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[共通する話題を探そうとするのだけれど、いまいち、彼女の思考は読み辛くて。ここには呼ばれて来たのか、だとか。一緒に寝ていた、あの少女や猫とは知り合いなのか、だとか。……年齢の話だとか。
ブリジットの意識は白い翼に奪われがちで、すぐには気づかなかったけれど、イレーネの視線が自分の持つ端末に向いているのに、はたりと目を瞬かせる。]
……これ?
携帯出来る、小型の端末で……
わたしは、ノートなんかの代わりにもしているの。
当分帰れないみたいだけれど、勉強して置かないと、
追いつけなくなっちゃうから。
試験も、もうすぐだしね。
[言いながら、文字の並んだ本を指し示しては見せるものの、どうにも、眼前の彼女には縁のないものに思えた。
学校なんて金持ち――或いは強者とも言い換えられる――の道楽、という人間も居はするのだが。決められた時間学び、作られた問題を答え、点数を取る…… ということは、今の世界で「生きる」ことに比べれば、楽なものだった。
別に、負い目を感じる事でも無い、のだが。]
[そういう事を考え始めると、居心地が悪くなって来る。
次第に歯切れも悪くなって、勉強を口実に、話を打ち切った。]
どこか、行くの?
気をつけてね。
[暫くして、空に飛び立った彼女を見る。
小さくなっていく姿を見送り、視線を落とした。]
[逃げるように本へと意識を移して、集中して――
我に返ったのは、大分、寒くなり、くしゃみをしてから。
彼女はどうしたのだろう、と考えはしたのだけれど。
まさか、ユーディットと共に、巨大烏賊と追いかけっこ(?)をした挙句、湖に飛び込んでいたなんて、*予想の外も、外だった。*]
─昨夜─
[人が増えたとて執事としての仕事は無く。
何もすることが無いために部屋の片隅でじっと立つ。
ソファーに座ったりしないのは常の習慣か。
部屋を眺める視線は自然と観察するそれとなり、少しずつだが周囲の関係性を把握していく。
その派生でアーベルの顔色の変化を見て僅かに目を細めた。
かと言って特に反応は示さないのであるが]
[皆が解散する頃になれば必要も無いのに広間に最後まで残って。
その場に眠る者達だけを残して自分も個室へと戻った]
─朝─
[いくら失敗の多いオトフリートでも、朝早く起きることだけは習慣付いていて。
カーテンの隙間から陽が差し込む少し前に目が覚める。
起きることは起きても、寝ぼけてベッドから転げ落ちるのが常であるが。
いつもの落下で目を覚ますと顔を洗い身支度をして。
カーテンと窓を開けると、顔を出し始めた太陽からの光に目を細めた]
[そして陽を背にして床を見つめる]
-Fixierung
[一言呟く。
陽によって出来た影が、床でゆらりと揺らめいた]
何があるか分からないし、ね。
準備だけはしておかないと。
[窓を閉め、部屋を出ようと扉へ向かう。
部屋の中心、先程影が揺らめいた床に、目立たない程度の黒い染みが出来ていた]
─昼─
[先日モニタールームで見た各所の風景。
見る限り実際にこの周辺にあるものなのだろうと考え、少し歩いてみることにする。
足を向けたのは穏やかそうな緑地帯の見えた西部。
アーベルが襲われたのを見て、何も出なければ良いなと短絡的に考えた結果だった]
─二階・個室(F)─
[ベッドの上には、いつの間にやら銀の翼狼。
伏した姿勢で翼を畳み、沈む眠りは深く。
訪れた者があったとしても、身に危険が及びでもしない限りは気づく事などなさそうな様子。
もっとも、これはこれでいつもの事、なのだが]
…………。
[ふるる、と。羽の先が震える。
それが目覚めの兆し、と知る者は、ここにはいないが]
[湖に2人で服のまま沈むと、黒と白の汚れは溶ける様に落ちていった。
幸か不幸か、もう巨大烏賊が出たりはせず、中央へ向かうにつれ深くなる湖でたっぷりと時間を使って汚れを落としたが、上がると当たり前だが二人ともボトボトのずぶぬれだった。]
…服、重いねぇ。
[ずっしり。]
[たっぷりと水を吸った服。
翼は水を吸収しないので問題はないが、
彼女のスカートは酷い有様で]
重い、ね――。
[ぎゅうぎゅうとスカートを絞って水を落とす。
湿ったスカートは足に纏わりついて邪魔になり、
おまけに寒い]
早く帰ろ、帰ろ。
[羽の震えはしばし続き、やがて、身体が大きく震える。
はっとしたよに開かれる、蒼の双眸。
それはしばし、己が居場所を捉え損ねたかのよにきょとり、とし]
……あ。
[零れた声は、どこかぼうっとして]
……ふ……夢見、最高……。
[呟く言葉は、どう見ても額面通りではなさそうな一言。
ふわり、銀が舞い。
獣は、人へとその身を転ずる]
っん〜〜〜……あー、良く、寝た。
[ベッドの上に座り、身体を伸ばす様子は、常の飄々としたもの]
─そして現在─
[木々の間を駆ける。背後からの足音。それも複数。
後ろを振り返ると、そこには数匹の小型モンスター。
息を切らし、オトフリートは駆け続ける]
な、何も、遭遇、しない、と言う、のは、虫が、良すぎた、かな…!
[出来ることなら出会うことなく散歩を済ませたかったものだったが。
その願いも虚しくモンスターに出会ってしまった。
小型モンスターであることを幸ととるか、複数居ることを不幸ととるか。
流石にそんなことを考えている余裕は無い]
……はぁ……はぁ………ぅわ!?
[後ろを気にして走りすぎたためか、それとも疲労がピークに達したか。
急速に近付くモンスターとの距離。
走る勢いのまま、モンスターはオトフリートへと襲い掛かった]
あはは、かえろ、かえろ♪
[響きがなんとなく気に入って、復唱する。
イレーネは飛ぶのだろうか走るのだろうか、抜きつ抜かれつ屋敷へと向かう。
頬を、髪を撫でる風が、冷たくて寒かった。]
―東部→中央部屋敷前―
しっかし、まぁだ、お達し、とやらはないんかねー……。
ま、そろそろ代替わりの事考えて、離れててもいい時期なのかも知れんが……。
[キッチンで淹れたコーヒーのカップを傾けつつ、独りごちる。
やはりと言うか、心配なのは『身内』の事で。
いずれは自分も、育ての兄である先代リーダーのようにグループを離れる事になるから、距離を置くのも悪くない、とは思うものの]
……危なっかしいんだよなあ……。
[やはり、心配らしい]
[端末をじっと見ている事に気付いたブリジットが
色々と説明してくれるのだが――]
たんまつ、のぉと、しけん――?
[当然、文字もほとんど読めないものだから
本も見た事はあれど内容など知るよしもなく。
でも、文字列の中に知った字を見つければ]
私、文字、書けるんだよ。
[と、自慢そうに地面に羽先で『Ire ne』と歪に綴る。
名前が書ける=字が書けると彼女は幼子のように主張して
にこにこと笑った]
[会話というものは楽しいものらしく、始終上機嫌で。
やがて話題が尽きれば軽く挨拶をして>>471、その場を後にした]
―回想終了―
……っ!!
[やられる。
そう感じたオトフリートが目を瞑った瞬間。
彼の周囲から何かがせり上がり、モンスターとの間に割って入る。
驚いたモンスターが怯むと同時に、せり上がったモノから礫のような何かが飛んだ。
飛び出したそれは四方八方へと、周囲に居たモノ達へと無作為に襲い掛かる。
木にぶつかれば打撃痕が残り、モンスターに当たれば悲鳴があがる。
辛うじて死を免れたモンスターたちは、散り散りに逃げて行った]
[その様子を誰かが見ていたのであれば、せり上がったモノの影から紅い絹糸のような長い髪が見えたかもしれない。
尤も、せり上がった何かが霧散する頃には、その場に居るのは腰を抜かしたオトフリートだけだったが]
―現在・東部→中央部屋敷前―
[ユーディットと競争するように、
最初は走っていたが素足で外を駆けるのが痛かったのか
すぐにその移動手段は翼となり]
ユーディット、足速い速い。
[などときゃっきゃとはしゃいだ様子で。
濡れた状態で風にあたるのは寒かったが、
翼の熱を体内に戻す事で体温を保ちつつ]
とう、ちゃく。
あははははは。
はは…ぜぃ、ぜぃっ……っ。
流石に、息、あがっちゃったなぁ。
ボクもまっだまだ、だね。
[イレーネににっこり笑いつつ、膝に両手をつきながらぜいぜいと息をつく。]
…でも、困ったねぇ。
ボク、着替えって下着しか無いんだよねぇ。
[ずぶぬれのまま、玄関の扉を開けて中に入った。]
[カップが空になった所で、ふらりと部屋を出る。
寝ている間に何か状況が変わったか、と思い、下へと]
……っと……外は、賑やかなんかね。
[階段を下りた所で、玄関の方から感じる気配に口をつくのはこんな言葉]
着替え――。
[顎に人差し指を当て、考える]
私も、ない。
乾かそう、乾かそう。
[地に降り立つと荒い息を吐く彼女に『大丈夫?』と声をかけ。
同じくずぶぬれのまま、後に続く]
ただいま?
大丈夫大丈夫、あはは。
乾かそう乾かそう、広間に何かあったっけ?
[イレーネに笑顔で答えつつ、広間へ向かって歩くと階段を降りたアーベルが目に入れば、手をひら、と振って]
やや、こんにちわっ。
[ぼたぼたと水を落としながら、挨拶。]
11人目、シスター ナターリエ がやってきました。
─朽ち果てた工場跡─
[薄暗い部屋。ここは朽ちて久しい古い工場。]
[役目を失った機械たちが所狭しと並ぶ、その奥。]
[瓦礫の堆く積まれた丘の上。そこに彼女はいた。]
お。よ。
[やって来た二人に、いつものようにひら、と右手を振って挨拶し]
……っていうか、なんてー格好してんだよ、揃いもそろって?
こんな時期に、水泳大会かあ?
[滴る水に、口をつくのは呆れきった一言]
[髪に小さな雫をまだくっつけたまま、
アーベルの姿を見れば無邪気に笑い]
アーベル、アーベル。
おっきな烏賊がいたんだよ。
ユーディットがやっつけたら黒いのを吐いてね、
真っ黒々になっちゃった。
[と、要領を得ない説明をする事だろう]
あはははははは、ちょっと水泳には寒かったよぉ。
暖炉とか無かっけ?
[明るく笑いながら、イレーネの要領を得ない説明にうんうん頷く。]
いや、おっきな烏賊ってな。
[無邪気に笑うイレーネの言葉に、やれやれ、とため息一つ]
それはいいから、その服。なんとかするのが先だろ?
風邪引いたら、どーする。
[口調は呆れているものの、表情は穏やかで]
……いや、だから何で烏賊?
って……広間になんか、暖房関係あったっけ?
[ユーディットには突っ込みつつ、問いには首を傾げる。
その辺り、良くは覚えていないらしい]
―西部・木立―
[必要以上に精神が昂ぶっているのは昨夜から自覚していた。このままでは良くない。そう思えばこそ人の集まる場所から離れた。
特に目標も決めず歩いた先には緑の広がるエリアがあった。物珍しそうに奥へと進み、目に付いた木の上で休んでいたのだが]
何…?
[突然の気配の乱入。走る足音。上がった悲鳴。
軽く眉を顰めると、気配を隠しながら様子を窺う為に近付いた]
あ――。
[と、不意に何かを思い出したように声をあげる]
烏賊、持って帰ってくれば良かった。
そしたら、食べれたのに――。
[服の事を言われ、こくこく頷く。
元より、暖房があっても翼の問題でそれに近寄る事は嫌いで。
今回も乾かす対象は服のみであって]
無くても、広間はあったかいよねっ。
[パターン、と広間の扉を開く。
腰の後ろ、黒い銃はワンピースのポケットに落としてリボンを解くと、白いエプロンをふわりと腕から剥ぎ取り、上に持ちあげてくるくると回った。]
早く乾いてくれないかなーぁ。
[くるくる回りながら、イレーネの言葉にはぴたりと止まって首を傾け]
あれ、食べれるのかなぁ。
なんか、ボクが覚えている限り、青くて白いの出て黒いの吐いて、あんまりおいしそーじゃなかったよぉ。
[見えたのは襲い掛かる複数の影と、昨夜挨拶を交わした人物。
ああ拙そうだなと指先を擦ろうとして、その動きを止めた]
ふぅん…。
[唐突にオトフリートの周囲に持ち上がった影。
そこから打ち出された礫のような何かに打ち倒されるモンスター達。
その影の向こうに一瞬見えたのは]
紅?
[だが影が消えた後のオトフリートはその色彩を纏っていない。
頭の隅にそれを記憶させながら、足音を立てて近付いた]
間に合わなかったみたいだけれど、大丈夫だね?
−中央部建物2F・個室(K)−
――うーん。
[ブリジットは、鏡と睨み合っていた。
湯上りらしく、肌は僅かに上記して、緩やかにウェーブのかかった髪は湿り気を帯びている。頬に張り付く一筋を摘んで、横に退けた。]
これ。
最初から置いてあったっけな……?
[ぽつり。
彼女の指す「これ」は、今、身に纏っている衣服に関する事だった。
前で合わせるだけの簡潔な構造をした、ひとえ物。薄い布は今の季節の外出着としては頼りないが、建物内だけならば、不足はなさそうだった。薄花桜色と白でつくられた布地は、落ち着いてはいるものの、普段よりも明るめの色合い。いわゆる、浴衣と言われる和装で――それは、知っているのだが。]
……まあ、いいか。
ずっと制服なのも、何だし。
食べれない、かなぁ?
青くて白くて黒いの――?
[白い身は美味しそうに見えたのに、残念――としょんぼり]
早く乾かないかなー。
[ユーディットの真似をするように、
上着を脱いで掲げ、ぱたぱたと広間の方へ]
……持ってくれば、って。
[いくらなんでもくえんだろ、というより早く、ユーディッドの声が聞こえ]
……それは、あんまり食いたくねぇな。
[素で呟いた]
……っつーか、着替えくらい置いてないんかね、ここ。
長く引き止めるんなら、そのくらいあっても良さそうなもんだが。
[不自由があると言えば、ベルトが付けられないことだが。帯に差しては、目立ってしまうだろう。]
鞄に入れておけばいいかな?
[暢気に、そう考えた。鞄は不似合いだが、仕方ない。
……実際に使う場合の事なんて、考えていないようで。そもそも想定したのなら、置かれていても、この衣服は選ばないだろう。]
それにしても。
[鏡をしげしげと見る。]
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