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ええと、高枝切り鋏……っていやこれは関係ない。
いっそ『あの部屋』を開けてしまえば何か見つかる気もするが。
部屋の中を別の人間に見られるのは……うーむ。
[ぶつぶつ呟きながらも、棒のような物を探し回る。]
―客室―
[昨夜、書庫より持ち出した本を読みながら眠ってしまったようで。
目の前の机の上に幾つかの走り書き。
この村…というよりこの屋敷を訪れた記録を文字に残そうとした形跡]
あー、またやっちまったか。
[そう呟き、一つ伸びをする。
空腹もあって、書庫に本を返しに行くついでに食事を、と]
[暫くして書庫より戻ると、ホールがなにやら騒がしく。
ちょうど行き会ったネリーに話を聞けば、行き倒れ、との返事が返る]
……こんな山奥で?
[自分が道に迷ってここに来たことも忘れて、外へと向かう]
―館外―
[外へと出れば数名がそこに居て、既にハーヴェイが渦中の人物を運んだ後で、やや急いで近付き声を掛ける]
どうした?行き倒れって聞いたけど……
[言いかけて、その姿を見て息を呑む]
随分酷いな…
[どうやって運ぶのか、と訊けばルーサーが道具を捜しに言っているとの答えに少し安堵して]
そうだな、その方が良い。
しかし何でまたこんな所に、こんな格好で…しかもこの怪我で。
目を覚ますのを待つしかない、かな。
[そう呟き、ルーサーを待つことに]
[彼が吊り橋の向こうを爪先立ちで見やっていると、そのすぐ傍をナサニエルが足早に追い抜いて。
強い風にやや途切れがちな声を辛うじて拾い、誰かが怪我をしているらしいと気付く。]
大変だ! お湯とか準備しないと…!
[怪我をした時に大量のお湯が必要なのは良く知っている。
運ぶ方の役は青年達に任せて、ぱっと踵を返し、お湯を沸かす手伝いへをすべく *駆け出した。*]
……ってあー!見つからない!!
何処ですか棒!
[そろそろ癇癪を起こしそうだ。
とそんな時、使用人を発見。
早速捕まえて担架が作れないかと聞く。
そこから担架完成までものの7分。]
……はぁ。
何故かとても疲れた気がします。
[担架を持って、吊り橋の向こうに]
―庭園→吊り橋前―
―吊り橋前―
[ようやく簡易担架を持ってやってくる。]
……と言うわけで、担架を作ってもらってきました。さあ運びましょう。
ではナサニエルさんは前、ハーヴェイ君は後ろで。
[担架を地面に下ろす。]
……私?
いいじゃないですか。お年寄りに担がせるものじゃありません。
さあ、ちゃっちゃと運んで手当てしましょう。
[とてもいい笑顔を浮かべながらサムズアップ]
[やって来たルーサーに手を上げて答え、無事に担架が用意できたことにまたほっとして。
ルーサーが笑って告げる分担にちと疑問を抱きつつ]
それじゃ、乗せようか。
[そういって倒れた男のわきの下に腕を入れて、ゆっくり持ち上げ担架の上に]
気をつけて運ばねーとな……
[そういって担架を持ち上げ、慎重に橋を渡って向こう側へと]
詳しい所は本人に聞かないとわかりませんね。
もしかしたら、行き倒れではなく『逃亡者』かもしれませんが……
何にせよ、手当てが先決でしょう。
広間まで運びましょうか。ナサニエルさん、ハーヴェイ君。
[二人に広間まで運ぶよう指示する。]
[周囲の物音、話し声にも全く反応は無く、かたく目を閉じたまま横たわっている。]
[苦しげな、浅い呼吸音。]
[担架に乗せられた時に、一度低い呻きを洩らしたのみで。
館の中へと運ばれていく間もその眼が開くことは無い。]
広間、か。
それが一番だろうな。
[担架を運びながら頷いて、うめく声にちら、と男の様子を伺う。
纏う物は既に服とは呼べず、それも相当の血で汚れていて]
まったくな…よくここまで辿り着いたもんだよな。
骨とか、折れてなきゃ良いんだけど。
[男が無事に目を覚ますならば、とは心の中だけの呟き]
―広間―
[ナサニエルとハーヴェイの手で広間まで運ばれた行き倒れを改めて見る。]
………。
[はたと手を打ち。]
医者はどこだ。
[手当てをした事がないのでお手上げらしい。]
―館外→広間―
[ようやく広間へと辿り着き、ソファの上へとその男を乗せる]
なんにせよ、早く手当てをしてやらないとな。
でも…
[素人判断でどうにか出来そうな怪我でもなく、どうするべきかと考え込む]
多少の怪我なら、旅してるとしょっちゅうだし俺でも何とか出来るんだけど…
ここまで酷いとちょっと手が出せないな。
[そう言いながらも、使用人が持ってきた薬箱から消毒薬を取り出し、気休め程度の手当てを]
こんなんじゃ足りねーな、薬。
[そう溜息をつきながら]
うーん、ナサニエルさんでもダメですか。
何となく冒険者の知恵と知識でどうにかなさるものだと思ったのですが。
[冒険者を何だと思ってるのだこの男は。]
どうにかしても良いけど、荒療治になるぜ?
なんせ薬とかなしで治療するんだし…この怪我人には使えないって。
もし傷が深かったら、下手に弄らない方が良いし。
とりあえず、この汚れとかを何とかしないとな。
このままじゃ病気になっちまう。
[感染症は怖いしな、と付け足して]
――回想 昼――
[目を覚ますと、窓から差し込む日の光は高く。少女は久々に充分な睡眠を得たことを実感する。
とは言うものの、思った以上に眠りに時間を取られてしまったことを、少しばかり後悔したのだが。]
[汗を流し身支度を整え、昨日言付けした通りにアーヴァインへと会いに行く。
彼の部屋へ通された少女は、たゆやかな笑みを薄紅色の口許に浮かべる。]
お久し振りですわ、アーヴァインさん。最後に会ったのは…もう彼是四年以上にもなりますでしょうか?
[思い出話が、午後の穏やかな空気の元で零れ始めた。]
とりあえず、出来そうな事はしておきましょう。
麓に鳩を飛ばして医者を呼ばせましたし。
[清潔な布で汚れた傷口を拭き清めつつ。]
出血はこの程度なら圧迫止血で大丈夫だとおもいます。
…薬……温室にまだ薬草は残っていましたかね?
多少乱暴ですが強い酒でも気休めにはなりますが。
気付け薬に使えそうな酒と言ったらブランデーくらいでしょうか。
それ以上きつい酒を飲ませると大事になりそうです。
[使用人に、ブランデーを取って来させる。]
[少女の話に、アーヴァインは時折驚きと懐かしさを滲ませながら、何処か優しい眼差しを湛えている。
少女は少女で、歳相応に備えた記憶を辿りながら口を開き、思い出話に花を添えていく]
[と、一通り話が終わった所で、一瞬だけ少女は躊躇いがちに口を噤み――何かを決心したように…胸元からネックレスを取り出した。華美なデザインの、少女の華奢な体からは少々アンバランスに見えるペンダントヘッドが下がっている。]
実は…アーヴァインさんにこれをお渡ししたくて。私はこの地に訪れたのです…。
[再び開いた少女の口許には。先程までの柔らかな笑みは影を潜め――変わりに込み上げてくる感情を、無理に抑えた為に歪みを生じた苦悩の表情が浮かび上がっていた。]
そうそう、まずは清潔にしておくのが先だと思う。
[ルーサーにそう言って、手際よく手当てを進めるコーネリアスに少し驚いて]
随分詳しいんだね。
怪我しても医者とか行かないしなぁ…俺は。
[単に金が無いからとは言えなかったが]
……ああ。
てっきり飲ませるものかと。
ではスピリタス辺りも持ってきてもらいましょう。
アルコール度数はブランデー以上に高いですけど大丈夫ですかね?
[使用人からブランデーを受け取り、今度はスピリタスを持ってくるよう指示。]
…このくらいのことなら、多少の用心として…ね。
[ボロボロの衣服を脱がせ、傷口を蒸留酒で拭き清める。
おそらく酷く染みるだろうが、そういうことに気を使っていられる状況ではないようで。
ガーゼを当て、包帯を巻いてやる。
血泥に白い指も着ていた服も汚れていくが、気にしている場合でもなく。]
…………!!
[びくり]
[身を震わせ、声の無い悲鳴を上げる。]
[眦が裂けそうな程、見開かれた眼。]
……ァア…あ。
[寒気を感じているのか、その顔にありありと浮かぶ恐怖の為か、がくがくと震えている。]
[軽く見た所、骨折などはないようで一安心して。
それでもこれだけの傷では今夜辺り発熱があるだろうとは予想が出来て]
無事に目ぇ覚ますと良いんだけどな…
[そう呟いて男の様子を伺うと、不意に男が目を見開き声にならない声を上げる]
…って、おい!大丈夫か?
[震える体を押さえ、少しでも落ち着かせようと]
…動かないで。
危害を加えるつもりはありませんから。
暴れればもっと痛みますよ?
[そっと囁きつつ、安心させるようにと、幼子をなだめるように撫でようとする。]
……!………!
[嫌々をするように首を振り、押さえる手から逃れようとする。]
[目尻から涙が溢れ、汚れた頬を濡らしていく。]
[少女の口から語られたもの。それは彼女の両親が二年前、とある事件に巻き込まれ命を落として居た事。そのときのショックで、自身の成長も止まって居る事。そして、両親の遺言に従い、ペンダントヘッドをアーヴァインに渡す為にこの場所へ訪れたことだった。]
[沈痛な面持ちのアーヴァインに、少女は小さく笑って]
そんなに悲しい顔をなさらないでください。たとえ命は消えてしまっても…思い出は消えないのですから――
これは…生前最も親しくなさってくださったあなたへ、せめてもの形見分け…。良かったら受け取っていただけないでしょうか?
[少女は首から鎖を外し、そっとアーヴァインの手にネックレスを置いた]
[只ならぬ様子に驚きつつも、押さえる手は緩めずに]
大丈夫、ここに居るのはあんたの敵じゃない。
俺達はあんたに危害は加えない、だから落ち着いて。
[出来るだけ安心させようとそう声を掛けて]
[怯えた瞳で取り囲む人々を見る。][色濃い恐怖の色。]
[そのうちに怖れが頂点に達したのか、]
[小動物のように身を縮めて、固まる。]
…大丈夫、何もしませんから。
[最後の包帯を傷に触れぬ位置で結ぶと、小さくうずくまった体にやわらかい毛布をかけてやる。]
ゆっくり休んで傷を治していきなさいな。
…何か食べられるようなら、用意させますし。
[男の怯える様子に、やはり唯の行き倒れでは無いと確信して]
よっぽど酷い目にあったんだな…
でも、本当にもう大丈夫だからな?
[子供に諭すようにそう告げて。
怯える姿がまるで子供のようだったから]
悪い奴じゃ無さそうなのに、な。
[そう言って押さえつけていた腕を緩める。
少しでも男が落ち着くのを待ちながら、暫く様子を*伺っている*]
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