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さて、と。
しばらく使ってねぇんだ、試しは必要かね。
[ふ、と短く紫煙を吐くと手巻きタバコを摘み、口元から離す]
[まだ長さのあるそれをいつものように燃やし尽くし]
[噴水の段差に腰を掛けた]
─広場・噴水傍─
うぅん、なんとなく。
[ぱちり、翠の大きな目を瞬いて答えるも、
上擦った声に持った揚げ魚の串をぐいっと差し出して]
これやる。旨いぞ。
あ、あれから噂って他に聞いたりしたか?
[手についた油をペロ、と舐めながら
眼をきょろりと動かせば、ベッティの店が眼に入るだろうか。]
何をやっているんだろう。
[レナーテが屈む][レナーテが立つ][レナーテが頭を……]
[好奇の視線が数多くそこに集まっていた]
―広場・露店―
歌?そうだな……。
Fruehling der Freude.
Voegel singen.
Ich passe zu einer Stimme, und wir singen auch...
[気分が向いたのは何故だったか]
[大きさとしては小さく][けれどよく響く声で]
[春の祭りで歌われる歌の一節を歌った]
[男声と女声を合わせて歌うそれは特に良く歌ったもの]
レナーテさんも確かに対象になるね。
あれはあれで不思議な魅力、かもしれない。
[複雑そうに自分を見下ろすのはまた笑って誤魔化そうとして]
おや、いい香りだね。
まあ……確かに、上機嫌とは、言えねぇけど。
と、ああ、さんきゅ。
[差し出された串。戸惑いながらも、半ば勢いで受け取って]
んー、今んとこはなんにも。
練習所で聞けるような話は、街に出回ってんのとかわんないしな。
[軽く、肩を竦めた矢先。
聴こえて来た歌声に、微か、目を細める]
今のは……にーさん?
[呟きながら巡る視線は、露店へと]
ー広場・露天周辺ー
たらららーん♪
[棒付きの飴を片手に機嫌良く、くるくると回っている。街に来た時から背負っていた大きな籠は今、その背中にない。代わりにだろうか、肩から斜めに下げた布袋から、カラカラと堅い物同士がぶつかるような音がする。]
[ぐるぐる回って酔ってしゃがむと、同じ視線になっている人が居るらしいのに気がつく。その人はすぐに立ち上がり、しかし頭を抱えていた。見覚えがある高身長に駆け寄り、声をかける。]
溺れてなかった人だ!!
頭痛なら薬を買いに行ってあげてもよいよ?
お洒落だってしたい年頃か。
悪かったね。
[共に旅をしていれば扱いはどうしても家族のようになる]
[子供として扱っていればこそのものもあるわけで]
[香水は自分で買ったものかと思っていたりもするから]
[バツ悪そうに目を逸らした]
……聞こえてたか。
[店の外を見ればアーベルがこちらを向いていた]
[楽団員見習い][かつての自分と同じく]
[苦い苦い笑みが浮かんだ]
くっそー!
こんな訳の分からん仕事とってくんなよ、クソ親父!
もっとこうなんか、船の荷降ろし作業とかあるだろ!
[実に体育会系なことを言い出した]
クソ!メシだメシ!
[そう言うと大股で露店の一つに近づき]
おっちゃん!
豚の丸焼き!お持ち帰りで!
『へい……へ?』
[威勢よく言葉を返そうとした店主が言葉を詰まらせた]
豚の丸焼き!
[もう一度繰り返す]
[それはアーベルに向けられたものではない]
[小さく頭を振る]
[普段のように戻った顔でアーベルに軽く手を上げた]
おや。
[視界の端でレナーテに駆け寄る姿]
[知り合いが助けているなら大丈夫かなとそちらからは注意を外す]
─広場・噴水傍─
[胸ポケットから予め作っておいた手巻きタバコを一本取り出す]
[手巻きタバコの先を見て、良く馴染んで居るのを確認すると]
[そのまま口元へと運んだ]
さしあたって試しに一番向いてんのは…あのオッサンだろうな。
離れてても掴めるかと、関係した事柄だけを覗けるか、の二点か。
[確かめるべきことを確認し、手巻きタバコの先に火を灯す]
[燃えた先から文字通りの紫煙、紫色の煙が立ち上る]
[いつも吸っているタバコ葉を使っているにも関わらず]
[その煙からは薫りが広がらなかった]
[立ち上った紫煙も直ぐに宙へと掻き消える]
Rauch öffnet sich überall.
Wissen Sie es und Gewinn; ein Phänomen.
Fortschritt zu meinem Boden.
[傍から見れば一服しているだけのような姿]
[その状態で小さく、呪のようなものを呟いた]
[程なく用意されたそれに勢いよくかぶりついていると、何度か聞き覚えのある声が聞こえてきた]
へう?
[豚の丸焼きに半分顔が埋もれた状況でローザに振り向く]
頭痛?
あー、まあ、それに近いかも?
けど、これは薬じゃ解決できねえんだよ、生憎と。
ほわぁ……
[小さな歌声が風に乗る。その歌声に聞き惚れて]
[歌声が途切れると、感心したような視線を向け]
師匠って、意外な特技があったんですねー。びっくりびっくり。
[ふわり、風がスカートの香りを運ぶ]
えへへ、いい香りですねー。ローザさんに感謝しなくちゃ。
[師匠の言葉に同意の頷き]
[くるくると廻って香りを振りまいていると、蒼い髪と、今日は黒くないカヤの姿を見つける]
―練習所/1階―
[報告を終え、練習を始め、幾分か経っての休憩時間のこと。
いつもの通り長い髪は一つに結い、シャツにパンツスタイルという洒落っけのない格好のエリザベートは、鍵盤の縁に左肘を突き、右手の指だけを踊らせていた]
Stock und Hut stehn ihm gut,
er ist wohlgemut...
[弾む音は、昨日とは一転して簡素なもの。
まだ音楽を知ったばかりの幼い子供の歌だった。
眼を細めたさまは懐かしむ風でもあったが来客により音は中断された]
あ。モニカさん。
[現れた女性は、楽団の楽器を設えている人物だった。
開口一番、異なる曲目を演奏していたことをからかい混じりに叱られる。
それも、昨日は荒い演奏、今日は童謡と、どんな心変わりかと]
昨日も聴いていらっしゃったんですか。
ちょっとした気分転換です。サボってはないから、安心してください。
[誰かと違って、と笑っていたそのとき、ちょうど階上でちょっとした騒ぎが起こっていたとは、彼女は知らない]
[楽器を手荒く扱ったことを叱られはしたものの、談笑が続いた。
不意に、問いが投げられる。
――昔は色々手を出していたのに、どうして鍵盤楽器一本にしたの?
エリザベートは、変わらぬ表情だった。
微笑を浮かべている]
ん。子供っぽい理由ですよ。
[それきり何も言わない。ただ、軽く、笑うだけだった]
あっと、飲み物買ってきますね。
その間に、ピアノ、見ておいて頂けると助かります。
[答えを待たず外に出る。入り口付近に、おろおろとした様子の少年がいた]
─教会─
…………えっ? ライくんが私を? あ、はい、わかりました
[あのあと教会へ戻ってきて、神への祈りを捧げていたのだが、神父様に呼び止められ、ライヒアルトが彼女を探していたことを聞く]
……とりあえず、広場に行けば居る、かな?
[んーと考えていたが、そう呟くと教会をあとにした]
ふーんそっかぁ。
[噂の話には少し残念そうなそぶりを見せ
アーベルに釣られて目線を動かしながら]
おじさん。
[にかり、わらう。]
[頭を抱えていたかと思えば、気合い十分に豚の丸焼きを頼む女性に目を丸くした。]
美女と食用の野獣?
[顔が半分食べ物に占拠されている様子を見て、むしろ美女が野獣?なんて思い直してみた。]
近いけど薬じゃ解決できないの?…そっかー…。
…それって難病だったりして!?
[そんな事を良いながら目の前の女性をもう一度見やった]
いや。…ないかぁ、それはないなぁ、確実にない。うん。
胸おおきいのいいなー
あら、昨日の……
どうしたの?
[幾度か瞬いてから近寄り、問いを投げかける。
しどろもどろに返って来た答えに、また、瞬いた]
そう。
仕方ないわ、知らなかったんだもの。
[背中を軽く叩いて言うと、
外に行って来ると言い残して練習所を出て行った。
髪も解かず、大通りを歩んでいく]
ううん、師匠は悪くなんかないですよ。感謝してます。
それにアタシにお洒落なんて、分不相応ですからー。
[孤児院育ちの自分には、お洒落なんて夢の中の幻想でしかなく]
[すまなそうな口調の師匠に、満面の笑顔を向けた]
やっほー。何か買っていかなーい?
[カヤとアーベルに届くように大きな声をかける。挨拶の第一声はいつもこんな感じ]
……聞いたよ。アーベル、本番で演奏するんだって?
―広場・露店―
そんなに意外かい。
まあもう人前で歌うことはないだろうけどね。
[ベッティに返したのはそう苦くも無い苦笑]
[くるくると回る姿をみていると]
[やはり子供らしさを感じてしまって口元を隠す]
ローザさん?
[名前から顔が浮かばず][軽く首を傾げた]
やあ、カヤ君。
[おじさん呼びにはまた苦笑いながら]
[アーベルの近くにいる姿にも手を振った]
─広場・露店近辺─
[向けた視線は、苦い笑みを捉えて。
意を捉えきれず、瞬き、一つ。
手を振られたなら、こちらも手を振り返す]
ま、そういう噂に興味持つヤツも少ないからな。
情報集めるんなら、他のとこの方がいいって。
[残念そうなカヤに軽くこう言って、露店の方へと向かい]
なんか、久しぶりに聴いたな、にーさんの歌。
[ごく、軽い口調で声をかけた]
いやいや。
ちげーちげー。
病気じゃなくて、頭がこんがらがっていただけだって……プッ!
[笑いながらそう返し、言葉の最後にでかい骨を一つ吐き出した]
てか、すげえ失礼だな、おい。いや、いいけど。
胸だって、でかくていいことねえぜ?
運動とかするとき揺れて邪魔くせえし。
[笑いながら、むんずと胸を掴んだ]
あ。そうだ。
アンタ連続失踪事件についてなんか知らね?
[背筋を伸ばして歩み、視線を遠くへと投げる。
とは言えど、祭り近くの今は人波はいつにも増しているし、音を拾うと言っても限度があった。
大通りを真っ直ぐに抜けて、広場へと向かっていく]
─広場─
[ライくんを探して少し早足で広場までやってきたわけだが]
(きょろきょろ)……あれぇ、ライくん居ないのかなぁ
[そう呟きつつ、自分より背の高い(とはいえ並の男性程度なのだが)のライヒアルトを探す
ちなみに、その頭の上にアーニャが乗ってきょろきょろしているので、こっちの居場所は目立ちまくり]
―広場―
やっぱり、来ていないか。
[もしかしたらと思って戻ってみたはいいが、やはり姿はなく。
歩き詰めで疲れたのか、軽く息を吐いて]
…あれ。
[ふと露店の方を見る。
先程別れたばかりの高身長な女性の姿が目に入る。
しかも何か無茶な注文が耳に入った気がする]
……どっから聞いたんだよ、それ。
[ベッティから投げられた言葉は予想外で、思わず眉が寄った。
個人的には、強制参加という時点でかなり不名誉な話だったりするのだが]
[さっきの今で目を逸らしかけるが。
ふと動きを止めて瞬く]
この香りは…?
[食べ物のものとも違う、花にしては少し強い香り。
元を探すように首を巡らした]
[納得したように頷く]
あ、そっか、悩み事があったの!わかった!
じゃあ、この広い街で3回会った縁があるんだから、
このローザが相談相手になってあげ…なんか出たー
[吐き出された骨を目で追う]
あ、失礼だったの!ごめんね!なんかこう…
御飯の食べ方とか、大きさとか、元気そのものだし!
元気なのはいいことってとらえてもらえれ、ば…
…うひゃーダイタン…
[胸を掴む様子に、同性なのにどぎまぎとしたが、続く言葉には首をかしげた]
んー?全然知らない。というかそんな事件あったんだ!
知らなかったの!
……毎年思うけれど。
どこにこれだけの人が収まっているのかしら。
[喧騒の中でぽつり呟く。
人、人、人。
幾ら経っても、慣れる気はしなかった。
音を選別するのだけは上手くなったのだが]
[ひとまずはと、迷わぬ足取りで広場の中央――噴水へと向かう。
流石に、人探しをしているからと言って、レナーテのように中央で叫ぶつもりはなかったが]
―広場・露店―
そんなことはないさ。
[満面の笑みで言われればそれ以上を返しようはなく]
もう歌う機会もそうないからな。
趣味でしかないし。
[眉を寄せるアーベルに笑いながら]
[こちらも軽く返してみせた]
─広場・噴水傍─
[手巻きタバコをふかす間]
[隻眸は周囲を見回す]
[丁度そこは露店の見える位置]
[見知った顔が集まるのが見えて居た]
……実行犯は二人。
これだけの人数が集まる街でその二人を探すのは、砂浜に落とした胡麻を探すようなもんだよな。
時間はかかるが消去法で探すつもりで居た方が良いのかもしれん。
[それならば身近な者の潔白から行った方が良いだろうか、と]
[思考を巡らせながら辺りを見回し続けた]
へぇ、そうなんだ。
[ベッティの言葉に驚いたようにアーベルを見てから
隣の露店から、串に刺した甘い飴をコーティングした果実を買い、かりと齧る。]
まぁ、爺っちゃに聞くのと噂とはまた違うしなぁ。
ん、ありがと。
[言いながら、ハンスを見上げて]
おじさんも歌、うたうのか?
…………あっ、居た!
[ライヒアルトの後姿を捕捉
何やら露店の方へと向かっている様子]
どうしたんだろ、ライくんあんまり買い食いとかしないはずなんだけど
[そう呟きつつ、人の間をするすると抜けてたどり着いてみると]
…………うわぁ
[目の前の豚の丸焼きにドン引きした]
悩みっつうかなんつーか……。
[ローザの言葉に、少しだけ考え込みながら]
今言った連続失踪事件の犯人を捕まえるっつう仕事があるんだけど、どうやって見つけたもんか、いまいちわかんねえってことなんだよな。
頭使うのはどうも得意じゃなくてよ。
[苦笑しながら、豚足ガジガジ。
事件を知らないというローザには]
んー、そうか。
あまり広まってねえのかなぁ。
[と、守秘義務とかそういうのを全く考えずに、頭ぽりぽり]
まあ、何か情報掴んだら教えてくれよな。
あ。ちなみにアタイの名前はレナーテ。
フーゴーとかいうおっさんの宿屋に出入りしてるからよ。
えーっ、もったいないですよ、師匠ー。せっかく上手なのに。
……お客さんを呼び寄せるのに使えないかしら。
[結局は発想がそこに行き着く]
あ、うん。昨日、閉店間際に薬を買ってくれた髪が長くてふわふわの女の人ー。
またお店に遊びに来てくれるって言ってたよー。
[身振り手振りを交えて、ローザの説明を]
[噴水の近くに目的の人物はいなかったが、代わりに目に入ったのは他よりも背の高い男。先に思い浮かべた女性とどっちが高いか、などと考えた。
辺りを見回す視線が自身を捉えたような気がして、ぱち、と瞬く]
……ええと、こんにちは?
[先の出会いを考えれば、なんとなく居心地悪く。
殆ど呟くように挨拶の言葉を発した]
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