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――廊下――
[『聖書』を片手に、少女はくるりと記憶を廻らす]
無くなった武器庫の鍵…。神父様の対象から外れたのは…誰…?
そして――男手の神父様を…あそこまで出来るような人は…?
[ふっと溜め息を吐いて――一度だけ瞳を閉じると…]
あの人は、何という名前だったかしら…?
[くすり――]
[微笑を湛えて――]
[少女は歩みを進めた]
ありがとう……
[そっと差し出された少年の遺骸を]
[壊れ物を扱うように抱き取る]
[痛ましげな目で蒼褪めた顔を見つめ]
……俺が、あの時、
[感極まった様に言葉詰まり]
……ああ。
そう云えば、すっかり忘れてたな。
[ 書庫。何故だか其処に行く事は思いつかなかったと顎の辺りに手を遣りつつ、]
じゃ、清廉なる音色に誘われてとでも?
[軽く笑みを返して然う答える。異質な状況の中の平穏な会話は矢張り違和感か。]
[”あれから”の青年達の遣り取りを、温かな胸で泣き濡れていた彼は、知らずにいたから。
流暢なその言葉を、不思議には思うも。それ以上に、嬉しくて。]
………ありがとう…お兄さん………。
ネリーさんも……ボクを連れて行ってくれようとしたんだね…ありがとう……。
[くしゃりと笑みを浮かべようとしたけれど、それは頬を一粒滑り落ちた雫ゆえに、泣いてるようにも見えたろうか。]
[少年の顔を見つめる瞳に、抱いて来た疑念が少し、揺らぐ。
――獣がこんな表情をするのだろうか?
言葉の続きを黙って聞こうとして]
「……あ、トビー君。」
[後ろから掛けられた声に、一つ瞬いて、振り返る。]
…ローズマリーさん……?
[一瞬、笑みを浮かべるも。
なんだか少し緊張した気配を感じて、不安そうにその名を呼んだ。]
[その男の腕に抱かれた物を見れば一瞬表情が変わり
しかし其れはすぐに消えて]
あんたとそいつは仲が良かったもんな…
悪いな、俺のせいで。
[感情は無く、淡々と]
[わたしは――
あぁ、きっと止められない。
それでも今は、目の前の子のために。
微笑を作る。]
きっと、弔ってくれるのでしょうね。
良かった。
[どうにかしてこの子をここから離そうと思った。]
それはどうも、って答えとくべき?
[返ってきた言葉に、くす、と笑う。
外で貼り詰めて行く緊張に、気づいているのかいないのか。
そこだけは、全てが動き出す前、さながらで]
お蔭様で。
怪我は大分良くなった。
記憶も……昨日あんたがトビーを殺した所為で思い出したよ。
[吐き捨てるように]
[琥珀の眸が激情の強い光を帯びる]
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