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[背を撫でていたサリィの手が離れて、ゆっくりと体勢を整え。
後をついていこうと、台車を持つ彼女の、背中に目を向けて]
[その瞬間、未だ少し残っていた強張りが、目の奥の恐れが、
すべての感情が、その表情から抜け落ちた]
……クレイグの気配が。
[不意に漏れるのは途惑うような響き。
ノクロへと視線向けて]
何かあったかもしれない。
クレイグの声が、聞こえない。
気配も、感じられなくなった。
[異変を感じ、伝える声が僅か震える。
クレイグが何処にいるかは聞かぬままだったから
結局探すあてもなく、ひとまずは当初の目的地を目指そうとして**]
[それだけ言って、がくりと頭を下げる]
黙っていてごめんなさい……メリルさん。
『死神』が降る刻には、命が刈られていくんです。
それでクレイグは……!
[絞り出すような声で、告げるのは謝罪の言葉。
そのまま頭を上げられず、肩は微かに震えていた]
はーい。
[いいこのおへんじ。のような声で返して笑う。
自覚あっても直さないというか直せないのがこの男だが]
…ま、『死神』に『糧』だもんなあ。
乗り越えた先を信じるとしようぜ。
[よいしょと荷を持ち直してしまったから、その背を叩けない。
出来るのは少しだけ首を傾いで笑うだけだ]
俺は何にもないからなー、何かあれば……、エト?
[急に止まる動き。
余分に一歩進んだ足を止めて振り返る]
…聞こえない?
筒抜けだったくらいの声が?
[震える声が異常を思わせる。
『印』も『力』も異常ではあるけれど、それ以上に]
……『死神の降る刻』。
俺たちの『命』を刈って、天上青の糧とするものが、『降りて』きた。
[一言一句、違わずに。
苔の広場で伝えられた言葉をなぞる]
…冗談じゃねぇ!
おいエト急ぐぞ!テレーズに伝承訊かんと何もわからん!
[動きの鈍ったエトに向けて声を荒げる。
焦り速まる足の先で、操手を失った台車と遭遇するかは、判らない**]
─ 都市の通り ─
── しに……がみ……?
[焦燥は消えぬまま、ユーリが紡ぐ言葉>>16を耳にする]
刈られる とか、 力に飲まれた とか、 それって ───
[全てを言い切る前にユーリから真実>>17を告げられ、『死神が降る刻』に起こることをようやく知った。
抱いていた疑問の答えはしばし言葉を失わせる]
────────……………
そ、 それじゃあ、クー は
[本当に死んでしまったのだと、理解した途端、足から力が抜けてその場に座り込んでしまった。
視線はしばらくクレイグが倒れた箇所を彷徨っていたけれど、ユーリが顔を上げずに肩を震わせているのに気付き、右手が動く]
ユーリ、謝らない で。
驚いた し、 すごい、 悲しい けど。
避けられることじゃ ないんでしょ?
この、『死神の降る刻』って。
[目まぐるしく状況が変化する中で、遠い昔に両親から聞いた話を思い出した。
そう、忘れていたけれど、聞いたことがあったのだ。
『死神の降る刻』についてを]
花が咲くまで、 続く。
それは避けられない運命みたいな もの。
悲しい けど、 乗り越えなきゃならないもの なんだ。
[浮いた右手はユーリの左肩へ。
震え続けるようなら、宥めるように何度か肩を擦るつもりだ]
[メリルの手が触れる辺りにある蓮華草。
そしてこちらの視線の先、先に見た時より色鮮やかに咲く蒲公英]
クレイグにも、しるしは表れていました。
恐らくは、待宵草が。
[それを口にした女性の姿が脳裏を過ぎるも、口には出さず。
ただ、少し滲んだような眼差しをメリルへと向けた]
─ 都市の通り ─
──…そっか、やっぱり、そうなんだ。
[一年に一度廻り来ると聞いて、視線が僅かに落ちた。
避けられないのは仕方が無いとは思えるが、続いた言葉に視線は再びユーリ>>22へと向けられ、瞠目する]
──── ッ
そんな、 これ が…?
[それだけでも驚きだというのに、更に耳に入る内容に、一瞬呼吸が止まったような気がした]
…………クー、も。
そ……か。
引き寄せやすい って、本当 なんだね。
[刈られたのかまでは分からないけれど、クレイグが刻に巻き込まれたのは事実で。
それが真実となり、伝承の信憑性を増すことになる]
……うん、わか った。
教えてくれてありがとう、ユーリ。
[未だ思考の整理は済んでいないけれど、状況は理解出来たため、ユーリに礼を言って。
滲む眼差しを向けてくる相手に、少し迷いながらも彼の左肩を擦っていた右手を頭へと伸ばした]
─── しょうがないって、直ぐには割り切れない けど。
あんまり悲しんでても、あの子は多分、喜んだりはしないだろうから。
アタシ達は、アタシ達のやれること、しよ?
[笑みを浮かべてはみたけれど、物悲しさはどうしても消しきれなかった]
― 都市の通り ―
[驚愕した様子のメリル>>24を哀しげな眼差しで見詰め、小さく頷く。
――こんな表情を見たくはなかったから、出来れば秘めておこうと思っていた。
けれどクレイグが消えた今、全てに目を背けたままではいられないと思った]
……ごめんなさい。
あの時、言えなくて。
[初めから全て打ち明けているべきだったのかは、今もわからない。
ただ、礼を言う彼女に頷いた。
頭に手が伸ばされるのに気付けば、少し照れた顔をしつつも、素直に受け入れた]
はい。
僕も……そうしようと思います。
メリルさんに頼まれた仕事のこともありますから。
[物悲しさの残るメリルに向かって、どうにか微笑みを見せようとする]
では、僕、そろそろ行かないと。
[断りを入れ立ち上がろうとしたその時、鞄から覗く真新しい本に気付いた。
ふっと目元を緩ませて、表紙の文字を指でなぞる]
やれる事をやる、ですか、まったく。
[奇しくも姉と似た言葉を遺した青年を思い、苦笑に似た溜息をひとつ]
貴方の力……まだまだ借りますからね?
覚悟してくださいよ。
[本に向けてか、それを記した者に向けてか。
そう呟いて、少しだけ瞑目した**]
うん、アタシも ─── 行かなきゃ。
[立ち上がろうとするのを見て、こちらも土を払いながら立ち上がって]
それじゃあ、また。
[刻が続く以上、次にまた会えるかは分からない。
けれど、敢えてそう言葉を紡ぎ、籠を持ってユーリと別れた。
歩み進む先は、当初の目的地とは変わっている**]
─ 自宅 ─
ら、
ら、
ら……
[動作はいつもどおりの不確かではあるが、
どこかやわらかく、軽い]
一生は一年。
周期は一年。
……だからきっと、わたくしは見られないのだなと諦めていた。
でも、
生きていて良かった。
生きていて、良かったわ。
─ テレーズ宅前 ─
[落とした荷物を拾わなくては。
そう思っても、今見たものの衝撃は消えない。
視線を巡らせると、ミレイユが崩れ落ちた姿をとらえる。
考えるより先に、足が動いた。]
ミレイユちゃん…!
[近付いて、ミケルもまた、彼女のそばに膝をつく。
だけれど、そこで、どうしようと動きは止まって。
辺りを見回して、誰かに助けを求めようとするけれど、今はまだいなくて。
おずおずと、手を、彼女の頭に伸ばした。
消えていない。居る。
ちょっとためらいがちに、何度か、頭にそっと触れる。
ぎこちのない動きで。]
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