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―夜・南通りにある宿屋の一室―
[眠りに落ちていたという事に驚いて、暫し呆然としていた。人間で言えば”寝惚ける”という感覚にあたるのだろう。
既に陽は落ち、気温が下がったのも手伝って室内には冷気がわだかまって居た。睡眠中の力の統制が取れて居なかったようだ。]
[身支度を整え、部屋を出る。
これまで朝の早かったミハエルが夜まで部屋へ居た事に、宿の主人はまた驚いていたようだ。]
……さて、どうしたものか。
確証は、ない。全ては状況からの推測。
その上……。
[茜から、色彩を変え始めた空を見上げ]
……真面目に問い詰めようとしても、するするするするかわすのだきゃあ上手いからな、あの愉快人。
[愚痴る瞬間、思いっきり素が出た]
[クレメンスとティルの問答を静かに聞いていたが]
……では、神父様にはあれを消滅させる算段もあったと?
[その視線は刺し貫くように鋭く]
―中央広場・現在―
[あれから町の中をまたぐるぐると歩き回り。
見れなかったのは一箇所。北の遺跡。
ちょうどそちらへ行こうとした時には自警団員がいて、少女の姿を見ると来てはいけないと追い払われたのだ。
仕方がなしにそのまま森の方へと抜けたのだけれど]
何かあったのかな?
おじさまに聞けば分かるのかな?
[彼の仕事場は南通りにあったのだったか。
この後Kirschbaumで会えればその時に教えてはもらえるだろうが]
どうしようかな?
[水路の石段に腰掛けて、ぼんやりとそんなことを考えている]
−現在/北東部・墓地−
[さすがに夜ともなると、肌寒くなってきます。くしゅん、と嚔が零れました。]
ずいぶんと、時間が経ってしまったようだ。
[春とは云っても、お日さまが沈んだ後まで居ては、からだが冷てしまいます。小さなてのひらに、はあっと息をかけました。くるんと向きを変えると、服がふわり風に揺れました。いつもなら、「Kirschbaum」に行くか家に戻るのでしょうが、今日はどちらの気にもなれなくて、ひとりで道をあるいてゆきます。]
ー教会・礼拝堂・現在ー
[危険、という言葉には肩をすくめる]
そうでしょうか?
[それから、くすくすと笑う]
いや、実は、一度、混沌の王や秩序の王の気配に触れてみたかったという好奇心があったというのも事実ですが。
そうですねえ、もし危険であれば、誰か強い力のある人間でも一人か二人、そのまま封印に使ってしまえば何とかなるのではないかと思っていましたよ。
[浮かぶは、魔の笑み]
…………んあ?
[扉を叩く音。
ソファから飛び起き、懐の懐中時計で時間を確認。]
寝過ごした!
[慌ててドアを開け、入口のユリアンにひたすら平謝り。]
すまん、マジにすまん。
……どうも、昨夜のアレが影響していたらしい。
[ベアトリーチェやエーリッヒ、アマンダと違って自分自身には
影響がないものと思っていたのだが。
地味に痛いタイムロスだ。]
[シャワーで調子を整えた後、階下へと。]
[ラム入りのアイスコーヒーを飲みながら、自分がいなかった間に話された事をマスターから聞き。]
……さぁて。どうすっかな。
戻ってくるのを待つか、それとも……。
[思案にくれながら、ぼんやりと庭先の薄紅を眺めていた。]
―広場・現在―
[広場まで出て、漸く様々な事を思い出す]
嗚呼、そうだ。書が………奪われて。
[安直に、遺跡を目指すことにした。北通りへ、ふらりと足を向ける。人波は既にまばらだ。]
−午後・西の桜の大樹−
[アマンダの力が幾分か回復した頃には、千花も少しうたた寝していただろうか?]
「…アン?」
[やがて掛けられた柔らかな声に、千花が糸みたいな寝ぼけ眼で見つけたのは、小さな翠樹の姿。
アマンダは彼が来て喜ぶ樹の気が心地よいのか、深い眠りのまま。
彼の手から木の実を貰ったりしつつ、桜の樹を見上げる姿を一緒に眺めたりしていただろうか。
やがて彼が去った後。
心地よい気が消えたからか、アマンダもゆっくりと*瞼を開ける*]
―今朝・ハインリヒの事務所―
[やっと出てきたハインリヒに]
この借りは昼食おごってもらいますよ、隊長。
早く行こうよ!
[...というなりハインリヒを引っ張りながら走り出す。若い疾風にハインリヒがついていけるか知らない]
―…→自警団詰め所―
まったく、君らしいと言えばいいのかな。僕は。
[一人か二人、という言の葉に、呆れたような顔をする。]
好奇心は猫をも殺す、というだろうに。
君が知らないわけはないだろうに、君も滅びに惹かれるのかい?
乃至、変化、混沌に。
そこまで惹かれるようなものかい?
世界は変わらぬままにあればこそ美しいものであろう?
君一人の我侭で、ひとを封印に使うなど、非道いことを言うものだね。
まあそこが君らしいのかもしれないね。
なあ、ユリアン。
お前は大丈夫か。何も影響してないか?
昨夜のアレ、何か後遺症があるかもしれんぞ。
[何もなければそれでいいが。]
……しまったな。自警団での聞き込みの後、『別の場所』にも
行く予定だったんだけどな。
先越されてるか、そろそろ?
[ぶつぶつと、少々大きな独り言。]
ちょ、ちょっと待て。
つか俺は隊長じゃねえ!その呼び方だと探検隊みたいじゃねえか!!
[抗議の声を上げながら、自身も自警団詰め所に。]
―…→自警団詰め所―
−北部・門の前−
[辿り着いたのは、やはり遺跡へと、そして外の世界へと続くその場所。夜ともなると人通りは少ないようでした。そう云えば、いつも見回りをしているお爺さんの姿が見えません。ぐうぜん、今日は合わないだけでしょうか。]
……あれ、オトフリート?
[そんなことを考えていると、門を潜り抜ける見知ったかおがありました]
君は変化を望むのか?
[静か、静かな森のような。
くらいろの森を思い出させるような。
泉の色の瞳は、ふかい、くらみどりのいろに。]
退屈などと。
変わらずとも、世界は変わっているというのに。
ー教会・礼拝堂・現在ー
[次の瞬間、声をあげて笑う]
しかし、全ては夢想。
鍵の書は奪われ、私は寂しく取り残されたというわけです。
[...は普通の人間から見たらかなり速いスピードで走りつつ]
「アレ」の影響?
……正直、身体がいつもより重く感じるよ。
きっとこれが「アレ」の影響かな?
自警団の他にもどこか行く予定なの?
ますます「探偵ごっこ」みたい!
[おめめきらきら]
なあ、ユリアン。
[詰め所に向かう道中、唐突に問いかける。]
お前、誰が『鍵の書』盗難に関わってると思ってる。
いやむしろ、俺が誰かの共犯かもしれない、とか考えてるか?
[まあ、それを言ってしまうときりがないのだが。
こちらを信頼しているか否か、聞いておきたかった。]
あれ、ミハエルさん?
[ふらりと北へ向かう姿を見つけ、小さく声を上げた。
小さな声だった故に、彼は気が付いたか気が付かないか]
どうしたんだろう?
[小さく首を傾げた]
─北部・門近辺─
[あれやこれやの考え事は、名を呼ぶ声と、それに答えるような相棒の羽ばたきに遮られ]
……っとー。
[足を止め、翠の双眸で瞬き一つ]
やあ。こんばんは。
[挨拶と共に向けるのは、いつもの微笑]
……そうだな。今のうちに言っておく。
『容疑者』のトコだよ。
一人で行ったら、下手打つと『消される』かもしれないからな。
助手が欲しかったところだ。
[冗談めかしてはいるが、目が笑ってない。]
―広場・現在―
[少し進んでから、振り返った。声というよりも気配の方を察知したのだが一瞬、影輝王を思い出して慌てた。
振り返って見れば、そこへ居たのは首を傾げたブリジットなのだが]
…何だ。
こんばんわ、オトフリート、ヴィンター。
[ベアトリーチェもにっこりと微笑い返します。]
遺跡に行っていたの?
もう書は、
[ないのに、と云おうとして、自分の口を押えました。周りに聞かれたら大へんかもしれない、と途中で思いついたからです。]
まだ誰が「鍵の書」を盗んだか全くわからない。
でも隊長が犯人じゃないと思ってるよ?
だって初めから隊長は「鍵の書」に関わりたくないと思っていたの知ってるし。
隊長こそ、僕が犯人一味とは思わないのかな?
真犯人は側にいるって、推理小説の王道だよ?
[逆に問い返す]
ううん、用事ってわけじゃないの。
どこにいくのかなって。
[彼の王とはかけ離れたのほほんとした声で答える。
知った姿を見かけたからつい声を上げてしまっただけなのだが。
ついでにいうと一回りしてしまったので暇なだけ]
ああ、ちょっと気になる事がありまして。
[微笑したまま、頷いて。
口を押さえて止めた言葉に、微笑はやや、苦いものを帯びる]
……ええ、わかっていますよ、それは。
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