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−港→ゲルダの家−
[鎧姿の青年が、船の残骸と思われる大きな木片に腕をかけて水面に浮かんでいた。
どうやら、木片に掴まったままで流れてきたらしい。
気を失ったままの青年は、ゲルダに拾われて*テイクアウトされた*(ぇ]
───森の中───
[宿屋の食事を終えて、ライヒアルトの家へと帰った後の夜遅く、少女はふらりと夜の闇深い森の中で一人立っていた]
……。
[森の中。それも夜半もすぎた時刻に少女が一人でいるのは相当に不釣合いだ。
いくら街から近いとはいえ、どのような危険があるのかは想像も出来ない。
今までを見る分には臆病だと思える少女には恐ろしい場所だとさえ言える。
だが、少女は一切の恐れも抱かずに、ただ呆けたように立ち続ける]
……。
[言葉を一切喋らず、表情さえ変わらない少女の胸のうちは例え何処かから誰かが覗いていたのだとしても、誰にも分からないだろう]
……。
[何処かで梟が鳴く音がする。
緩やかな風が吹いて木の葉がざわめく。
月の光が、森の中に弱く煌く。
その中に一人立つ少女の姿はあまりにも不釣合いで───それでいて、何ともその場にいるのが似つかわしい姿でもあった]
……人魚、姫。
[小さく呟く。
それは、最後には泡になって消えてしまう寓話。
嗚呼。だけど、何故少女はその物語を知っていたのだろうか]
……。
[人魚姫は、出会うための代償として声を失った。
ただ、出会いたい。それだけの為に大きな代償を支払った。
それを、一体誰が咎めることが出来るというのだろうか]
……帰らなきゃ。
[もう一度呟き、動き出そうとしたところで、チリン、と腕に巻いた鈴が鳴った]
うん。帰らなくちゃ。
[少女は、ゆっくりと街の方向へと歩き出す。
金の鍵を片手に持って、ライヒアルトの家へと少女は帰っていった]
―明朝・別荘―
[誰と席をともにするでもない食事は、慣れてはいてもあじけない。
きのうの夜がにぎやかであったぶん、なおさらに。
ふっと、思い出したように焦げ茶の瞳がひとりの使用人をみた]
あぁ、そうだわぁ、シア。
そのうちにむかしの友人をつれてくるかもしれないわぁ。
だからいつでも客人をもてなせるように、準備をしておいてちょおだぁい。
あたくしがいないときでも、気にせず通してかまわないわん。
[そのことばが示すのは、ライヒアルトのことか、あるいは。
どのような人物とは述べずに、端的な指示をだす]
―ゲルダの家―
「っ、ナ……サ…………」
[唇が誰かの名を呼ぶようにうごいた。
固く閉ざされていたまぶたが震え、ゆっくりと開かれる。]
「…………ここ、は…?」
[小さく呟いて、辺りを見回す。
寝台のすぐ横には、鎧と剣が置かれていた。]
「私は……助かった、のか…………?」
[体を起こしながら呟かれる声には、安堵と後悔の色が含まれていた。]
───ライヒアルト家───
[戻ってきて、自分に割り当てられたベッドで眠ろうと思ったが]
そうだ。
復讐しなくちゃ。
[と、思い立って、何やら台所でガサゴソ家捜し]
うん。これにしよっと。
[嬉しそうに何かを手に取ると、そのまま、下手くそな忍び足でライヒアルトの部屋へと向かう]
あははー。
[そして、そのままライヒアルトが気づかないのならば、その手に持った胡椒を、かなり際限なく顔の上にぶっ掛けてから、楽しそうな顔を浮かべたまま、自分のベッドへ戻っていき、次の日を迎えるだろう。
気づかれたのなら、さてどうなるだろうか]
[ゆたかな亜麻色の髪をみつあみにしたその使用人が、頭をさげるのを見るでもなく席から立って、背をむける]
きょうも、さんぽしてくるわ。
運命の再会をものがたりにするのもいいけれど。
もうすこし別のものをつかんでから、書きたいから。
[別荘からでて、ぐ、と伸びをひとつ。
さてどこに行こうかと、考えながらあゆみだした]
― 自宅 晩〜朝 → 港方面へ―
[キリの良いところでフーゴーの宿より家へと戻った。
カウンターに代金を置き、ヴェルトの嘴を一撫で。
その一瞬だけは、双眸が少し和らいで。
けれど、やはり宿から離れる時は、常の無表情に戻る。
――常と違うのは、
その傍らに鈴の音を鳴らす少女が居たことだろう。]
…―――。
[家に帰って暫くすると、玄関の扉が軋む音がした。
少女が外に出ただろうことは足音で分かったが、
学者がその後を追うことはない。
ただ、個人の行動の自由を重視してるだけであるが、
時にそれは人に冷たいと思われるのだろう。]
[そして、他人の行動の自由を重視するのと同じく、
自分のペースもイレギュラーが入ったとしても、
出来るだけ崩そうとはしない。
それもまた、冷たいと思われる一因か。]
はっ……っくしゅ、くしゅっ、…――ずっ。
[マイペースにリディの帰宅を待つことなく、床に横たわって。
ついでに云えば、足音が聴こえても寝た振りをしていたのだが。
大量の胡椒を顔の上にぶっ掛けられれば、流石に生理現象は止められない。]
……リディさん、悪戯は困りますね。
[ゆるりと身を起こして、苦言を一つ零した。
けれどそれ以上は何も云わず、このままでは寝ることができないと、
再度シャワーを浴び、リビングのソファで寝ることに。]
……やれやれ。
[珍しく、困った……という風に眉を寄せて眠りにつくも、
惨事となった寝台を片す為にいつもより早く起きることなる。
リディが起きる頃には、胡椒がない所為で、
いまいち味のしまらないコンソメスープと、
ライ麦のパンが食卓に置いてあるだろう。
生物学者の男と云えば、一人常のペースを崩すことなく、
日課のフィールドワークに
――今朝は港の方へと足を進めていた。
ちなみに、少女に声を掛けなかったのは、
一応、男なりの配慮ではあったのだが……。]
村の設定が変更されました。
─雑貨屋・自室/明朝─
[目覚めは大抵、日の出との競争。
日によって、勝ってみたり負けてみたりだが、今朝に限っては昨夜はしゃいだせいか負け越した]
んー……おはよ、ツィン。
[側で目覚め、身体を伸ばすぶち猫に呼びかけながら起き上がる。
結っていない黒髪が、背へと滑り落ちた]
あふ……さてと、支度支度。
ゲルダが来るって行ってたし、準備しないとねぇ。
[そんな呟きを漏らしつつ、顔を洗って身支度を始める。
髪を結う時に、しばし、鏡の中と睨めっこをしたりしつつ]
[鏡像に向けて何か小さく呟いてから、きゅ、と髪を結わえる。
身支度がすんだなら、まずは家の事を片付け、それから開店準備。
それは、十五の歳から今日まで変わらぬ、日々の習慣。
店の中の準備が整うと、箒片手に外に出て。
始めるのは、店の前の通りの掃除]
[ライヒアルトが困ったような声を上げるのには]
あはは。勝った。
[とか、嬉しそうな声を上げたとか何とか。
そして、安らかな様子で眠り、次の日に目覚めたときにはライヒアルトの姿は無かった。
不安ではないといえば嘘にはなるが、さすがにこの状況で何処かにいなくなったとも思えず、割と普通の様子で用意してあった朝食を済ませる]
なぁに、これー?
なんだか、すっごく味薄い。
[自分のせいなのに、そんな愚痴をこぼしたりもしたが]
―拾った日の朝・自宅―
[漂流していた男は朝に拾ったから、船乗りのおっちゃんたちの噂話を聞いた人はゲルダの家に見知らぬ男が連れ込まれたことを知るだろう。
めずらしくも早く起きてこの女が動いていたと言う話とともに。
連れてきた男は意外と早く目を覚ましたようで、客間から声が聞こえれば、リビング兼作業場からひょいと顔を覗かせる。]
目が覚めたかい、にーさん。
とりあえず、風呂と飲み物の用意はしてあるから、その濡れた身体をどうにかすると良いよ。
にんぎょひめ、…かぁ。
そういうのもいいわよねぇ。
[ぽつり、つぶやきが風にのる。
この島で書くのならば、よく似合うだろうと思って]
男女逆転、半魚人とか。
おんなのこのほうが、おとこのこを海でひろうとか。
それはそれでロマンがあって、いいかしらぁ?
[じっさいにそんなできごとが起きたとは露知らず。
足取りは海へ。そして砂浜をあるく]
―教会前―
……くぁ……ふ。
[まだ朝早い時間、男は教会の前で大欠伸をかました]
おい、あんまり暴れんじゃねぇぞー?
……ったく、夜も朝もてこずらせやがって。
[元気に教会の中を駆けずり回っているらしき足音に、テンション低めの声でぼやく。
手にした箒をやる気なく左右に動かした]
……。
[さて、朝食を済ませた後は、特にやることもなくヒマだった。
家の中を散策したところで、あまりヒマをつぶせるようなものもなく、本があったとしても、少女が読むには少し難解すぎるものしか置いていなかった]
うーん?
[意味もなくころころと転がってみたりもしたが、それでヒマをつぶせるはずもなく、ライヒアルトが帰ってくるまでどうしたものかと頭を抱えた]
あ。そうだ。
[と、思いついたのは、昨晩のライヒアルトの言葉]
『本を読むならば、教会が揃えがいいかもしれません』
[実際には多少違う言葉ではあるが、内容的にはさほど間違ってはいないだろう]
なんか読む本借りてこよーっと。
[人見知りするくせにそういうところだけは、行動力があったりする。
少女はすぐに、外に出て噂の教会とやらを探しに出かけた。
ちなみに、鍵を借りているくせに、当然のように鍵はかけていなかったり]
─回想─
おぅ、おめぇらも気を付けて戻れよ。
[店を立ち去って行く者達にはお決まりの言葉を向け。支払われた代金を簡易な金庫へと仕舞う。クロエには忘れずデザートを持たせた]
よっしゃ、リッキーそろそろ店仕舞いだ、片付けるぞ。
[他の客もはけたところで残った使用済みの食器や調理器具を洗い片付けて。その日は何事も無く眠りについた]
─回想・了─
─現在・宿屋─
[夜も明け、宿泊客の朝食の準備をして。起きて来た順にそれらを提供し。時間が空けば日課のオーナメントの手入れなどを行う]
[それらはフーゴーが船を走らせていた頃にお目にかかった歴史的遺物や発掘品を基に作られたもので、縮小されたストーンヘンジのジオラマや白銀の燭台のレプリカなど、置かれている種類は多岐に渡っている。一番目立つ所には自慢の商用ジーベックのオーナメントも置かれていた。壁には剣や盾、その他有名な偉人が使っていたと言われる武器等も飾られている。
ちなみにストーンヘンジのジオラマに使われている石は取り外し可能らしく、良く悪戯好きの子供達に弄られているとか]
うっし、こんなもんか。
おぅリッキー、俺ぁ船んとこ行って来る。
後は任せたぜ。
なぁに、下準備はもう終わらせてんだ、火を通すくれぇはおめぇでも出来るだろ。
しっかり頼んだぜ!
[またか、と呆れるリッキーを余所にフーゴーは意気揚揚と宿屋を出た。向かう先は、港に泊めてある愛用の商用ジーベック]
─宿屋→港─
−ゲルダの家−
[回想の海に浸っていたところで声を掛けられ、我に返る。
顔を上げれば、見知らぬ女性が居た]
……貴女が、助けて下さったのですか?
ありがとうございます。
[ふわりと微笑んで頭を下げ、己の名を告げる。
その後は、言われるままに*浴室を借りる事にした*]
― 港 ―
これは夜光虫ですか。
あまり大量に発生すると困りますね。
[波打ち際にしゃがみこんで、フィールドワークをこなす。
内寄せた赤い塊に、ふむ……と吐息を一つ。
近くにいた漁師の一人が、そんな様子を見かけて話しかけてくるか。]
おはようございます。
……おや、そんなことがあったのですね。
最近は、人間の拾いものが流行りなのでしょうか。
[噂好きのその漁師は、学者が此処に来る前の出来事、
ゲルダが甲冑姿の男を拾った話を聴かせてくれた。]
……今宵辺り、嵐になりそう、ですか?
[ゲルダが珍しく朝起きていたことを揶揄する相手の言葉に、
良く分からないと云った風に、微かに首をかしげ立ち上がる。]
確かに、少し潮の流れは変わってる
――…ような気がしますが。
私は天気は読めませんのではっきりとは……。
[冗談に対して真顔でそう云った。]
───広場───
みゅう。
[とりあえず、外には出てみたものの、なんか人が一杯いるさまに、多少しり込みした。
妙に端のほうを歩いて、人の視界にあまり入らないように歩き回ってみたが、考えてみれば教会というのがよく分からなかったり]
みゅう。
[もう一度、口癖を呟いた。
さて、どうやって探そうか?]
─翌朝・自宅─
おはよう。母さん。
[母が生前使っていた貝を加工して作られた髪飾り。他にも色々と形見はあるが、カヤはこれを飾って毎朝、母親への挨拶に使っている。父親から何度か『自分で使えばいい』と言われたが、母親の命を貰って生まれてきた自分が、これ以上何かを母親から貰うのが気が引けるのか、カヤはそれを固辞してきた。その事で父親と軽い諍いになった時に、カヤは長かった自分の髪をざっくりと切り落とした。それ以来、父親は髪飾りの件については何も言わなくなり、娘に自分の手伝いをさせるようになる]
…うん。今日も頑張ってくるからね。私。
[今日も頑張ったらご飯食べにいこうかな、と昨日の賑やかな宿での食事を思い出した]
んし、行って来ます!
ん、と、大体こんなとこかな。
[掃除はわりと広範囲に及ぶのだが、それもいつもの事。
それから、箒を片手に空を見上げる。
猫も真似して、空を見上げた。
ちりり、と鈴が小さく鳴る]
んん……なんだろ。
妙な感じ……っていうか。
[嫌な予感。そんな言葉が、ふと過ぎった]
……荒れたら、やだなぁ……。
─港─
[漁に出たり戻ったりする船乗り達に挨拶しながら、港の片隅に泊められた愛用の船へと近付く]
ダニーにメンテしてもらってから走らせてねぇんだよなぁ…。
そろそろ乗っておきたいところだが。
[船の外装に手を触れながらそんなことを漏らし、視線は天へと向く]
……今から出すのはちぃと無謀かも知れんな。
良くねぇ雲行きだ。
[それは勘にも似たものだったが、長く船を乗っていた時に培われたもの。天気の異変を何となくではあるが感じ取る]
どちらにせよ、今おめぇを海に出す余裕はねぇ。
悪ぃがもうしばらく待ってくれ。
[船に語りかけるように言葉を紡ぐと、せめてもの手入れを始めるのだった]
[そんな中]
……ん。
おい、何の話だ?
[奥様方の噂話が耳を掠め、何気なく声を掛けた。
態度は兎も角顔は悪くないこともあってか、噂話程度なら簡単に教えてくれる者もいる。
船乗りの奥さんから伝わってきたらしい港での顛末は、少なからず脚色がついていたかも知れないが]
へぇ、今度は男かい。
こないだも学者先生がなんか拾ってたみたいだが。
……ま、生きてんなら俺の出る幕じゃねぇな。
[男はその辺りには興味を示さず、不謹慎なことを呟いたりするのだった]
─朝・自宅─
[昨夜は結局帰宅してすぐ寝てしまったので、まず昨日中断した作業を片付けようと作業台に向かい。
ただの貝が美しいブレスレットに変わったのは結局昼を過ぎてしまった]
もうこんな時間か…あぁ、そうだ。
雑貨屋に行って、納期を確認しないと。
…ついでに、ゲルダのところに寄るか。
下手するとまだ、高いびきかも知れないからな。
[今出来上がった品物もついでに雑貨屋に納めておくか、と考えながら工房に鍵をかけ。
昨夜の事があるので、近くで仕事をしている漁師に来客が来たら少し待っててもらうように頼んでからまずゲルダの家に向かった]
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