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―広間―
それは良かった。
[眼鏡の少女の返答に、墓守の片目が細まる。
過去形であることにも特に何も言わない。
少年から手を振られれば礼を返した]
ありがとうございます。
[厨房から戻った令嬢から、紅茶を受け取る。
すぐには口をつけず、立ち上る香りを楽しむように、カップを少し揺らした]
そうですね。
[異国の男から相談を受け、一拍置いて]
簡易なもので宜しければ、作れもしますが。
[掌に視線を落とす。
主人の血は既に洗い流されていたし、臭いも殆ど残ってはいないが]
食料は多く蓄えてあります。
そのまま食せるものも、未だありますし。
[茶菓子に視線を流して、そうも続けた。
カップを傾け、紅茶を少し頂く]
人狼の本ですか。
[紅茶が空になる頃、再び問いが投げられた。
考えるように首を傾ける]
確か、そのような伝承の本ばかり揃えた棚があった筈です。
其処にあるかも知れません。
[蔵書が多い為、時折暇がてらに読んでいただけの墓守が総てを把握している筈もない。
請われれば其処へ案内も*するだろうが*]
―広間―
[ラッセルを抱えたまま、広間に戻ってきたハーヴェイに目を向ける。向こう側に渡る術はなさそうだとの報告にはそれほど驚きはしない]
橋なぁ…ここに人が居るのがわかってりゃ、助けに来ないような薄情な人は居ないと思うけど…。
[人狼が居る、となればどうだろう?とふと思う。だけどそれは不安を煽るだけだから言葉にはしない]
すぐに、とは行かないと思うぜ。
資材とか人とか…それまで食いもんとかもつといいけど。
[そこは心配要らないかな、と最後に付け加えて。
ヘンリエッタとキャロルが戻ってきたなら、ラッセルの分もお茶を頼んで]
暖かいもん飲めば少しは落ち着くんじゃないか?
[周りを伺いながらまだ震えているラッセルにそう声を掛けて]
[ラッセルがお茶とお菓子を口にするのを見て、少しだけ安心したように表情を緩める。
ラッセルの事はまだよくわかっていない。それが本当に信用できることなのかも。
だけど、ラッセルがこういう時に嘘をつけるとは思えない。だから、自分は彼を信じようと決めた]
ラッセル、ちょっと上に行ってきていいか?
[少しだけ落ち着いた様子の彼にそう尋ねて。すぐに戻るからと二階の自分が使っている部屋に行く]
―→二階・客室―
[部屋に入り、持ってきた鞄を探る。
普段使う事はないからと、一番下に入れてあるものを取り上げる]
さて…人狼相手に役に立つのかね、これ。
[ぽん、と手の上で弄ぶ。どこにでもあるような小さなナイフ。
ささやかな抵抗の手段。うまく使えるかなんてわからないけれど]
約束、したしな。それに…
[もし、人狼がまだ居るのならば]
……殺さなきゃ、帰れないんだし?
[自分に確認するかのように言って、それを鞄の一番上に入れると、鞄ごと持って広間へと戻る]
―→広間―
[広間に戻ったら、またソファーへと座る。
鞄について聞かれたら]
これ?大事なもん。
何があってもすぐ行動できるようにしとけって、親父にいつも言われてっから。
[そうして、ラッセルに心配するなと言う顔を見せて、少し冷めてしまった紅茶を*飲み干した*]
─厨房→広場─
[ありがとう、という言葉。それにただ、笑みで返し。
茶と、焼き菓子とを用意して広間へと戻る]
……あちらには、私が。
エッタ様は、他の皆様に。
[ヘンリエッタが行き難そうにしている様子に気づいたなら、トビーの元へは自らが向かう]
熱いから、気をつけてお飲みなさいね?
[トビーの礼と、不思議そうな表情にこんな言葉をかけ。
ギルバートとラッセルの元に二人分の茶と菓子を運んだ後は、ヘンリエッタの側へと戻り、自身も茶を口にする]
ああ、食事。
作り手がいないようなら、私が作りましょうか。
さすがに、専門の方には劣るけれど、それなりにはできましてよ?
[食事に関するやり取りにはのんびりとこんな事を言って、カップを傾けながら広間の中を見回す。
一見するとのんびりとしているが、その実、碧の瞳にはやや険しいいろ。
トビーがヘンリエッタに視線を向けつつ、しかし、見返されると逸らす様子に、ほんの少しその険しさは増していた]
……さて。
私、ちょっと上へ行きますけれど、エッタ様はどうなさいます?
[カップが空になると、立ち上がってヘンリエッタに問う。
どこへ、と問われたなら、小声でアーヴ殿にご挨拶を、と返す]
……それに、舞をお見せする、と約束しましたから。
[付け加えた言葉に、ヘンリエッタはどんな表情を見せたか。
共に行く、というなら、止める事はなく。
残る、というのであればすぐに戻る、と言い置いて、二階へと向かった]
─アーヴァインの部屋─
[やって来た主の部屋には、未だ紅のにおいが残るか。
主の亡骸は、墓守の手によりベッドの上。
それに対して一礼した後、一度、目を閉じる]
[ひとつ、息を吐き。
高く差し上げられる、右の手。
シャラ、と鳴る銀色の輪。
翻る、紅の紗。
揺れる、金の髪。
伴奏はない。
在るのは、銀色の輪が触れ合う音のみ。
静謐の中、舞手はゆるりと舞う。
それは、鎮魂の舞。
流浪の舞手に、館の主が求めたもの。
その由縁は、舞手自身には知る由もないのだが**]
−自室−
[おやすみとハーヴェイと別れて部屋のぬいぐるみの模様替えを済ませて、
今日はもう寝て落ち着こうと思った。着替えてベッドにもぐり目を瞑る]
……………
…………
[しばらくして気持ちがざわついて眠る気になれなかった。
ベッドから起き上がり、厚手のカーディガンを羽織り、部屋を出た。
眠れない、本でも読んで落ち着こうと思った。]
―館内―
[広間にいるときトビーにいわれた言葉を思い出す、心配されちゃうよって。
アーヴァインがいなくなり、屋敷のことはラッセルか自分がなんとかしなければいけないのだろう。
館の主を継ぐという意味では皆の安全のことも、安心させることも必要だと思った。
自分が落ち着かなきゃと。思いながらもそれを実行に移すのは難しいことなのだが。]
……
[屋敷の中に人の気配は感じられないそういえばセシリアが逃げ出した使用人とか言っていた。
つり橋は使用人の手によって落とされたとも誰かが言っていた。話のとおり自分たちを残して皆先に逃げてしまったのだろう。]
……
[きゅっと切ない心苦しい気持ちを抑えるように胸元で手を握る。
書庫につくと人の気配を感じた、先客がいるのだろう。
ノックをしてからゆっくりと戸をあけてはいる。そこにいたのはセシリアとユージーンの姿もあっただろうか?
二人にぺこりと頭を*下げた。*]
―広間―
[広間はとりあえず均衡を保っているようだった。
ラッセルの脅えようはともかく、トビーのスレすぎているような様や、セシリアの饒舌ぶりはやや気にかかりはじめたが。
今は平時でないからだろうか。…それとも。
特にセシリアには思い当たる節もありはした。]
食べるね。人狼には美味い物なのかもな。
[合間、トビーの疑問の声にそう答える。変なのと返されると苦笑するしかなかった。
ギルバートが、薄情な人はいないというのには、そうだなと返しつつも、内心ではだといいが、とも思いながら。
セシリアが人狼の本を探しにユージーンと共に部屋を出ようとするなら。]
ああ、俺もいく。
まだ読んだことがない本もあるかもしれないしな。
[そう言い、二人についていく*だろう。*]
―広間―
嗚呼。
それでは、お願いしても。
[碧の険しさには気付くか否か。
墓守は変わらず穏やかな調子で、踊り子の申し出に応えた]
本来ならば、御客人に頼むなどあってはならないのですが。
[申し訳なさそうな言葉の続きは二つ、恐らくは言わずとも知れる]
では、行きましょうか。
[飲み終えたカップを片付けた後。
眼鏡の少女を伴い、共に行くと言う青年にも頷く。
書庫へと向かうべく、先立って歩き出した]
―広間―
[ユージーンから、食糧はまだあると聞かされ、少しは安心する。]
む、さようか。
ならば当分は食うには困らぬようだな。。
さすがに此処から食べられる野草を探しに出歩くのは、ちと骨であるからな。
もしかすると、炊事も墓守殿に頼むことがあるかも知れぬがよろしく頼みたい。
[自分でも野宿する時に作る事が多いが、その場で取ってきた野草や捕まえた獣などをろくに味付けもせずにただ単に煮込むだけだったりするので、とても他の者の舌には合わないだろう。もっともトビーならば普通に食べるであろうか。
キャロルが「料理ができる」と言うのを聞けば期待の眼差しを向ける]
おぉ、これはありがたい。
我は生来の無骨者ゆえ、このようなことにはあまり慣れてはござらぬのでな。
得意な者がいるならば全てお願いするでござるよ。
[ユージーンとキャロルが料理が作れると知って、「食糧がある」と聞かされたとき以上に安心した表情をしていたかもしれない。何人かが広間を出て行くのを見れば、軽く頭を下げて見送る]
―書庫―
奥の右から三番目の棚です。
[恐らく未だ少女も見ていなかったであろう、暗い書庫の最奥を示す]
御希望に添うものがあるかは分かりませんが。
[そう続け、他にも何か尋ねられれば知る限りは答える。
そうするうちに、背後で扉の開く音がした]
如何しましたか。
[頭を下げる養女を見て、墓守の片目が*細められた*]
―広間―
[ジーンやキャロルとマンジローの会話から食事の心配も無いと知り落ち着いて菓子を食べ茶を飲んでいた。
トビーとハーヴェイの会話には知らず身を縮めたりもしたけれど取り落としたり等の失敗までは至らなかった]
お二階の何処へ行かれますの。
[如何するかと聞かれ尋ね返す]
ご挨拶と舞をですか。
お邪魔で無ければご一緒させて下さい。
[生前は終ぞ叶わなかった挨拶をして置くのは礼儀の様にも思えて舞は自分も見たいと望んだもの。
何時見られなくなるかは分からないし出来る限りキャロルから離れたくも無かった。
器を置いて同じく立ち上がり残っている者達に頭を下げると共に二階のアーヴァインの部屋へと向かった]
─広間─
[お腹が落ち着いて来ると、気もある程度落ち着いて来て。
ギルバートに少し離れる旨を告げられると、不安げな表情をしたが、駄々を捏ねるようなことはしなかった。
直ぐ戻ると言われ、頷いてその後ろ姿を見送る]
食べ物……たべもの……ぁ。
[ギルバートが傍から居なくなってから、先程まで話題に出ていた単語を繰り返す。
そうして思い出したのは、庭の菜園の存在。
風と雨の対策はしたが、どうなっているだろうか。
気になって仕方なくなり、そわそわと窓の外に視線を投げ始める]
[やや後にギルバートが鞄を携えて戻って来て。
そわそわとした様子で視線を向け、戻って来た事には安堵の色を示した]
…なぁに、それ?
[訊ねたのは持って来た鞄に対して。
説明されるとすんなりと受け入れて頷く。
ギルバートにつられるようにして紅茶を飲み干すと、再びそわそわとしながら窓の外へと視線を向けた]
―アーヴァインの部屋―
[未だ鉄の匂いも残る部屋。
口元を引き締めて努めて嫌悪は抱かない様にする。
紅は残れどシーツに包まれ無残な傷は隠されて居たので傍まで行く事も出来た]
失礼を致して居りました。
エリザベス=ウィロビーの娘ヘンリエッタと申します。
母と同じくお世話に為って。
[舞が始まる前に亡骸へ向けて呟く様な挨拶をした。
生きていれば如何な反応が返ったのかを知る事は出来ない。
深く頭を下げると離れた壁際へと下がり沈黙と共に舞が捧げられるのを見詰めていた。
以前に見せて貰った時よりも哀しさが胸に迫る美しい舞。
館主と舞姫の間に交わされた約束も知る由は無いがただ深く胸を打たれて手を組み沈黙を*保った*]
―広間―
[鞄の中身を教えないのは余計な不安を避けるため。
だから、すぐに納得するのを見て少しだけ安心する。それだけ信用されていると言うことだろうから]
どうした?ラッセル。
[窓の外を気に掛ける様子に吊られて外を見て]
何か気になるもんでもあるのか?
[もう一度ラッセルに問いかける。
広間を離れるものがあれば軽く手を振って見送って]
[尋ねられ、こちらを見るユージーンに]
……
………
[ほんをと口を動かし、寝れないからと口を動かす。やはり声には出なかったが]
……?
[今度は逆に問いかけるようにセシリアとユージーンの方を見ながら首をかしげた。
セシリアの方には若干の警戒を含んでいたかもしれない。]
─広間─
[天候は回復しつつあるようだから、外へ出るのは問題無いだろうか。
そんなことを考えていると、今度はギルバートから訊ねられた]
…菜園……どうなったかなと、思って。
雨と、風で、荒れてなきゃ良いんだけど…。
[広間から人が減ったことも手伝ってか、声は今までよりも少し大きなものになる。
そうしながら、ギルバートに対して眼で、行っても良いかと訴えかけた]
[返されたラッセルの言葉にもう一度外を見る。
こんな風にはっきりとした彼の声を聞くのは、初めてかもしれないと内心思いながら]
菜園かぁ。
確かに、昨日の天気じゃどうなってるか心配だよな。
[ラッセルが菜園をどれだけ大事にしているかは知っている。だから、その心配はもっともな物で]
様子、見に行ってみるか?
一人でも大丈夫か?
[菜園に他人が踏み込むのを嫌うのも知っていたから、そう尋ねる。
一人にする気はないのだけれど]
―書庫―
そうでしたか。
[唇の動きを読み取り、頷いた]
セシリア様が、本を見たいと仰いましたので。
[問うような仕種にはそう答えて、その名の少女を示す。
養女の慕う青年も、近くにいるだろうか。
警戒の視線には気付いているのか如何か、何か言うことは無い]
─アーヴァインの部屋─
[舞を終えた後はまた、しばし黙祷を捧げ。
それから、壁際に立つヘンリエッタに笑いかける]
それでは、参りましょうか。
眠られた方の側で、長く静寂を乱すものではありませんし。
[未だ血の気配の残る空間に長くいるのもよい事ではない、という事もあり。
ヘンリエッタを促し、主の部屋を出る]
さて……それでは。
これから、どういたしましょう。
館内のどこに何があるか、私の知る限りでお教えしておきましょうか。
[広間に戻る事を提案しなかったのは、トビーの様子が少しばかり気がかりだったからだが。
館内の事を把握しておけば、それだけ身を守りやすいだろうという思考もあった]
[いずれにせよ、ここにいても仕方がない、と歩き出す。
館内を案内する、と言っても、時折り訪れるだけの女には知らぬ場所も多いのだが]
……色々とあるのは一階……ああ、そう言えば、書庫にはもう行かれましたかしら。
蔵書には色々と役立つものがありますし、場所を覚えておくのもよろしいかと。
[そんな事を言いながら、ゆっくりと階段を降りてゆく]
─広間─
一応…風除けは作ったんだけど…。
[それでも心配だからと、視線はまた窓の外へと向かう]
…うん、行く。
……けど……。
[訊ねられて、直ぐに頷いた。
しかし続く言葉には、窓の外と、ギルバートを交互に見遣り。
最終的にはギルバートの服の袖に手を伸ばし、ぎゅっと握った]
……(こくり
[ユージーンの返答にこくりと頷いて本棚の死角にハーヴェイの姿を見つけて微かに笑む]
……
[3人はそれぞれに別の用があるようだった。それがなにかはよくわからないけど。
自分は自分の求める本を探す。恋愛もののお話の本。ハッピーエンドのもの。]
―アーヴァインの部屋―
残念です。
アーヴァイン様もご覧になる事が出来れば。
[黙祷を捧げるキャロルに合わせて目を瞑る。
再び開く時に小さく呟いた]
はい。
永久の眠りを妨げるのは善くないですね。
[微笑を返して頷き鎮められた静寂を破らない様に部屋から出た]
ええ。未だお部屋と広間以外は殆ど知らなくて。
宜しければお願い致します。
[厨房と湯殿の方向なら共に行動もしたから分かるだろう。
案内をしてくれると言うキャロルの提案を有難く受け入れた]
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