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[響く音色。
それは確かに美しい、と思った。
懐かしい……そう感じるのは、彼ではなく、魔の方なのだろうけれど]
…………。
[心なしか。
それが軋んでいるように聴こえるのは。
やはり、魔の感覚なのだろうか]
……で。
お前はそれを、どうするつもりだ……?
[銀を手にした蒼き魔に向けて、問う。
真白の妖精の真紅の瞳は、どこか寂しげな色彩を湛えていたやも知れず]
ぁ・・・・
[呆然として、崩れる侍女を見つめた。]
[流すのは人か魔か、紅い眸から一筋伝う泪は透明。魔を示すあかい色ではなく、館の主や絵描きの女性の時と同じ色。]
[崩れ落ちるユーディット。それに先程までされていたことを思えば同情など欠片もするきはないが、オルゴールは彼女の魂を絡めとったのだろう。歌声を響き渡す。
確かに綺麗だ。綺麗で惹かれるものではあるが……...は想像していた通りなのか、どうなのかまではわからないが、どこかで忌避してしまう感覚を覚える。
綺麗過ぎるところに魚は住めないのと同じで…だから]
やっぱ燃費悪いよな
[なんて…]
―――…さぁ、如何して欲しい?
[手に持った銀の蓋を閉じれば、夜空へと溶けた音色は途切れ。
金を湛える青年の言葉に、くつり、と。笑みを向ける
問いに問いで返す言葉は、面白げに響いて。]
…仮にも、目的はオルゴールなのでね。
少なくとも、「返せ」と言われて――はいそうですか、と返すつもりは更々無い。
『オルゴール』も、『此の身体』も。な。
……なるほど。
[残滓を拾い集めて聞くものとは異なり、
その美麗なる旋律は執事の心をも打つか。
浮かべる微笑の温度は低くも、艶やかに]
邪魔をするものは排除するのみ。
互いに、それだけの話でしょう?
[他者の会話に口を挟む様子も、いつもとはやや異なり。
無論、主の魂を――との思いはあるが、
純粋に、己はこの状況を愉しんでいる。
恐らく、その感覚は彼の魔と近しいか]
[返る言葉は、予想通りか。
一つ、息を吐いて、ゆらりと立ち上がる]
それは、困るな。
それは……俺としても、『メルヒオル』としても。
返してもらわなければならないものばかりだ。
[す、と。
翠が細められる。
それと共に投げられる言葉は、静かで]
[響く音色は美しかれど、紅い眸が視るもの故にその耳には届いていないのか、反応はない。]
っ
[変貌を遂げた青年を、身体を浸蝕しつつある魔の部分が警戒したのか、一歩後ろに下がる。]
とりあえず、一般人は巻き込まないでくれるかなー。
[今までの常識なんてその辺に売り払ったとばかりな状況の...は、なんて、絶対に届きそうにない言葉をそれを承知でぼやきながら、少し、下がる。
そんな距離に意味があるのか。といわれれば疑問ではあるが、そもそも屋敷と言う箱庭の中にいる時点であまり関係もないだろうと開き直る
そして結局自分にできるのはこれぐらいと、他と比べれば小さな、イレーネの変貌もあっさりとした反応のまま、ただ泪を流すのだけはあまり嬉しくないのか。無言で頭をなでる]
…あぁ、その通りだ。良く判っていらっしゃる。
[と、執事の紡ぐ言葉に、笑みを向ける。
抜け殻と成った侍女の身体から数歩離れれば、紅の瞳を細め。
じり、と僅か後ろへ下がる。]
私の目的を遂げるには――それなりの魂が必要なのでね。
魂を集める習性を持つ『此れ』は、打って付けの代物なんだ。
…丁度良く、幾つか魂も収められている所だしな。
[金髪の青年の言葉に、掌に収まった銀へと視線を向けつ。
紡ぐ言葉は、さも愉快気に。]
幾年を費やして漸く手に入れた身体を、簡単に手放す魔が何処に居る。
―――あぁ、申し訳無い。
私の目的など、唯の人間には聊か興味の薄い話だろうが
[ユリアンの言葉に、僅かに目を見開いて。
何処と無く愉しそうに、笑みを浮べ。]
折角だ、此処の魂は奪えるだけ頂こうかと考えているんでね。
……近しい、君の未来だ。
[さほど関係無い訳でもあるまい、と]
……ま、お前の目的には、悪いが興味はない。
お前も、俺……というか。
『メルヒオル』の目的に興味はないだろうからな。
[蒼き魔の語る『目的』には、さらりとこう返して]
いないだろうな。
現にここに、身体を得るために15年近く人の中に居座っている魔もいる。
[続く言葉には、軽く肩を竦めて見せる]
[身に魔を宿すと言えど、ずっと人の部分がそれを抑えてきた所為で魂が離れる瞬間を感じ取れるだけで、他の部分は何ら人と変わりない。目の前の魔達との力の差は歴然だった。]
・・・・・
[青年に頭を撫でられ、困惑の表情を浮かべる。]
[眸から紅は引くも、やはり紫掛かっていた。]
巻き込む形となり、申し訳御座いません。
[声は届けども、反省の様子はあまり見られない]
勝者は全てを手に入れる、容易な話ですね。
ともあれ、今宵はもう既に、時間も遅い――
少々、お引取り願いたいのですが。
[紡いだ言葉は、あまりに悠長だったかもしれない。
夜に魔の能力が強くなるのは確かなれど、それは相手方も同じ事。
そして今、万全の状態ではない事は、互いに理解しているだろうか。
ざわり、と薔薇は揺れる]
うん。全然興味ない
[なんてアーベルらしき蒼い魔に対しきっぱりといいつつ、後者に対してはそうなるよな〜と。同意したようで]
俺なんていれても腹下すよ。
[と、そんな軽口だけ。
もう自分が無力であるというのは実感しつくしているからなのか]
!
[青髪の魔の言葉に顔を上げ、銀灰の影から睨むようにそちらを見る。]
・・・やめて。
[いざ力が向けば、自身が何も出来ないことは分かっている筈だけれど。]
…違いないな。
邪魔立てする存在の目的を聞いたところで、同情が欠片も沸く筈も無い。
[青年の言葉に、くつりと笑みを返す。
告げる執事の言葉に、紅の瞳をゆっくりと其方へ向ければ
手に持つオルゴールを弄りながら、肯定するように笑みを向けて]
…構わん、この場の魂を集めるには不都合だろうしな。
勝者が全てを手に入れる、実にシンプルだろう?
言っておこう、―――私が、此処から逃げる心算は元から無い。
[ざわめく薔薇を背に、紅の光は僅かに強さを増して]
リミットは其れまでだ。
―――取り戻したいなら、奪い返しに来い。
[吹き抜ける風と共に。 掻き消えるように青年の姿は*消えた*]
[庇うようにしてみたは良いが、当の本人があまりに緊張感なく見えたのか。それともオルゴールに腹があるのか否かを突っ込みたいのかも知れないが。]
・・・・
[無言で青年をちらと見上げる眸には、やや呆れの色が浮かぶか。]
[無言でこちらを見上げるイレーネ。そこにはひそやかながらもしっかりと呆れの色が浮かんでいて]
…いや…だってな…せめて口で負けたくないし
[なんていいわけがましく横を向く]
……取り戻しに……ね。
言われずとも……という所か。
[消えた蒼き魔の言葉に、小さく呟いて。
握り締めていた右手を開き、閉じ込めていた白き羽根をふわりと風に散らす]
それが必要な事であるなら、勝てばよいだけ。
……単純な話……。
[全ての羽根を風に散らした後、一つ、息を吐く。
夜空を見上げる翠の瞳は*冷ややかな色彩を宿して*]
ほんと、変わらない、ね・・・
[横を向く青年には呆れのようにも安堵のようにも聞こえる息を一つ吐く。]
[声が響きそちらを向けば、青髪の青年の姿をした魔は消え失せた。ざわめく薔薇をしばし見つめる。]
御意に――
[客人に対するが如く、深く頭を下げて恭しい一礼。
しかし、その瞳に抱く緑は、昏い光を帯びて。
ざわめく薔薇も、周囲の樹々も収まり、周囲を静寂が包む]
行っちゃったな。
[張り詰めていた空間が少し弛緩するのを感じて緩く息を吐く。
ただこれは問題の先送りになったにすぎず。
とりあえず、エーリッヒとオトフリートまで敵じゃないっぽいよな?と確信はないまでも抱きながらその点はほっとしつつ。
でも、次が来た時に……自分にできそうなことといえば……]
模倣…ぐらいかね
[なにも模倣は造るもの限定というわけでもなくて…]
まあ人の域までの話だけど
[なんて呟き、嘆息]
……さて、と。
[ぱん、と軽く手を叩くと、客人達へと微笑を向ける]
とりあえずは、中へと戻りましょうか。
腹が減っては戦が出来ぬなどとも申しますし、睡眠も重要です。
[さっぱりと緊張感のない言葉は、いつもの執事と変わらない]
まーね。
ってか周りが変わりすぎ。
[なんてイレーネの言葉に対し言いつつ、オトフリートのいつもと変わらない言葉を聞けば]
いや、オトフリートさんは変わっていないかも。
[とぼやき、イレーネに、じゃあ戻ろうか促し、強大な魔を見せた彼…エーリッヒにも...は特に怖れずに同じく屋敷内へと促した]
[魂の失われた少女に視線を落とし、世話が焼ける、と小さく呟く]
まあ、放って置いても好いのですが。
庭園の美観を乱しますし、魔に唆されたがゆえ……
という事も有り得るでしょうから、ね。
[さらりと酷い事を言いながらも、客人を促して邸内に向かおうか]
執事か…ん。確かに執事だ。
[やっていることは多分そうだなということで同意し、促されるままに屋敷内へと入る]
明日?明後日?
ま、近々な気もするけど。どうなる…いや、どうするべきかね。
[なんて思案、首にかかる薔薇の装飾は、吹き込まれたそのままに、無力感を映し出すようで、それをそっと*嫌悪した*]
[執事の促す言葉にそちらを向き、頷く。]
・・・・
確かに、ね。
[青年に対する肯定は自らのことも指すからか、僅かに躊躇するような間があった。]
・・・・・・怒ってる?
[何気に酷い執事の言葉を耳にすれば、小さく呟きながらも館へと足を向ける。]
[躊躇するようにしながらも問うイレーネに答える]
……さあ?
怒っているかもしれないし、ただ驚いただけかもしれないけど……
あんな風に変わらず、イレーネがイレーネならまあいいか。
そんな感じ。
[と軽い調子で、でもそれが本心だというようにいって屋敷の中へと]
[何処までも軽い調子の青年を見上げる眸は、また少しだけ紅みを増していたが。]
・・・ありがと。
[僅かに口許をつり上げ、微笑に似た表情を*浮かべた。*]
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