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道具なら、使用人の部屋に。
[姿勢は変えないまま目を僅かに上げて、傍に立つ青年を見た。
常のような、静かな低音が問いに答える]
[マンジローがすぐに視線をそらし、自分の視線もユージーンの方に戻った。
ユージーンが首を振る様子に自分は何も返せず。]
……(こくり
[ユージーンの言葉にナイフから一度手を離し、
立ち上がり少し距離を置いた。ユージーンの邪魔にならないように。]
私は捕まりたくありません。
殺されない保証等無いではありませんか。
[深呼吸をしてトビーに言う]
貴方も信じられません。
星は見ておりませんが信じる事等出来ません。
近付かないで。
[正面から言えば彼は近付かないだろう。
マンジローと会話を始める様なら此方からも視線を切る]
キャロルさん。
此処から逃げる時も一緒に来て下さいませんか。お願い。
[手を握り懇願した]
はい。
[答えは如何だったか。
穏やかに提案されれば頷いて立ち上がる。
歩けない様な事は無かった]
失礼致します。
[トビーに向けなければマンジローにも向けられなかったかもしれない。ユージーンと視線が合えばその前に向けられた声を思い出して怯えを掠めさせたかもしれない。
何処か逃げる様にして其の場を*立ち去った*]
[前も、と言うのを聞いて、それがラッセルの兄のことだと思う。
だけどそれは口には出さない]
何も出来ないなんて事はないだろう?
ラッセルに生きていて欲しかったのさ…俺もな。
[ぽふ、とひとつ、ラッセルの背を叩く]
弱くなんかないさ。
ラッセルはちゃんと探そうとしたし、俺の事は…俺がそうしたいと思っただけで、ラッセルのせいじゃない。
ただ…向こうが一枚上手だったみたいだけどな。
[ラッセルを宥めながら、軽く肩を竦めて見せる。
気にする事はないんだとそう言って]
すまないな。
[そうマンジローに告げてから、ユージーンの言葉が届くと、ありがとうと返した。]
任せっきりですまない。
…行こうシャロ。
[考える事はいくらでもある。
だが今は彼女の怪我のない方の肩を抱き、使用人の部屋へと急ぎ向かっていった。]
ありがとうございます。
[離れる養女に頭を下げる。
その腕に刺さるナイフに触れようとしないのは、治癒の為の扱いを知らぬ故]
シャーロット様をお願いします。
レイさん。
[代わりに少女が慕う青年にそう言って、墓守は未だ温もりの残る死者を抱き上げる]
[ようやく周囲の様子に気づく余裕もできて、
ヘンリエッタ達とトビーが何かただならない雰囲気だったかもしれない。
何があったのか正確なことは知らない、けれどもヘンリエッタに害をなす存在だとは思った。
トビーの元にマンジローがよっていく。]
……(こくり
[ユージーンの礼の言葉には小さく頷く。
ハーヴェイに促されれば頷いて返し、素直にそのまま使用人の部屋へと連れて行かれる。]
[自分のせいじゃないと言ってくれることが、自分を責め続ける枷を取り払ってくれる言葉をくれるのが嬉しくて。
零れる涙が止まらなかった]
……ひっく……。
…ギル……ありがと……。
[呟いて、俯いたまま眼元を擦った。
それから視線を上げて、周囲へと向ける]
……シャロがおおかみだって言ったのに、ハーヴはシャロを庇った。
…気持ちは、分かる。
人の想いは、そう簡単に変えられるものじゃないから…。
[かつて自分が「それ」を口にした時も同じだった。
その時は街単位で信じて貰えなかった。
相手があまりにも強大過ぎたのだ]
…これから、どうなる、かな…。
―ラッセルの部屋の前→使用人の部屋―
[かけられた声に、少し遅れてああと頷いて返すのは、その名が普段呼びなれていないものだからか。
使用人の部屋に入ると、まずはシャーロットの肩口をきつく縛り、血の流れをおそめてから傷周りを消毒しナイフを抜いた。
かなり強引な手当てだったが、躊躇する事はない。
それから布を当て血止めをしてから、上を包帯でややきつめに巻いていき。
シャーロットの治療を終えた後、ほっとしたしたように]
………銀でなくて良かった。
[そう微笑みながら、*呟いた。*]
[実のところ、青年に触れるのはこれが初めてだった。
触れるのを厭うという話は使用人伝に聞かされていた為、自ら触れようとすることはなかったし、そもそも触れる理由も無かった]
[使用人の部屋へ去る二人を、何処か怯えたように視線を外す令嬢を静かな目で見送った後、墓守は開け放たれたままの扉の中に入って行った]
[トビーとともにキャロルとヘンリエッタが立ち去っていくのを眺め、軽く頭を下げる。去り際にトビーに向けられた、ヘンリエッタの言葉とキャロルの鋭い視線に、見送った後嘆息まじりに小さな声で話し掛ける]
童っぱ・・・。お主、彼女達に言ったでござるな、あの事を・・・
[それに対する返答は、いつもと同じく軽い調子であったろうか。これでおそらくトビーの依頼人から狙われる理由が増えたかとも考える。
だが、もとよりそれは覚悟の上だ。]
まぁ、過ぎた事を今更どうこう言ってもどうしようもあるまい。それに、どの道遠くに逃げるのであろう?
安心しろ。我が責任もって、必ず我の国まで送ってやろう。
[安心させるように力強く笑いかける。その言葉に、彼も笑みを返しただろうか]
―使用人の部屋―
[ハーヴェイの治療を受けながら消毒液にはわずかに顔をしかめて、
ナイフを抜かれるときには]
……んっ…
[痛みに微かな声を漏らす。
傷口を布でおさえられて血がある程度とまったところでその上に包帯を巻かれる。
少したった後に肩をきつく縛った布を解かれて]
…うん……(こくり
[ハーヴェイの銀じゃなくてという呟きには微かな声と頷きで答える。
微笑みかけられると、自分も微笑みを返す。]
……
[今度は自分がハーヴェイの右腕の傷の手当てをした。布を押し当ててぎゅっと止血をし包帯を巻く。
手当てが終わった後ハーヴェイに*微笑みかけた*]
…あんまり泣くと、目が溶けちまうぞ?
[冗談めかしてそう言って笑う。
ラッセルのせいだなんて思っていないし、そう思われるのも嫌だったから。
ラッセルが顔を上げるのに釣られる様に顔を上げる]
まぁな…どうしても自分に近いもんを信じたくなるだろうし…。
相手が悪かったよな…。
ったく、ラッセルが俺を襲うはずないってのに。
[自分がそこに居れば、とは言わない。それはまたラッセルが自分を責める理由になるから]
どうなるんだろうな…
誰か、気がついてくれればいいんだけど。
……溶けないもん。
[ここしばらく泣いてばかりだったと思い出す。
泣いてばかりなのが何だか恥ずかしくなってきて、少し強がって言った]
…僕は、視ることが出来たから、皆みたいには出来なかったけど。
力が無かったら、同じことをしてたと、思う。
……力が無かったら、ここには居なかったかも知れない、けど。
[力のせいで居場所を追われたからこそ、今ここに居る]
仮に、真実を知っても、その通りに行動出来るかは別、だよね…。
人にとって「正しい」ことは、違うんだもん…。
[ハーヴェイはシャーロットを護ることが信じる道だと言った。
おそらくは人狼であると知っても、護る道を選ぶのだろう]
……ごめん、ギル。
しばらくこうさせて……。
[そう言って、またギルバートにしがみ付き、胸に顔を埋める。
自分が信じた存在は、今までと居る場所が違っても今傍に在る。
それを確かめるように抱きつく腕に力を*込めた*]
―青年の部屋―
[先ずは青年を横たえ、廊下にあった雑貨屋の遺体を運び、その隣に並べた。
前の二人の時もそうしたようにシーツを剥がし、けれどすぐに被せることはしない]
申し訳ありません。
[謝罪に応えは無い。
頭を垂れ、暫くは動かなかった]
護るべきは、貴方だったかも知れないのに。
[意識が逸れた刹那、少年が告げた言葉は耳に残っている。
かの令嬢が、あの場で「笑って」いたと]
後程、訪ねてみましょうか。
[ゆっくりと頭を上げ、低音は呟く。
もう一度小さく頭を下げた後、並べた二人に一枚のシーツを被せる。
青年のいる左側が、長く放置されていた雑貨屋の方よりも早く染まって行く。
それを暫し眺めた後、深く礼をして、部屋の扉を*閉めた*]
―二階廊下―
[ユージーンはラッセルの亡骸を抱えて出て行き、ハーヴェイとシャーロットも手当のために下へと降りていった。トビーも皆がいなくなればまた広間へと戻っていくだろう]
・・・我も、部屋へ戻るといたそう。
[ただ1人その場に残されれば、忘れていた疲労感がたちどころに襲ってきた。もはや考える事も億劫になり、疲れた体を引きずるように自分の客室へと戻る。
ベッドに倒れこめば、泥のように*眠り込む事だろう*]
[強がる様子に笑ってみせる。
少しでも気持ちが落ち着くならそれでよかった]
そうだな…
[力の事はわからない。だから余計な事は言わずに居た]
俺があそこに居たら、ヘンリエッタに手を上げていたかもしれない。
お前が「見える」事を知ってるから。ヘンリエッタの言う事は嘘だってわかるから。
だけど、それが本当かは他にはわからないしな…
[あの時、話を聞いていたはずのハーヴェイでさえ、シャーロットを守るほうを選んだ。
それが彼にとっての正義だから。
自分がラッセルを選ぶように]
[小さな謝罪と共に腕に掛かる重み。
そっと笑って、宥めるようにして]
あぁ、気が済むまでそうしてていいぜ?
…どこにも行かないから。
[果たせなかった約束。ここでしても意味はない気がするけれど。
ラッセルががそれを望むならと、支えた腕に力を*篭めた*]
─2階・廊下─
[一緒に、という言葉。
女はひとつ瞬いた後、ゆる、と首を傾げ]
ええ。
エッタ様をお一人で放り出すような事はしませんわ。
[少年の言葉。
『連れ戻しに来る』。
それが望まれぬ事と感じたから、そうならぬよに、と。
それは、今の女にとってはごく自然な発想]
では、参りましょう?
墓守殿、申し訳ないけど、後はお願いするわ。
[去り際、墓守にはこんな言葉をかけ。
ひとまず、向かったのは自分の客間。
そこで、ヘンリエッタの背に打ち身の痕がないかを確かめたり、少女の気を紛らわせるために他愛ない物語を聞かせたりしている内に、大分時は過ぎていた]
……お茶をお持ちしましょうか。
あと、何か食べるものを。
あんな事の後で食欲はないかも知れませんけれど……何か、食べておきませんと。
[手伝う、といわれたなら、お疲れでしょうから、とやんわり遮って。
ひとり、部屋を出る。
廊下には、死者の姿も生者の姿もない。
静まり返った館内を、女はゆっくりと歩く]
さて……どこにいるかしら。
いつも通りなら、広間だろうけれど。
[小さく呟く。
ひとりで出てきたのは、少年に会うつもりだったから。
時間を置いたのは、自身の気を静め、冷静さを保つため。
少年が発した言葉。
その意を問わねばならない、という思いからの事だった]
[ヘンリエッタの抱える事情については、深くは知らぬ。
流浪の舞手が踏み込むべき領域ではない、と一線を引いていたが故に。
けれど]
……さすがに、この状況では、そうもいえないものね。
[少年が何をどこまで知っているのか。
それを、問いただしておきたかった。
彼は、何も知らぬと言っていたけれど。
追う者がいるというなら、その情報は得ておきたい。
話を聞き、その上で少年が己が目的を阻む要因となりうるならば取り除く事も視野に入れて]
……もっとも。あまり、手荒な事はしたくないのよねぇ。
[経験がないわけじゃないけれど、と。
そんな呟きは、ここ数日で何度も接したもの──血のにおいに遮られる]
……また……誰か?
[掠れた声で呟く。
狼は、まだいるというのか。
そんな疑問を抱えつつ、においを追う。
やがて、目に入ったのは僅かに開いた玄関の扉。
そちらに近づくにつれ、においは強くなるようだった]
─館外・玄関前─
[僅かに開いた隙間を押し開き、外へ出る。
湿った風が吹きぬけ、金の髪を揺らした。
身に纏った紅の紗が翻る──その色の向こうに見えた、それよりももっと深い、紅]
……っ!
[玄関の、すぐ横。
倒れ伏した少年の身体を中心に開く、色鮮やかな、大輪の花]
……何故?
[口をついたのは、短い言葉。
少年の、痩せ細った身体には、はっきりそれとわかる獣の爪痕]
まだ、いるという事、ね……。
[低い呟きが口をつく。
女はしばし少年の亡骸を見つめ、やがて、ひとつ、息を吐く]
ねぇ。
あなたは、何を知っていたの?
……あの時、何を「見てた」と言うの?
[ヘンリエッタが笑っている、と。
少年の発したその言葉は、捉えてはいた。
けれど、それが何を意味するのかは女にはわからない。
否、わかりたくもない]
このままには、しておけないわね。
皆に知らせて……中に、入れてあげないと。
ここは……寒いもの、ね。
[呟くように言って、立ち上がる。
一際強く吹き抜けた風が、金と紅を大きく揺らした**]
―使用人の部屋→厨房―
[自分の治療は自分では難しいので。
シャーロットに包帯を巻いてもらい血止めをした後、脱いでいた上着を着た。
少し落ち着いたところで部屋を出ようと立ちあがり、扉を開けようとして手を止めた。]
そうだ…腕の怪我はすぐ治るだろうけど、なるべく暫くの間、使い辛いように振舞うんだよ。
もし使った後は痛むようにするのを忘れないように。
[そう言い聞かせるように助言して、扉をあけた。
そうして一旦、水を求めて厨房へと向かう。
シャーロットは共に来たか、それとも途中で分かれたか。
左手で水を飲みながら、残った者の事を考えていた。]
(霊能者と占い師は死んだ。守護者は…分からない、元々いないのかもしれない。
居たとしても、もう遅い。)
……さぁ、次はどうする?
[誰に言うともなく、ぽつと小さく*呟いた。*]
―使用人の部屋→広間―
[いくらかの時間がたった後、ハーヴェイとそこで別れた。
別れ際にかけられる言葉には頷いて、微笑みかけた。]
……(こくり
[廊下を歩きながらあたりは人の気配も少なくなったせいか静かだった。
向かう先はまず広間、そこにトビーは一人でいた。]
……
[どうしたの、シャーロットさん。血に汚れたままだよと彼は笑いかけるのだろうか?
そちらによっていききゅっと抱きしめた。トビーの反応はどうだっただろうか?]
―広間→館外・玄関前―
……とびーが…いけないんだよ……
[小さく呟く声はきっと彼の耳に届いて、それは微かな声だったためか恐怖をあおるかもしれない。
彼の小さい体を抱き上げて口をふさいであたりに注意をしながら広間を後にし、玄関を出て外に。
ここで見つかったら元も子もないから。あたり人の気配を感じないの確認してから玄関の外に。
抵抗をしようともがくトビーをこのまま崖の下に放り投げればその行方もわからなくなるのだろうけど。
そんな考えも浮かんだけど、左腕の治療されたところを何度も叩かれる。痛みとともにもうここで殺してしまおうと思って……]
―館外・玄関前→浴場―
[屋敷の中に戻ると物影に隠れてキャロルが外に出て行くのを見送る。
キャロルの姿が見えなくなったのを確認してから見つからないように注意深くそこから離れた。]
……
[ラッセルとトビーの返り血でだいぶ血塗れていたので浴場に向かった。
トビーの抵抗のためか傷口はまだ開いたままなのでそこに注意をしながら血を落とすだけにして、ハーヴェイの忠告を思い出す。
ちょうどいいのかもしれないとそっと包帯の巻かれた左腕を*撫でる。*]
―二階廊下―
嬉しい。
[望む言葉を貰えて微笑む。
此の状況下で笑みが出る事は異常を感じさせるだろうか。最前に指摘されても其処まで考えが至らない。
本心からの想いは自然と顔に出てしまう]
ジーンさん。
お願い致します。
[キャロルが頼むのを聞けば視線は合わせず頭を下げた。
キャロルの部屋に入ると思い出した様に身体の痛みを感じ始める。青黒い内出血の痕が大きく背に残されても居た。
特に頑強でも何でも無いのだから当然の事だった]
[シャーロットが来た時に、多分、死ぬんだなと思った。
ラッセルさんは、狼だといっていたし。
ただ、死ぬんだって、声を聞いて思った時、死ぬのが怖くなってあがいた。
ぶざまだった。たぶん、とても。]
―キャロルの部屋―
[痛みや不安を紛らわせようとする様に踊り子は物語る。
他愛無くとも其の話は緊張を解し落ち着きを取り戻すのに十分過ぎる程だった]
ええ。食べる物は余り欲しく在りませんけれど。
それならお手伝いを。
[答えながらの提案は何方も穏やかに拒絶された。
此方を気遣っての事とも判るから強くは言えず大人しく其の場で待つ事にした]
キャロルさんと一緒に私も旅をする。
何て素敵かしら。
ありがとう。
[続く名前は空気を震わせず囁き落とされた]
私は幸せ。
あの御本や母さまと違って一緒に居られるのだもの。
[一人きりの部屋に響く小さな笑い声。
其処に宿る物を人間は「狂気」と呼ぶのだろう]
私本当に気付いて居りませんでしたの。
教えて下さった事には感謝致します。
あの人達はきっと私と母さまの事を知っている。
だから捕まえに来たのでしょう。お父様も知っていらっしゃるのかも。
だから母さまは逃げる様にと教えて下さったのでしょう。
感謝は致しますけれど貴方は邪魔でしたの。
[死者は天に昇るもの。
其方に語り掛ける様に窓越しの空を見上げた]
貴方達がいけないのです。
「私達」の邪魔をしようとするのですから。
[歪んだ月が唇に浮かぶ]
本当の価値を知っているのは人間では無いのですから。
[キャロルが知らせに来るのは如何程後の事になるだろうか。
聞いた最初は驚きを示し後は仮面の様な無表情を*作った*]
[今も、僕にはわからないことだらけ。
言ったことに後悔はしてない。
最善の手ではなかったかもしれないが、マンジローとの約束を破って内緒でなくしたのは悪くないと思う。
僕には、なにもできない。
ラッセルさんが死ぬのを、止めるのも。
だから、知る人は多い方が良かった。]
シラヌイさんには、生きててほしいなぁ
[しばらくギルバートにしがみ付いて、気が落ち着くとその手を離す]
……ありがと、ギル。
もう、大丈夫。
[力を込めていた腕を離すと、しがみ付いていた身体を離した。
現世を見やれば、部屋の中に運ばれ行く自分の躯とギルバートの躯。
それを運ぶユージーンの後について行く]
……その言葉だけで十分だよ、ジーン。
ありがとう。
[頭を下げる様子に小さく微笑んだ。
気にかけてくれていたのだと、それが分かっただけでも嬉しかった。
並べられた躯にシーツが被せられ、赤に染まって行く]
気をつけて……彼らも生きるために必死だろうから…。
[届かないと分かっていても、ユージーンの身を案じて言葉を紡ぐ。
静かに、扉が閉められた]
[それからしばらくして治療を終えたシャーロットが動く]
……どうして君は、今まで何もしなかったんだろうね……。
その気になれば、いつでも僕らを殺せただろうに……。
[何故”今”だったのだろう、と疑問を口にする。
一人では出来ない理由があったのだろうか]
……一人……。
…もしかして、仲間が…。
[一人ではないために行動に移したのだとしたら。
仲間が居るのだとしたら]
……ハーヴはシャロを護り、エッタは人を欺く。
キャロルがエッタを護るなら………嗚呼。
[もう残った半数は既に人狼、もしくは人狼に囚われているのだと。
それを理解した時、トビーが現世で紅い花を散らした。
見つめていた眼から涙が一筋*零れる*]
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