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えぅ、いたぁい。
[半ベソで額を撫でながら顔を上げる。
そこに広がっていたのは星空。
ではなく、それを模ったもの]
ええと。
ここ、どこ?
[周囲を見渡す。小さな部屋だ。
その中に満ちている精霊力は彼女にとって何よりも親しいもの。
というか彼女の属そのもの]
…何が起きたの?
[適当に取った進路は結果的に南へ。そのまま飛び続け、先へ進むといつしか周囲が岩山から緑が映える穏やかな気候の場所へと]
…こりゃまたのんびりするのに良さそうな場所で。
[口を突いて出たのはやはり呑気な言葉。その言葉とは裏腹に面食らってはいるのだが]
どうなってんだ?
さっきまで薄暗い雷雲が立ち込めた場所に居たと思ったのに。
まるで別の世界に足を踏み入れたみてぇだ。
[情報を得ようとぐるりと辺りを見回す。ここの風は先程の場所より穏やかなもので、探りを入れるにも余計な力はいらなかった。やはり人間界ではないことは理解出来、更には先程居た場所と界自体は変わらないと知る]
…さっきの場所もここも、世界としては同じ、か。
普通じゃあり得ない変化の仕方だが…ここは”普通”が通用しない場所ってぇことだな。
[しかしそれだけ理解出来れば今後必要以上に驚くことは無いだろう。もう飛ぶ必要もあるまいと草原に降り立った]
……なんだこりゃ?
[それと同時に目の前に現れた物体。鉄の輪のようなそれはハインリヒの目の前でぴたりと止まっている。浮かぶのは訝しげな表情。自分の知らぬ場所で何か分からない物が目の前に現れ。警戒しないはずが無い。輪を凝視したまま風を繰り、輪からの情報を得る]
……敵対の意思はない、か。
へ? 案内?
[齎された情報に僅かに呆気に取られ。敵対どころかどちらかと言えば友好的な情報が得られる。ハインリヒに案内するとの意思が伝わると、輪は先導するように移動し始めた]
…案内っても、どこに案内されんだ俺。
[右も左も分からぬ場所。変な場所に連れて行かれるのではと思ったが、現状一人で歩き回るほどのこの世界の知識も無い。大人しくその輪について行くことにした]
[安心できる気配の中、最初の衝撃からはどうにか立ち直り。
だが訳も分からず座り込んだまま、胸元に下げられた薄紫の石をギュッと握る]
……ミハエルさぁん。
[思わず呼んでしまう。困ったときの彼頼り。
だって突然の事で不安なんですから。仕様がないじゃないですか。
…これだから成長が、というツッコミは却下です。
この状況下、届かないだろう事くらいは分かっているのですが]
[そんな情けない声が響く頃、広間には新しくファイリングされたデータが増えていたようだ]
────────────
■名前:ブリジット=レルヒェ(Brigitte=Lerche)
■種族:精霊
■属性:影輝
■職業:精霊使い
■年齢:外見年齢16歳程、実年齢は120程
────────────
人間界を旅して回っている影精。
普段は人の姿で精霊使いを名乗り、多少の仕事も請け負っているらしい。
影輝王より下された「課題」に今も取り組んでいる。
以前よりは随分と安定したようだが、100年経過しても性格が変わるわけではなく。
基本的に好奇心旺盛で、おっちょこちょいな面があるタイプ。
身長は150cmちょっと。
腰の下まである銀茶の髪に、翠の瞳。
左手には中央の濃紫の水晶で纏められた精霊鋼の鎖細工、胸元には蔦のような意匠の精霊鋼で囲まれた淡紫の宝玉の首飾りを着けている。
……この、感じ……?
[いや、まさか。
最初に考えたのは、それ。
……しかし、光を文字となす本(それが何か、は、異なる世界──機鋼の著しく広がった世界の『記録』から、察してはいたのだが)に、新たなページが追加されるのに気づけば、自然、目はそれを追って]
……ぉーぃ。
[思わず上がったのは、小さな声]
[輪を追いかけてついた先。それは二階建ての屋敷。草原の中に佇むそれに向かい、輪はハインリヒを誘導する]
へぇ…のどかな場所に佇む一軒家か。
誰か住んでるのか?
[進む輪に訊ねかけるももちろん返答は無い。そのまま屋敷へと近付き、ノックもせずにその扉を開いた]
……っと。
[扉の開く気配に、振り返る。
感じたのは、強い風]
さて、これで何人目……かな。
[あとどれだけ来るのやら、と。
声に出さずに呟いて]
[勿論返事が返ってくるはずも無く。
ちょっとだけ落胆しながら、それでも目を擦って]
ええと、ここなら力使い易そう、かな?
[呟きながら目を瞑り、ゆっくりと集中し始めて。
周囲の気配を辿り始めて…]
はい?
[ビックリして目を開いた。
外に満ちていたのが予想外すぎる気配だったから]
…何て言ったっけ。
[人間界ではまだあまり感じ取ることが少ない力。15番目の属性]
んあ?
[なんだか頭上で、落っこちたっぽい音がした]
んー
[伸びをして起き上がる。増えた気配が、ひとつ、ふたつ、みっつ…]
…………もしかして15属性全部呼び込まれてるとか?
[なんだか、とっても覚えのある状況に、密かに冷や汗たらり]
えーと?
とりあえずハジメマシテ、かな。
[足を踏み入れた屋敷。その先、広間に居た青年に向けて声をかける]
何人目?
他にも誰か居るんか?
つかここどこよ?
[相手の言葉から浮かんだ疑問、そして先程から浮かんでいる疑問が口を突いて出る。案内をしてくれた輪は目の前の青年の下へと向かっただろうか]
いやいやいや、ここに精霊珠は無いわけだしっ!
[妄想を振り払うように、ぶんぶんと頭を振って、寝台から降りる。階下からは甘いマロンパイの匂い]
あ、美味そう。
[食い気に釣られて、広間へ向かう]
―自室→広間―
あっれ、貴女は確か…。
[声をかけられた方へと視線を走らせる。見知った顔、ではあるが自分は相手の名を知らず。右手を後頭部にやり軽く掻いた]
仕事先で顔は拝見してるんだが、名前は聞いてなかったな。
お久しぶりと言うべきだろか。
[わたわたっと手を動かして。
それから深呼吸を一つ。
改めて集中。ゆっくりと世界を構成する他の力を追いかけて]
うん、間違いない。力強い機鋼の力。
でもの属性もいっぱいなのね。
[ブツブツと口に出しながら思考を纏めてゆく。
次に点在している人の気配を追いかけて]
あれっ?
[属性以上に憶えのある気配が幾つか。
パチパチと目を瞬いた]
[見知った顔と言葉を交わす間、広間にある本には新たにデータが書き込まれていった]
────────────
■名前:”風来坊”ハインリヒ=ヴォルケ(Heinrich=Wolke)
■種族:人間
■属性:疾風
■職業:探偵と言う名の何でも屋。主に情報を扱う。
■年齢:33歳
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人間界で探偵業を営む。
普段のんびりとした雰囲気を醸し出している。
不要な争いなどはしない性質(面倒だから)。
ヨレたTシャツにデニムのジャケットを羽織っている。下はジーンズ。
首下にはフェザーのシルバーアクセサリが一つ。
護身用として腰にトンファーを据えている。
機鋼界へは欠伸した瞬間に何故か居た。
────────────
[アーベルに抱きかかえられて到着したのは、界の東にある屋敷。
そこの広間の椅子に座らされ、ちょこんとしていたが]
……あれ。何でハインリヒさんがここにいるわけ?
[入ってきた人物に小首傾げ。]
お久しぶりです。自己紹介をしたことはなかったかもしれません。
改めまして、ユーディットと申します。
[スカートのすそをもちぺこりとお辞儀をする]
まあ、始めまして、ですかねぇ。
俺は、オトフリート……オトフリート=ヴァイスと申します。
[実際に、会った事はない相手な訳で。
彼が古い歴史書に詳しかったりすれば、やけに詳しい上に分厚い歴史書を一冊だけ記した歴史学者の名との一致に気づくやも知れないが]
まあ、話せば長い事ながら……なので。
まずは、お茶でもいかがです?
[知り合いらしいユーディットとの会話を見つつ、軽い口調で問いかけて]
[もう一つ聞こえた少女の声。しかしその声は聞き覚えがあれども言葉の雰囲気が何か違うような気がして]
…ミリィ?
いや、それはこっちの台詞…。
…つーかお前ホントにミリィか?
[視線をやれば醸し出す雰囲気すら異なる良く知った顔。その顔にいつもならない眼鏡がかけられては居たが]
[挨拶をしている間にデータが読み込まれ]
────────────
■名前:ユーディット
■種族:魔族
■属性:氷破
■職業:メイド
■年齢:外見年齢17-8歳、実年齢は400歳程度
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数百年前より、人間界に滞在中。
メイドとして人の中に入り込み、気に入った人間を見つけては契約を交わし願いにより人生を大きく変える様を見ては喜んでいる。
ことさらに破滅する方向に誘導しているわけではないが破滅する人間が大多数であるのは確かである。
機鋼界へとやってきたのはただの気まぐれ。
────────────
あ、こんちはー
[広間に居た新顔に気付くと、にこにこと手を振る]
オトさーん、ケーキ焼けました?
[時空竜、と呼ばなくなったのは、一応の気遣い、らしい]
[瞬きをする彼女についていつの間にか書き込まれていたページ。]
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■名前:ミサト・ヤクモ(八雲 美里)
■種族:人間
■属性:翠樹
■職業:バウンティハンター
■年齢:自称(永遠の)18歳
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自称流浪の賞金稼ぎ。東の方の民族の出。
人・獣・魔、そして精霊を問わず、それから齎される災厄を膨大な報酬と引き換えに排除することを生業とし、あちらこちらを放浪している。
右腕部に拘束服のベルトが巻かれた少しサイズの大きめの服の上にマントを羽織り、両手には魔法陣の描かれた手袋。
腰にはホルスターに挿された二挺の拳銃。片方はシングルアクションのリボルバーであるが、もう片方は複雑な魔術刻印の施された弾倉のない銃。彼女は前者を『クサナギ』、後者を『オロチ』ないし『魔銃』と称している。
なお、眼鏡をしているが、実は度は入っていない。本人曰く「気持ちを切り替えるためのスイッチみたいなもの。」
お供に魔獣の子供「シノ」。見た目は額に翠の宝石のついた子犬。
────────────
お知り合いでしょうか?
[声をかけてきた少女へと視線をむけ。ぺこりとお辞儀をした後、オトフリートへと振り返り]
わざわざすいません。
お茶をいれるのでしたらお手伝いしますが・・・。
[男性を案内してきた輪は、右手首の銀の腕輪へと溶けるよに消えて]
下りてくるなり、それですか、君は。
[呼びかけを変えながらの問いかけに、浮かぶのは、苦笑]
ま、だいぶ久しぶりに作ったんで、どうなってるかは自信ないんだけどね。
[とか言いつつ、一時期は菓子屋を開けと言われた事もあったりなかったりするのだが]
ええと。
とにかく確認した方が早い、かな?
[ちょっと呆然としてしまっていたらしい。
そーっと部屋の外へと出て、階段を探す。
見つけた気配は下にあるようだ]
―屋上→広間―
[丁寧に頭を下げられると、ついこちらもぺこりと頭を下げて]
ユーディット、か。
…ここに居るってことは、仕事はどうしたんだ?
あそこ辞めたのか?
[ここが新しい仕事場なのか、と考えたがここは人間界ではないわけで。我ながらアホな質問をしたか、と思いつつも訂正することはなく。何故彼女がここに?と僅かに首を傾げた]
[挨拶を返された青年には]
あ、お茶貰うわ。
俺はハインリヒ=ヴォルケだ。
[相手の自己紹介に合わせて自分も名乗り。空いている席へと腰を下ろす]
[手伝いを申し出るユーディットに、にこり、と笑って]
いや、紅茶を淹れるのは、俺の趣味みたいなモンだから、気にせずに。
……ああ、コーヒー飲みたいってリクエストがあったら、そっちはお任せしたいんだけどね。
[相変わらずといえば、コーヒーで眩暈を起こすのも相変わらずらしい]
[尋ねられ、少し表情を暗くして]
旦那様が亡くなられてしまいまして・・・。
色々とあって今はどこへも勤めていないんです。
次をどうしようか思案している最中なんですよ。
[あ、でも生活に困ったりはしていませんからと明るく笑う]
−東部・屋敷の屋根の上−
[賑わいからはやや離れた場所]
[土に塗れた両足を放り出して]
[左手首の枷から伸びる鎖を弄ぶ]
……、う、ん。
[一度は軽く引いてみて]
[二度目は強く引っ張れど]
[外れる気配は全く以て、無い]
甘いものがお好きなら、マロンパイもどーぞ。
[ハインリヒの返事ににこりと笑って言いつつ、紅茶の準備に取り掛かる。
その際、広間を覗き込む気配に気づけば、くすりと笑って、白梟をそちらへと。
興味を引かれたか、セレスティンもととと、とそちらへ]
(やっぱりオトフリートさんだぁ。それにユリアンさん?)
[何故こそこそしてるのでしょうか。本人にも分かりません]
(あとは人間の人と…良く分からない)
[分からないと思ったのはユーディトのこと。
でもその属性は何となく感じ取れる物があって。
ちょっとだけじっと見てしまったかもしれません]
[広間へ現れた見知らぬ者には]
あ、どーも。
[何とも軽く言葉を返す。案内をしてくれた輪が青年─オトフリートの手首へと戻るのを見ると、彼がここまで導いてくれたのかと知る]
んー?
[ハインリヒの言葉に指を顎に当てていたが、スッと眼鏡を外すと途端に無感情な眼になり]
……何。ハインリヒ。こっちの方がいいわけ?
私がいる経緯は、恐らくそっちと変わらない。
……理由も一緒かは知らないけど。そもの理由も含めて、ね。
[淡々と事務的に感情なく聞かれたことに返答。]
こんだけ美味しそうな匂いしてれば、十分でしょうに。
[今は見えない三本の尻尾がぱたぱたと振られているのが、判る人には判った、かもしれない]
おや、そちらさん達はお知り合いなのかな?
奇遇ですねえ。
[見知った様子の三人に、少し驚いたようだ]
そうなんですか。でしたらお邪魔するのも申し訳ないですね。
珈琲の時だけ担当することに致しますね。
[にこりと笑ってかえし、ふと気がついたように質問を口にする]
珈琲は不得意なのですか?
ひゃっ!?
[と、注意を逸らしてしまった側からバサリと目の前に飛んでくる影。白い翼が目の前で振られて尻餅ぽてん]
あっ…と、ヴィンター。
お久しぶり?
[そのまま照れ笑いのようなものを浮かべて挨拶を。
後ろからついて来た少年にもぺこりと頭を下げて]
……。
[何故かじーっとお見合い状態に突入]
[そして三度目は、]
[ガツッ、]
[屋根に叩きつけた。]
[透明な壁を殴った時と似た行動]
[しかし枷には傷一つ付きはしない]
[ぱらぱら、]
[代わりに屋根の一部が僅かに削れた]
[振動は然程伝わりはしなかった筈だが]
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