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…ん。
――――あ、
[ライヒアルトに小さく頷いて見せたあと、
ロミの笑顔に顔を斜めに傾げ、ショルダーバッグへ手を入れる。
取り出したのは、尾の丸い猫が刺繍されたハンカチ一枚で
そっと、ロミへと差出した]
こ、ここれ、ああげる…
こ、こここの前、広場で落したおお財布、
ひ、ひひ、拾ってくれた、お、お礼…
[一ヶ月ほど前の出来事だから覚えているか知らないが
刺繍は糸の流れが毛並みを表す満足の出来だった]
マリオンさんが欲しがっていた、青系の新しい顔料――。
えーと、絵の具を持ってこれたよ。
後でロミ嬢に渡すから、マリオンさんに渡してあげてくれるかな。
[むくれ顔から笑顔へと、くるくると表情を変える、此方を見上げるロミに女も笑顔を向ける]
― 自宅 ―
遅くなった。
[家に帰ると漂う珈琲の香り>>35に目を細めた。
いつもと変わらない、平和の象徴のような空間。
非日常を持ち込むのが躊躇われる空気がそこにはあった]
―エーリッヒの住居前―
……あ、……遅かったね。
[制止が聞こえた時には、既にリスがマカロンに齧りついてしまった後でした。僕はちょっと肩を竦めます。
今から取り上げてしまうのも可哀相なので、掌はそのままにしておきました]
……。えっと。
たまには、ご馳走食べても、いいよね?
[ちょっとだけ言い訳もしておきます]
……。
[手が離れていくのに合わせて、僕は顔を上げました。考え込む様子の彼を見つめます。
少し間が開いて返された言葉>>28の通り、どうやら本当に知らないみたいでした]
そっか。……何だろうね?
悪い事じゃ、ないといいけど……あれ。
[言葉の途中で首を傾げました。
考え事のせいで今の今まで気づかなかった微かな匂いを、その時初めて感じました]
……雨、かな。
[あまり嗅いだことはないけれど、特徴のあるそれ。少し考えて、そう結論づけます]
[ゆるり、首を振るう。
片付けを終えても尚、雨は降り続いていた。
作品を仕上げたばかりの女はその間、
まともに食事をとっていない]
何かつまめるもの……
[買い置きしていたクッキーは既に空になっていた。
きょろ、と視線めぐらせれば来訪者の置き土産があり
その包みへと手を伸ばす。
かさり、紙の包みの口を解き中を覗けば]
――…アプリコットの、ジャム?
[母親が作りでもしたのだろうか。
説明のないままだった土産を置いていった彼女は
如何にもうっかりしたところがあり
こういうこともしばしば起こる事象]
─ 宿屋 ─
……誤解を招くような物言いをするなと。
[ミリィへ説明するロミ>>39に突っ込みを入れながら、常に持ち歩いている袋を開ける。
それが、紐を精巧に編んで作られたものなのは、よくよく見ればわかること。
座りながらも抵抗する様子>>39に、さてどうするか、と思いながら、小さな瓶に入れた傷薬と包帯を出し。
ゲルダからの贈り物で抵抗がなくなった>>42のを見てく、と笑みを漏らしつつ、素早く手当てをして、最後に]
……痛痛飞行。(痛いの痛いの、飛んで行け。)
[同じく袋の中から出した、花の形に編んだ紐と玉を組み合わせたお守りのようなものを傷に当てて、短く呟く。
子供の手当てをする時には、必ず付け加えるお呪いは、亡き父譲りのもの。
効果があるかどうかは、受ける方次第だが]
─ 自住居穴前 ─
仕方ないわね。
[リスがマカロンに齧りつく様子と、たまには、と言うブリジット>>44に苦笑が漏れた。
確かにお菓子は滅多に食べさせないため、ご馳走と言う感じになるのだろう]
そうねぇ……。
単に何か考え事してるだけなのかもしれないし、何かあれば伝えてくると思うわ。
[自衛団長についてはそう結論付けて、首を傾げるブリジット>>45に「大丈夫よ」と微笑む]
荒れそうな感じね。
ジティ、今日はお帰りなさい。
洞窟の中とは言え、雨は入ってくるんだもの。
[ブリジットの手にあるマカロンはリスごと拾い上げて。
空いた手で彼女の肩をとんと叩き、帰るよう促した]
……―――ん。
よ喜んで貰えて、う嬉しい。
[言葉はともかく表情には表すことなくロミへ言葉を紡ぎ。
ノーラの言葉に、少し眉を上げてから
彼女の微笑みに釣られる様に僅かに上げた頬は
少しだけ血色良く、照れの様相を掠め。
それから焼き魚へとフォークを向けて、
暫し交わされる会話へと耳を傾ける事にするのだった**]
[エプロンで手を拭きながら、変わらぬ笑顔で迎え入れると、
まだ入り口付近に居た夫は何やら難しい顔をしているようだった。
長年見ていなければ、分からないような些細な変化だったが。]
…まぁあなた、どうかしたの?
[まだ何も知らぬ妻は、怪訝そうに首を傾げる。
夫の仕事…本当の仕事、といって差し支えない過去の出来事は、当然妻も知ってはいる。
いるものの、その話は暫く聞いていなかったもので、すぐにそこに繋がる事は無く。
ましてや自分がその場に関わる事になるとは思いもしていなかった。]
いや、一応そこはいっとかんと。
一度に幾つも手がけようとすれば、玉《ギョク》にこもる気も濁る。
[こんな拘りもまた、親譲りなのは村では知れた事。
異国からの旅人に、容姿だけでなく気質も似通った細工師は、それ故に変人と見られる事も少なくはない]
……? 役に立つって……。
[なにが、と問うより先に向けられた問いは、問い返し>>49に途切れ]
……いや、見ての通り。
怪我したのに手当て嫌がるから、それじゃダメだろ、って話だよ。
ええ、……ご無沙汰しています。
クヴェルさんの式には、参列出来ずに申し訳ないです。
[クヴェル氏とは同じ村に出入りする商売人同士付き合いがあり、また令婦人であるノーラとも面識があった。彼が他界したとき、女は遠くに商いに出ていて葬儀に顔せなかったことを詫びた]
そう言えば、ノーラさんが跡を継がれる、と聞きましたが?
[暫く考えて、小さく頷く。
ジャムの瓶の蓋をあけようと捻ってみるが
きつく締められたそれはビクともしない]
…ん、く。
[力の籠もる声が漏れるが
一向に開く気配はなく、根負けしたのは女の方]
これ、男の人じゃないと無理そう……
[肩を落とし残念そうに呟いて瓶を陳列棚の上に置く]
うん!
この猫さんすごく可愛い!
[笑いかけてくれるノーラ>>48に笑顔のままこくこく頷く。
ライヒアルトとの口戦前彼女へ向けた問いに対して返された曖昧な答え>>33に抱いた疑問は既にどこかへ飛んでいた。
ゲルダの言葉>>53に、大きくこくこく頷き。]
私こそ、すっごく嬉しいよ!
可愛い猫さんありがとう!
ふぇ?なんで?
[えへへ、と笑って、ぎゅーっとハンカチを胸に抱いた。
だが、すぐに皺になっちゃうと気付いて慌ててたたもうとして、ライヒアルトからのツッコミに手が止まった。
ミリィがライヒアルトへ向けた問い>>49にも首を傾げる。
自分の説明が悪かったということには気づかない。]
―→宿屋―
[宿屋につく途中、外の天気はだいぶ悪いらしいことを知ることになった。
こういうとき洞窟の中というのは逆に雨風が容易にしのげていいのかもしれないと安易にそのときは考えていた]
あら……
[宿屋につけば出るときよりもはるかに多い人の量、少しだけ驚いた声を漏らしてから、ぺこりと小さく一礼。
宿屋の女将に戻った旨を伝え、それから集まった人たちの方を、フード越しに見るともなしに見ながら]
お部屋に荷物置いたら、軽く食事をお願いしたいのだけどもいいかしら?
[答えをもらうとありがとうと返して部屋へと一度荷物を置きにいく]
……成る程。そりゃ、そうだよね。
[ロミの膝に薬を塗り、包帯を巻くライヒアルトを眺めながら]
偶々、ミスリル銀の彫刻用ナイフが手に入ってね。
丁度ラーイが仕事請けたって言うし、試してもらおうかなって。
[偶々なんて嘘で、このナイフを手に入れるために少なからぬ苦労をしているが、そんなことは口に出す気は毛頭ない]
あれ?
[ここでようやく右膝に巻かれている包帯に気付いた。
つまり全く気付かない内に手当てが終わっていたということで。
痛みも感じなかったのはライヒアルトがしてくれたおまじないのおかげだろうか。
ゲルダがくれたハンカチとミリィが父の欲しがっていた画材を届けてきてくれたことが嬉しかったというのも大きいかもしれない。
ただ単純に鈍いだけ─ではない、と思う。]
─ 宿屋 ─
ん、ああ。
……もうじきうまれる子供のために、お守りを作ってくれ、という依頼を受けていて。
……天気が崩れなければ、玉《ギョク》を月の光に当てて、仕上げにかかれたんですが。
[ノーラ>>58に答えつつ、ちら、と窓の向こうを見て、それから]
ん?
さっき言ってたお願いって、細工に絡むことですか?
――…ん。
偶々アプリコットが手に入ったから
娘の好きなアプリコットジャムを作って
差し入れてくれた、と思うのだけど。
[蓋の開かない瓶を見詰めながら
事の次第を推測してみる]
こんなにきつく締めたのは誰かしら。
[実家に戻って尋ねてみればすぐに答えは知れるが
同じ村の中であるのに自ら戻ろうとする事は無かった]
―自宅―
それもある。
[それだけではない、と言外に含めつつ。
出迎えた妻をそっと抱きしめた]
……すまん。
器用に立ち回れん儂を、どうか赦してくれ。
[年を重ね、手を握る程度はともかく。
近年珍しい行動を取りながら、低い声で囁いた]
―エーリッヒの住居前―
……。うん、それもそうだね。
皆に関係あるなら、そのうち分かるだろうし……個人的な悩みだったら、奥さんもいるし。
[だから僕が心配することじゃないかと、その時は頷きました。
そのうち不意に、掌に触れていたくすぐったいような感触が遠ざかります]
……そっか。仕方ない、ね。
[そういえば結局まだ、リスには触れていませんでした。
話したいことも話しきれず残念でしたが、また別の日もあるかと思い直します。それにあまり長居すると、仕事の邪魔になるかも知れませんし]
えっと……じゃあ、はい。
仕事の合間にでも、よかったら食べて。
[またちょっと考えてから、手提げ袋の中から一掴み分のお菓子を、彼に渡すために取り出しました。
リスとマカロンで手が塞がっているようなら、ポケットに直接突っ込むつもりです]
……。それじゃ、また来るね。
[袋の口をきちっと締めてから、僕は手を振って、ちょっとだけ早足で家路へと向かいました**]
[理由はさておくとして、痛みを感じなかったのは事実なわけで。]
お兄さんすごいね!
ぜんっぜん痛くなかった!
手当てしてくれてありがとう!
[満面の笑みでライヒアルトにお礼を*言った。*]
……それって。
[偶々で手に入るものじゃねぇだろ、と。
突っ込みを入れるのは、ぎりぎりで耐え]
まあ、そういう事なら、試させてもらうのは構わんが。
……対価支払い、いつになるか、読めんぞ。
[ミリィ>>61に返す口調は、ごく軽いもの]
……そうですか。
もし、私で力になれることがあるなら、仰って下さい。
[ノーラがするであろう苦労は、容易に想像が出来た。
何故ならそれは、女自身がしてきた苦労と相違ないものだろうから。
儚げな未亡人に労わるように視線を向けた]
[手当てが終わった事に遅れて気づいたらしいロミ>>63の様子に、また、くく、と低く笑う。
それでも、満面の笑みと共に向けられる礼>>69に返すのは、穏やかな笑み]
善処する、って言ったろ。
……ともあれ、次は転ばないようにしろよ?
[そんな注意を飛ばしつつ、道具類を片付けた]
─ 宿屋 ─
生まれてくる子供のためのお守り。
それは早く月が顔を出してくれないと困りますね。
[少し寂しさの混じった笑みを浮かべながら]
ええ。
大切にしていたのですけれど、事故に巻き込んでしまって。
[ためらいながら、布を解いて壊れた腕輪をライヒアルトに見せた]
[眉を下げて、見上げる夫の頬に手を添えて。]
あなた、ごめんなさいね。
私を選ぶのは辛かったでしょう…。
[夫が情より成すべき事を優先させる人なのは知っている。
そんな人だから愛しているのだと。
恨み言一つ言うでもなく、頬に手を当てると、「私は大丈夫だから」と、変わらぬ笑顔を向け強く抱擁を返した。]
……さ、ご飯が冷めてしまうわ。
早く食べてしまいましょうね。
[しばらくそうした後、夫をテーブルへと促して、普段より静かな食事が始まる。
ミルクのない珈琲は、何時もと違った苦い後味を舌に残したのだった**]
―宿屋:食堂―
[食堂の席についた時も黒ローブにフードかぶったままの姿で、それが特異に見えることはわかっていたが気にしない。
出された食事はスープとパンだけの簡単なもの。
少しはずした時間帯でもあるし、用意してもらえただけでも感謝していた。
宿屋にほかにいる人たちは、少女だったり、青年だったり、さまざまで、
全員旅人なのだろうかと、疑問に思いながら口にはしない]
お金なんかいいよ。お試しだし。
[きっと女のことを慮り、軽い口調で返してくれた友人に
心の中で感謝しつつ]
……じゃあさ、その代わりと言ったら何だけど
一つ、お願い聞いてくれるかな。
実はさ、君が玉を彫っているところ、見たいんだ。
だめ、かな?
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