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[叫び声、遠く、背中から]
[振り返る、鮮やかに、笑って]
…ハインリヒなの?
どうして?
何故この子を……?
この子は…ブリジットは何もしていないわ!
[ブリジットを庇うように、抱いて]
[叫ぶ]
…ハインリヒ…… …ユリアン…
[横髪がブリジットの顔を覆い、振り返れば]
[風は逆向きに]
[ブリジット達からハインリヒ達へと吹きつけた]
[冷たい風]
[拒絶するように]
[そして]
[何故?と問いかける]
………
[何故?]
[言葉は聴いているのか][微笑みのまま]
[ただ窓の外を見つめる]
[ふたり][ふたり][逃げて][しあわせに]
[目を閉じて願う]
[あかいめを]
[追う。
何のため?
止める?
…いや、殺すため?]
…離れろエルザっ!! 喰われてぇのか!?
……その子は…
[告げようとした、声が掠れる。]
風が吹く、運命に抗う者をあざ笑うかのように風が吹く。
夜闇は白い大地をことさらに浮かび上がらせ、その上に蠢く者共を照らし出す。
[窓の外。
対峙する影と影と。
ぼんやり、見つめた]
……役割……。
それに……囚われても……。
[いい事なんて、何もないんだ、と。
声にする事はなく、呟く。
追う者たちへと向けて]
[何故、ブリジット、を]
[その答えを知っているような気はしたけれど]
ブリジットは何もしていない!
だって、そうでしょう?
ブリジットはずっと私と一緒に居たのよ?
この子は何もしていないわ!
[たとえ、ブリジットがそうであっても]
[守ろうと]
…離れろ。
[迷いを押し殺すようにして、
エルザに抱かれたブリジットの顎へと銃口を突きつける。]
…この子の母親がどうなったのか、聞かなかったのか?エルザ。
………どうして…
[人間を食べた事はない]
[仄かに黄色味がかる白い眸の色]
[さえざえと空に輝く月の色]
[けれども]
[今そこに在るのは]
[狂った色などではなく]
[夜]
[幼子を抱く手]
…ハインリヒ………
ママのように、殺そうとするの…?
[まざる][混ざる][記憶の混在]
[母と娘のような][ふたり]
[男の言葉――母親がどうなったのか]
[娘の言葉――母親のように]
[真っ白だった服が、緋色に、染まる。]
[あかいあかい、ちのいろ][べっとりと纏わりつく]
…それは、これから先…ブリジットが…人を襲うと?
本気で?
これから先、そうなるかも知れない…
そんな理由で…ブリジット、を?
そんなことにはさせない!
私がさせないから…この子は…
[声が、震える]
[白い、小さな手が触れる。
ソーダのグラスを受け取ったあのときのように。
迷いに震えた銃は、
あっけなく、雪原へと転がった。]
[ハインリヒの声は真剣で]
[銃口、ブリジットに向けて]
…聞いてるわ。ブリジットの母親は、人狼に襲われたらしい、と。
だけど、だからと言ってブリジットが殺したという証拠は無いはずだわ。
そうでしょう?
想いを込めて、鳥は羽ばたいてく。
蒼い空へ。
祈りよ届け。
ここに佇む、ぼくから天空へ。
[不意に口をついたのは。
贈ろうとして完成しなかった歌の。
その元になった書きかけの詩の一節]
……届け。
[小さな呟き。
何を、何に。
それは言葉にしなかったけれど]
ママは…
あのまま……だ…と………殺されてた…
あああ、愛して…くれ……ように……毎日、ま、毎日…言う事聞いた…何でも…した…でも、…でもねぇ……ずっとずっと…愛するの…双子の……ばっかり……痛い…痛い、痛い…痛いよ……
助けて……嫌だよ…やぁ…
………それに…死んだの……わたしの……所為だって…………アハハ、アハハ、アハハハハ…わたしの…所為だってぇ……
何も………してなかった……してない…ああ…あああ…
ブリジット?
どうしたの、ブリジット!
[意味の分からない言葉を呟くブリジットに声を掛け続けて]
[ハインリヒが銃を拾った事には気づかずに]
お母さん… お父さん…
殺した… 私が、殺した…
[白に散るあか][あかい父と母][手のひらのあか]
[目に痛い程の][覆い尽くす程の][一面のあか]
魂の 声 聲 コエ 聞いた 聴いた きいた
全部 全部 私の ものに したかった のに
冷たく なって ぬくもり なくなって
なでて くれなくて だきしめて くれなくて
うごかなくて コエだけ 声だけ 聲だけ
[壊れたオルゴールのように、言葉が紡がれて]
[エーリッヒのことばをききながら]
[やはり、たえることのない微笑み]
[そとをながめる]
あなたは何もわるくないから、だから逃げて。逃げて……
[ただその言葉を繰り返す]
…その子の母親は、"狼に襲われて"死んだ。
…自衛団の連中は、"狼に襲われて"死んだ。
まだ、判らないか?
[統率の取れた集団が、村を襲ったと…そう誰かが言っていた。]
[微笑みながら同じ言葉を繰り返すオトフリートの様子に、ほんの少しだけ疑問が浮かぶけれど。
でも、それは瑣末な事に思えた。
救ってくれたという事は、それだけ、彼の中では大きな事象で。
だから。
ごく自然にその隣に行って。
外を見る。
そして祈る。
願いが届くことを]
[ハインリヒの言う事は解る]
[判っていた、とうに、ブリジットが何か]
……ブリジットのせいだというの?
あれも、これも…皆、こんな子供に押し付けて…
[だけど、繋いだ手、自分を信じる手に、誓ったから]
この子に、そんなことが出来ると思うの…?
ママは…森の狼に食べられた…
わたしは………ママの指…逃れよう…手を振っ……
[カタカタと震えて]
[ただ、ただ、]
[エルザに]
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