがやったんじゃないか。
[声にはまだ、憮然とした色が残った]
っぽいな、あの通り。
[顔を出したミリアムに、ひらひらと手を振って、妖精を指し示した。
そして昨日の様子は何処へやら、元気に歩み出す老婆を追う]
……本当、爺婆元気だよなぁ。大人しくしてろって。
何がふーんじゃ、まったく。
[冗談への生返事に悪態ついて、ミリィに手を振り。婆ほどの年にもなれば混浴への抵抗もなく、服のまま踏み込んだ。
湯船の周りを見て歩くがそれっぽいものは転がっていない]
やっぱり、湯船に落ちたかなァ。それっぽい音聞こえたしのぅ。
しっかしもう一度脱いで探すのも大変じゃなァ。
わたしゃ湯あたりしちまいそうじゃし、若いもんに任せるか。
[さくりと見限って露天へと戻る]
[他に、誰もいないらしい様子に、よいしょ、と岩を超えて妖精の側へ]
……ほんとに、捕まってるですねぇ。
[小さく呟き。
元気良く混浴方面へと向かうヨハナと追うエーリッヒを見送る]
ほんとにお元気というか、御婆様、まだ無理してはダメですよぉ。
[一応、声はかけた。
届くかどうかはわからないが]
[走って走って、いつの間にか果樹園の辺り迄。
息が切れて立ち止まる。
肩で息をして、その場に座り込むとお腹の虫がぐうとなった。
人に触れることも出来なかった手でも、果実を握ることは出来るのだろうか。
おそるおそる手を伸ばし、赤い実に触れる。
軽く叩くとこつんと硬い感触。そっと力を入れて、もぎ取った。]
うわあ。
[思わず歓声を上げる。
手の中には林檎。その林檎をもぎ取った筈の枝にも林檎。]
ん、なんか、分からないけど。
[林檎にかぶりついて呟いた。
口の中に、甘い蜜が広がる。瑞々しい林檎の匂い。]
あたしはここにいるし、触れないけど、触れる。
[唇から滴る蜜を舐め、ひとつ頷いて息を吐いた。]
取りあえず、現状把握しよう。
[ヨハナとエーリッヒのやり取りの様子を眺めつつ、シェリー・コートをどうしたものか、と思案する。
そこに近づく気配に気づき、紅はそちらへと]
あ、ユーリ。
ユーリも、カラカラさんを追いかけて?
なんじゃ、ありゃ偽物なのかね?
妖精らが取りあっとったからてっきり…いや、しかしそう簡単にあれが見付かるわけも無いか…うゥむ。
[後半以降はどんどん小声になりながら、考え込んで唸る]
そもそも、あれは安全な……ぅむゥ……
[エーリッヒの言葉にきょとんとしつつも、とりあえずついてゆく。]
[温泉に行き、しっかり捕まった妖精を見て、]
もってないね。
んん、混浴?
[ヨハナが入っていくのをみた。]
[しばらくして追った。]
[こんな事態になったことに関係ありそうなものと言えば……最近たくさんありすぎて、どこから探せば良いのか分からないけれど。
変な声が聞こえるようになったのも、変なもの達が周りに見られるようになったのも、妖精の環に触れて以来。]
とりあえず、あの辺から行ってみるかー。
[林檎の芯を勢い良く投げ捨てて、向かうは森の奥。
途中、不思議なカラカラと言う音が聞こえると、その音に惹かれるように温泉へ。]
[カラカラ、という言葉に首を傾げた]
声が聞こえたから。
[言いつつ、視線は転がった妖精のほうに。
これが件のカラカラかと、指差してもう一度首を傾げた]
大方、きらきらしたのに目が向いただけなんじゃない。
[人騒がせな、と吐き出す溜息はやや重い。
唸る老婆の様子に、やはり視線を注いだ]
……ヨハナ婆、本当に何も知らない? 像について。
声って……ああ、妖精さんの、ですかぁ?
[一瞬、何のことかと思ったものの、ふとそちらに思い至り]
ええと、正確には、シェリー・コートというらしいですけど。
カラカラ音が鳴るからカラカラさん、と。
[短絡なネーミングにシェリー・コート、一応文句は言っているらしいです]
[向かう先の温泉から老婆の元気な怒鳴り声が聞こえると、何が起きたのか予想がつかず目を瞬く。
何が起きたかの予想はつかずとも、腰を痛めていた老婆の元気な声だけは確認できたから、一瞬の後破顔する。]
おばあちゃん……元気で良かった。
[その姿を早く見たくて、でも、彼女にも自分が存在しなかったらと思うと恐ろしくて、急ぎ足になったり歩いたり、奇妙な動きで温泉へ。]
――もしも、もしもじゃよ。
偽物であの状態なんじゃとしたら…本物がわかりやすいところに出てきたらどうなるんじゃろう?
探したら、見付かったら、ものすごくまずいんじゃないじゃろか。
[ふと顔を上げて、じっと見てるアーベルと目が合う]
なァ、アーベル。難しい探し物をする時、お前さんならどうする?
コッソリと一人探すか、皆で手分けして探すか。
なら誰が探したがった。探す事に熱心じゃったのは――誰じゃ?
[低く呟いて、いつの間にか集まっていた面々を見回す]
[一番最初に見えたのは、猫少年の揺れる尻尾。
やがて湯気の向こうに、見知った顔がいくつも見えて、何かあったなと好奇心に目を輝かせた。]
え?
難しい捜し物するなら……んん、そうだね。
危険なものなら一人で探すよ。
でも、そうじゃないならみんなに頼む。
探すことに熱心だったって……
いる?
[不思議そうにした。]
それに、天使って危険じゃないんじゃない? そんな名前だし。
だったら、たぶん、考える事じゃないと思うな。
こっちと、あと叫び声が。
[一度頷いた後、付け加えた。
絶叫の元を辿って辿り着いたのがここ。
それから何かあったのかと問いを発し掛けて。
ヨハナの言葉に振り返った。
文句を言うシェリー・コートが動けないことを良いことに、瓶詰妖精さんは何やらからかっているようです]
……ええと。
一番、熱心に?
[ヨハナの言葉に、こてり、と首を傾げる。
何故か、嫌な予感がふと過ぎり、手のひらに呪文の式を一つ書き付けた。
老婆の指摘が正しければ、一番危険なのは、多分、そこだから]
[人の視線の先、カラカラ音の元凶らしい生き物に目が止まる。
今迄見たどんな生き物にも似ていないそれに視線は釘付けだ。
わくわくと目を輝かせ、それに近づいた。やはり、皆には自分が見えていないようで、少しだけ消沈する。
けれど、触れられないのなら逆に、自分が何かされる心配も無い訳で。
躊躇うことなく、カラカラと音を立てる生き物に触れた。]
[瓶詰め妖精がリディにはわからない言葉で彼に声を駆けるのを聞けば、慰めるように動けないカラカラを撫でてやる。]
わっ。硬い。
けど、ぬめぬめしてる……。
ねえ、探し物は見つかった?
[危険云々と考えてはみても、一番危険というか読めないのは、妖精王かも、とかも考えているのはさておき]
んん、危険というよりは。
『強すぎる』と考えるべきな気もしますねぇ、天使は。
ほら、強すぎる力って、こわいものですし?
[笑いを含んだ問いかけは、猫少年の声に凍り付く。
それが、自分に向けられたものか半信半疑で。
確かめるように巻き付けられた貝殻をもぎ取ると、猫妖精に投げつけた。]
[視線は良く見知ってきた坊に変化のあるなしを確かめるように見据えたまま、アーベルの答えに言葉を返す]
危険なものなら一人で探しちゃいけない気もするがねェ。
まァ、天使が危険かどうかは叶えて欲しい願い次第でもあるさね。
疑わずに済むのが一番では在るがねェ、なにせ妖精王まで出てくる非常事態さ。何かがおかしくなってるのは間違いない。
年寄りは疑い深い生き物なのさねェ…哀しい事にね。
ぷぎゃっ!
[すっかり油断していたので、投げつけられた貝殻は、見事に猫の額にヒットした]
みゅ〜〜〜〜
[仰向けにひっくり返って、尻尾と猫耳をひくひくさせていたりする]
あ、あ、あたったーーー!!
[興奮して猫妖精に駆け寄る。
満面の笑みとともに、絞め殺さんばかりの勢いで猫を抱きしめた。]
あんた、触れるのね!
そうかな。
危険なら、誰にも迷惑かけないように、一人で探すのが一番だよ。
んんん、かなえてほしい願い次第で危険かぁ。
そんな危険な願いなんて、持ってる人いるのかな?
[首を捻る。]
疑わずにすむっていうよりも、あんまりいっぱい疑うと、おばあちゃんもつかれちゃうよ。
エーリ君は、ぜんぜん熱心じゃないしまじめでもないから、変につかれるより、ちゃんと考えたほうが良いかもしれないなって思うよ。
さて、天使を奪われれば犯人がそれで逃げるかもしれない。
少なくとも今は逃げられはしない。妖精王が居るからね。
それでも、見つける必要があるかい?
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