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っつぅ……さすがに、効くねっ!
[顔を顰めながらも、手にした針はオクタヴィアへと投げつける。
鴉自身は後退し、動きを止めたロミの背後へ舞い降りて]
……とまってると、危ないよっ!
[冗談めかした言葉と共に、首筋へ向けて手刀の一撃を繰り出した]
―北エリア・林―
うわっ!!
[轟音と共に射出された弾丸。
土壁を更に展開させるも、衝撃に後から後から崩されて行く。
回避は間に合わぬと判断し、障壁の維持に集中し続けるが、それが仇となったか。
背後に迫る鴉の影に気付かず、槌の間合いより内側まで接近を許してしまう]
ぐ……
[手刀を咄嗟に右腕で受けるが、衝撃に鈍い痛みが走った。
途端、集中が途切れ障壁は塵芥と化す。
ライヒアルトの手を弾きつつ横へ飛び退こうとするが、一瞬遅れ、脇腹を熱い痛みが走った]
圧されてる、だな……!
[もはや手の内を隠している余裕はない。
ライヒアルトの針がオクタヴィアへと飛ぶ。
彼女の意識がそちらを向いているなら――不意を討つ隙はあるか]
いけぇっ!
[左手を槌から離し横薙ぎに振る。
それは単に、『力』を送るための予備動作。
少女の意識は、オクタヴィアの背後――樹が根を張る土にあった。
『力』を受け、土が持ち上がり、そして樹はオクタヴィアの頭上へ倒れ掛かる]
─北エリア・林─
[精度に劣る射撃だったが、それなりに被弾させることは出来たようで。ライヒアルトから投げつけられた針は、射撃を止めたガトリングガンの銃身を翳して防ぐ。キィン、と金属がかち合うような音がした]
威力が高い分、精度に欠けますけれどね。
[ライヒアルトの声に返しながら、ガトリングガンを持ち直す。銃を変え、射撃準備に入ろうとした───その時。ふっと上空に影が差すのを感じた。僅か振り仰げば、背後より倒れ来る一本の木]
離れて居ても力は及びますのね!
[地面へも視線を流せば、持ち上がった跡が残っている。ロミが繰り出したものであるのは明らかだった。咄嗟にガトリングガンを持ち上げ、倒れ来る木に翳し。受け流すようにして横へとステップを踏んだ。左足にも力がかかり、痛みが走る]
くっ……。
[左足に突き刺さったままだった針を払う。紅が流れ出すが、構ってはいられない]
[手にしているガトリングガンを持ち直すと、それらを二丁のライフルへと変え。ライヒアルトとロミの周囲にある木の影目掛け、銃弾を撃ち出す。二人を囲むような位置に、六発の弾丸が着弾した。先を見越しての仕込み。その所作は射撃ミスに見えなくもない]
もう一つ行きますわよ!
[次いで二丁のライフルは一丁のバズーカ砲へと変化。銃口を地面へと向け、右足で引き金を踏んだ。地下潜行型の爆破砲撃が、固まって立つ二人の足元へ。轟音が二人に迫る]
─北エリア・林─
[打ち込んだ一撃は払いのけられ、少女は距離を取るべく、動く。
障壁が消滅した事で飛来する弾丸は、とっさに開いた右の翼──漆黒の龍翼と右の腕を翳す事でどうにか凌いだ]
……っとに、威力だけはあるよねぇ……。
[伝わったのは衝撃だけだが、ダメージは決して低くはない。
『獣神』によって埋め込まれた部位以外は鍛えた人間レベルなのだから、無理もないが。
ぼそりと呟きながら、ロミがオクタヴィアに仕掛ける様子を見やる。
倒れる樹に、蜂蝶がどう動くか。
それを確かめてから次の手を、と考えていたのは、まずかったか]
……って……。
[一見すると、見当違いの行動。
しかし、それと同じ動きは、先の戦いの記録の中でも見ていたな、と。
思い当たるのと、轟音が響くのは、ほぼ同時]
……ちっ!
[テレポートは、すぐには使えない。ならば出来うる回避は一つ。
アンバランスな両翼を広げると、上へ向けての離脱を試みた]
―北エリア・林―
[直撃は回避されたものの、ライヒアルトの攻撃も相まって、オクタヴィアに多少のダメージは与えられたか。
しかし、未だ己の不利は変わらず。
脇腹から滲む血を止める暇もなかった]
[ライフルを構える動作に回避を意識するも、弾丸は二人から大きくそれて着弾する。
その布石は少女には理解出来なかったし、思考する暇すら与えられなかった。
こちらへ向けて迫る爆音]
って……それはオラの専売特許だっ!
[爆発と同時、少女の体は宙を舞う。
しかしそれは爆風に飛ばされたのではない、足元の土を『力』で持ち上げ自ら『跳んだ』のだ。
槌頭を先に地面へつけ、柄の倒れる動きとともに着地する。
再び槌を持ち上げ構え直す動作で、脇腹の染みが一層大きくなったのを感じた]
(まだだ……ここで止まっちゃなんねえ!)
[大技を使ったオクタヴィアと、それを回避したライヒアルト。
二人の攻撃に僅かな間隙を感じて、着地の衝撃も抜けきらぬ体で更に動く。
オクタヴィアの元まで駆けるには、やや遠いか]
んなら……
[視線はライヒアルトの方向へ]
『塞げ』!
[叫び、力を送る。上方へ飛んだライヒアルトの進路を塞ぐべく。
周囲の樹がライヒアルトという中心に向かって傾いで行く。
『殺到させる』とまでは流石にいかなかったが]
どれか一つにでも当たりゃあめっけもんだ……!
─北エリア・林─
[バズーカを発射させた時の、地響きの如き震動は自分の身体にも伝わって。地へ付けていた左足に更に負担がかかる]
(この足では近付く前に仕掛けられるのがオチですわね)
[先程から移動の気配を見せない理由。左足はほぼ使い物にならない。最初から大きなものも使いすぎているのもあって、僅かばかり肩で息をした]
[地下潜行型の爆破砲弾は爆音と共に土煙を立ち上らせるも、それぞれ回避されてしまい。手元のバズーカは一回り小さくされ、肩へと担がれた]
貴女のものと一緒にしないで頂きたいですわ。
[専売特許と騒ぐロミへの返答。その直後に再びの轟音。後方で射撃に伴う排気が起こり、射出された砲弾はライヒアルトへと傾いで行く木──ロミ側に在る一つへ。先の爆破砲弾よりは威力の低いそれが、着弾した木を破壊する。そのうちのいくつかが鋭さを伴い、ロミへと降り注いだ]
─北エリア・林─
……て、さすがにこれは……!
[ロミの言葉に従い、倒れ込む樹。どうするか、との思考は短く。
一本に集中して、それを右腕──龍の腕で、受ける。
龍鱗を備えた腕は樹を押し止めるものの、衝撃と、それが伴う痛みに肩が悲鳴を上げるような心地がした]
……おりゃっ!
[その痛みを堪えつつ、掛け声と共に力を込め、止めた樹を文字通り叩き折る事で強引に空間を空け、上へ。
叩き折ったそれがどこに落ちるか、を確かめる間もなく、オクタヴィアの砲撃が樹の一本を破壊した。
その余波を避けるべく、上へと抜けて]
……いやはや、ホント、女は怖いねぇ。
[ぼやくように言いながら、右腕を振る。
龍の鉤爪が消え、代わりに、漆黒の針がその手に現れた]
……ナーデルレーゲン。一回くらいはいけるかね。
―北エリア・林―
[オクタヴィアの射撃――ライヒアルトを狙うと見えたは、錯覚。
砲弾により爆砕された木の破片は、こちらへ向けて降り注ぐ]
しまっ――
[咄嗟に両腕を交差させ、顔を庇う。
次々と激突しては通り過ぎて行く破片。
その内の一つの感触がおかしかった。
どうにかやり過ごしたと思い腕を動かした瞬間、それは激痛に変わる]
ぐっ……刺さった、だか……
[顔を顰めながら、左腕の肉に深々と刺さる破片を引き抜く。
槌の重量が再び掛かれば、その痛みは泣き出したくなるほどで]
だども……ここまで来て降参なんて、『面白く』ねえだろうなあ……。
[ライヒアルトの手の漆黒を横目に見ながら、少女もまた己の『力』を大地に染み込ませて行く。
集中しながら相手の攻撃を避けられるか、二人を倒す所まで気力が持つか、ほとんど賭けに近い]
いんや。もう、ここで決めるしか――やるしか、ねえ!
[血が染み出すのも構わず、ぐっと鉄槌の柄を握った]
─北エリア・林─
[降り注いだ破片がロミを傷付け、樹木の集中からどうにか抜け出したライヒアルトが宙を舞う]
(もう少しキーを撃ち込んでおきたかったけれど、限界かしら)
[周囲の高まった緊張にそう判断した。残りは自分で補うしかないと、バズーカを地面へ捨て置き両腕を胸の前でクロスさせ、両手を両肩に当てる。肩のタトゥーが消え、掌に具現するのはタトゥーから現れたかのようなアゲハチョウとスズメバチ。その大きさは実際のものより遥かに大きいものであったが]
耐えて下さるかしら。
そうでなくば困るのですわよね。
[呟きは極小さい。とある目論見はあれど、手を抜くつもりは無かった。両手にアゲハチョウとスズメバチを乗せた状態で二人の動向を窺う。動きがあれば、直ぐに返すことが出来るように]
─北エリア・林─
……どーやら。皆様、やる気のようで。
[傷を受けながらも構えるロミと、何やら構えるオクタヴィアと。双方の様子に、小さく呟く。
口調は軽いが、さほど余裕があるわけではない]
……ま、ここまで来たわけだし。
[呟きながら、漆黒の針を両手に]
やれるだけはやらんと、さすがにカッコつかねぇしな。
[す、と。常磐緑が細められ、ゆっくりと腕を胸の前で交差させる]
……今度がほんとの、大盤振る舞い。
出し惜しみなしの一撃、ご覧あれ、と!
[言葉と共に交差していた腕が、左右に開く。
勢いをつけて放たれるのは、針の雨──否、乱舞]
[オクタヴィアの手に、蝶と蜂が具現する。だが、今はそちらを気にしている余裕はない]
(『力』が残ってる内に――『鴉』さの翼を折らねえと!)
[ライヒアルトに向かい、駆ける。
その眼前、無数の針が煌めき舞っていた]
――『跳ぶ』!
[足元の地面に向けて念じた。より高く、より速く、自分の体を持ち上げるように。
針を越え、更にライヒアルトより上空を取らなければ、攻撃は当たらない]
あああぁぁぁ……っ!
[土の力で空を飛ぶ。
その矛盾は莫大な負荷となって、全身を軋ませた。
この一撃を当てられても、その次の、即ちオクタヴィアの攻撃に対応出来るかはわからなかったが。
それでも今は、目の前の相手だけを見据えて――]
堕ちろ――っ!!
─北エリア・林─
Ein Füllungsanfang………。
[呪のように呟くと、キイィィィンと言う音と共に二匹の虫が駆動する。生体ではなく機械に近いそれらは複眼を幾度か明滅させた。エナジー充填、それは自分の力のみならず、先程銃弾を撃ち込んだ影からも注がれる。あの時の布石は直接攻撃のためでは無かったのだ]
────Vollendung.
[声と共に二匹の虫が両手から舞い上がる。お互い交差するように飛び交い、スズメバチはライヒアルトへ、アゲハチョウはロミへと近付いて行く]
さぁ、舞い踊り遊ばせ!
[声を張り上げたのは二人が仕掛け始めたのと同時。スズメバチは複眼と針から、アゲハチョウは複眼と触覚から細いレーザー光線を放った。複眼の一つ一つから放たれるそれは、放射状に広がりながら二人へと降り注いで行く。ライヒアルトはともかく、持ち上がる大地により場所が変わったロミへの射撃はいくらか外れたかもしれない]
[一方でオクタヴィアは迫る攻撃に防御行動は見せども、その場から動くと言うことはしなかった。動けないと言うのもあったが、動く気が無かったのもある]
[自分はここで負けるべきだと考えていたために]
[己が目的は『遊戯』を『盛り上げる』こと。勝つことが目的ではない。この二人ならばどちらが勝っても、そう考えた末の決断だった]
[少しでも壁にするべく、地面へ捨て置いてあったバズーカの端を右足で踏み、跳ね上げらせる。それを手に持つと、迫り来る針の乱舞のうち、顔に当たりそうなものだけを防ぐように翳した。それ以外の場所は無残にも針が貫いて行く]
─北エリア・林─
[針の乱舞は、制するに集中が必要となる。
それを行う間は、動きが制限されるのが、唯一の欠点]
……ちっ!
[舌打ちは、近づくスズメバチへの乱舞へのもの。
そちらに意識を誘われた直後、絶叫が響く]
……つか、それ。
すっげえ、無茶。
[大地から持ち上がる手。
思わずこんな呟きが零れる。
それでも、急所と──他の何より、鴉の翼に当てられる事だけは避けねば、と。
振り下ろされる一撃に対し翳すのは、龍鱗を持つ右の腕]
[伝わる衝撃。同時に走るのは、激痛]
……くっ!
[頑健なる龍鱗は揺るがずとも、度重なる衝撃によりダメージを被り続けた肩は、その一撃に耐え切れなかった。
息が詰まるような感覚。
右の翼は、揚力を生み出しきれず]
[黒耀鴉は、地に落ちる。
一歩遅れて、相手を捉え損ねた針が煌めきながら零れ落ちた]
―北エリア・林―
[急激に持ち上がって行く視界。
その視界の端を、鮮やかな蝶の姿が横切った]
つっ!
[足が焼かれ、そして貫かれる感触。
新たな痛みが加わったが、しかし攻撃の動作は止まらない。
両足に残る最後の感覚で、巨人の掌を蹴り更に跳ぶ]
ずっと、考えてただ――
どんだけ無茶すれば、お前さんに届くか、ってな!
[相手の右腕を視界に捉え、鉄槌を振り下ろす。
重力に任せて、全身で回転しながら。
手応えは――あった。
落ちて行く鴉。
そして、娘もまた。鉄槌に引かれるように、落下を開始していた]
─北エリア・林─
[針が刺さった部分から、紅が滲み出て紫のドレスを染める。出血部が小さいのもあって、一見斑模様に見えることだろう。それもまた、しばらくすれば全てが染まるのだろうが]
……あの子も大概無茶ですわね。
わたくしに余力があったら如何するつもりだったのかしら。
[両膝を地に付けた状態で空から落ちるライヒアルトとロミを見た。勿論余力なんてものは無い。宙へ放ったアゲハチョウとスズメバチが全てだった]
[射出を終えた二匹はその場で溶け、近くの影へと同化する。手にしていたバズーカもまた、その形を保てず消え去っていた。支えを無くしたオクタヴィアだったが、気力で倒れぬよう意識を保つ]
─北エリア・林─
[地に落ちて、は、と一つ息を吐く。
右の肩は完全に抜けたか、砕けたか。
いずれにせよ、役には立ちそうになく。
右手が使えない、という事は、龍鱗から生成する針を用いる事もできないわけで]
……これ以上は、無理、か。
[零れ落ちるのは、ぼやくような呟き]
……やれ、やれ。
ホントに、女は怖い、ねぇ。
[続いた言葉は、冗談めかしたもの。
常磐緑の瞳には、険しさはなく。
声音の軽さともあわせて、戦意が既に失せている事は傍目にも明らかだった]
これ以上やりあうのは、さすがに無理。
命かけるつもりはないし、白旗揚げますか。
っても、黒羽しか持ってないけど、ね。
―北エリア・林―
[ライヒアルトの落下から一瞬遅れて、こちらも地面に到達した。
華麗に着地、とはとてもいかず、前転して勢いを殺すのがせいいっぱいだったが]
つ……
[それでも、鉄槌を支えになんとか立ち上がる]
ライヒアルトさは……これで、降参?
オクタヴィアさは……
[視界を動かす。
意識はまだあるものの、膝をつき動けぬ様子の彼女が見えた]
じゃ……じゃあ……
オラの、勝ち……?
[信じられない、という表情で、二人の方をもう一度見る。
そして確かに、今立っているのが自分だけだとわかって――
緊張が解けたようにペタンと地面に座り込むと、そのままわぁわぁと泣き出した**]
おっ父、おっ母……オラ、勝っただよ……!
─北エリア・林─
……ええ、わたくしも。
これ以上は無理ですわ。
[ヒトの形をしている時は、ヒトの限界を持っている。力とて無尽蔵ではない]
メーベルトさんの勝ちですわね。
[確認するようなロミに、確定の言葉を向ける。針が消えた腹部を右腕で抑え、左手でイヤリングを弾いた]
───Pflichtvollendung.
勝者はロミ=メーベルト、野槌の娘ですわ。
[『遊戯』のスタッフに対する通信。おそらくは様子を見ているだろうが、義務として仕事は果たしておいた]
……貴女の望みはなんなのでしょうね?
[鶸色は泣きじゃくる少女へと向けられる。この先どうなるかは、この少女*次第*]
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