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なんか、へんだ。
[何が変なのかよく解らない。
わからないけど何かが変だと、
もう一回、今までおこってこんがらがった事を、
ひとつひとつ思い出してはうんうん唸っていた**]
[それからカヤ君の答えはどうだったか、ナターリエお姉ちゃんやエーリッヒお兄ちゃん達の会話もひと段落したころ]
今日は教会に…戻る……?
[二人にそう尋ねていた]
―その日の深夜―
[まだ皆が起きるよりも少し前の時間。
ヘルムートお兄ちゃんの部屋の窓を、風の音にまぎれさせてはずして中へと]
ヘルムートお兄ちゃん、こんばんはー。
[何かがふっきれたこともあり、迷いは全くない様子でそのまま部屋へと。
こんな時間にレディは出歩く時間じゃないけど、私にとっては、私たちにとってはむしろ夜出歩くことは間違いではないから…]
[しばらく時間が夜明け前ころ、はずした窓をそのまま外に飛び出す影は獣の姿をしたもの。
黒珊瑚亭を後にする姿は早朝の見回りをしていた自衛団員に見つかってしまい、
すばやく、何かよびかける姿を引き離して駆け抜けていく。
まいたところでいつものようにちゃんと手と口を洗い痕跡を消し、何事もなかったようにベッドへと戻った。
その日は朝早く人狼が目撃されたということで、自衛団員達が黒珊瑚亭へとやってきて、
ヘルムートの死体が発見されることになるだろう。
ベッドの上に眠るように横たわる姿には、穴の空いた血塗れた毛布をかぶせられている。
毛布をあけると、他の襲撃者と同じく喉を引きちぎられた痕、
そして胸部から腹部にかけての肉とそこにあるべきものはごっそりと食べられた形跡が*見つかった*]
――…やっぱり俺のせいなのかな。
[月色の獣はぽつと呟く。
もう一人の人狼がアーベルの部屋を訪れてから
少し遅れてその場に姿を現した]
そんな風に思いながら生きていたのか。
そんな風に思いながら生き続けるのか。
――――……ッ!
[もう一人の人狼の名を呼んで止めようとするけれど
それはもう一人の耳には止まらず、赤が散る。
望まぬ現実に、月色の獣は目を閉じる。
聞きたくない音を拒み、景色を拒み、月色は闇にとけて消えた**]
―4日目/黒珊瑚亭―
……ユリアンが、”ひと”だと仰いましたが、
他にも誰か、貴女が、
”ひと”だと知っている者はいますか?
あるいは―――……”人狼”だと。
[ナターリエに問い掛けてから、傍らのカルメンを見下ろす。
妹のように大切に想っていた彼女の言葉と、
あの悲痛な叫びと――最期の微笑みを思い出せば]
[”信じたい”――強い気持ちが湧きあがる。
けれど、それだけではなく。
『信じられる』と。心が囁くのは―――…カルメン]
―4日目・黒珊瑚亭―
……そういえば…。
少しおかしいような…。
……ロミ、カヤ。
君たちのうちどちらか、シスターに、アーベルが……
いや、アーベルのことを、伝えたかい?
[“襲われた”と云い掛けて、言葉を濁す。
二人は、返事をしてくれただろうか。
しばし考え込むような眼差しになり。
足元の白猫が、にゃあぅ…、と哀し気に啼いたのに、
はっとした様子で其方を見遣った]
―4日目・黒珊瑚亭―
ヘル…この子のことを、頼んでくるよ。
……おいで。
[ヘルムートに声をかけて、床に片膝をつき、
白い猫の瞳を、柔らかく見て、
そっと言い聞かせるように、話しかける]
[どうして、という疑問は娘の許には届かない。
届かなくて良かった、と言えるのだろう。
微笑みと共に刃を受けた理由を問われたなら、「ころしてくれたから」と無邪気に笑んだから]
[刺された傷みは、どこか、冥いところへと落ちる感覚にあわせて遠退いて]
[程なく、『それ』は、目を覚ます]
[立ち上がり、今度は慎重に一歩を踏み出す。
蔦は動く事全てを阻んでいるわけではなく、『それ』が進むと、ずるり、と伸びた。
もっとも、その根があると思しき所は、ぼんやりとした霞に閉ざされているのだけれど]
……うごきにくい。
[ぽつり、と呟く声は、やや甲高い。
『それ』──修道女に刺されて命を散らした娘の幼い頃の姿をしたこどもは、不満げな様子で、くいくい、と野荊の蔦を引っ張った。*]
ってか、何してんだよお前。
そんなんが絡んだままじゃ歩きにくいだろ。
[問いに返る声を待たず、近寄って蔦を手に取る。
が、引き千切ろうとしても荊の棘が刺さるだけで、引っ張ってもずるりと伸びてくるばかり。
ならば切ってしまえば良いと腰に手をやるも、剣はユリアンの胸に残したままだったと思い出し、空を仰いで]
…ぁー…もう、しゃーねぇ。
どこ行きたいか言え、運んでくから。
[絡んだ蔦を外す方法が思いつかぬ代わり、手っ取り早い対処法を提示した*]
[白猫の所に行きたいという訴え>>+22は、自衛団に託されたのを見て撤回された。
野荊を引く度、薔薇が揺れるのに目を向けることはなく]
どうしてって言われてもなぁ。
俺もわからんとしか言えねーよ。
他に行きたいとこもねーし。
[問い>>+23に答えながら、捕まってるんじゃないのに、というカルメンを見て]
…お前こそ。
何でそんなのに捕まってんだ。
逃げりゃいいじゃねーか、もう。
[荊に絡まれている理由もその姿が子供に戻っている理由も解らない。
解らないが、彼女を縛る何かがそうしているのだろうとは察せたから、思ったことを口にした。
島を離れる前も、戻ってきた後も変わらなかった接し方で**]
─ 前日/黒珊瑚亭 ─
……はい。
[確認するような声>>25に、目元を指先で押さえ雫を拭い取ってから、エーリッヒをしっかりと見返して頷いた]
人狼は、残念ながら…。
ですが、ひとならば。
[問いかけ>>26に先ずカヤへと視線を向けて]
一番最初に、カヤ君がひとであると知りました。
[そう紡いだ後、一度エーリッヒへと視線を戻す]
次に、ユリアンさんがひとであると知りました。
[そして最後に視線は ─── ヘルムートへと]
今日は、ヘルムートさんが人であると、知りました。
人狼は、カルメンさんだったと思っています。
[続けるのはナターリエが抱いている推測]
彼女を刺す時に見せたあの微笑み。
あれは、もうひとを襲わずに済むという安堵のものだったのでは、と。
今は、そう思っています。
[悼むように瞳を閉じて、祈るように左手を己が胸へと添えた]
─ 路地 ─
[其の時は何時まで続いただろうか。
月色が離れて行くまでか、其れとも訪れた人によってか]
[訪れる者が無かったのならば、
獣を貫くとされる金属の色を乗せた髪を揺らして首を傾ぎ。
暫しの思考に沈むだろう]
[自分が居て、ユリアンが居て。……其れならば、もう一人]
[ゆっくりと紅玉が巡るのは。
アーベルの下に獣が現れるのとどちらが早かっただろう**]
―回想/幼い日々―
……ついてきちゃ、だめだよ!
[屋敷の門の前でそう叫び、追い返そうとしたら、
あの子は、とても哀しそうな顔をした。
数週間前に、“臨時”の使用人として、母親と共にやってきた、
同い年の、可愛らしい少女]
[使用人は、2種類いた。
魂を売って屋敷に仕えている者>>36と、
それから――外からやってくる“臨時”の使用人と。
臨時の使用人は、連絡船ではなく屋敷の船で、本土からやってくる。
浜につけば、そのまま姿を見られないよう馬車に乗せ、
屋敷の中では、門から外には決して出てはならない。
その姿を、島民に見せてはならない。
屋敷にいるのは――短くて数日、長くて数週間。
だから、島民にはわからない――…その姿が、いつ消えても]
―回想/幼い日々―
[少女の母親は、数日前に“新鮮なご馳走”として、
晩餐の食卓に上ってしまっていたから、
一人残された幼い彼女の心細さは、どんなにかだったろう。
冷たい使用人ばかりの屋敷の中、
唯一の子どもである、僕の後を追うようになって]
……ごめん、ね。
何か…お土産を持って来る、ね。
[彼女は、大きな瞳を輝かせて、頷いた。
“食糧”と話すことは、両親に禁じられていたから、
最初は相手にしなかったけれど。
泣きそうな瞳で追いかけてくる姿に、
家族や使用人の目を盗んで、時折、言葉を交わした]
―回想/幼い日々―
[そうして顔なじみの島の子供達と、浜辺で遊んでいた時。
儚く淡い薄紅色の、小さく綺麗な貝殻を見つけて。
ハンカチに包んで、大切に持って帰った]
喜んでくれると、いいな…。
[少女は、雪深い山奥の村に生まれて、
屋敷の船で連れてこられるまで
海を、見たことがなかったと言っていたから。
こんな綺麗な貝殻も、きっと見たことがないだろうと思って。
彼女がどうなる運命か、知っていたから。
せめて――…綺麗なものを、見せてあげたかった。
彼女が、嬉しそうに笑ってくれる顔を、見たかった。
それだけ、だったのに。
母に―――…見つかった。
少女に、薄紅色の貝殻をこっそりと手渡したところを]
―回想/幼い日々―
―――……っ。母様っ、どうして…っ!
[そうして、その日の夕方。
少女は――…”新鮮な料理“になって、食卓にいた。
長い夏の陽のおかげで、夕食の時間になっても、
ほのかな明るさの中。
まだ、ぬくもりの残る、鮮血の滴る彼女の肉料理を前に、
泣きそうな声で、母に問い掛けた]
“―――あら。何が不思議なの?”
[母は――美しく整えた細い眉の片方を、
一瞬だけ、ぴくりと微かに上げてそう答え。
何事もなかったように、いつもの優雅な仕草でナイフを操り、
彼女を、食べ始めた]
―回想/幼い日々―
家族の食卓に、気まずい沈黙が落ちて。
父は“こら、母様にちゃんと謝れよ?”と眼差しで伝え、
兄は”仕方ないなあ“と、ひょい、と肩を竦めた。
姉だけは、案じるような瞳を向けてくれたけれど、
その彼女も、躊躇いもなく食事を始めて]
[咀嚼しつつ、時折、強ばりを帯びる姉の表情を見れば。
家族が――…自分にだけ聴こえない『囁き』で
彼らだけの会話していることは、明らかで。
味方してくれる者など、あろうはずもなく]
『食べられない』と思った。
[彼女だけは――食べられない、と。
生まれてからずっと、当たり前のように、
家族と共に、人間を――食べて育ったのに]
―回想/幼い日々―
……っ、ぐす…、ごめん…っ、ごめんね…。
[洞窟の中で、膝ごと身体を抱くようにして座り込み、
少女のことを思い出して、再び泣きそうになっていた時。
誰かの足音が近づいてきて、“おい、何してるんだ?”
と不思議そうに問う声が聴こえ]
―――…っ、あ…あっちに行って!
[追い払おうとしたけれど、
薄暗くなった洞窟の中に入ってきた男の子。
此方からは顔は分からなかったけれど、外の彼には、
泣きそうになった表情を、見られてしまったかもしれない。
何を話したのかは朧げだけれど]
“……一人で、泣くなよ”
[慰めてくれた言葉の響きは、耳に残っていた]
―回想/幼い日々―
[ユリアンに、ちゃんと会ったのは、その夜から数年後、
姉が工房に指輪を注文した時だったか>>>>4:86。
だから、あの少年が彼だったのかは、わからない。
彼であっても、覚えているかどうか>>3:118。
洞窟で一夜明かした朝、流石に使用人に見つかって…。
連れ戻された家で、冷たくなった少女を食べさせられた。
母や家族の為に言うならば。
それは貴族階級出身の人狼の母親にとって、当然の教育。
彼女が特に冷酷だったわけではない、と思う。
時折は、気まぐれな優しさも、示してくれた。
自分は家族の中で、唯一の異端児だったけれど…、
彼らの願いどおりの存在には、とうとう成れなかったけれど。
それでも――…“家族”だった*]
─ 前日 ─
[粗方の話が終われば、ロミの問い>>22に頷いて、ナターリエは教会へと戻って行く。
戻ると聖堂に籠もるのはいつものこと。
かれこれ5日、食わず、眠らずの生活を続けている。
黒珊瑚亭でヘルムートが頼んでくれていた料理>>4:108も、喉を通すことが出来なかった。
最初は祈りの時間が惜しかったためだったのだけれど。
今はもう、眠ることも食べることも身体が拒否していた。
気力だけで動いている状態。
もう、ナイフをしっかりと握ることも難しいかもしれない]
あぁ、明日、は 、
[持ち帰った籠の中。
紅が付いたままのナイフと、小袋に入れられた彼の指輪。
小袋から指輪を取り出し、手の中に握り込む]
明日 は、彼を ────
[体力の落ちた身体で、次に為すことを頭の中に思い描いていた*]
─ 翌朝/→黒珊瑚亭 ─
[夜が明け、いつものように聖堂から直接黒珊瑚亭へと向かう。
その途中、今日に限って自衛団員が慌しく黒珊瑚亭を囲んでいた>>24。
人の多い箇所へと近付いて行くと団員に追い払われてしまったが、何が起きていたのかは知ることが出来た]
……………
[ナターリエは何かを言うでもなくその場を離れる。
指輪を握り込んだままの手に、僅か、力が籠もった]
おはよう、ございます。
[一言挨拶をしながら黒珊瑚亭の中へと入る。
他に食堂に居る者は居ただろうか。
宿泊部屋がある2階は自衛団員達で騒がしかったため、食堂の一席に腰掛けてしばしの時を過ごした]
―4日目/黒珊瑚亭―
Rosemary……ロス・マリヌス(Rosmarinus )
“海の涙“か……。
[アミュレットの珊瑚の花は、本来は姉や自分の瞳と同じ海の青。
聖母マリアの衣の青。
両親と兄は、12年前に島を出てすぐに事故で亡くなり、
長じるにつれて人狼であることは“呪い”だと思い、
病気も呪いの為だと思いこみ、許しを求めるようになった姉>>7は。
最期には,人の肉を口にすることを拒んで、重くなった病に、
苦しんで苦しんで……先月亡くなった。
持ってきた研究書>>2:136の後半の頁には、姉の為に、
人の肉の代わりになる、肉や薬を探し求めた記録がある。
けれど結論は――『現時点では、人間の血肉に代わるものなし』
机の上に開かれたままだった書を、ぱたんと閉じる。
ぎゅっと瞑った眼裏が、うっすらと濡れた]
―4日目/黒珊瑚亭―
人狼は、見つけられていない、のですか…。
ひとは、カヤとユリアンと…ヘル…。
[シスターが涙を拭ったのに>>32、微かにほっとして、
ヘルムートが人間であると言われれば、彼女を
信じるかどうかは別としても、やはり心の何処かで安堵した]
……カルが人狼で、
“もう人を襲わずに済む安堵”ですか…。
[ナターリエの言葉>>33に、
その通りの微笑みを浮かべた姉の最期>>7>>48を思い出して、
有り得ないことではない…とは思う。
姉の死に顔を思い出せば。
どうしてカヤを視たのに、ロミを視ていないのだろう、
ふっと感じた疑問は、すぐに他の感情に紛れた]
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