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この状況でそれいうのは、さすがに気休めにすぎるだろ?
[不満げな口調>>28に、く、と低く笑う。
笑みが返されると、少し、気が紛れた]
ああ、構わん。
今のままじゃ、何の役にも立たないからな……。
何かしら、生かされる術があるなら。
それが、玉にとっても一番いい。
[見上げながらの問いにはこう言って]
……気にかかるんなら、あれだ。
この騒動が終わった後、何かお返し考えてくれれば、それでいいさ。
[それが叶わない可能性を完全に横に置いて、笑った。**]
ん、ん。
…お、ちついた、のかナ、と
[思って。と、エーリッヒのリスを見て。
ブリジットの髪が整えられていたから、髪が机にでも落ちやしないかと見たりもしつつ。
どれくらいを過ごしたか、ロミが部屋へと戻る時に共に部屋へと向かうつもりで。
彼女が部屋の鍵をきちんとかけるのを、確認したかったから。]
[ライヒアルトとウェンデルが同じ心配を口にすると
女ははたと瞬きヨハナが出て行った先をちらと見遣る]
心配ね……。
ショックが大きいでしょうし。
[ウェンデルの苦笑に気付けば、ふと和む目許]
えっと……。
……。
……。
[問い掛け>>30に僕は悩みに悩み抜いて]
……エーリィと、同じのにする。
[結論を出すのには随分と時間がかかりました。
それから暫くの間、何か異変が起きるまでは、僕は友達の隣に座っていました**]
[視線を逸らし、アーベルから貰ったお茶を一口飲む。
質の高い花茶の香りは、複雑怪奇に乱れる心を静めてくれた]
ヨハナさんは、荷物を取りに行かれました。
ライヒアルトさんが代わりにと言われたのですけれど、大丈夫だからと断られて。
お一人になりたかったのかもしれませんから。
[落ち着いたことで顔見知り以外でも普通に話せるようになり。不思議そうにしているエーリッヒやブリジットに伝えた]
[そして部屋に籠ると、机に裁縫箱を広げる。
二本の髪を取り出して、暫く悩んで赤い方を選んだ。
もう一本は、大事に裁縫箱の抽斗へと仕舞ってしまう。
まだ、「来ない」。
目を閉じて背筋を伸ばし座るまま。
随分と長い長い時間をそうして過ぎて。
布を手に取り、描き出したのは空も白み始めてから。
流れる糸が生み出すのは赤い髪の女と、
その背後に、背の高い駱駝が1頭。
左右逆を向く横顔が縦に並ぶ背景は砂の山で、
黄色と茶色と白の糸が水面の如く織られている]
洗面所。
行ってみると良いわ。
[ゲルダの傍に行った時、彼女にだけ聞こえるように言葉を向けた。
そこで髪を整えたのだから、落ちてる可能性はあると。
そこまでは言わなかったのでゲルダに伝わったのかは定かではない]
気休めと分かっていても
それが欲しいことってあるでしょ?
[ライヒアルトの低い笑いに澄ました顔で返し]
じゃあ有り難く頂くわ。――…もし、
[何か言いかけて躊躇うかのように視線が下を向く。
迷うような間の後、再び顔を上げて]
縁があってこの玉がラーイの手許に戻ったら
その時は、この玉にあなたが細工してあげて。
[気に掛かるならと言われた言葉に、暫し考える素振り]
お返しは何が良いかしら。
ラーイに想い人がいるなら
お揃いの指輪なんてすすめるんだけど。
[悪戯な笑みを浮かべ首を傾げてみせた]
[何も食していなかった身体に紅茶が染み渡る。
何か食べなければとは思ったけれど、ブリジット達の傍を離れる気にはなれなくて。
結果、食堂で軽食─無論肉は入っていない─を頼んだ]
[その後も宿屋へと居続けて、時折周囲を観察するように視線を向ける。
紺のコートがところどころ、赤黒くなってしまっていることはすっかりと*忘れていた*]
[ライヒアルトから受け取った玉ののる手の中。
ころり、転がし翡翠が揺れるを見詰める。
そうして宿で過ごすは半日ほど。
夕刻になれば、アーベルに本日のおすすめをきいて
それを夕食として頂きその日の糧とした]
ねぇ、アーベル。
昔、使わせてもらった部屋、空いてるかしら。
空いてるなら――…、明日から借りたいのだけど。
[アーベルに尋ねるのは家出を繰り返していた頃に
使っていた部屋が今あいているかどうか。
其処に泊まりたい旨を彼に伝える]
[視線感じて其方を見遣ればエーリッヒの隻眼と蒼が交わる。
こと、と首を傾げてみせるが
ブリジットと共にいるなら何も言わないまま視線を戻した。
夜が訪れる前に女は宿を出る。
寄り道もせずまっすぐ家に戻ると明かりを灯して
広げられたままのスケッチブックが置かれた机に向かう。
机の上にお守りの玉を一度置いて
代わりに手にとるのは貰い物のキャンディ。
暫くの間、キャンディの包みを眺めていたが]
おなかすいてない時に舐めるのは勿体ないかな。
[夕餉をしっかり食べた事もあり
それを口にするのを先延ばしにした**]
―ロミの部屋―
[コンコン、とノックをする。
まだ眠っているかな、と思いつつもう一度。]
ろ、ロミ、ちぁん、
[声をかける。
返事も物音もしない。
ふと見下ろすと、鍵が壊されて外れた螺子が落ちていた]
――――――〜〜〜〜ッッ!
[弾かれたように、部屋へと飛び込んだ。
力任せに開いた扉が、大きな音を立てる。
倒れ臥す小さな身体に駆け寄って手を掛ける。
肩を起こしたのに、着いて来ないクビが逆に曲がって]
ァ、あ、あ、あアァァァおおおおおあアアァァァ!!!
[悲鳴と言うよりは、獣の咆哮のような声が
宿に響き渡った]
[その身を掻き抱いて蹲る。
彼女の腹が不自然にへこむのは臓腑が失われているせい。
何かを噛んでいたかのような口は、
まるで恐怖を訴えているようにも見えて、]
わ、ワタし、の、せい……ダ、…
ゴメンなさい…
ままマタ、こ、ここコンナ、…
もモウ2度と、っててテ…
ゴメンなさい…
わタシが、こ、コロしした…
ゴメンなさい…
[そのまま、ブツブツと虚ろな目は何も映さず*]
―回想―
[ライヒやノーラ、ウェンデル達の会話を聞きながら作業していると、
カルメン>>49から話し掛けられて。]
あの部屋なら空いてるよ。
カルメンのもう一つの家、だし。
[にこ、と笑いながら鍵を手渡して。
いつもと同じように戸締まりなどの確認をして、
その日を終えた。]
―翌日―
[普段通りに起きると、いつものルーチンを開始し始め。
獣の咆哮のような声>>53が聞こえたのは、掃除の途中だったか。]
…ごめん、母さん、行ってくる。
[た、と聞こえた部屋の方へ駆けて。]
…ゲルダ、さん?
………ロミちゃん!?
[室内の状況に目を見開いた。]
リネン室から、シーツ持ってくる。
[短く告げて、真白のシーツを取りにリネン室へ。
戻ってきた時には数枚のシーツとタオルを手にしていた**]
…――――――、
[名前を呼ばれて、緩慢な動きで顔を上げる。
短く告げられる言葉にパチリと瞬いて]
あ、―ベゥ。
[呟いた声は小さく。
彼が戻った時に手にしていた布を見ても、
暫くは掻き抱いた死体を腕から離そうとしない*]
― 前日/宿屋 ―
[ベアトリーチェからはどんな話が聞けただろうかか。何か用事があると断られたら、この地方ではどんな風に御伽噺が伝わっているのかを手の空いてる人に聞いたりして過ごし。
ランプの油が何度か取り替えられても、ヨハナは戻ってこなかった]
様子を拝見してきましょう。
泣き疲れてしまわれたのかもしれませんから。
[誰か一緒に来る者はあっただろうか。
女性一人の所に行くのだからと男性にはやんわりと断りを伝えて、場所を聞いた自衛団長の家に向かう]
― 前日/団長の家 ―
どうしてもというのなら私の背中を見張っていてください。
泣き腫らした姿など、あまり見られたくないものですわ。
親しい方には特に。
[当然のように団員の監視もついてきて、追い払うことができずにそう譲歩を迫った]
失礼します。
[鍵が掛かっていなかったのは、立ち寄っただけのつもりだったからだろうか。慎ましやかだけれど居心地のよさそうな居間を抜け、奥の部屋を覗いて大きく息を呑んだ。
ぶらん、ぶらんと揺れる白い縄。
床に倒れた椅子。
広げられた白い布に広がる滲み。
苦悶に歪んでいる顔]
……奥様っ!
[小さく叫んで、天井から吊り下げられた身体に手を伸ばす。
自衛団員もすぐに機織部屋へ入ってきて、索状になった布を切り、ヨハナを床に横たえた。
温もりはまだ微かに残っていたが、息も鼓動も完全に絶えていた。
蘇生法を試そうとした者が、力なく首を振る]
どうしてこんなことを。
団長さんはあなたを疑っても手を出そうとはなさらなかったのでしょう。それだけ生きて欲しかったのではないのですか。
[ガタガタと運び出すための準備に走るのは団員達に任せて。
開いたままの瞼を閉じさせ、ハンカチで口の周りや目尻を拭う。頬には硬く張り付いた痕もあった。泣いて泣いて、泣いた末にこの手段を選んだのだろう]
生きろ、とは言われませんでしたか?
私はそれを支えに生きている。
自分から命を絶つようなことは出来ません。
[それでも共感してしまいそうになり、声に非難の調子を含めた]
それとも、誰も殺したくありませんでしたか。
もしそうなら、優しいけれど……愚かですわ。
[言ってから、死者に掛ける言葉ではないと口を噤んで項垂れた。
そうしていると離れるようにと肩を掴まれ、大人しく従った。
もう夜が近かったか、ランプの灯される前の広場は薄暗く。
宿に戻ると、ヨハナが自殺して遺体は自衛団が運んだことを俯きがちに伝えた**]
─ 前日/宿屋 ─
……ほんとに、な。
[厄介、という部分と、何も起きなかった、という部分。
ウェンデルの言葉>>27はどちらも同意できて、幾度目かの息を吐く。
同じ事を口にして苦笑する様子>>33には、みんな同じか、とこちらも苦笑い]
そんな簡単につくものじゃない……って言っても。
今は詮無いんですけどね。
[ノーラの口にした決心という言葉>>34、それは今の自分に欠けているもの。
わかっていても──未だ、迷いは大きかった]
それはわかる、けれど。
……護る、っていうのは、時に特別な意味も持つ。
気軽には、言えないんだよ、俺の場合。
[>>45 澄まし顔で言われたなら、少しだけ真面目に返して。
迷うような間を置いて返された言葉に、僅かに眉を寄せる]
……そう、ならん事を。
祈っとく。
[そこは誰にも確約はできないから、それだけ言って]
……生憎と、そういう宛ては今の所、ないな。
もしこれからできたら、その時は相談させてもらうわ。
[悪戯な笑みに返すのは、冗談めかした口調。
それから、少しだけ真面目な面持ちに戻って]
……ま、なんだ。
あんまり、抱え込みすぎるなよ?
気を鎮めるまじないなら幾つか知ってるし、きついようなら、相談乗るから。
[口調は軽いまま、それだけを告げる。
何事か内に秘めているように見える様子は気がかりだが、不用意に促す事は避けるべき、と思っていたから]
[その後は、早々に部屋に引っ込む気にもなれず。
食堂でぼんやりとしながら、時を過ごしていたのだが]
……あ……それなら、俺も……。
[ヨハナの様子を見に行く、というノーラの言葉>>58に腰を浮かせるものの、やんやりと断られて結局腰を下ろした。
様子は気にはなるが、かける言葉が見つからない、というのも事実。
それに、大勢で行けばまた気を使わせるかもしれない、と。
そんな風に考えて]
……それじゃ、お任せします。
[そう、言うに止めてノーラを見送り。
お茶のお代わりをもらうと、ぼんやりとその水色を見詰めて──]
……え。
[やがて、もたらされた報せ>>61に、惚けた声を上げて瞬く]
自殺…………って。
[最初に浮かんだのは、何故、という言葉。
けれど、それを音に変える事はできなかった。
恐らく、それは誰にも答えられないから]
…………。
[ぐ、と、組紐飾りの玉を握り締めて、漣立つ心中を押さえ、それから]
…………部屋、戻る。
[誰にともなくそう告げて、部屋へと戻った]
─ 前日/宿屋・自室 ─
……なんで、だよ。
[一人になると、口をつくのは押さえていた言葉]
失ったから? 奪われたから?
それが、苦しかった?
[止め処なく、零れ落ちるのは荒れた感情の一端]
……その結果に自死を選ぶほどに、辛いもの?
[母が亡くなり、父も病を患って命を落として。
その時は、確かに言いようもなく苦しかった、けれど]
……わかんねぇ……よ。
[呟きながら、視線を向けるのは、荷物の袋。
扉に鍵がかかっているのを確かめると、それを開け、中から黒の布包みを取り出す]
……わかんねぇ、けど。
[しゅるり、と解いた包みの中から出てくるのは、黒の鞘に納まった剣と、横笛。
どちらも、この地方では見られぬ装飾の成されたもの]
……こんな形で、死が重ねられるなら。
例え、一つしか選べぬものだとしても。
使わない、選択肢は……なし、だよな。
[小さく呟いて、黒の鞘を撫でる]
……問題は、どこに向けるか、だけど。
は……それこそ、『想い人』でもいれば、迷わずに済んだんだろうけどな……。
[先のカルメンとのやり取りを思い出して小さく呟く。
とはいえ、細工一途に打ち込んできた青年にとっては、知り人は等しく尊いもので。
そこから、己が魂をかけて喪失を忌避する一人を選ぶには、要素は足りぬまま。
曖昧な力は、在るべき形を取ることはなかった。**]
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