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[まず入ってきたラッセルに、軽い笑みをしおはようと声をかけた。返事は期待していないが。
次いで入ってきた養女と、賑やかな二人にも、同じように声をかけた。]
あの崖と吊り橋は難所だからなぁ。
この雨と風の中、走って渡ろうものなら、滑ってまっさかさまがいい落ちだ。
昼か…どうだろうな。もう少しかかりそうな気もしなくもないけど。
まあ行方不明でなければ、そう心配もかからないか。
意外っておまえ、心外だなぁ。
外で寝起きする事が多いから、自然そうせざるを得ないんだよ。
起こしてくれる人が居るうちが華だぜ。
[冗談に軽く返しながら。
小さめのパンを齧り腹に収めた。]
[広間に集まってくる者たちに軽く頭を下げる]
痛そう?
[トビーの声にそちらに目をやって、ラッセルのほうに近づけば自然と視線もそちらを向いて]
どうしたんだ?
[声を掛けるのはラッセルにではなく、一緒に入ってきたものたちに。
ラッセルは答えないだろうと思ったから]
[セシリアの笑みに、こちらも苦笑を返した。]
夢中になると止まらないのはよく分かるな。
[自身も調べ物やら何やらをはじめると、規則正しい生活はとたんに崩れだすのが。]
まぁ若い時は、多少無茶しても平気だろうけど。
折角の可愛い顔が勿体無いからな。
はは、昼寝すぎて、また夜寝られなくならないようにね。
[そうやって睡眠時間が一周すると、あまり身体には宜しくないので一応の忠告。
とはいえ、それが聞き入れられるなら、そも夜更かしなんかしていない、というのは自分が一番理解してもいる。]
[ぶつけた所を冷やしていると、トビーが懲りずに近付いて来て訊ねてくる]
………平気だってば。
[最初こそ困惑の表情だったが、次第にしつこいと思い始め。
少しばかり険を含んだ小さな声を発す]
はい、なんだかとっても順調で……この分ならきっと、父もすぐ見つかります!
[ギルバートに笑みで答える。
ハーヴェイの「可愛い」の言葉に顔を赤らめて、視線をそらした]
か、からかわないでください!
[なんにも気にせず近づいて、いくときに聞こえたギルバートの声に。]
わかんないー
[とりあえず答えた。意味がない答えだったけど。
それからラッセルに近づいた。
小さい声には、よく聞く感情。
きょとんとラッセルを見上げて、]
痛いんだったら無理しなきゃいいのに、ラッセルさん。
すなおにならなきゃ、損だよ。
そうやって。
[あんまり嬉しくなさそうな様子に、にこにこと笑う。
それから、主語もなにもない問いかけを。]
きらい?
……まだ、お休みしてらっしゃるのかしら、ね。
[テーブルに着く前に広間を見回すが、ヘンリエッタの姿はないようで。
後で部屋の場所を聞いて、行ってみようかと思いつつ。
ひとまず、空いている席について、朝食に手をつけた**]
[ギルバートとセシリアの会話は、ただ静かに耳に入れていた。
問われればどう切り替えそうか。
昨日考えていた事の結論はまだ出ていない。
ふぅと気づかれないよう息を吐きながら、飲み込むように紅茶を流し込んだ所で、隣に来たシャーロットに気がついた。]
おはよう。…どうかしたか?
[何となく、元気がないような様子に気遣うように尋ねた。
視線がラッセルとトビーに行くようなら、それを追って見るものの。]
―厨房―
[コップを持つ骨張った手が水を口に運び、渇いた喉を潤す]
それにしても賑やかですね。
[広間から聞こえて来る声に、露な片目が細まる。
洗い物をしている使用人が、楽しそうに同意の声を返してきた]
雨が止んだら、少し寂しくなりそうです。
[続けて、もう一度コップを傾けた]
[ハーヴェイやキャロルにも、椅子に座ったまま頭を下げる。ギルバートの問いには、自分も同じように首を傾げ]
さぁ、我が来た時にはもうラッセル殿も中に入ってしまっていたし、童っぱの言う事もよう分からぬ・・・
[そこまで話したところで、トビーの様子に気付く。確かラッセルはあまり人に近付かれるのを好まぬはず・・・そう考えて、慌ててトビーに声をかける]
わ、童っぱ。
ほれ、早く食べぬと飯が片付かぬぞ。
こちらに来て一緒に食べるといたそう。
止んでも暫くは滑るだろうなぁ。
[吊り橋の事を考えて、少しだけ困った顔をして]
流石に吊り橋から落ちるのは勘弁して欲しいし、夕方か…もしくはもう一泊かだな、これは。
[これをアーヴァインに言えば、間違いなく宿泊を勧めるだろうから殆ど確定のような物だけど]
あー、確かに旅してるとそんなもんかぁ。
陽のあるうちに距離稼がないといけないしな。
……うちのお袋と同じ事言うのなー。
[最後の一言に苦笑混じりにそう言って。
もっとも母親の言い分は「早く嫁を」と言う意味だろうけれど]
―広間―
[キャロルがやってくれば会釈をする。
ハーヴェイがなんかセシリアを褒めてセシリアが顔を赤くする様子にはちょっと不機嫌そうに。
手に持っていたパンをちぎるのが若干粗雑だったかもしれない。]
……(じーー
[こちらにどうしたと尋ねるハーヴェイの顔を覗き込む。
しばらくたってからゆめというように口元が動くが声はない]
そういう反応含めて、可愛いって思うんだけどな。
[セシリアの赤くなる顔、強くなる語調。逸らす視線とその仕草を、余すことなく愛でた。
観察するように見てしまうのは、職業柄かもしれない。]
ああでも、昔と比べて綺麗さは十分増しているよ。
そういう意味で可愛いは失礼だったかな。
[にこりと笑みながらさらりと言った。]
[向けられるトビーの笑みが、喪失したはずの過去を彷彿とさせる。
笑いながら近付いて来る子供達、その手に持っているのは石や棒。
人の皮を被った恐怖が迫って来る]
……く、るな……!
また僕を殴るつもりか…!
[トビーの声は耳に入らず、カタカタと小刻みに震え始め。
恐怖に顔を歪めながら、額を抑えていたタオルを投げつける。
投げたタオルはトビーからだいぶ逸れて、床を滑った。
タオルを外した額には、ぶつけた時の痣はほとんど無く。
代わりに古い切り傷の痕がいくつも残っていた]
[誰にも気づかれぬよう、溜息を一つ。
何か嫌な予感がするのだ。
それと反対に期待に満ちた自分がいる。
いや、むしろ期待が叶ったことを喜んでいるのかもしれない。
『予感』が何か、『期待』が何か、「喜んでいる自分」は知っている気がする。
ただ「不安な私」が気づかぬふりをしているだけで]
おはようございます。
[食卓につく人々にそう挨拶をして、不安な気持ちを紛らわせた**]
わかんない、かぁ。
[問いかけに返るのはそういう事で、きっと本人が言わないからだろうという確信をして。小さく聞こえたラッセルの声に少しだけ驚いて。
だけどこういう時には下手につつかない方がいいとは知っているけれど]
……あ
[トビーが話し掛けるのに小さく声を出して、どこか気に掛けるような視線を向けながら、パンを口に放り込む]
[マンジローの声は聞こえていたけど]
おなかすいてないのー
[そんな答え。
ラッセルへと視線を向けると、様子がおかしい。
またきょとんとした。]
殴らないよ。
だって僕の方が弱いもん。
殴ったって、僕が死ぬだけじゃない。
[触れることはないし、
一度遠くにいったタオルを見る。
再び、視線を戻して、痕を見る。]
――ああ。
痛かったんだ。
[納得したように言った。一度、自分の体を見下ろして、袖を捲る。その下には、同じような、それにあわせて凹んだり色が変わったりした傷跡が残されている。おんなじ、と呟いて笑う]
[様子を伺っていると明らかにラッセルの様子がおかしくて。声を上げるのに思わず立ち上がる]
って、おい、ラッセル…
[声を掛けようとして、トビーがそのまま話し掛けるのに気付いて口を閉ざす。
この位置からでは細かい物は確認できないし、話す声も全ては聞き取れないけれど]
雨上がりは特に、油断して危ないからな。…事故も起きてるんだっけか?
[そんな事を聞いたきもする。
もう一泊か夕方、には笑って。]
ま、ゆっくりできる口実が出来てよかったって事で。
夜は歩けないからな。
安全そうな所でじっとしているのが一番さ。
っは、いや待て、おかみさんと同じって。
歳くうと言ってる事は似てくるのかね…。
[流石に嫁とは言わないが。
はぁと息をつきながら、残ったパンを口にほおった。]
[キャロルの姿を見止めれば、思い出すのは小さな来訪者のこと。
親しい彼女には、ヘンリエッタのことを話しておくかと思った。
シャーロットの細かな変化には、気づいたか気づいていないのか。
視線には笑みを返して、覗き込まれた顔の、唇の動きを読み取った。]
夢…ん、また怖い夢を見たか。
雨が強かったからかな。
[そう言いながら、ぽすりと頭を手で包み込むようになでた。
大丈夫だからと、安心させるように。]
どうして……僕はただ、見たままのことを言っただけなのに…!
[錯乱に近い状態で言葉を紡ぎ。
殴らないと言うトビーには猜疑の瞳を返す。
言葉を裏切られたことは数知れない。
直ぐに受け入れることは出来なかった]
おんなじ……?
おんなじだから、なに?
そうやって近付いて来た奴に何度裏切られたことか!
僕の味方は、にーちゃんだけだった…!
[恐怖に悲しみが交り、大粒の涙を零す。
その慕う相手がこの場に居ないことが何を意味するのか、分かるものには分かるだろうか]
[遠目だったから、ラッセルの傷は気づかずとも、トビーの肌の色の違いは目に止まる。おおよそ予想できたものだったので、驚きはしないが。
トビーがラッセルに何かをしようとしているのは分かったので、ただじっと見つめていた。
同情を得ようとしているのか。
それとも、何か探ろうとしているのか。
あるいは、近づこうとしているのか。
その判断は付かなかったが。]
…(こくり
[怖い夢といわれて頷く。
頭を撫でられれば少し機嫌が戻ったかもしれない。
けれどもすぐにセシリアをまた褒めている様子になんかいろいろ複雑な気分になって。
ちぎったパンをハーヴェイの口の中に突っ込んで、視線をはずした。]
[ラッセルたちの様子に気を配りつつも、ハーヴェイの言葉には内心やれやれと溜息をつく。多少は身のこなしには自信があるが、確かにこの雨風で濡れたあの細い吊り橋を渡るのもあまり気分のいいものではない。ここは素直に天候が回復するまで世話になっておくかと腹を決める]
なるほど、確かに最初にここに来た時も揺れるし滑るしでえらく難儀をした覚えがござるな。
いくら普段あまり渡る者が居らぬとしても、もっと大きくて頑丈な橋を架ければよいものを、と思わなくもないでござるが・・・。
…
[視線をはずした先トビーがラッセルと話したり体の傷跡とかを見せたりしている。]
……
[その様子を眺めながら複雑な面持ち。
朝食を食べる口は余り進まない]
[暫くそうして過ごした後、空になったコップは使用人に預けられた。
広間の空気が少し変化したことを、その場にいない墓守が知ることはなく]
少し外を見てきましょうか。
墓の方も気になりますし。
[低音の呟きを落とす。
言葉の通りに厨房を出た墓守は、黒い外套を羽織り、玄関から外へ出た]
[ラッセルの悲痛な叫びに、わずかばかり体に緊張が走る。もしもの時にはすぐに飛び出せるように。おそらくラッセルがトビーに危害を加えるような事は、無いとは思ってはいるが]
ハーヴェイ殿、あのラッセル殿の過去には一体何があったのでござるか?
[この中で、この屋敷の中のことに最も精通していそうな青年に問い掛けてみる。明確な答えが来る事は半ば期待してはいないが]
[何の話をしているのかなんて、もちろんわかるわけもない。
不思議そうに見たけれど、首を傾げて。]
味方がいたんならいいんじゃないのかなぁって思うけど。
まあいいや。
ラッセルさんがそれでいいなら。
[ラッセルとは対照的に、トビーの様子は落ち着いている。
特別に痕は気にしていないようで、腕を下ろしても袖はそのまま。
感情を、声を荒げさせたくせに、当人は何もない]
裏切るとかもよくわかんないけどねー
でも、そんなのしょっちゅうなんだから、弱いまんまじゃ辛いよ?
[子供の顔で、そう言ってから、くるりと食卓を振り返る。なんかたべもの、食べられそうなのないかなぁと、じーっと見て]
[事故、と言われて思い出すような仕草をして]
んー、確か相当前にあったって聞いてるな。
ちっさい時だったから覚えてねぇけど。
お袋よりは若いから大丈夫ですって。
[そこまで返してまたラッセルの方を見る。
たぶん、昔のことを話しているのかもしれないけれど]
……思い出して、る?
[確信はもてない。ラッセルが言っている言葉の意味もわからない。
だからそのまま、成り行きを見守るだけ]
[怖い夢に頷くシャーロットに、少しだけ複雑な顔をむける。
あの惨劇の夢。忘れろと言っても、忘れられるはずもない惨事。
せめて塗り替えることができるようにと思い。]
明日は良い夢が見れるといいんだけどな…。
[そう言った。
夢と関係はあるのか、ご機嫌斜めのシャーロットに、苦笑しながら頭をなでる。
子ども扱いしているつもりはないのだが、言葉を並べ連ねるより、これが一番効果的なのはよく知っている。
人目がなければ抱き寄せもするのだが。今やるほど短慮ではなかった。]
……やっぱり、同情を買おうとしてたんじゃないか。
だから人は信じられないんだ…!
[それ以上トビーに返す言葉は出ない。
相手の言葉も耳に届いていたかも怪しい。
既にラッセルの声は嗚咽を漏らすだけとなっていて、抱えていた膝に顔を埋めていた]
[ハーヴェイから優しい声がかけられ頭を撫でられる。
不機嫌な気持ちはなくなったけど気落ちした気分は戻らなかった]
…
[ラッセルの姿を見るのは胸に痛い、ハーヴェイがいなければ自分はどうなっていたのかわからないから。
トビーが返す言葉、なんとなくそっちの方を見てしまう。
トビーが食卓の方を見ているのに気づくと、
朝食はもうそれ以上手をつける気にならなかったのでまだ手をつけてなかったパンを一斤トビーに差し出した]
…
[じーっとそちらの方を見ている。]
―外―
[先程中から見た時と変わらず、雨は降り続いていたが]
この分なら、もう少しすれば止みますかね。
[玄関から天を見上げると、雫が丁度右目の下に落ちて来て、墓守は幾度か瞬いた。
外套の袖でそれを拭ってから、少し早足で墓のある方向に向かう]
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