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[真夜中過ぎ、押し寄せる悪夢から逃れるように冷たい水で顔と手を洗い、鏡の中の自分の姿を見る。
母に良く似ていると、昔から言われてきた顔が、青白く鏡に映っていた]
かあさん......
[呟けば、ぽろりと涙が零れ落ちた]
― 翌朝 ―
[少し微睡んでは、嵐の音と悪夢に揺り起こされ、夜明け前には、赤く充血した目を擦りながら、ベッドから身を起こした]
風...止んだ?
[ふらりと、窓辺に歩み寄り、窓を開けて表を覗く。
酷い風雨は落ち着いているものの辺りは嵐の爪痕を残すが如く荒れ果てた様相だ。波も高く、村の方を見通しても、砂浜は海の底で渡る術はなさそうに見えた]
[丁度玄関の辺り、二階からでは紅い色が見えるだけで、何があるのかは判らない、けれど、胸がドキドキと脈打った]
.........
[シャツ一枚でベッドに入っていたので、ズボンだけを急いで履いて、部屋の外に出る。
まだ眠っている人もいるだろうと、足音をさせぬように、けれど精一杯の早足で、階下へと降り]
あっちゃー、カルちゃんだいじょーぶ?
なんか飲む?
[暖炉の傍に運ばれる彼に声を掛けて、希望される飲み物を彼の元へ運んだり。
そうしているうちに夜は更け]
……あーあ、結局泊まりかぁ。
[むくれたところで、外の風雨が止むわけもない。
他の者に倣って、彼女もまた客室を借りに広間を後にした]
[微かに震える手足を、懸命に動かして、血の跡の続く玄関の戸を開ける。]
あ、あ......
[そこに在ったのは、内臓を抜き取られたかのように空虚となった身体を曝し、喉笛を食い千切られた老婦人の骸]
いや、だ...
[掠れた声は、高い悲鳴の音に変わる]
いやあああーーっ!
[顔を覆い、その場に蹲った少年と、彼の目前に投げ出された老婦人だったモノの姿を、次に見つけたのは、誰だったか。
声をかけられても、少年は、暫くの間ふるふると頭を振って涙を零すばかりだ**]
─ 二階客室 ─
[風の荒れる音、波の猛る音。
それに眠りを脅かされるような歳ではない、が]
……嫌な、感覚だな。
[深紫を細め、独りごちる。
妙に落ち着かない感覚──その意を手繰り、辿りついたのは]
あー……あの時と、似た感じなのか。
[5年前、両親が海難事故で命を失ったという日。
その時にも感じいた落ち着きのなさと今感じているものはどこか似ていた]
…………考えすぎか。
[ふと過った言葉にできない嫌な予感を短い言葉で振り払い、その日は眠りについた]
……っ!?
[階段に達した辺りで感じた異臭に眉が寄る。
駆け降りた先、エントランスホールで目に入ったのは、不自然な、不自然な、いろ]
これは……。
[それが何の色かは、何となくわかる。
わかるが故に、そこにある理由を求め、見渡した視線は開いた玄関の扉の方へと向かい。
倒れた姿と蹲る姿、それぞれを認めた次の瞬間、そちらへと駆けだした]
どうした、何があった!
[蹲り涙を零す少年に向け、投げかけるのはこんな問いかけ。
それから、深紫を倒れた老婦人へと向け]
……なんだ、これは。
まるで……。
[何かに喰われでもしたような、と。
そこまで言葉にはできなかった。*]
― 2階客室/夜 ―
[適当に空いた部屋を選んで、ぼふっとベッドに倒れ込む。
ごろっと寝返りを打って仰向けになり]
あー……
ありゃ?何これ?
[ふとサイドテーブルに目をやると、本が一冊。
むくりと起き上がって部屋を見渡すも、他に荷物のようなものは見当たらない]
空き部屋……だよねぇ。
前に泊まった誰かの忘れ物?
それか、図書室の本かなぁ。
[間違って既に人がいる部屋に入った、というわけではなさそうだった。
安堵したように小さく息を吐いて]
どーしよ。
おばさんに預けた方がいいよねぇ。
[真っ黒な装丁に手を伸ばし、触れた――]
― →玄関 ―
[着替えも顔を洗うこともせず、そのまま部屋の外へ出た。
ゆっくりとした足取りで、階段を下り。
ところどころに落ちている赤い痕に眉を顰めながら、その後を辿って]
……あっ、おはよー?
ねぇ、一体何が――
[既に来ていた者たちの後ろから声を掛けながら、彼らに倣い、玄関の外へと視線を向けて―― 目を瞠った]
……見て、気分のいいものじゃない。
それよりも、彼を。
広間辺りに連れていって……あと、団長殿を呼んできてくれんか。
[騒ぎに気づけば、団長は自分から駆けつけるかも知れないが。
いずれにしろ、少年はこの場から離すべき、と思えたから、そう請うた。*]
[一度だけ、老婦人の骸を振り返り]
Requiescat in pace...
(安らかに眠り給え)
[小さく聖句を唱えてから、カヤに伴われて広間へと向かう。
涙を拭うのは、広間の椅子に身を落ち着けてからになった**]
ー 二階 客室 ー
…面倒なことになりそうねぇ…
[他の滞在者同様、借り受けた部屋で独りごつるは今回のこと。
明かされない理由で呼び出された共通点の見えない面々。
何を嗅ぎ付けたのか、隙あらばあれやこれやと聞き出したがる青年まで駆けつけた]
タチの悪い酔っぱらいよりはマシだけど、ねぇ…
[自分も十年前はそうだったが、来訪者とみれば理由を聞きたがる性分の青年は良くも悪くも影響が大きい。
今回呼び出された面子には店に度々来てくれる女性もいたが、彼女などは物静かな分距離感の近い彼に苦手意識もあるのではないだろうか。
かくいう自分も積極的に接したい訳ではなく、音楽家や神父が救出に行って、毛布やら湯わかしやらで出迎えたあとは早々に部屋へ引き上げて今に至るという訳だ]
……に、しても。
これは……。
[二人が玄関から離れた後、改めて亡骸へ視線を向ける。
亡骸の状態から、人がなした事とは思えない。
それならばなんだ、と思考を巡らせる内、騒ぎに気付いた者や誰かから報せを受けた団長もその場に現れるか]
……女性は、見ない方がよろしいかと。
男でも、見なきゃよかった、と後悔するようなものですから。
[今更ながら、上着を持たずに飛び出して来た事を後悔しつつ、そう告げて。
やって来た団長が険しい顔で亡骸の見分をする様子をその場でじっと見つめる]
……団長殿。
これは、一体……。
[何が起きているのか、どうなっているのか。
向けた問いに返ったのは、嘆息。
続いた、事情は皆が揃ってから話す、という言葉は昨日も聞かされたもので]
……それは、つまり。
今回の招集と関わりがある、という事でよろしいか?
[低く投げた問いに返されたのは、短い肯定]
……左様ですか。
ともあれ、まずはご婦人を別の場所へ。
このまま、ここに転がしてはおけないでしょう?
[肯定に一際大きな嘆息で返した後。
まずは、亡骸の安置のために、と動き出す。**]
ー 二階 客室 ー
ま、アタシだって人のことは言えないけどねぇ。
あの子には悪いことしちゃったわ。
あれ位の年の子みるのは久しぶりだから、感が狂っちゃったかしら。
[続いてぼやくは、神学生の少年のこと。
年の間違いは、気付かぬ内に重ねた存在のせいもあるが失礼には違いない。
ごめんなさいねと謝りはしたが、気にしていないと良いのだが]
…朝になって、気にしているようならまた、考えようかしら…ね……
[呟きは、何時の間にかやってきた睡魔によって途切れていった**]
ー 翌朝 ー
[女の眠りは珍しく深かった。
その帳を破ったのは、遠くから届く悲鳴、叫び声で]
……ん…?
今のって…人の声、よねぇ…?
[何処からか、恐らく階下から聞こえただろう声の響きに尋常の無さを感じ。
簡易な身支度を済ませて急ぎ部屋の外へ出ていって]
……何かあったの?
[女の鼻先に鉄錆の臭いが届くより早く、問いかけを拾う人は居たかどうか**]
─ 2階・客室 ─
[昨日碌に働かなかったエーリッヒは随分と寝入ってしまっていた。
負傷した足を庇いながらは何だかんだで心身ともに疲れてしまうらしい。
そのため、目覚めたのは屋敷に響いた高い悲鳴>>43を聞いてからのこと]
……ふぇ、
[薄っすらと目を開け、目だけで周囲を見回した後、大きな欠伸をする]
なんだってよ、こんな朝早くから…
[扉の開閉音や廊下を歩く足音を聞きながら身支度を整えて。
足の具合を確かめてからベッドを下り、廊下へと出た。
昨日よりは足は動かしやすくなっている。
いつも寝る前に老婦人が大浴場に沸く温泉を運んできてくれて、それに足を浸すようにしていたのだが、いい効果を生んでくれているようだ]
─ 階段→1階 ─
[階段を降りる足取りもやや軽め。
怪我は快方に向かっているのが見て取れた。
エーリッヒが階段を降りる頃には人も増えており、それらの動きで立ち込める異臭もやや分散気味。
それに気付いたのは階段を降り切ってエントランスホールに描かれた不自然な色を見てからだった]
うーわ、なんだこりゃ…。
[鼻と口を左手で覆って、色を辿るように玄関へと視線をやる。
数名集まる中に、カヤに付き添われて広間へと向かおうとしているウェンデルの姿が目に入った。
その様子からして、悲鳴を上げたのは彼なのだろう]
……で、どっから続いてるわけ?
[玄関ではどうやら異変があるようで、人だかりもあってエーリッヒの目には映らない。
ヘルムートの様子からは行っても制止を受けそうだったため、廊下を染める色がどこから続くのかを確認しに行った。
壁に軽く手を添え進んだ先には管理人室がある]
うぇ…ここも、ってかこっちの方が凄い匂いだな。
[管理人室にあるのは血溜り。
状況から察するに、ここで寝泊りしている老婦人が何者かに襲われて、玄関の方へと引き摺られた、と言ったところか]
─ 玄関 ─
[玄関までやって来た者には、自分が見た状況を説明し。
運ぶために動き出そうとした矢先に齎された報せ>>69に、眉を寄せた]
管理人室が、そんな有様に……?
それでは、すぐに部屋に、というわけにもいかんか……。
[小さく呟き、どうしますか、と問うような視線を団長に向ける。
団長はしばし思案した後、一時的に地下の倉庫に安置し、部屋の検分と掃除が終わったら改めてそちらへ、と返して来た]
やれやれ、忙しない事で。
[そんなぼやきを漏らしつつ、今は、と動き回る。
立ち込める臭いと亡骸の状況を見ても取り乱す様子のない姿はある種の異様さを感じさせるか。
エーリッヒに取ってきてもらったシーツで老婦人の亡骸を包んで地下へと安置し、玄関周りの目立つ血の後をできるだけ片付けて。
一息つくか、と思った所に、団長から広間に皆を集めるように、という指示が出された]
─ 広間 ─
[それから、全員が集まるまでどれだけかかったか。
集会場にいる全員が広間に集まると、団長は険しい面持ちのままゆっくりと口を開く]
…………。
[語られるのは、今回集められた理由。
この村に闇の者と、それに対する力持つ者がいるらしい、という知らせが中央の教会から届き、それを見つけ出すために疑わしき者たちをこの場に呼び集めたのだと。
そして、老婦人の命を奪ったのはその闇の者──『人狼』であろう、と]
……まあ、確かに。
あれは、人の手による所業とは、思い難いものでしたが……。
しかし、『幻燈歌』に歌われるような存在が、と言われましてもすぐには……。
[だからと言って、すぐに信じられるか、と言われると難しく。
零れ落ちるのは、困惑を帯びた声]
[そんなこちらの困惑には、構う様子もなく。
団長は、『人狼』を見つけ出して殺さなくては、更なる犠牲が出る、と主張する]
……それは、そうかもしれませんが……。
[どうやって見つけるんだ、とか、色々と言いたい事はあるが。
毅然とした──というか、何かを決意したような表情の団長に、それ以上何か言うのは躊躇われ。
零れ落ちたは、やや大げさなため息、ひとつ。**]
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