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[固まっているミハエルに両腕で抱きつくと]
[力の入らない身体を預ける]
[薄く微笑んだまま、目を閉じた]
[自衛団員の声はまだ聞こえるだろうか]
平気です。
[すっかり、この男が苦手になっていた。
腕だけではなく、目の事まで言われて、「余計な事を言うな」という意をこめ、目を眇めてクレメンスを睨む]
……それより、いない人がいるから、気になって。
ミハエルさんやノーラさんって、ここで休んでいたと思って。
上にいたりするだけですかね。
[マテウスの説明に少し驚いたように]
そういう土地もあるのですね。
確かに自衛団はそちらに入るのかもしれません…。
[アーベルに目を向けるのに一瞬だけそちらを見て。
そしてまたイレーネを見て]
その花が欲しかったの?
[少女に向ける声はどこまでも優しく]
[マテウスの視線に、一つ息を吐いて]
……じーさんが。
俺を身内と認めてたかどうかは知らんけど。
[それは、結局得られなかった答えの一つだから]
俺は、一応唯一の血縁だから。
なんかやるなら……立ち会うぜ。
[どんな状況であっても、やはり彼も男の子な訳で。美人の未亡人に薄く微笑みかけられて抱きつかれれば、顔は真っ赤になる。
だが、すぐに右手に滴っている血を見て、今はそんな場合ではないと頭を振った]
これからこの人を連れて行きます。
問題ありませんね?
[若干威圧気味にそう宣言する。
しかし自衛団員は微塵も怯んだ様子もなく、まるで羽蟲を見ているような、そんな蔑みにも似た視線で、集会所の方向を顎で指した。
その様子に、眉を少しだけ反応させたが、言葉にはせずに今はノーラの治療を優先させるべく背中と膝の裏に手を差し込むとそのまま抱き上げて、傷に響かぬように気をつけながら、最速の速度で歩き出した]
[身をすくませたリディに笑いかけ、そっと手を引っ込める]
あ、びっくりした?
ごめんね。
……え。ヨーグルトでしょ?それ?
[アーベルの言葉にきょとりと瞬く。
彼女はあくまで素なのだけれども、この状況だとわざとらしい]
欲しかった?
だって。
そうしたら…そうだったら…?
[混濁する記憶]
…分からない。
[ふるり、と首を振る。
肩の熱が増した気がした]
…リディ、ちゃん?
[近付いてくる姿をぼんやりと見る。
何かが引き付け合うような、不思議な感覚に目を瞬く。
ナターリエの手を離し、リディへと右腕を伸ばす]
[ユリアンの声が男の耳に届いた。クレメンスが目の事を言ったのは聞こえなかったが]
金髪のぼうやなら、朝方、外に出てったぞ。奥さんの方は朝から見かけねえな...いや、ゆうべからか?
[自分が途中で広間から出たこともあり、ノーラの動向については曖昧だった]
[睨まれても、まったく堪えていない]
[子供らしいのは好ましい]
ユリアン君。
君は一人しかいないんですからね。
無理をしていませんか?
[しかし続いた言葉に、少し考える顔をして]
そういえば大きな音がしてましたねえ。
ああいう風にあわてそうな子は、
[一度区切ってユリアンを見たのは気のせいではない]
ちゃんと居ますし。
…もしかしてミハエル君は外にいるかもしれませんね。
探してきましょう。
外へ?
[今朝方聞いた音は、彼のものだったのだろうか。
だとしたら、大分時間は経っているはずだが。
反射的に外へと向かおうとして、]
……していませんよ。
アーくんとかのほうが、よっぽどしているかと。
[思わず扉の傍で立ち止まり、そう答える。
後の言葉には、敢えて反応を返さなかった]
ああ、そんな土地もあるのさ。
こっちでは埋葬が基準のようだってのはさっき知ったがな
ま。別に自衛団に恩義もなにもねえが、さすがに野晒しのままだと後味悪いし、こっちのしきたりに従わないのもなんだが、放置よりはましだろ
それに死体を放置して疫病なんてなるのは嫌なんでな
[と、ナターリエに答えた後、アーベルの返事を聞いて、木箱を持って立ち上がり]
じゃ、来るか。流れの傭兵よりも、村の住人がいたほうがいいだろ。といってもこの雪じゃ火もまともにつかねえよな。…倉庫でも行って何か取ってくるから、行く気があるなら入り口で待っててくれ
[といい置いて、特に返事を待つことなく木箱を背負って、倉庫へと]
[ミハエルに抱き上げられ、浮遊感に包まれている]
あら、飛んでるみたい・・・
わたし、霊魂になったのかしら。
[時折聞こえてくる心音や息遣いにどこか安心しながら、大人しく運ばれていく]
[ユリアンと神父が...とノーラの心配をし始めた頃、雪によって足を何度も取られ、その都度木の幹に体を打ちつけながら、ノーラだけはぶつけないようにと気を使いながら、見た目からして疲労困憊になってしまった...が、集会所の入り口までようやく辿り着いた。
昨晩のアーベルの時も思ったが、やはり人を担いで歩くのは彼には重労働だった。さすがに片手でノーラを支えてドアノブを捻るわけにもいかず、さりとて息は上がってしまっていて声も大きく出せないので、残った力を集めてバランスを取りながら集会所の扉を足でノックした]
[イレーネの肌に咲く花を見れば嘆息して]
イレーネ、あなたもなの…。
[気分が悪い。まるで揃いすぎているような。
いや、そろえられたのだろうか。]
あ、
・・・・ごめん、なさい。
[手を引っ込められれば、申し訳なさそうに眉を下げた。
クレメンスの目、という言葉も聞こえていたけれど、今は意識には上らない。]
・・・大丈夫?
[イレーネの前に腰を下ろした。
前までは痛みの所為で、近づくのにも少し躊躇っていた筈だったが、今は違った。
延ばされた手に、左の手で触れた。]
外かもしれませんね…ってこらユリアン君
[色々と不安要素の高い(本人がそう思われているとしったらどう反応するか楽しみだ)彼が扉に手をかける]
[あわててそちらに]
まあアーベル君も無理してるでしょうね。
でも、だからといって、自分が無理をしていいという理屈にはなりませんよ?
[――赤]
わ、った
[いきなりだったものだから、驚いた。
声があがって、扉に手をかけたまま後ろ向きにバランスを崩す。
結果として、扉は開かれたものの、外に向かって倒れこむ羽目になった]
ん、ああ、わかった。
[マテウスの言葉に頷いて。
カップに残ったミルクを飲み干し、立ち上がる。
ふと、見やった視線の先には、朱色が鮮やかに映えていたろうか]
……花?
[まともに見たのは、初めてだろうか。ぽつり、呟きが零れて]
[立ち上がり、倉庫に向かおうとしたのと、ノックの音がしたのはほぼ同じか
数名が扉へと目を向けるのに習うように...も目を向けて]
二人…血…?
[耳元で聞こえた声に微笑んで]
ふふ、そうよね。
あら・・・ここ、どこかで
[薄く目を明けると、どこかで見た事のある景色に首を傾げる。集会場の扉の前][聞き覚えのある声も聞こえてくる]
[アーベルの返事を聞いてマテウスが立ち上がるのを見て]
わたくしも行きましょうか?
[とだけ問いかけて]
[だけど、イレーネの側を離れるのも躊躇われて]
[ガチャリと勢いよくドアノブが回転し、扉が開くと同時にユリアンの体が倒れこんできた]
うわわわわ!
[疲れていても驚きの叫びは出るもので、体を捻って避けようとして、ノーラを抱きかかえているのを思い出し、その場に踏みとどまる。
そうすると倒れてきたユリアンの体は...の頭に向けて――]
[身体を支えるとなると、右手になる上、扉の先に人がいることは明白だった。
そんな判断が瞬時に出来ていたはずもないが、伸びてきた手に、右腕が捉えられる、……ものの。
勢いというものはそう簡単には停まらないわけで]
[触れ合った手から伝う熱。
それは共鳴するかのように酔いのような何かをもたらして]
もう一つの、花。
はじまりの、印。
[呟いたところでノックの音。
ピクリ、と手を離して目を瞬く]
あ、何…?
[朱色にしばし、見とれていたものの。
玄関の人雪崩れに気づけは、げ、と声をあげ]
ブリス!
治療の準備!
[とっさに声をかけつつていた]
[男が扉の前に着く前に、青年はバランスを崩して扉の外へと倒れ込む。そして開いた扉の外には、尋常ではない様子の二人の姿、更に追いすがるように黒服の神父がユリアンに手を伸ばす]
おいっ!
[止めるには一歩足りずに、仕方なく外へと駆け出る。恐らく下敷きになるであろう二人を、せめて救助しようと]
[人間、急には停まれない。
その言葉を身に染みて実感してしまうとは思っていなかった。
特に人間の中で一番硬い頭部同士が衝突するのだから、それはもう激痛と言って過言ではない痛みが全身をかける]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
[悲鳴は声にならない。おかげでノーラの言葉にも反応できず、なみだ目のまま蹲った]
っと…!
[倒れこんではまずい]
[思うなり、体が動いた]
[片手はユリアンを支え]
[もう片手がすばやく壁に]
[ぴんと張った腕]
[ぎりぎりノーラに衝撃を伝えなかっただろうか]
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